「はい、では今日のゲストは……」
「やぁやぁやぁ!遠からんものは音に聞け!近くば寄って目にも見よ!
「……というわけで名乗りを全てしてくれましたマコラさんです」
仰仰しく名乗り口上をあげるマコラ。十二神将が1人であり、式神に4匹の兎を使役している女性である。種族としてはエルーンであり、大きな兎耳をもっていてほかのエルーンと比べて音を聞く能力が高い。その力を使って、よく人助けをしている気のいい人物である。
「いやぁ、呼ばれるなんて光栄だねぇ」
「まぁ乗ってもらってる十二神将の皆さん全員呼ぶつもりなので」
「はっはっはっ!!女誑しだねぇ!!アタイもその一人とはいえ、呼ばれたら来るだなんて中々の関係性だよ!」
「失礼な、純…………」
急に黙り、何か考え始めるグラン。その様子に首を傾げ、耳をピコピコと反応させているマコラ。少しの間お互いが黙る空気が続いたが…流石に放送事故なのでマコラが切り出す。
「な、なんだい急な黙りこくって」
「いや、下手なこと言うもんじゃないような気がして」
「…?よく分かんないねぇ、どういう『気がする』だいそれ」
「そうだなぁ…敢えて言うなら
「ラブ…?」
「今俺下手なこと言っちゃったな」
自身の口の軽さにツッコミを入れるグラン。しかし口に出してしまったらもうおしまい。後が怖いが、グランの自業自得である為に話を切りかえていく。
「えーっと…そういえば確か卯神宮の初代って賭け事が好きなんだっけ?」
「そうそう!それでまぁ…そうだねぇ、時間が無いからすっ飛ばすけどカジノのバニーのモデルになったって話でね!ついでに神宮本殿横には賭場を作っちまったって話さ!!」
「今を親しむ文化の1つ、その原型が祖先ってどんな気持ち?」
「うーん、尊敬はするねぇ…けど文化が独り歩きして最早独立してるようなもんだから、見守るくらいしか出来んさね。けどまぁ、誇らしいと思ってるよ。何せ賭け事って言う文化に入り込めたんだ、子孫ながら鼻が高いってもんだね」
あっけらかんと笑いながら、マコラは鼻高々としていた。初代歳神は大の賭け事好きという話があった。本殿横に賭場を作り、凄まじい強さで負け知らずだったようであり……『あの大きな兎耳が音を判別して聞き分けているに違いない』と思われた結果賭け事をしている人間から幸運の証として持て囃されるようになった。
結果として、現在兎耳を卯神宮でつけているのは『マコラのファン』か『賭け事をしている人間』の二種類となった。
「それと、さっきも言ってくれてたけど兎屋っていうのもしてるんだよね」
「そうそう!兄ィが副座長で切り盛りしてくれてんだけどね!基本的にはアタイと━━━」
その瞬間、マコラの周りに4匹の兎が現れる。白黒両方おり、それぞれ名前は一兎、二兎、三兎、四兎とかなりド直球なネーミングであった。
「この子らだね!」
「相変わらず素晴らしいもふもふ……もふもふと言えば」
「…?なんだい、そんな表情をして」
急な真剣な表情をするグラン。その視線はマコラを……細かく言えばマコラの頭部にある耳をじっと見ていた。
「耳、触っていい?」
「……触りたいのかい?」
「もふもふしたい時もあるんだ、人間には」
「流石にちょっと恥ずかしいねェ…」
頬を少し赤くさせ、目を逸らし頬を掻くマコラ。しかし、別に触られたくないという訳では無いのか満更でもない表情を浮かべていた。
「ほ、ほら!なんか読むんだろう?!何だか小っ恥ずかしくてしょうがない!!」
「ではお望み通りのお便りといきましょう……えーっと、何が出るかな何が出るかな……」
ガサガサといじりながら、適当に歌ってお便りを探していくグラン。そして取り出したるは3つのお便り。それぞれ並べて、更にそこから1枚を選択する。
「というわけで一通目はこれ。『ぴょんぴょん飛んでますが、歳神としての力ですか?』」
「違うねェ……多分」
「多分?」
「歳神のメインは式神だからねぇ、ハイラが特に顕著だが……」
ハイラ、辰神宮の歳神である。収集癖があり、お宝を宝物庫によく入れている女性で……グラン達のことを愛でるべき宝だと称して船に乗っている。問題点があるとすれば出不精であり、基本的なことは全て式神に任せているが…その式神は人型、それも数人では利かない数を使役している程の実力者である。
「ま、実は歳神としての力で身体能力向上!って言うのはあるかもねぇ…アタイからしたら常日頃からの肉体運動なもんだからよく分からんのサ」
「なるほど……」
卯神宮の話をすると出てくるのは基本的に兎屋一座か、賭け事の話である。因みに賭け事の腕前は別に歳神としての能力で高い…なんて事は無い。2代目は特に才能が無かったという話である。
「そもそも、こっちの式神も引き継いだものだかんねぇ」
「え、そうなの?式神って引き継ぎ制なの?」
「少なくともウチは」
「そうなんだ……全員…あ、いやよく考えたらドーマウスも引き継ぎみたいなもんか……状況としてはドーマウスタイプか…」
ドーマウス。ビカラの式神…のような存在である。当代であるビカラを探していたのだが、良く考えれば独立した存在である。なので、近しい存在ということを考えればドーマウスが近いと考えているのだ。
「そういうもんサ」
「なるほどねぇ……というわけで2通目『可愛いもの好きとの事ですが、最近気に入っている可愛いものは?』」
