「今日のゲストはコク君ちゃん様さんです」
「その呼び方を止めろ!!」
「やめません」
コク…というのはある意味で偽名である。そして現在の姿も、一応建前上は偽りの姿ということになっており…その正体は死滅の獣、黒麒麟である。
「全く…コク様で良いというのに……」
「でもほら、性別が何なのか一発でわかる呼び方じゃないか。性別がどうなのか、って分かりやすくするのに必要だぞ?」
「おい、巫山戯るのも大概にしろよ。そもそもあのファスティバというドラフには大体『さん』が付けられていて君でもちゃんでも無いだろうが、知らぬとでも思ったのか」
「……ファスティバは敬愛を込めてさん付けするに決まっているじゃないか」
「貴様本当に1回ぶん殴るぞ…?」
そしてコクは話の通り『彼』でも『彼女』でもない。肉体的性別がないのだ。それはそう言う『機能』が無いというものではなく、単に見た目に反映されてないというのに近い。言うのであれば年若い美少年or美少女と言ったところか。故に『君ちゃん様』なのである。
「ちっ……わざわざこんなものに対応してやったのだ、感謝をしろ」
「口すげぇ悪い割に面倒見いいよねコク君ちゃん様さん」
「死瑞祥・獲━━━!!!」
「グラビティ」
「ぬ、ぐっ………それ止めろ!!何か疲れるのだ!!」
そう言いながらドカッと座り込むコク。グランの対応に呆れながらも、さっさとしろと言わんばかりにその手でジェスチャーする。
「ほれ、何か読むのだろう?早くしろ」
「あ、その前に1個聞きたいんだけど」
「なんだ」
「
「…いや、知らん…何それ、怖……」
「知らなかったか…」
コクの反応にどこか納得しながらも、グランはお便り箱を漁り出す。そうしてしばらく漁って取り出した3枚をコクの前へと出して、そのうち1枚をめくっていく。
「というわけでお便り一枚目。『星晶獣じゃないんですか?』」
「はっ!!この身を矮小な星晶獣と一緒にするでない!!……というのは置いておくにしても、実際我も…元の我も星晶獣という枠組みではない」
詳細は省くが、コクは星晶獣を参考に作られたまた別の物である。共通点があるとすれば、星の民が間接的には関わっているという程度である。しかし、性能に差がある…などということは決してない。
「…わかりやすい例で言うならそうだな……オムライスとオムレツに近いか」
「というと?」
「オムレツが星晶獣、オムライスが我と黄龍と思ってもらって構わん。どちらも卵を使った…つまりほぼ同じ素材で作られているが、別物…それでいてどちらかが劣化品という訳でもないのだ」
「現にコクめっちゃ好きだもんね、オムライス」
「黙れ……厳密には違ってくるだろうが、概ねこの差で構わん。現に我らの機敏や性能は星晶獣の上の上…四大の天司達と何ら変わらんだろう」
星晶獣には1部、感情という機能が存在していない個体がいる。しかし対応パターンの幅が多すぎるので、他の人間と会話する時は一切問題なく馴染むことが出来るのだ。尚、その幅の多さゆえに……後から機能を獲得した個体もいる。兵器である星晶獣の進化した個体、という事になるのだ。
それに対し、コクと黄龍であるピィジウは感情の発露ができている。そして自ら思考しその感情の置き所を探るのだ。
「まぁ確かに……」
「ま、その性能も我は失っているがな…忌々しいが……今となっては前を向くしかない」
「過去は振り返らない主義的な?」
「そういう事だ…それに、今となっては死滅は…………………次に行け、次に」
「え、なになに気になる気になる今となっては何だって?続き気になあ、ごめんごめんもう調子乗んない」
照れ隠しで殴り掛かるコク。それを華麗に受け止めたり避けたりしながらも、グランは一応謝っていた。さらに呆れながらも、再び深く腰掛けてコクは2通目の対応へと移る。
「2通目『顔に着いてる仮面って何ですか?』」
「……まぁ、教えてもいいか。これは我の感情を表す装置のようなものだ。何がどうとかは言わん。察したとて口に出すな」
「赤色は怒ってて、水色のは悲しかったり困ってる時、緑は楽しい時で、紫は笑ってる時、蒼色は驚き、黄色は結構多いけど大体美味しいもの食べてる時とか…後シュシュクとかいる時かな。なんか俺といる時も良くなってる気がする」
「バラすな!!!!」
因みに先程から大声で突っ込んだり照れ隠ししている時は、黄色となっている。本当に照れ隠しなのだ。因みに感情を出してる装置のようなもので、顔の表情にそれは反映されていないだけで感情豊かなのである。
「ところでさ」
「…………なんだ」
「元の黒麒麟の時もそうだったの?」
「え…いや……どうだったかな………この器になってた時には認識してた機能のようなものだが……」
もし元からあった場合、顔面の色が色々変わる黒麒麟が誕生していたのである。内心カメレオン麒麟だとかゲーミング麒麟だとかをグランは考えたが、彼の理性が何とか口に出さないように━━━
「ごめんやっぱ言うわ、元からあったらそれもう黒じゃなくて虹麒麟じゃない?」
「本気で怒るぞ?
