ぐらさい日記   作:長之助

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何やかんやあってグラン君は元通りになりました。


十二神将の宴

 その日、グランサイファーの一角ではかるた大会が行われていた。とは言っても、参加メンバーは十二神将達とグランの合計6人なのだが。

 

「ここじゃっ!!」

 

 グランがカルタを読んで、全部読み切った後にそれぞれの持ち札を確認。その枚数によって順位を付けて、最下位を外してもう一度!というのを繰り返していき、完全な順位をつけていくという遊びである。

 因みに、1度順位が決定した後にグランがそれぞれのメンバーと対決して、勝ったところで順位に割り込む形となる。

 かなり時間がかかる遊びだが、要するに今回は皆暇なのである。

 

「ここっ!!」

 

 そして、今現在ツートップでアニラとクビラが対決をしていた。その際、グランは次に読む札を完全に暗記したあとで読んでいた。それは何故か?

 2人の動くさまを眺めていたかったからである。2人のドラフが、激しい動きをしながら札を獲る。それをただ見たかっただけなのだ。

 

「クビラ姉もアニラ姉も凄いなぁ」

 

「そうですね……」

 

「2人ともー!頑張れー!!」

 

 既に敗退しているアンチラ、マキラ、ヴァジラの3人は2人の対決を観戦していた。因みに、この3人が敗退した理由としては基本的にドラフの2人による胸囲アタックのせいだとも言える。激しく動くために揺れ、そしてそれが凄まじい一撃を伴って3人を吹き飛ばす……とまではいかないが、どうしても邪魔になってしまっていた。無論、3人もそれは了承済みで行っている。

 

「じゃあ次読むぞー『か━━━』」

 

 まだ一文字目なのにも関わらず、2人は即座に動いていた。残り枚数が少ない事、そしてこのカルタをほとんど暗記しているという前提なので、ほとんど読んでいなくても動いていく方がいいと二人は結論づけたのだ。

 

「ここじゃっ!!」

 

「くっ……!!負けた……!」

 

 そして、ラストの一枚を取り終えたところで勝負は決した。このカルタの枚数は奇数なので、必然的に接戦していても最後に取ったアニラの方が1枚多くなってしまうのだ。

 事実、枚数を確認のために数えてもクビラの方が少ないので、やはりクビラの敗北となっていた。

 

「さて……こちらは終えたぞ?」

 

「やろうか、団長!」

 

「望むところだ。」

 

 アニラとクビラの不遜な笑みに、グランもまた自信たっぷりに笑みを返していた。

 その自信はどこから来るのか、そもそもカルタをするやる気がちゃんとあるのかなどと言う疑問を誰も持っていない辺り、やはりグランサイファーに乗るような人物はいい者達ばかりなのだろう。

 

「じゃあ、僕が読むねー」

 

 アンチラが読み札を手に取る。そして、適度にシャッフルしてから1番上にある札を読み始める。

 1文字目、瞬間的に2人は動いていた。アンチラが呼んだ札は、グランの目の前にあった。つまり、向かい合って座っているアニラからしてみれば、一番遠い場所なのだ。

 

「ここ━━━」

 

 アニラがその札目がけて飛び込んでくるかのように、手と体を伸ばす。そして、それに合わせるようにしてグランも自分の手を真下に向けて下ろしていく。勢いよく、それでいて豆腐を扱うかのように優しいタッチを心がけて腕を動かす。

 ここまで言えば伝わるだろうが、グランは札を取りに行っていないのだ。その凄まじい反射神経と、その反射神経についていける肉体を持ってして、アニラの胸を触ろうとしているのだ。

 

「ふ━━━」

 

 グランは笑みを浮かべる。

 正面から堂々と触りたいところだが、カルタ内でそれを行う事は不可能に近いだろう。ならばどこでもいいから触ろうということで、上から触るような形にすればカルタ内でも、物理的に触ることは可能だろう。

 顔に無理やり当てられに行く、手ではなく腕に当たるようにする……などと無駄に思考を費やして、胸を触りたいがために2桁を優に超える作戦をグランは立てていた。

 

「取っ━━━」

 

「ここだ━━━」

 

 アニラは札を取りに行き、グランは男の欲望を叶えようと動く。2人の目的がどちらも叶いかけた…その瞬間、どこからともなく笛の音が鳴り響く。

 

