ぐらさい日記   作:長之助

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四天、その程度ですか?

「というわけで今回は十天衆が1人、カトルさんに来てもらいました」

 

「どうも、よろしくお願いします」

 

 十天衆が1人、短剣の使い手であるエルーンの少年カトル。彼は同じ十天衆の1人であるエッセルの弟である。今は丁寧な口調だが、一度振り切れると口調が荒くなってしまうという性格をしている。

 

「突然ですが今回はカトルさんにはとあるゲームをしてもらいます!!!」

 

「なんですかいきなり……」

 

 番組が始まった瞬間に叫ぶグラン。それに対し雑な反応を返すカトル。グランが奇怪な行動をするのはこの団ではいつもの事なので、もはや慣れたカトルはこれしきのことでは動じなくなっていた。

 

「それは〜ダルラララララララララララララララララララ」

 

「早くしてもらっていいですか?」

 

 ドラムロールを鳴らすかのように舌を回しながら、グランはやけに勿体ぶっていた。が、少しだけイライラし始めているカトルに催促されたので……隠していたパネルを1枚取り出す。そこには━━━

 

「『大声上げながら汚い言葉使ったら番組強制終了』です!」

 

「…………………………は? 夏の暑さで脳みそを蕩けさせるにはもう遅いですよ?」

 

「あ、そういうのを大声上げたらダメって話なんでよろしく」

 

「企画誰が考えましたこれ? 団長さんだけですかね?」

 

 いつもと変わらぬ平然とした顔で、カトルはグランの顔を見すえる。その瞳に少しだけ圧倒されつつも、グランは軽くため息をついてから真面目な顔で答え始める。

 

「そうだね……シエテもいたかな……『いやさぁ、たまにくらいこういう縛りで喋らせたら何かに役に立ったりしない?』とかなんとか」

 

「団長さんだけはともかく頭目の頭も修正しないといけないみたいですね」

 

「……偶に思うけど、なんでシエテについて行ってるの?」

 

「約束は守る人ですからね、絶対に……そういうところは信用してますよ? そういうところは」

 

「毎度不思議だなぁって思ってるよ俺……」

 

 尊敬していないのかと思えば、信用しているとの言葉。ある意味で、罵倒が許される間柄なのかもしれないと内心感じとっていた。

 

「……まぁ、いいや。十天衆達の不思議な間柄は置いておいて……お便り一通目、行ってみましょう」

 

「えぇ、どうぞ? まぁ僕はそう簡単に怒ったりしませんけど」

 

「1通目『口調なんですけど、ツバサ君達と違う点とかあるんですか』って事だけど……カトル? どしたん?」

 

 お便りの内容を聞いて表情を変えずに、黙りこくるカトル。少しだけ変な間が生まれた後に、ようやく口を開く。

 

「ツバサって……誰ですか」

 

「あぁ、ほらマナリア学園から来た金髪リーゼント出乗り物乗り回してる……」

 

「あぁ、ケッタギアの……え、どうして彼らと違う点を聞かれているのですかね」

 

 本気で疑問を感じている顔を浮かべているカトル。グランは一瞬、カトルが本気でボケているためにそう感じただけなのかと思ったがそうでは無いのだ。カトルは自分のたまに出る口の悪さがガチ不良のツバサ達と同じように見られているというのが理解出来ていないのだ。

 

「……カトル、傍から見たら君の口の悪さは彼らの言葉遣いと同じように見えるということだぞ」

 

「……えっ」

 

 本気で意外そうな顔を浮かべるカトル。不良であるが故に口が悪くなってしまっているツバサ達。生活している環境が故に口汚くなってしまわざるを得ないカトル。

 どちらも原因と理由がはっきりしているが、それを明言しない限り口が悪いという一括りにされてしまうという話なのである。

 

「まぁ別に直すって話じゃないから……」

 

「……まぁそうですね、聞かれてるのは口調の違いだけなんで……感覚的にでしか、やはり違いは分かりません。ですので、どこがどう違うかという話は少々お答えづらい内容になりますね……質問された方すいません」

 

「わぁすごい丁寧な対応」

 

「あ?」

 

 グランの煽りにも取られかねない簡素な返事、一瞬反応してしまうが取り繕うかのように軽く頭を振ってカトルは今のを無かったことにしようとしていた。

 

「今度口を滑らせたらスプラッタな光景が流れてしまいますね」

 

「それ今までの回見ても言える?」

 

「……2通目行ってください」

 

 よく良く考えれば、今までも時折スプラッタな光景が流れていたかもしれない……とカトルはすぐさま思考停止し、グランに二通目に行くように催促をし始める。

 

「ほいほいさ……2通目『同じ短剣使い、又は二刀流使いで戦ってみたい相手はいますか? また、別の誰かとよく模擬戦をしているなら教えて欲しいです』

 ガチ目のやつだ、長いし……んでどうなの? 誰かいる?」

 

「……そうですね、ユエルさんとかはたまに手合わせしますよ」

 

「エルーン繋がりだねぇ、同じ二刀使いでもあるし」

 

「えぇ、僕とは違ってあの人は舞ですからね……動きを教わったり教えたりの関係になっていると思いますよ」

 

 ユエルの戦い方は、同じ二刀流の使い手であるカトルにとっても覚えることは多いようである。十天衆とは言っても、戦い方1つ違えば学ぶことも多い……ということなのだろう。