「そうだねぇ……あれだ!六竜の…」
「イーウィヤ?」
「そう!!!あのモフモフ!!素晴らしいねぇ〜!」
イーウィヤ、六竜の翠と呼ばれる存在である。六竜は名前の通り本来はドラゴンの姿を取っているが、人間に混じる為に人間の姿をしている………その中で何故かイーウィヤだけが毛並みのいい猫になっている為か、1部の愛好家達から好かれてしまっているという状況である。本人は愛されていることで満足しているが、夕飯が鶏肉を蒸したものとかになっている事にはあまり考えが及んでいない。
「あれ一応ドラゴンだけど」
「見た目は猫じゃないか!だからねぇ、可愛くてしょうがないんだ〜!」
「デレデレだなぁ……」
「だってさァ〜!」
「熱弁入りそうな雰囲気だこれ」
喋れることを加味しても…もしくは除いたとしてもイーウィヤの可愛さは変わらないという人物は騎空団にもそれなりにいる。イーウィヤ自身も、滅多に喋ることはせずにゃーにゃー鳴いてることが多いのだが……そのお陰かと言うべきかそのせいかと言うべきか、喋れることが良くも悪くもギャップになってしまうらしい。それもあってか、メロメロになってる人は多いし前まで可愛がっていた人物も対応は特に変わっていないのだ。
「まぁイーウィヤに対しての熱弁は後に回して欲しい」
「そんな〜!」
「3通目『耳はよく聞こえるみたいですが、うるさくないのですか』これはたしかにちょっと気になる」
「む…確かに周りの音が煩いって思う事は少ないねぇ」
「意識無し?祭りの現場とか、うるさそうな場所では聞こえる音シャットダウンしてるのかと思ってたけど…」
「……そうだねェ、遠くの音はよく聞こえるが…近くの音は別にやかましいって訳では無いよ」
マコラはよく遠距離からのため息などの小さな音も聞き逃さなかったりしているが、それが転じて近場の音を喧しいと思うことはあまりない。
「……あれか、音を拾いやすいだけで聞き取りやすいって訳では無いのかな?」
「だろうね、これで困ったことは無いから」
「便利な耳だなぁ」
「いやぁ、褒められるとむず痒いねぇ」
無意識で動かしているのか、耳がぴょこぴょこと動くマコラ。褒められて嬉しくなっているためにそうなっているのだろう。その様子を見たグランはじっとその動きを見つめる。
「……な、なんだい…じっと見られると…照れちまうよ…」
顔を赤くして目を逸らすマコラ。その様子を見てグランは目を瞑り何故か1度頷いた後に、再び目を見開きこう言った。
「今なら俺の部屋で耳元に囁きながら褒めまくっ」
いつぶりだろう。きちんと落とされるのは。すごく綺麗に落ちていった。その夜数に少し驚いたマコラだったが、落ちた床の穴を覗き込む。そこではアンチラに拾われているグランの様子が確認できた。
「……い、いや…アタイは別に…褒められるのが嫌な訳じゃないからサ?もっとこう、褒めてくれてもいいと言うか……」
両手の人差し指同士を合わせながら、マコラは照れている。誰が聞いた訳でもないのに、勝手に色々と喋り始めているがカメラはまだ回っている。それに気づいてマコラは慌てて場を整えていく。
「あ、え、えっと……!彼落ちちまったから!アタイが締めるよ!!兎屋一座の事もそうだが、もし何か困ったことがあったら遠慮なくアタイに言っとくれ!!じゃ!またね!」
そう言ってカメラの電源を切り、そそくさと部屋へと戻っていくマコラ。部屋に戻ったあと、顔を真っ赤にしてベッドで唸っていたのはまた別の話である。
.
「助けてマコラ!!」
「な、なんだいどうしたんだい!?」
「なんか知らない間に自由恋愛戦闘が正式採用されてた!!」
「あの時の戯言かい!?」
後日、グランはマコラの部屋に入って助けを乞うていた。驚いていたマコラだったが、グランは正確に事情を話し始める。
「えぇっと…内容なんだけど」
「この空気で話し始めるのかい……」
「……俺は抵抗してもよし、けど誰かに船の外へと連れされてしまったらその日一日その人の言うことを聞かないといかないっていう」
「人権がないねぇ」
「団長なのにね、俺」
うんうんと頷くマコラであったが、ふと思い至った。今ここでグランをそれとなく連れ出せば、一日一緒にいられるんじゃないか…とか、言っていたグランの部屋で褒め殺し祭りだとか…色々である。
「ち、因みに……誰に追いかけられてるんだい?」
「フアンとパイが風水で道案内して、ビカラが障害物を飛び越えられるようにドーマウスを片手に連れてその3人を1緒に乗っけてるシャトラ」
「……ケッタギア?」
「ケッタギア」
運転役のシャトラ、グランの居場所探しのためのフアンとパイ、そして障害物突破用のドーマウスを所持しているビカラ。十二神将3人がやる気を出している状態であった。
「……それは、純粋にまずいねぇ…アタイの部屋の扉吹き飛ばされかねないじゃん」
「さすがにそこまではしないと思うけど…けど助けて…」
「うぅ……合点承知!!アタイに着いてきな!!」
そう言って言葉巧みに連れ出されたグラン。マコラは少々胸を高鳴らせながら案内していき、グランを連れ出そうとするが…グランを巡る自由恋愛戦闘のおかげで疲弊するのは……また別の話である。
今回は主題にしてませんけど、旅の同行理由が惚れっぽい母親を連れ戻すためって普通にちょっと可哀想な気がして来ました