「団長君、アウトです」

 

「何…だと…?」

 

「どさくさに紛れて、アニラ君の胸を触ろうとしていましたね。私達の目は誤魔化せても、この特製『絶対見逃さないカメッスル君』の目からは逃れられません」

 

 そう言って出てきたのは、小型のカメレオンのような機械だった。どうやら、不正しないように予め懐にしのばせていたのだろう。

 

「カメッスル君目いいんだな……」

 

「団長君の事です、2人の胸を触ろうとしているに決まってました」

 

「ほう」

 

「にゃっ!?」

 

 アニラはニヤニヤと笑みを浮かべ、クビラは胸を隠して顔を真っ赤にしていた。恥ずかしかったのか、変な言葉が出てきていた。

 

「我らが団長殿は、どっちの胸を積極的に触りたかったのかの〜?」

 

 ニヤニヤしながら、アニラはグランに擦寄る。クビラとは違い、団長ならばと言わんばかりの急接近である。

 しかし、これはアニラの年上の余裕と言うやつである。そのようなものは、グランにとっては壁にもなりえない。

 

「どっちの胸も積極的に触りたいに決まってるだろ」

 

「にゅっ!?」

 

 グランはアニラの片手を両手で握り、ずずいと顔同士の距離を近づけて言い放つ。言っていることは、はっきり言うとセクハラなんて生易しいものでは無い。

 しかし、それでも嬉し恥ずかしと言うやつだったのか、アニラは顔を真っ赤にして俯いてしまう。そして、目を逸らしながら自分の人差し指同士をくっつけたり離したりし始める。

 

「すごい発言……一応僕まだ10歳なんだけど触るつもりだったの?」

 

「え、何触って欲しかったのか?」

 

「……触るほどあるのかな」

 

 そう呟きながら、アンチラは自分の胸を軽く触っていた。まだまだ育ち盛りなのだが、グランからは否定の言葉が一切出てこなかった。

 

「この中で2番目に大きいから大丈夫だと思う」

 

「マッキー、多分それ下から2番目ってことだよね」

 

「ハーヴィンはどうやっても大きくなれないし……」

 

「あー……」

 

 アンチラが納得してしまったのか、言葉を出してしまう。多少の盛りはあるかもしれないが、一般的にハーヴィンの体型で胸があるということは余りないことである。

 マキラは、目立たない方である。あるかないかは誰も心の中ですら、言及しようとはしなかった。

 

「あっ、ということは真ん中は……」

 

「……ワシ?」

 

 ヴァジラが苦笑いを浮かべながら、頬を掻く。あまりこういう話題をしたことがないのか、反応に困っている様子だった。

 

「いやでも……なんか嬉しくないなぁ」

 

「へ?どうして?」

 

「真ん中とは言っても……上位2人がトップクラスすぎる……」

 

「「あー……」」

 

 マキラとアンチラが同時に声を上げる。上位2人であるドラフのクビラとアニラは、確かにこの中では見えている世界が違う、と言わんばかりの盛り盛りようである。

 

「何なら大きくしてやろうか」

 

「出来るのか!?」

 

「何でも揉めば大きく…なる……と………」

 

 グランが手で何かを握るような仕草を取りながら、ヴァジラ達に近づいていた。しかし、その視線は部屋の扉へと吸い込まれていった。そして、少しずつ青ざめ始めたグランに疑問を抱き、十二神将達も一斉に扉の方に目線を向けていた。

 そこにはリーシャがいた。

 

「……ここで何を?」

 

「カルタです」

 

「カルタなのに揉むんですか?」

 

「揉みません」

 

「なら今の動きはなんですか?」

 

「マッサージです、胸の」

 

 揉まないと宣言しておきながら、胸のマッサージを行おうとする団長グラン。十二神将達は固唾を呑んで見守っていた。

 

「それ、揉んでませんか?」

 

「揉んでます、はい」

 

「なぜ揉もうと?」

 

「いや胸小さいの悩んでるから、団長だし助けてあげようかと…」

 

「団長が触る必要性あるんですか?」

 

「……」

 

 ついに何も言い返せなくなってしまうグラン。その顔色はゾンビよりも悪い色になっていた。

 

「ないです」

 

