「今回は十天衆エッセルさんに来ていただきました」
「……よ、よろしく」
「おや、緊張で固まっているのでしょうか?あまり緊張している人をみかけることがないこの番組、初々しさが逆に新鮮さを醸し出してより可愛さを引き出させる塩梅となって…」
「あ、あの…団長?」
「……何?」
勢いと言葉の強さで、エッセルにしゃべらせないように動いてるかのように見えるグラン。エッセルが勇気をだして放った言葉に観念したのか、笑みを浮かべた表情は買えないままに静かにエッセルの言葉を待っていた。
「……あの、どうして私クリスマス服なの…?」
「………」
そう、エッセルは今十天衆達が纏う専用の衣装ではなく……彼女が去年のクリスマスに着込んでいた衣装を着ていたのだ。しかも今はバレンタインデー、時期が約2ヶ月ほど遅れているのは誰の目から見ても明白である。
「………エッセル、君が普段着ている服がどれだけ恐ろしいか知ってる?」
「……え、あれが実は弾丸の保管の役割も果たしてる服だって知ってたの?」
「え、そうなの?」
「今考えた嘘」
「即興すぎる……いやね、普段の格好……ほんとやばいよ」
グランの言葉にエッセルは考え込む。因みに彼女はエルーン族であるために、例に漏れず背中はガッツリと空いている。その上で、彼女の服装はスリングショットというものである。
簡単に言えばケツが見えている服装である。つまり、背中とケツが見えている大胆すぎる格好なのだ。
「あれってシエテが渡したの?」
「……ううん、自分で決めた」
「……寒くない?」
「銃を2丁持つんだし……動きやすい格好の方が良くない…?」
彼女が動きやすい服装と言ったら、彼女自身的には見た目の派手さよりも機能性を重視したということなのだろう。故に、見た目がどれだけ酷くても動き安ければ問題ない……ということのようである。
「……まぁ、でも…渡されたものはあった」
「へえ…どんな服装?」
「色々あったけど…1番印象に残ったのは…袖が異様に長くて、銃をかくせて隠れなくても本体を隠しながら銃を打てるって服」
「戦法に噛み合ってないじゃん……」
銃での暗殺をメインとした服装、今のエッセルは縦横無尽に動き弾をばらまく戦い方なので……はっきり言えばあってないものである。
「……それにしても、布地の削減しすぎじゃないかな……」
「私はこの服装が気に入ってるし……それに、意外と着てみたら着心地良くて驚くと思うよ」
「ほぼほぼタイツだから着心地とかないのでは…?」
それに加えて尻も殆ど見えているので、来ていないと言われても過言では無いのだ。
「ゴホン……ひとまずこのままだと、無限にエッセルの服装の話題になってしまうから…お便りコーナー行ってみよう。
今回に関しては、一旦俺が内容を確認してから発表します」
「え、どうして?いつも取ってから読み上げてたのに…」
「そりゃあ質問項目の大半が『その服装どうなってるんですか』とかになってる可能性があるからだよ?」
今説明したとはいえ、エッセルの格好は昔のユエルの格好と大差ないレベルだったのだ。今でこそ、エッセルはクリスマス服、ユエルは舞のための衣装ということで比較的露出はましな衣装を着込んでいるが……あの格好に対する質問はおそらくかなりの確率で上がるだろう。
「そ、そうなんだ……」
「というわけで一通目『弟はカトルさんですが、2人で協力したりしますか』」
「うん、するよ…私が後ろから援護して、隙を着いてカトルが切るって戦法を良くしたりするかな」
「お、随分具体的な……戦法は勿論それだけじゃないでしょ?」
「うん、場合によっては…自分達の立ち位置をしきりに交代しながら戦ったりするよ」
「なるほどなぁ…確かに、2人の得意武器を考えるとそうなるのも分かるというか…」
エッセルは二丁拳銃、カトルは短剣の二刀流。だが、獲物の仕留められる範囲がそのまま2人の戦い方という訳では無いということである。
時にはエッセルが前に出て、カトルが後ろに一旦下がり隙を着いて再びエッセルの前に出て交代……そのような戦法を激しく切りかえていくことで相手を困惑させていく。長い間2人で過ごしてきたからこそ出来る、以心伝心の技のひとつとも言えるだろう。
「けど、グランだって…多分同じような事が出来ると思うよ」
「え、本気でそれ言ってる?やるとしたら、同じような立場って話ならビィかルリアになっちゃうんだけど…」
「……その二人とじゃなくて、団員皆とって意味」
エッセルとしては、自分がカトルと出来ているようなことをグランは団員全員とできるのではないか…という風に考えていたのだ。そのようなことを真剣に言われたグランは、一瞬だけぽかんと口を開けていたが……すぐに恥ずかしそうに目を逸らしていた。
「ま、まぁ?俺は団長ですんで?団員のみんなと力を合わせるくらい出来ないと、団長の座をカレンに渡すくらいの気持ちはありますし???」
「顔、真っ赤だよ」
「シッ!もう二通目行くよ!!『十天衆を家族に例えると、誰がどの立ち位置に来ますか』」
「家族…家族か…」
考え込むエッセル。10人ともなると、結構な大家族扱いとなってしまう。故に仲間である十天衆のことは真剣に考えているのか、ガッツリと考え込み始めていた。