そもそも我の色自体真っ黒でもないだろ」
「それはそう」
黒とは名ばかりで、紫色もチラホラ入っている。コクになった後でもそれは変わらず、ただ人の体を得たことによって肌色が増えた程度なのだ。
「でもピィジウはそんな機能ないっぽいんだよね」
「あいつはずっとへらへらしているからな。酒で頭が焼けてるんじゃないか?きっとそうに違いない!飲みすぎなんだあのクソたてぎゃうっ!!」
ハハッ、と嘲笑うかのように煽るコク。直後にタライが上から降ってきたが、グランは感知していない装置である。彼が認識してるのは自分が落ちる設備だけなのだ。
「見られてんね」
「あのクソ鬣!!!!飲みすぎなことは事実だろうが!!知っているぞこの間ラムレッダとやらと飲んでいたであろう!!!吐かせるまで飲みに付き合わせるんじゃない!!!!」
途中から見ていたのか、突然のことを暴露するコク。しかし彼彼女は知らないのだ……単に飲みすぎたのはラムレッダの自業自得であり、ピィジウは止めてた方なのだと。
「あとこの間カシウスとやらと一緒に飲み屋に行ったらしいな!!!!あの細身イケメンがまた丸くなって奴の仲間が嘆いておったぞ!!!」
これもカシウスが食べすぎただけである。油が欲しいと覚悟した彼が、常連となった飲み屋で以下略バハムート盛りラーメンを3杯食べたとかいう凄まじいことをしていたのだ。
「その2人はいつもの事だよ」
「……………何?」
「カシウスは気がついたら痩せてるし、ラムレッダに関しては介抱して俺の部屋で寝かせてるのなんてよくあるから」
「未成年の部屋に泊まるんじゃない!!」
その後数分間コクは思いつく限りの悪口や、よく聞けば性根が優しいことを叫び……そしてようやく止まったのであった。その間ずっとグランは思っていた。『2人が馴染めてよかった』と。
「で、3通目『結局どっちなんですか?』」
「何がだ」
「性別でしょ」
「…………知らん。
「…知らないってことはないでしょ……俺知ってるんだよ?」
「…何がだ」
「ピィジウに対抗してるの、だよ。同じのは嫌だ、って思ってるなら…その肉体…『女性型』でしょ」
「………」
グランの言葉に黙り込むコク。あくまでもこれはグランの推測であり、確証は無い。そもそも男女ともに確認しようとするのならば…悲惨な事になるのは間違いがないのだ。
単に認めてしまうか、本当に分からないということを熱弁すればいいだけなのだが…グランの態度が若干気に食わないコクは、少し考える。
「……確かに対抗心はある…が、それが肉体に反映されるとでも?そも、男か女かなど気にしたところでしょうがないだろう。例の六竜達も、厳密にはないのだろう?それっぽいと言うだけで、何も無いだろうし確認してうおおおおああああ!!!?」
突如として後ろから肩ポンされるコク。犯人はリーシャであった。会話が怪しい方向に行きかけていたので、止めに入ったようである。止まったのを確認してから、無言で出ていったのを確認して…改めて冷静になったコクが話し始める。
「……まぁ、あれだ。
「……まぁ、確かにね」
六竜はそれぞれ各種族の男女をモチーフにしているが、1部ズレたところも出てきている。例えばフェディエルは女性ドラフモチーフだが身長は高く、ガレヲンは全部盛り…と言ったように。
「…こんな所でいいか?」
「まぁそろそろいい時間だからね」
「全く…感謝しろ、このような場に出てきてやったことを」
「にしてもあれだよね」
「なんだ」
「コクって結構博識だよね」
「馬鹿にしているのか……?」
「いや、星晶獣の事とか結構詳しかったし…」
「……?我は黒麒麟ぞ?生まれて数十年という訳でもあるまいし、その分の知識の蓄積は当たり前だろう…この姿になってからは、
『何言ってんだお前』と言わんばかりの雰囲気でコクはグランに返していた……そう、コクは真面目なのだ。初めて出会った時は、色々あり少しやさぐれていたが…根は優しく真面目な存在なのである。
「…そうかもね…まぁとりあえず………本日はここまでです、ご視聴ありがとうございました。また次回お会いしましょう、さようなら」
「我の部屋にちょっかいをかけに来たら怒るからな」
,
「ところで実際どうなの?性別」
「いや…確認する訳にもいかんだろ……少し前ならばともかく、今世で他人の体を見るのは不躾なのだろう?我の肉体的性別を確認する為だけに、他に不快を与える必要も無いだろう」
「あ、はい…まじでそうっすね……」
何故かどころか、明確に負けているような気がしたグランなのであった。
ほっそ…ちっさ……ってなりますなってる