ぐらさい日記   作:長之助

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九天、一緒に弾こう?

「今回のゲストは十天衆のニオさんです」

 

「……」

 

「……自己紹介して貰えると助かるかなぁ」

 

「……ニオよ、十天衆をやってるわ。私の前で隠し事なんて出来ないと思わない方がいいわよ」

 

「言ってることは怖いですが、可愛らしいので良しとしましょう……そんなことよりも」

 

「何?」

 

「━━━なぜ俺の膝の上に…?」

 

十天衆ニオ、彼女には特殊な力があり心の声を音として聞く耳を持っていたり、逆に音を奏でることによって相手を落ち着かせたり眠らせたりと『音』に関することならばトップクラスの実力を持つ十天衆の1人である。

そんな彼女は、現在グランの膝上にちょこんと座っていた。まるでそこが定位置だと言わんばかりに。

 

「……駄目?」

 

「駄目じゃないしむしろ嬉しいけどめっちゃ気になる」

 

「……甘えたかった、から…」

 

「━━━」

 

ひとつ言うが、ニオはグランよりも歳上である。その上での事ではあるが、とても甘えん坊である。周りに誰かいる時はあまりそう言う事をしないが、2人きりになった途端かなり甘えてくるのだ。

しかし今はカメラが回っている最中、空間的には二人きりとはいえ、この映像はグランサイファー全体で流れていることになっている。

 

「……いやいや、見られてるけど?」

 

「……見せつけよう、直接見られてるわけじゃないから、平気」

 

「おっとそういう路線で攻めてきたか」

 

ハーヴィンとはいえ、成人している女性である。そのうえで甘えん坊なのである。そして、甘える時はとことん甘える性格なのと、思ってた以上に独占欲の強い性格。

グランの頭の中は爆発してしまい、つい一言を漏らしてしまう。

 

「━━━下手な男なら惚れるなこれ…」

 

「……団長?」

 

「おっとなんでもない……ってなんで離れるんだ?」

 

グランが静かに発した言葉はニオには聞こえていない。聞こえていないが、心の声は別である。グランが感じたニオの可愛さが心の中で爆発している結果、それを全て読み取ってしまっていた。結果、逆にニオは恥ずかしがってしまいグランから離れる結果となっている。

 

「……」

 

「顔真っ赤だぞい」

 

「真っ赤なのは夕日が差し込んでいるから」

 

「今昼間で曇りだけど」

 

「……」

 

「……」

 

しばらく見つめ合うグランとニオ。しかし、その見つめ合いにおいてニオは耐えきれる訳もなくそのまま視線を話す。

 

「……早く、進めて」

 

「……ならお言葉のとおりに1通目から行こうか。『心の音色が聞こえるって、心が読めるのとどう違うんですか』

……これ答えられるか…?」

 

グランは首を傾げる。そもそもの話、心を読めるのとニオの力がどう違うか、というのを説明するのはニオ自身にも難しい話だろう。ニオが心の音色を聞けるのと同時に、それとは別に心を読むことが出来る能力がある訳では無いのだから。

 

「……正直、違いなんてないと思う」

 

「そりゃまたどうして」

 

「そもそも…旋律を聞いて、その人が何を考えているかがわかる時点で…『心を読む』のと何ら変わらない…」

 

「まぁ確かにそうだけど」

 

「これは私の考えでしかないけど」

 

「ん?」

 

「『心を読む』という大枠の中に…私の旋律を聞ける力が入ってるんだと思う。あくまで、細分化された中の一つ…と考えれば」

 

ニオの説明に、グランは理解したようなしていないような微妙な表情をしていた。もちろん、ニオの説明でニオの力が『心を読む』という大枠の中の一つというのは理解はできている。

 

「うーん…そうなると、だけど…あれか…?」

 

「…どこか、疑問点があった?」

 

「いや…多分ちゃんと理解できないのは、言葉の使い方の問題な気がする」

 

「…使い方?」

 

「心を『読む』ってので多分軽く引っかかってるだけだから…あんまり気にしないで」

 

「そう」

 

「とりあえず2通目……『いっつも浮いてますが疲れないんですか?』」

 

ニオはハーヴィンである。そして同時に、彼女は自分の体をほぼ常に浮かせている。無論歩けないという訳では無いが、その体躯の為に浮いてる方が早いと言う時もある。

 

「疲れた試しがない」

 

「でもソーンとか普通に歩いてた要な気がするけど」

 

「…エルーンのメーテラ、彼女もほぼ常に浮いてる」

 

「あ、確かに」

 

今上がった2名。ソーンとメーテラ、彼女達もまた宙を飛ぶことが出来る実力者である。しかし、ソーンは兎も角メーテラはまともに歩ける靴をしていないのだから歩いていなくて当然なのだが。

 

「……ってなると本当に疲れないんだ」

 

「そもそも一定時間よりも、ほぼずっと空を飛んでいられるからこそ、浮遊は難しいって言われてたりもする…」

 

「え、そうなの?」

 

「…冗談よ、一定時間飛ぶことならイオって子も出来るからその時点で実力は相当だもの」

 

島から島へと個人での飛行能力を持っているメーテラや、同等の実力を持つニオやソーンは、既に飛ぶことに慣れている。飛び始めたばかりのイオがいきなり3人のような飛行能力を有していたら、それはそれで恐ろしい話である。

 

「……うーん、俺も練習したらそのうち飛べるようになるかな」

 

「飛ばない方がいいと思う」

 

