「今日のゲストはン我が主君……ことパーシヴァルさんです」
「よろしく頼む……ところで、何だ今のは」
「今のって?」
「主君の言い方だ」
「いや何となく……なんか、こういう言い方をした方がいいのかと思ってさ」
「長い付き合いだと思っているが、未だにお前の知らないところを俺は発見しているような気がする」
「人って言うのは、案外長い付き合いでも知らないことが多かったりするもんだよ」
「そういうものか……」
そう言って考え込むパーシヴァル。たまに適当な事を言っても、こうやって考え込むくせがパーシヴァルにはあるが、それは単にパーシヴァルが思慮深い王と言うだけの話である。
「さて、前回はジークフリートと話をしていたな」
「パーシヴァルはどんな話したい?」
「俺は特にないな……可能ならば、王とは何たるかという話をしたいところだが…」
「そういう話し合いじゃないからねぇ」
「俺とて、時と場所は考えるさ……とは言うものの、案外思いつかないものだな…」
「うーん……なら、最近パーシヴァルが気になっていることの話でもしてみる?」
「気になっていること、か……そうだな…お前と、マギサについてだ」
「ありゃ?なんか意外なところから聞くもんだね」
パーシヴァルからマギサの単語が出てくるとは、グランは夢にも思っていなかったのだ。因みにマギサとは、ヒューマンであり使い魔にモラクスを使役している女性である。特徴としては、魔女のような格好と帽子と胸囲が著しく大きいことである。
「あの女、やけにお前にくっついているようだが……交際しているのか?」
「あぁいや、そうじゃないよ。付き合ってるわけじゃないけど、ちょっとプライベートな問題かな」
「ふむ、そうか……ならば聞く訳にもいかないな…それと、もう1ついいか?」
「はい?」
「お前は妙に鈍感になる時があるが、わざとか?」
「…え、待って何の話?」
パーシヴァルが言ったことの意味がわからずに、聞き返すグラン。しかし、今のグランの言葉だけで納得したのかそれ以降何も聞くことは無かった。
「……と、とりあえずお便りいってみよう…『兄弟仲良くしていますか?』ティナだね」
「あのゴブリン狩りの男の妹だったな……仲良く、か…出来ているはずだが……いや、傍から見てどう思われているかはわからないな」
「何か、変な仲の良さはあると思う。何というか、王族特有の高貴な仲の良さというか……」
「……そうか?俺と兄上は仲がいいか?」
「仲良いと思うけど……」
「……そうか」
簡素な返事だが、少しだけ声音が優しくなっているのをグランは見逃さなかった。だが、その事を口に出すほど彼も無粋ではない。
「では2通目『パーさん、イチゴ使ったスイーツで一番好きなのあります?』意外なところからだね、ローアインだこれ」
「あぁ、あのよくわからない言葉を使う3人組か……料理の腕がとてもいいと評判だったのでな、試しに食べてみたが……」
「気に入った?」
「……かなり」
ローアインの料理は地位の差を感じさせないものだったらしい、流石である。本人達は、リュミエールメンバーの料理には負けると言っているが、あれは料理とはまた別次元の存在だろう。
「…イチゴのスイーツだったな。基本、好き嫌いはないように育てられている……だが、敢えて言うならばショートケーキやタルトが食べたいな」
「あぁ、美味しそうだね……特にショートケーキ」
「そうだろう……団長はチョコ派だったな?」
「そうだね。まぁビィと二人でザンクティンゼルに住んでたから、デザートも料理も卒無くこなせるくらいだけど」
「得意なデザートはなんだ?」
「チョコプリンwith低カロリー」
「……今度作ってみてくれないか?イチゴと一緒に、大きいのを」
「それ最早パフェだけど別にいいよ、ローアイン達と一緒に作ってみる」
こう言いながら、グランは何故かまたルナールが暴走している気がしていた。ルナールの耽美絵……無論全年齢のだけだが、そういうのを読みすぎたせいだろうか。