「そうですね、そういう事をしたいのならまずは付き合ってから行うべきでしょう」

 

「はい、仰る通りです」

 

「あ、じゃあここにいる全員でグランと━━━」

 

「そうなった場合団長さんには秩序の騎空団に所属してもらうことになりますね、50年ほど牢屋で」

 

「10代と付き合った時の罰が凄まじく重い……」

 

「恋は人それぞれですが、法律という名のルールは守りましょう」

 

「はい……」

 

「ところで胸を触られると大きくなるというのは誰情報ですか?」

 

「イオがロゼッタから聞いたっていう話をして……ロゼッタはメーテラから聞いたみたいな話してた」

 

「なるほど……情報提供ありがとうございました。とりあえず団長さんは逮捕です」

 

「あぁ畜生、逃げられると思ったのに……」

 

 グランはそのまま手錠をかけられて、連行されていく。一体この光景も何度目だろうか、と十二神将達は顔を見合わせて苦笑していた。

 

「あの者の言うこともわかるがのう」

 

「全く!失礼しちゃうよ!僕はもう大人です!」

 

「……私が原因では?」

 

「いやぁ、ワシはただの嫉妬だと思うけど」

 

 そして、そのままグランに対しての談義が始まる。今までも何度かやってきたが、いい意味でも悪い意味でも話のネタに尽きないグランは、やはり十二神将達のいい話の材料となり、なぁなぁで終わったカルタの代わりとして、談義が彼女たちを夕飯まで楽しませたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石によォ、全員と付き合うのは駄目だと思うぜ?こういうのは1人に絞らなきゃいけねぇだろ」

 

「んなこと分かってるよ……というかそれが原因で逮捕されたわけじゃねぇよこのトカゲめ……」

 

「オイラはトカゲじゃねぇ!!」

 

 アマルティア島にて、グランは秩序の騎空団特別牢に入れられていた。そして今、面会時間ということでビィが彼の話を聞いていた。

 

「でもよォ、どっちにしろ胸揉もうとするのは犯罪じゃねぇか」

 

「……え、アンスリアとかは未遂で終わるけど偶に触らせようとしてきてくるから、いいものなのかと……」

 

「いやまぁ、ぶっちゃけ悪い気はしてねぇだろうけどよォ……人としてどうなんだァ?」

 

「めっちゃ反省してる……あー、全空の美少女達と付き合っても問題ない星晶獣とかいねぇかなぁ……」

 

「そんなもん、いる訳ねぇだろ……」

 

「んなこと言われなくてもわかってんだよ……」

 

 グランは机に突っ伏しながら、ただただ愚痴を零していた。余程逮捕されたのが堪えたのだろうか。

 

「で?今回いつまでだ?」

 

「反省文書いたら出してくれることになった……」

 

「ほー、良かったじゃねぇか」

 

「とりあえずリーシャとモニカ褒めちぎっておくわ……」

 

「ん?何でだ?」

 

「何か、照れた時の顔が可愛かったんで……」

 

「お前はもうしばらく、頭を冷やしておいた方がいい気がしてきたぜ」

 

 ビィは諦めのため息をつく。この男はどう足掻いても、こういうことに関しては反省をしないのだろうと思ったからだ。

 

「もっかいシヴァっとくか?」

 

「何シヴァっとくか?って……そんな動詞初めて聞いた……」

 

 面会時間でもただ駄弁るだけのグランとビィ。見張り役の秩序団員は、新人なのか腕時計とグランを交互に見て、オロオロしていた。

 

「どうやら時が来たみたいだな……」

 

「なんだお前」

 

「だが、俺はまた復活する……絶対にな!!」

 

「おう、とりあえず出てきたら連絡寄越せよな。気が向けば迎えに行くからよ」

 

「偶にお前めっちゃ辛辣だよね……」

 

 そう言って、グランはそのまま部屋の奥へと戻っていく。ビィは溜息をつきながら、同じように部屋の外へと出る。

 今度戻ってきた時には、リンゴでも奢らせようと考えていくのであった。




こんな感じで小説を進めていこうと思います。
団長相談室に関連性のあるキャラクターを呼び、それが全員集まったら全員集合パーティと言った具合に。

偶には長編とか書いて欲しい

  • はい(ギャグノリ)
  • はい(シリアス)
  • いいえ

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