「どうして…?」

 

「飛ぶと…」

 

「飛ぶと?」

 

「……ますますなんでも出来る団長になって、私たちのアイデンティティが失われかねない」

 

「そこまで行く…?」

 

飛べることはただの副産物のようなものであり、それが主軸となっている人物は特にいないが…それでも、飛べるという事を取られたくないというのがニオの本音であった。

 

「それに飛ばれたら…抱っこできない……」

 

「いや流石に身長差的に難しいのでは…?」

 

「……確かに」

 

元々、グランが飛べようが飛べまいが関係ないのだ。ニオは抱っこする側ではなくされる側の人間であることは明白なのだから。

だが、飛べるというアドバンテージは彼女に夢を与えていた。いつも甘えている人間を甘やかせるという、そんな淡い希望を持っていたのだ。

 

「……」

 

「……露骨にショックを受けてらっしゃる…」

 

「受けてない…から、3通目行って」

 

「あ、はい……3通目『琴の音楽を奏でていますが、激しい感じの音楽はどう思いますか』……例えると、アオイドス達みたいな…感じかな」

 

アオイドス関連のメンバー、つまりはバンドなのだが彼らの奏でる音楽はニオの琴とは方向性が全く違うものである。それについての質問ということだろう。

 

「……何とも思わない、って言うのは不適切かもしれないけど…彼らの音もまた誰かの心の救いになるのなら、と考えると特に思うところはない」

 

「まぁ騒がしいけどね…それがいいって人もいるしそりゃそうか」

 

「あぁでも……」

 

「ん?」

 

「あの包帯を巻いた男は嫌い」

 

「あぁバレンティン……え、なんで?」

 

「近くにいると心の音色が聞こえてきて…その……」

 

「あー……」

 

バレンティン…かつてアオイドスがまだ記憶を失う前…ベンジャミンとして活動していた時のバンドメンバーである。はっきり言えば、生粋のマゾヒストだ。刺されれば興奮し、罵られれば欲情する。そんな彼の存在を思い出しつつグランは納得した。そして、今度からニオには近づかないように言っておこうと決めたのであった。

 

「ただの殺意なら受けなれてる…周りを憎む声も、怒りも悲しみも…けど、あの……あの男だけは…無理…」

 

男女問わず痛めつけらたり、罵声を浴びせられれば興奮するどころか自分から求めてくるような人物である。恐らくはニオが出会ったことの無いタイプの人種だろう。グランも会ったことがないし、可能な限り子供達にも近づけさせないようにしている。

個々人の性的嗜好は否定はしないが、それはそれとして普通に危ない。トラウマになったらどうしてくれる。

 

「まぁ、うん…今度アオイドスに伝えておくよ…」

 

「お願い…」

 

ライブするな、とまでは言わないがそれとなく今どこで何をするかくらい把握できるようにしておくように伝えておこう。グランはただただそう思うのであった。

 

「……さて、今回はこんな所かな」

 

「短い……もっと色々話していたい」

 

「まぁこれも番組の定め…」

 

「…次は、エッセル?」

 

「ん?そうだね、順番的にはそうなるかな」

 

「そう」

 

ただの興味本位なのか、なにか思うところがあるのか。それだけ聞くとニオは再び口をとざす。グランは問いただすことはなく、なにか思うところがあるのだとだけ判断してそれ以上エッセルの話題を出すことは無かった。

 

「というわけで、ここまでご視聴ありがとうございました。また次回この番組でお会いしましょう、さようなら」

 

「不定期に演奏会をしてるから…暇なら、来てね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…珍しく、今回はゲストのニオさんがカメラを切ってました」

 

「そうですね」

 

「けど待てど待てど部屋から出てこない」

 

「確かにね」

 

「何事かと思い、確認するために入りました……なんでこうなってるんですか」

 

番組終了後、しばらく経っても出てこなかったグランを心配してリーシャが部屋に入ってきていた。ニオと二人きり、そんな状況を見逃す訳もなく許可も盗らずに突撃をかましていた。

 

「ニオォォ……」

 

そこには、グランの膝の上で頭を撫でられ蕩けきっている十天衆の姿があった。

 

「いやぁ、しばらく二人きりでいたいって言うもんだから」

 

「頭を撫でて甘やかしていたと」

 

「はい」

 

「1ついいですか」

 

「なんでしょう」

 

「付き合ってもない女性とひっ付き合うのはどうかと思います」

 

「まさしく正論すぎる…いや、こういう文化だと思えば希望が…」

 

「ハーヴィンの女性なら兎も角、偶にアンチラさんなどの未成年の小さな女性と体を引っつけあってますよね」

 

『逃げられない』目の前の秩序を目の前にして、グランは直感的にそう感じとっていた。しかし撫でるのは辞めないし、ニオは甘えるのを辞めない。

 

「気づいておられましたか、ぶっちゃけ引っ付かれると悪い気はしないし甘やかしたくなる」

 

「アウトなんで引っ張っていきますね」

 

「やっぱり?というか今日雑だね?」

 

「理由は雑でも厳しく取り締まらないと、この団いずれ無法地帯になりますよ」

 

主にグラン関係の女性問題で。と言うのはリーシャは言わないでおいた。そしてそのまま引っ張っていかれるグラン、意地でも離れようとせずにくっついているニオ。

その2人を引っ張っていくリーシャはさながら、父親と娘を引っ張っていく母親と、しばらくからかわれるのであった。

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