ぐらさい日記   作:長之助

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俊英の双剣士、白竜の刃と散れるか?

「今日は白竜騎士団団長ランスロットさんにお越しいただけました」

 

「よろしく頼む」

 

「まぁまぁ、そんなに固くならないで。簡単に喋ってもらうだけだから」

 

「そ、そうか?」

 

 少し緊張気味のランスロット。ジークフリートやパーシヴァルは、綺麗に座れていたが、どうにもその2人と比べて堅苦しいような印象が漂っていた。

 

「さて……色々あるけど、実はランスロットに1つ謝りたいことがあるんだ」

 

「謝りたいこと?この場でか?」

 

「いや、別にこの場じゃなくてもいいんだけど……謝りたい、って言うか相談?」

 

「ん……?」

 

「10月31日、12月24日もしくは25日、1月1日……そんで俺の誕生日…その日の夜、決まって俺は夢を見るんだ」

 

 深刻そうな顔をして、グランは語り始める。今挙げた日は、いずれも何かしらの行事が存在する日である。そしてそれはランスロットも気づいており、その夢に自分が関係しているのだと思っていた。

 

「夢…?」

 

「10月31日、去年のハロウィンで見た夢は……ランスロットが牢獄で閉じこめられすぎて未来予知を覚えた夢だった」

 

「……え、えっと…」

 

「いやごめん……ほんと自分でも何言ってんのかわからないんだけど…」

 

 申し訳なさそうに、しかしこれは事実なのだとグランはランスロットに言い聞かせていた。見てしまっているのだから仕方ないとまでは言わないが、グランはどうしてもランスロットに言いたかったのだ。

 

「じゃ、じゃあ……12月24日1、12月25日…クリスマスだと?」

 

「……去年のは、グランサイファーの甲板に出たら幽体離脱したランスロットの夢を見たんだ」

 

「……何故、幽体離脱だと?」

 

「あの時の、夢の中のランスロットが言ったんだ……『体は牢獄にあるけど』って……」

 

「そうか……」

 

 最早グランも、何を言っているのか全く理解出来ていなかった。そもそも、何故こんな夢を見ているのかすらよく分かっていないのに、説明し始めるとより一層意味がわからなくなってくるのだ。

 

「1月1日……元旦では?」

 

「体があるのか、それとも幽体離脱したままなのかは分からないけど……民衆に崇められている存在になっていた」

 

「済まない、だいぶ過程が省かれたように感じるのだが」

 

「ごめん、でもこれ割とそのまま語ってるんだ……」

 

「そう、か……団長の誕生日では、夢の中の俺は何を渡したんだ?」

 

「……本?」

 

「い、いきなり無難になったな……いや待て、本?牢獄の中でか?」

 

 ランスロットはふと怪訝に思ってグランに問いただす。グランも語りづらそうな表情をして、唇を噛み締めてしまっていた。

 

「……牢獄内での、自筆の……」

 

「いやもう、済まない夢の話はやめよう……頭がおかしくなりそうだ」

 

「……そうだね、もうやめにしよう」

 

 少し気分が落ちていたので、グランは静かにお便りダンボール箱を取り出してシャカシャカと振り始める。無作為化のための必要な過程なのだとかなんとか。

 

「さて、気分転換にお便りいってみよう……因みに、ランスロットは自分にどんな質問来るかとか考えてたりする?」

 

「そうだな……案外、騎士団のこととか聞かれそうだな」

 

 グランは心の中でそのセリフの後に『主にルナールが』という単語をつけ加えていた。というか、既に2度やらかしているのでそろそろ心臓に負担をかけるのは止めて欲しいとグランは切に願っていた。

 

「さて、1つ目は……『フェードラッヘでの知り合いの中で1番一緒に戦いやすい相手は誰ですか?』」

 

「ヴェインだな」

 

「わかっていたけど即答だね」

 

「昔からの付き合いで、癖も知り尽くしているからな」

 

 どこからか、何かが破裂したような音が聞こえたが恐らく気にするほどのことでもないだろう。大方、どこかのハーヴィンが鼻血を吹き出した音に違いない。

 