団長という立場上、どうにも閲覧しなければいけないらしい……というのがリーシャの見解である。
「あぁ、楽しみに待っている」
「……というわけで、3つ目言ってもいい?」
「構わん、俺も存外楽しんでいるしな」
そう言いながら微笑むパーシヴァル。ルナールの様な女性が増えるのは、あながちこういう事をするイケメンがいるからではないだろうか、とさえ思えてくるグランであった。
「さて、3つ目は……『この団にいる各国の王や軍の隊長を見て、印象に残ったことはありますか』これは匿名希望だね」
「印象か……」
「ある?」
「あるにはある、が……フェードラッヘの白竜騎士団は除外させてもらう。よく知っている国ということもあるしな」
「あぁうん、多分基準がそれかパーシヴァルの実家だもんね」
「あぁ」
そして、パーシヴァルは少し考える。グランサイファーには、あまりにも王様やそれに属する身分のものが多く、そしてランスロットやヴェインの様な軍の隊長なども乗船している。
よく考えて見なくても、色々な意味で恐ろしい団である。
「……そうだな、アイルストは個人的にも勉強になったな」
「昔は王政の国だったけど、今は国民が議会を作って動かしている国だもんね」
「あぁ、王という国の1番頭を立てずに国民同士で話し合いを進めていきながら、今後の国の指標を決める……国としては、良い国だと俺は思っている。無論、王政が悪いとも思わんが」
「どっちにも利点欠点はあるからね。一概にどっちがいいとかって言うのは、国で違ってくるだろうし」
「そうだな」
パーシヴァルは嬉しそうに語る。諸国を旅して、王とは何たるかということを考えて行く……自国の民のためにそこまでするパーシヴァルは、やはり王たる器を持っているのだろう。
「それに、一概に王政と言ってもまた色々違ってくるよね」
「その通りだ。王自体が戦闘能力を持つ場合と、持たぬ場合がある」
「ジュリエットとか……そうだね」
「彼女は持つ部類の方だな……しかし、それだけで過信せずに国のために出来ることをしてくれる、彼女もまたいい王だろう」
グランは、ジュリエットの後にロミオ……神王モンタギューの名を上げかけていた。しかし、これを今口から発することは許されない。というか、ロミオが乗っている事は内密にせねばならない。ロミオからのお達しである。
「さて、読み上げてたところで……」
「ん?」
「また一つ、質問をいいかな?」
「構わん」
「この団で国を作るとしたら、パーシヴァルならどんな配置にする?あ、名前を知っている人だけでいいよ」
「この団で、か……ふむ……」
そう言って考え込むパーシヴァル。なんの意味もない、興味だけの質問だが、パーシヴァルは『適切な人員を配置するために必要なこと』といった風に考えていそうだとグランは少しだけ面白がっていた。
「……王なのは、まず騎空団団長であるお前だろう。」
「嬉しい評価だよ」
「そして、その王に必要な副官……所謂秘書には、カレンを置くべきだな」
「カレンって……オイゲンの姪っ子の?」
「そのカレンだ……王に成り変わろうとする野心を持ち合わせているやつほど、王の仕事を請け負った時のために王のスケジュールを綿密に組んでくれるだろう。それに、彼女は性格がいい……そのスケジュールを悪用することもないと考えて、その人選だ」
「なるほど……」
人を見ているパーシヴァル。グランでさえもついつい頷いて感心してしまうほどだった。
「次に、街の工業に関してだが……これはガラドアが良いだろう。金属の扱いに関しては、この団の中でもトップクラスだ」
ドラフの男ガラドア、鉄を愛し鉄に愛された男。彼の金属推しは確かに団の中でもトップクラスである。
「商業に関してはカルテイラ、軍部の扱いに関してはイルザと俺は思っている」
「その理由は?」
「この団ではシェロカルテに並ぶほどの商業が出来るのは、カルテイラだけだと考えた為だ。
軍部の方に関しては……まぁ、彼女の部下のしごきをみていれば、ちゃんとしている軍だろう」
