ぐらさい日記   作:長之助

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お久しぶりです。マジでいつぶりの投稿なんですかね…





五天、遊ぼうよ〜

「今日のゲストはフュンフさんです」

 

「えっへん! 十天衆のフュンフだよ! いっぱいすごい魔法使えるから、みんな宜しくね!!」

 

 十天衆フュンフ、十天衆の中では最年少の存在である。しかし、十天衆にいるからには、彼女にもやはり突出した部分が存在している。それが、彼女の魔力量の多さである。最年少とは言ったものの、その魔力量の多さは同じ十天衆から見ても驚くほどのものである。

 彼女自身、それを魔法という形で発散して安定させているが、それでも彼女の魔力の大きさは未だに成長中という恐るべき才能の持ち主である。

 

「今日はね! あちしね、ソーンとエッセルとケーキ食べに行ったんだよ!!」

 

「そうだったのか、美味しかったか?」

 

「すごく美味しかったよ! ニオも来たら良かったのになぁ」

 

「そうだなぁ、でもシエテと話してたんだろ?」

 

「うん! シエテと、じっちゃと、ウーノと一緒に!!」

 

 じっちゃ、というのは同じ十天衆のオクトーのことである。彼女はオクトーのことをそう呼んでおり、オクトー自身も特に否定することをしていないので、このような呼び方が定着しているのだろうかと、グランは考えていた。

 

「ところで、ケーキは何食べたの?」

 

「んとねー、えとねー」

 

 頭をカクカク動かしながら考えている彼女に、グランは笑みを浮かべて微笑ましそうに覗いていた。まだ歳若いどころか小さいと言っても過言ではない彼女に、子供らしい可愛さを見いだしていた。

 

「……いっぱい!!」

 

「そっかぁ、いっぱいかぁ」

 

「そう! いっぱい食べたの!!」

 

「そんないっぱい食べて満足したフュンフにも、いっぱいお手紙届いてるからな〜」

 

「わーい! 最強のあちしになんでも聞いてね!!」

 

「って訳で一通目『最近嬉しかったことって何かありますか?』」

 

「……」

 

 質問に対して珍しく黙って考え込むフュンフ。もしや、嬉しかったことはさっきのケーキ以外なかったのでは? と思ったグランは少し心配になったが、直ぐにその心配は杞憂に終わった。

 

「大変だよグラン!! 嬉しいことが多すぎて分からないよォ!!」

 

「……そっかぁ……」

 

「えっとねえっとね! さっきのケーキでしょ、じっちゃがお菓子買ってくれたことでしょ、シエテが玩具買ってくれたことでしょ、ニオがお休みの前に演奏してくれたでしょ、シスが肩車してくれたでしょ、エッセルがお洒落してくれたでしょ、カトルがアイスくれたことでしょ、ウーノが撫でてくれた事でしょ、サラーサが一緒に遊んでくれたこと……まだまだあるよォ!!」

 

 微笑ましい彼女の言葉に、グランはニヤケが止まらなくなっていた。子供らしい、活発的で人当たりの良い彼女の性格と喋り方は、穢れているグランの心を完全に浄化していた。

 

「あ、そういえば」

 

「ん?」

 

「最近ねー、他の人が嬉しくなるとあちしも嬉しくなることが多いんだ〜」

 

「……と、いうと?」

 

 フュンフの言葉の意味を改めて確認するグラン。フュンフは思い出すかのようにうんうんと唸りながら考えていく。そして、急に表情が明るくなったかと思えば、両手をパチンと合わせ音を鳴らす。

 

「ソーンがね! シルヴァと一緒にいて楽しそうにしてたりとか!」

 

「……あぁ、なるほど……そういう事か」

 

 ソーンとシルヴァ……もとい銃工房三姉妹、オクトーとナルメアの様な十天衆以外に前からの知り合いが団にいる面子が、特定のメンツと仲良くしているのを見て嬉しく感じているようだ。

 

「みんなみんな、仲良しな事はいい事だもんね!」

 

「そうだな、いい事だな」

 

 子供の話を聞いている父親の気分、そんなもの味わったことは無いけれどグラン的にはそれが、父親のような気持ちだと言うことは理解できた。

 

「さて、もっとこのお話をしていてもいいが……2通目に行こっか」

 

「はぁい!!」

 

「『全力を出したらどうなりますか?』」

 

「わかんない!!」

 

「即答ときた……と言っても、確かにその通りだからなぁ……」

 

 フュンフの魔力は十天衆の中でも秀でているものである。しかし、未だ幼い彼女はその魔力を言葉通り『ぶっぱなす』形で発散させているわけなのだが……

 

「加減とか、したことないもんな」

 

「全力全壊!!」

 

 そう、加減を知らない。正確に言うならば、力のコントロールをあまりしないのだ。単純に強弱を付けるだけならば、彼女にもできる。しかし、その力を正確に使っていないので無駄なところが多かったりもするのだ。

 逆に言えば、独学と直感だけで魔法を使っているので、今以上に魔法の火力をあげることが可能だったりもする。

 

「ソーンがね、魔法のお勉強しようって!!」

 

「してる?」

 

「してるよ! おかげであちしもまだまだ強くなっちゃう!!」

 

 幼い分、彼女の伸び代は誰よりも大きい。力も誰よりも大きい。既に十天衆という伝説になっているが、それ以上の大きな伝説の1ページになるかもしれない逸材である。

 