「ヴェイン戦斧、ランスロットは二刀流だったよね……癖を知り尽くしているとはいえ、相性っていいもんなんだね」

 

「あぁ、そもそも俺が二刀流による手数での攻撃、ヴェインが強力な一撃を叩き込むというのが主流だからな。主に俺が敵の目を引き付けてから、ヴェインがトドメを刺すというやり方が多い」

 

「確かにそう考えると凄く相性がいいんだ……」

 

「団長はそういう相手いないのか?」

 

「うーん……正直に言うと、グランサイファーの全員と相性がいいみたいな所あるかも」

 

 事実、グランは団長という立場のせいもあるかもしれないが、団員の殆どと連携が取れるのだ。ある程度の個人練習を行っているが、それでも異常な程に全員と連携を結ぶことが出来る。

 

「改めて考えると素晴らしい才能だな……」

 

「そうかな?」

 

「そうに決まっているだろう?誰とでもコンビを組めるのは、立派な才能だと思う」

 

「そう褒められると悪い気はしないな……というわけで2つ目……っと、さっきもこれも匿名希望だけど…同じ人かな?『フェードラッヘ組以外でコンビを組める人はいますか?』」

 

 質問は真逆だが、しかしほぼ真逆の質問が行われるという辺り同じ人物のを引いてしまった可能性も否めない。とは言っても、1人1通とは決めていなかったのでグランは気にしていなかったのだが。

 

「ヴェイン以外でか……」

 

「誰かいる?」

 

「……シルヴァ、さんかな」

 

「あー、狙い撃ってくれるから?」

 

「あぁ、敵に囲まれた時とかはかなり助かってるよ……しかし、少しだけ言うことがあるとすれば……」

 

「ん?」

 

 珍しくランスロットが、女性に対して悩んでいるところを見たような気がするので、グランは少し気になって前のめりになっていた。ランスロットはその勢いに少し押されたが、ボソッと一言だけ言い放った。

 

「あのスカートは……その、色々と危ない……」

 

「……あー」

 

 シルヴァは狙撃手である。しかし、インファイトも一般人以上にはできるので、偶に魔物を蹴り飛ばしたりすることがあるのだ。しかし、格好としては彼女はいわゆるスカート……それもミニスカの類である。当然、蹴ればその中身が現れるということもある。

 

「……まぁ、最近はスカートじゃなくなってきているから助かっているが」

 

「あ、そっか。最近ズボン履くようになってきているもんね」

 

 最近シルヴァ……もとい、シルヴァ、ククル、クムユの銃工房三姉妹関連で少々問題が起きていたのだ。その問題を解決すべく、色々と奔走していく内に彼女にも心の整理が着いたのか、最近ようやく今までと趣向が違う服を着るようになったのだ。

 ただし、以前の青が目立つ格好と現在の黒が目立つ格好では、へそや胸が目立つということはあまり違いが出ていないのだが。

 

「まぁ本人言われるまで意識してなかったみたいだから」

 

「そうだったのか」

 

「というわけで3つ目『この団に入って新鮮だったことはありますか?』今回全員匿名希望だったよ」

 

「色々とあるが……そうだな、一つ上げるとすれば、団員が皆同じ立場で親しくしようとしてきているところかな」

 

「え……白竜騎士団って実はギスギスしてるの…?」

 

 ランスロットの言葉を聞いて意外そうな顔をするグラン。しかし、直ぐにランスロットが謝りながら訂正を加える。

 

「そうじゃない、済まない言葉が悪かったな。騎士団ではヴェイン以外は皆敬語で接してくれるからな。

 この団でも、敬意を込めて敬語で接することはあるが、それでも俺と皆同じ立場にいてくれる……それが新鮮だったんだ」

 

「なるほど、そういうこと……確かに、騎士団所属とかは敬語同士で話し合ってるところよく見るよ」

 

 シャルロッテやバウタオーダなどを見ていて、グランはうんうんと頷いていた。そもそもバウタオーダは根っからの真面目なので、誰に対しても敬語なのがデフォルトなのだが。

 

「色々面白いでしょ?この団」

 