「確かにね」
カルテイラは、エルーンの少女である。シェロカルテの同期であり、その商売の腕はシェロカルテにも負けてはいない。
イルザは、星晶獣を1人で倒すことの出来る武器、封印武器を持ち合わせている『組織』のメンバーであり、ゼタやベアトリクスなどもしごきあげた腕利きである。しかし、offの時は1人の恋に恋する乙女といった女性でもある。
「あと他に国に必要な部署って合ったっけ?」
「料理関係だな」
「料理関係……」
料理と言われてまず出てくるのは、リュミエール聖騎士団に所属しているセワスチアンである。リュミエールグルメを作ることが出来る彼は、この団に置いては破格の料理スキルを持っているが……
「リュミエール聖騎士団ってありの方向なの?」
「この団に所属しているのは間違いないとはいえ、彼らはあくまでもリュミエール聖騎士団だ。と考えるならば……抜いた方がいいだろう。あくまでも、どこの組織にも所属していないかつこの団にいる者が好ましい」
「となると……」
残っているので目立っているのは、ファラとローアインである。カタリナ思いの2人だが、ファラは帝国を抜けている為に今は無所属の扱いとなっている。
「代表としては、ローアインになるのかな?」
「そうだろうな、一般人とはいえあの料理の腕は評価しておきたい」
「……こんな所かな?」
「まだまだ決めたい部署があるが……時間が無いようだな」
「というわけで匿名希望の人!答えは出たので参考にするなりなんなりするように!!」
グランはカメラに向かって、そう告げる。パーシヴァルもそれで終わることを確認したのか、すっと立ち上がる。
「というわけで今回の団長相談室はここでおしまいとなります、次のゲストを待っててくださいね〜」
カメラの電源を切り、グランもまた部屋を出るために扉のドアノブに手をかけながら、パーシヴァルと話をする。
「そう言えばさ、その鎧カッコイイけどどうやって脱ぐの?」
「気になるか?」
「というか、鎧来てる面々がどうやって脱いでるか気になる」
「手入れの問題もある、俺の部屋で見せてやる」
といった雑談をしながら、部屋を出て廊下を歩く二人。しかし、その平凡な時は一瞬にして崩れさる。
「━━━ァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
「うおおお!?」
「何だ今の大声は……」
突如2人の歩いている廊下の部屋の一室から、大声が出される。流石に只事ではないと感じた2人は、その部屋に急行する。そして、その部屋の住人が誰かの確認を取らないままに、その部屋の扉を開ける。
そこに居たのは━━━━
「はぁ、はぁ……しゅ、しゅごい、ネタが……」
━━━鼻血を吹いて倒れているルナールの姿だった。グランはまたお前かとか思っていた。しかし流石にハーヴィンの体から出る鼻血の量にしては異常なものを感じているので、とりあえずソフィア辺りに持っていこうとルナールに手をかけた瞬間。
「だ、団長さん……」
「……何?」
「ど、どっちが……攻め、なの………」
そして、そのままルナールは尊死した。彼女の妄想力は、一体どこまで進んでいきどこまで飛んでいくのか。それは誰にもわからないが、今この場にいるグランとパーシヴァルの2人にだけ、わかる事がある。
それは、今のルナールの顔がただただ安らかで穏やかな顔だったという事である。
「……今日は、書かなかっただけ褒めてあげるから…とりあえず医務室行こう、な?」
「ひゃい……ありがとう…」
「血の処理は俺がしておいてやる……通りがかった船だしな」
「すいません……」
こうして、ルナールはグランサイファー医務室に運ばれていった。医務室はソフィアとファスティバの管轄なので、ルナールは流石に落ち着けるだろう。
団長は落ちルナール、オチにルナール。
ルナールオチ2回目でした。
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