「……まずシエテは、お父さん」
「いきなり父親…ということは、ソーン辺りが母親?」
「ううん、シングルファザー」
「家庭環境がいきなり不穏だな、十天衆大家族」
突然のシングルファザーになってしまったシエテ。エッセルは残りのメンバーも考えていく。
「ソーンとニオがお姉さん、サラーサとフュンフが妹」
女性陣の配分もここで決まる。年齢的にあまり年上として扱うことがないからか、ソーンは彼女の中ではせいぜい姉ポジションのようだった。
「オクトーはおじい…父方のおじいちゃんで…ウーノが母方のおじいちゃん」
サラッとシエテがオクトーの息子という扱いにされていた。グランは、そのあまりの似合わなさに少し吹き出しかけていた。
「それと、シスが弟で━━━」
一旦言葉を切るエッセル。グランが首を傾げていたが、何事も無かったかのようにそのままグランの方に向き直り、その言葉を紡いでいく。
「━━━カトルも、弟」
「……確かに、そこだけは絶対に譲れないよね」
唯一の肉親であり、同じ十天衆の仲間であるカトル。エッセルは、彼の姉でいることを…カトルが自分の弟であることを、誰にも譲らなかったのだ。
「にしても…シエテの胃が爆散しそうなくらいすごい家族が出来上がったもんだ…」
「ふふ、そうだね」
「まあ、あとで本人であるシエテお兄さんとは話に行くとして…3通目、行こっか。
『銃使いでありながら、戦い方としては真逆に近いシルヴァさんのことをどう思いますか』」
シルヴァ、俗に言うスナイパーである。隠れながら確実に相手を狙撃し、静かに勝ちを狙いに行く戦い方を主とする女性だ。そんな彼女と、戦いの中で前線で2丁の拳銃を扱うエッセル。その戦い方は正しく真逆と言っても過言ではなかった。
「……うん、かなり腕のいい狙撃手だと思う。私達も相当助けられてるし、実際ソーンと併せて2人の『目』は私達に取って生命線と言っても過言では無いかもしれない。」
「お、評価がかなり高い…」
「けど、私も負けるつもりは無い。銃を扱う十天衆に入れたんだ…勝負したら、私が勝つ」
「おっと急に不穏な空気になり始めてきたぞ?」
シルヴァの話は、おそらく十天衆のメンバーは大体聞いたことがあるだろう。弓の十天衆であるソーンは、そのシルヴァと仲がいい為に他の十天衆にもその話題をよく振っていることがある。
因みに同じような話を何回も繰り返ししている時もあるが、エッセルはその都度聞いてくれていた。
「別に、喧嘩というわけじゃない。けど銃の扱いではなるべく負けたくない」
「因みに彼女の格好についてはどう思う?」
「…?可愛い、と思うけど…あぁでも…肉弾戦するのにスカート履いたりするのはどうかと思うな…」
「自分の格好は…」
「そもそも見える見えないを考えるような服装じゃないようにしてるから……」
「確かに見える見えないの次元じゃないわ」
見られることを気にしないためには、その分ぶっ飛んでいる格好をする必要があるのだなぁとグランはしみじみ考えていた。因みにシルヴァは最近黒のズボンを履くようになって来たので、見える心配はあまりなくなってきている。
「……そういえば、気になってたんだけど」
「え、何急に」
「…私の普段の戦ってる姿見てる時…もしかして、『そういう』のを意識したりしてたの…?」
少しだけ頬を赤らめながら、エッセルはグランに尋ねる。その仕草、言葉遣い、喋ってる内容。その全てがグランの理性に完全なる破局をかける。
「そりゃ━━━」
だが、その破局は秩序の騎空団兼グランサイファー秩序維持担当リーシャという星の逆位置がドアの向こう側から殺気を飛ばしており固定ダメージが1万になっていたので、理性が死ぬことは無かった。
「━━━ひ、み、つぅぁぁぁぁぁぁ………」
選択を間違えてしまい、グランは落下してしまいました。自業自得であり自己責任でもあります、あーあ。
「あ……お、落ちちゃった…」
「いいえ、気にしなくて大丈夫ですよエッセルさん」
「り、リーシャ…?」
「彼は間違いなく生きています…そもそもそのために下に飛行できる人配置してるんですから」
「そ、そうだけど……」
突如として入ってくるリーシャ。エッセルは少し驚いたが気にする事はなく、そのまま会話を続けていた。
「さぁ、戻りましょう」
「う、うん……」
そのまま部屋を出ていくエッセルとリーシャ。床は勝手に閉じていき、既にその下を覗くことも叶わない。
「あ、あの…リーシャ…?」
「え、あ、はい…どうしました?」
「その…あんまり団長のグランをいじめちゃ…めっ、だよ…?」
「━━━」
リーシャは絶句していた。エッセルが『めっ』って言ったことと言えばそうなのだが、細かくいえばその言い方やその他諸々のおかげでギャップ萌えを感じとっていたのだ。故に、その萌えで言葉が出てこなかった。
「……お、怒ってる…?」
しかし、そのだんまりをエッセルはリーシャが怒っているものだと考えていた。その際の耳が動く様により、リーシャは更にエッセルに対して萌えを感じ取ってしまい……しばらくその空間には、2人のすれ違いすぎる対応がひたすら続いていたのであった。
クリスマスは兎も角あの格好はマジでやばいと思う