「あぁ、騎士団は皆同じようにしているが……この団は秩序がきちんと整っているのに、皆自由にやれている……素晴らしい団だと思う」

 

「まぁ、ある程度無法だと思うところもあるかもしれないけど……そこはちゃんとウチにもいるMs.秩序がいるからさ」

 

 遠回しにリーシャのことを言っているのだが、伝わっているつたわっていないはどうでもいいのだ。ただ、言っておかねばならないと思っていただけである。

 

「なるほど、秩序の騎空団団員がいるなら安心だ」

 

「あ、そう言えばさ」

 

「なんだ?」

 

「ジークフリートを除いたフェードラッヘ3人組って誰がいちばん強いの?」

 

「……そういえば、考えたこと無かったな」

 

「まぁ単純な俺の疑問だってだけだからさ……」

 

「これからのコンビーネーションの為にも、1度手合わせしておくべきか……」

 

 実力は、いつまでも伸び続けるものである。適度な手合わせをすることで、どんな時にどんな動きを行えばいいかがよく分かるのだ。

 

「……っと、そろそろ時間のようだな」

 

「じゃあ、今回の団長相談室はここまでにしておこう。皆さん、ご視聴ありがとうございました〜」

 

 促されるままに電源を落とし、番組を終わらせるグラン。そして、そのまま部屋から出ていく。

 

「ところで、最初の夢の話は本当なのか?」

 

「嘘語ったところでしょうがないじゃん……ん?」

 

 ふと、グランの目の前をルナールが横切った。平然としており、前回前々回のような失態は、まるで犯していないように思える。

 しかし、だ。それが逆にグランの疑問を煽っていた。今回の放送で、何事もなく平然とルナールが出てくるわけがないのだ。

 

「ルナール…?」

 

「あ、団長さん。番組面白かったわよ」

 

 ニコッと、微笑み返すルナール。耐性がついて鼻血を出さなくなったと考えればある意味喜ばしいといえば喜ばしいのだが、その清々しい顔はあまりにも違和感があった。

 いつものイケメンを見た時の反応や、耽美絵の妄想をしている時のような顔や雰囲気は一切見られなかった。そして、その清々しい顔はグランはどこかで見たことがあるような気がしていた。

 

「あ、あぁ」

 

「それじゃあ私はこれからご飯食べに行くから……ランスロットさんもどうですか?」

 

「そうか?なら、一緒に行こうか」

 

 そして、まさかのランスロットをご飯を誘うというやり方までしてきたのだ。これはもう謎が謎を呼ぶ急展開でしかなかった。グランは2人を見送ることしか出来なかったが、ふとここでソフィアのいる救護室が近いことを思い出したので、グランはそこに向かっていった。

 

「あ、ルナールさんですか?」

 

「なんかした?」

 

「あぁ……先程、団長さんの番組が始まる前にこの部屋に来たんですよ」

 

「ほう……まぁここにも映像映し出す奴は置いてあるから…見れないことも無いか」

 

「そしたら途中で鼻血がとんでもない量出てきて……」

 

「出てたのか……」

 

「メタノイアさせました」

 

「あの清々しい顔をどこかで見たような気がしていたが……そうか、ソフィアのメタノイアの効果か……」

 

 つまり、こういう事である。

 ルナールは前回前々回の反省から、救護室でソフィアの回復を即座に受ける事によって、自分たちに迷惑がかからないようにとソフィアに説明したのだ。

 ソフィアはOKを出して、ルナールは番組を閲覧……案の定鼻血を大量に出したのでソフィアが蘇生。

 そして、蘇生されたかつ妄想も極限を迎えた状態だったので、その時点で既にネタ帳に書き込んでいく。

 そして、その後でここを後にしてグラン達と鉢合わせた……という事なのである。

 

「……必死だな、あいつ」

 

 しかし、耽美絵師であるルナールは悪くないのだ。悪いのは、それっぽい言葉をついつい吐いてしまう自分とフェードラッヘ組なのだから…




SRランスロットはネタが多いですね。
ルナール先生今回で何回尊死したのか自分でも数えてません

偶には長編とか書いて欲しい

  • はい(ギャグノリ)
  • はい(シリアス)
  • いいえ

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