 

「けどそもそも、カトルの戦い方だって結構トリッキーでしょ? 素早く相手の懐に近寄って、一気にズバッと行ったりするやり方じゃんか……避け主体じゃない?」

 

「まぁそうなんですけどね……ユエルさんの舞は、攻撃を受け流すという動き方ができるんですよ」

 

「例えば?」

 

「僕がいくら素早く動こうとも、相手がそれ以上に早く動く可能性だってあります……その時に強い一撃を貰ってしまえばアウトですからね……その攻撃を受け流せるような動きが出来れば、僕はもっと強くなれる」

 

「……つまり、舞に受け流せる動きがあると」

 

 短剣という武器の都合上、どうしてもリーチ自体は短くなってしまう。十天衆という強者であったとしても、相手がそれ以上に強かった場合逆にやられてしまう可能性があるのだ。

 そして、短いリーチを補うためにどうしても動きは細かく素早くなっていく必要がある。カトルの言っていることとはつまり、その細かく素早い動きをさらに洗練させるために舞の動きを真似ること。それによって、相手が強力な攻撃を放った場合でも受け流せるような動きを出来るようにしておくことである。

 

「えぇ、川の水のような……受け流すあの動きは相手の攻撃をかわして一撃を加えるのに非常に向いています」

 

「詩人みたいな例えするね」

 

「は? 誰の品性が死んでるっつった今?」

 

「そこまで言ってないよ?」

 

 段々とグランの態度に腹が立ってきているのか、口が悪くなってきているカトル。にも関わらず顔だけがいつもと変わらない表情の為に、ギャップが物凄いことになっていた。

 

「まぁいいや……とりあえず3通目行こうか……『他の武器を使ってみたいと思ったことはありますか?』」

 

「短剣以外を、ということですか……」

 

「まぁあんまり多いと分かりづらくなるから、ほかの十天衆の武器にしておこうか」

 

「ふむ……拳、と言うよりかは篭手や爪はいいと思いますね」

 

「あれ、そういう系統なんだ? まぁたしかに、シスとかの戦い方を見てるとカトルに1番近いかなぁとは思うけど」

 

 十天衆の1人シス、拳……と言うよりかは爪での戦い方を得意とする人物である。しかし他の拳を武器にするもの達と違うのは、戦闘技術と言うよりは暗殺技術に近いものがあるからだ。

 そして、カトルとの戦い方としても正面切っての戦いよりも死角をついて一撃を狙うと言いう戦法があっている事があっているのだ。

 

「それが全てですよ。望む武器も、望む戦闘方法も既に僕は自分のやり方を確立している……他の方達のは、かけ離れすぎてて僕には合いませんしね」

 

「あー……確かに、カトルがサラーサみたいに斧振り回したり……シエテみたいに剣を飛ばしたりするのはイメージつかないかも」

 

「剣を飛ばすのは十天衆だとあの人だけですが」

 

「……ん、ということはシスの戦い方とかちょっと気になってたり?」

 

 納得したようにグランは頷いていた。しかし、ふと思いつき質問をカトルへと返す。カトルはさも当然と言ったように━━━

 

「何言ってんですか? 僕が短剣以外使うわけないでしょう? 貴方みたいに浮気症じゃないんですよ」

 

「他の武器を使うことを浮気症と言われたの初めてなんだが……」

 

「武器のこと以外でも、色んな女性にセクハラしてるじゃないですか」

 

「……大丈夫、エッセルにはそんな直接的にしてないから!」

 

 そういった途端に、カトルはグランの胸元を掴む。その表情は阿修羅のごとく怒り狂っているかのように、血管が浮かんでいた。

 

「姉さんが魅力ないってのか? あぁ?」

 

「いやいや、違う違う……優しいし魅力的だと思うよ……背中ぱっくり空いてるし」

 

「姉さんを性的な目で見てんのかァ!?」

 

「━━━カトル、話を聞いて欲しい」

 

「……んだよ」

 

 何を言っても怒る状態、しかしグランは冷静沈着に……そして真剣な表情でカトルに目線を向ける。その表情と声音に少しだけ冷静になるカトル。そして、静かにしかしハッキリとグランはカトルに告げる。

 

「普段の格好で見るなは無理」

 

「………………」

 

 そして、更なる追撃により完全にカトルは完全に沈黙した。カトル自身も、十天衆としての彼女の格好には思うところがあるのだろう。ただでさえエルーンという種族は男女問わず露出が多いのにも関わらず、人数の多いグランサイファー内ですらさらに多いのだから必然である。

 

「まぁ……分からなくもないですよえぇ……ただ……それはそれとして、です」

 

「はいなんでしょう」

 

「腹立つ」

 

「ぶっ殺ポンポンマンからは逃れられないか……」

 

「あ゛? ……げふんげふん……いえ……僕はまだ理性的です、番組は切り上げておくまでは待ちましょう」

 

「……というわけで本日はここまでとなります。また次回見てくださいね、さようなら」

 

 表情だけならば完全にブチギレているカトル。そしてそのカトルに胸ぐらを掴まれながら喋っていたその言葉と共に、映像が切られる。そして、その直後にグランサイファー内にはカトルの怒号が響き渡るのであった。

 その後、包帯ぐるぐる巻になって元気に喋っているグランが確認されたのであった。




エッセル最終したよカトル君…でも君はまだ予定は無いかな…
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