「そう言えば、フュンフは魔法をとりあえず出しまくってるけど……あれって誰から教わったんだ?」

 

「ほぇ? 全部あちしの魔法だよ?」

 

 それが独学で編み出したものなのか、それとも覚えたから既に自分の魔法だと言いたいのかは、グランは聞けなかった。なんというか、多分このまま同じことを聞いては同じ回答が帰ってくる……そんな気がしたからだ。

 

「まぁ、それならいいんだけど……にしても、毎度毎度ああやってぶっぱなしまくってるのを見ると……気持ちよさまで感じるな」

 

「でしょでしょ? サラーサとね、よくね……やるんだよ……」

 

「何を?」

 

「どれだけ大穴掘れるかゲーム!」

 

 それは最早島の地形を変えかねない遊びではないだろうか……とも言えず。先程から言いたいことを全く言える状況でも無くなっているので、グランは軽く下唇を噛んで我慢するという状況に陥っていた。

 

「……と、とりあえずそのゲームはまた今度見せてもらうことにして……3通目に行きましょうか」

 

「はぁい!!」

 

「てな訳で3通目……『シエテお兄さんのことはどう思っていますか』……おい頭目、後で団長室」

 

 わざとらしい言葉でお便りを書いていたシエテ。フュンフはなんの事だか分からずに首を傾げていたが、自分のやる事は『聞かれたことを答える』なので、素直にそちらに従う事にした。

 

「んとねー、シエテはぁ……」

 

「……シエテは?」

 

「いっつもヘラヘラしててたまに腹が立つ時がある」

 

「━━━!?」

 

 フュンフがこんなことを言うはずがない、と一瞬にしてグランは瞬間的に起きた現実から逃げようとしかけたが、すぐさま満面の笑みをうかべたフュンフに現実に引き戻されていた。

 

「━━━って、カトルが言ってたよ!!」

 

「あぁなんだカトルが言ってたのか……」

 

 カトルならいいのか、と言われそうな案件だが……たまに口の悪くなるカトルらしいと言えばらしいので、グランはそれならとスルーをすることにした。それはそれとして後でそれとなく注意はするつもりなのだが。

 

「……フュンフはシエテの事どう思ってるの?」

 

「んー……面白い人!!」

 

 仮にも十天衆の頭目がそれでいいのか、子供だからこそかっこいいとか綺麗だとかの印象を持たせるように動いた方がいいのでは無いのか、グランは笑顔を張りつけながらもそう思った。

 

「でもねでもね! みんなシエテの事大好きなんだよ!!」

 

「……まぁそれは伝わるかなぁ」

 

 自由奔放で頭目の招集をかけても基本的に集まるのはソーンと、ご飯の匂いをかぎつけた時のサラーサくらいしか集まらないけど。カトルが素を出してブチ切れながら暴言を吐いてボロクソに言ったりもするけれど。それでも信頼はあるのだとグランは知っている。

 

「……なのに人望ないんだよなぁ、不思議な奴だよなぁ……?」

 

「だっていっつもヘラヘラしてるし!」

 

「あぁ……」

 

 答えここに見たり、と言わんばかりの納得である。しかし、そもそも我の強い人物しか集まってないのが十天衆。ヘラヘラするよりも威厳ある方が皆従う可能性がある。

 

「いや逆に反骨精神モロだしするか……」

 

「モロ……?」

 

「あぁ、うんなんでもない」

 

「団長はどう思ってるの?」

 

「シエテをどう思ってるか、ねぇ……」

 

 じっくり考えるが、大切な仲間であることには間違いがなかった。剣オタクで、いつも剣拓を取ろうとしてきていつもヘラヘラ笑っていて軽い言葉をかけてくるが……大切な仲間として、グランは認識している。

 

「俺の中でも評価低くね……?」

 

「ほぇ?」

 

 だが、同時にグランはこうも考えていた。強く、なんだかんだ言って真面目な時にはリーダーシップを発揮している頼もしい人物だと。

 

「団長も、シエテのこと好き?」

 

「うん、大好きだよ?」

 

「えへへぇ、そっかぁ」

 

 フュンフの態度に癒されながらも、そろそろ時間だということに気づいたグラン。仕方なくカメラの方に視線を動かして、終わりの挨拶を進めていく。

 

「というわけで、本日はここまでとなります」

 

「え! もう終わりなのぉ!?」

 

「まぁまぁ、お喋りだけならまたいくらでもしてあげるからさ」

 

「むぅ……分かった!! じゃああちしと喋りたいみんな! あちしの部屋に来てねぇ!」

 

「というわけで、ここまでご視聴ありがとうございました。また次回お会いしましょう……さようなら」

 

「じゃあねぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへぇ……お菓子美味しい」

 

「いやぁ、今日は出てくれてありがとうなフュンフ」

 

「いいよォ! でもさでもさ? 次ってニオだよね?」

 

「ん? そうだけど……それがどうかしたのか?」

 

「んとねんとね……ずーっと鏡みて、笑ったりしてたの!」

 

「あっ……」

 

 カメラを切り、グランの部屋でお菓子をほおばっているフュンフ。そんなフュンフから、今のニオの様子を聞かされたグランはこう思ったらしい。

『フュンフが見ていたことを黙っていよう』と。心を読むニオに対して黙り続けているというのは難しいが、そこも踏まえて何とかしようとグランは考えたままフュンフの口にお菓子を運んでいくのであった。

偶には長編とか書いて欲しい

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