「今回のゲストはヴェインさんです」
「ランちゃーん、見てるー?」
カメラに向かって手を振るヴェイン、実に楽しそうはしゃぐその姿はまるで子供のようにも見える。
「今までこうやって見てきたけど、案外この部屋って広いのな」
「え、うんそうだけど……何、狭いと思ってた?」
「皆の鎧がごっついからなー」
「あー、ジークフリートとか凄いもんね。よく考えたら映像越しだと分からないこともあるか……」
ランスロットやヴェインはともかく、パーシヴァルやジークフリートは鎧がかなり装飾過多だったり分厚いものだったりと如何せん面積を取っている。そこを考えれば、カメラ越しだと狭く感じるというものだろう。
「というか、何でフェードラッヘ組は鎧着てんの?脱いできてもよかったのに」
「まぁー、そこは気を引き締めるため?ってな!!」
「へー……そう言えばヴェインは、あの中で料理が1番できるよね」
「そうだなぁ、ランちゃんが料理できないからさ。ジークフリートさんやパーさんは料理できる方だし」
「俺パーシヴァル料理できないと思ってたよ……」
「誤解されがちだけど、パーさんは学ぼうと思ったものはきっちり勉強していくタイプだからなぁ……料理も多分実家の侍女さんにでも習ったんじゃないか?」
パーシヴァルが料理しているところを思い出して、グランはウンウンと頷いていた。この団にも料理好きはいるので、勉強していくのだろう。
「そうそう、料理といえばさぁ」
「ん?足りない食材でもあった?」
「いやいや、俺ずっと思ってたんだけど……リュミエール聖騎士団のバウタオーダさんいるじゃん?」
「あぁうん……彼がどうかしたの?」
「歌いながら料理しててさ、あの低い声で歌うもんだからすごくフライパンとかに振動が行くんだよ」
「う、うん」
「だからなのかさ、同じ調理の仕方同じ具材を使っても全く味が変わるんだよなぁ」
「……そうだったの?確かに作ってもらったことある炒飯はすごくパラパラしてたけど……」
意外な事実をヴェインから告げられて、驚くグラン。あの低音で歌うことに、まさか調理そのものに影響を与えるとは思っていなかったのだ。今度から、頑張って低音で歌ってみようと思うグランであった。
「でもなぁ、多分俺らには難しいと思うんだよその調理方法」
「え、なんで?」
「ドラフの男性ってさ、殆ど声が低いんだよ……しかもよく響くっていう共通点もある」
「………まさか、ドラフ男性の新しい特徴を見つけちゃった?俺達…」
「そうかもしんない……これランちゃんに言っても、何かよく分からないみたいな顔されたけど」
「いや普通そんな反応になるわ……いやでも、そうかぁ……種族の差で料理に区別がつくのかぁ……今度団内で、各種族別の料理自慢大会でもやって見る?同じ具材同じ調理方法で同じ料理を作ってもらう感じで」
「お!?それ楽しそうだなぁ!やろうやろう!」
グランの提案に楽しそうに乗るヴェイン。にっしっしと笑うその姿は、グランから見ても白竜騎士団の隊長副隊長が人気の理由がわかるものであった。
「だからモテるんだなぁ」
「ん?持てるって何が?」
「ん?いや、ランスロットもヴェインも女性からモテるからさ……そういう所が人気の秘訣なのかなぁって」
「俺もランちゃんも、女の人に持たれるほど軽くないって!むしろ逆で俺達の方が持っちゃうかもな!あ、何なら俺ランちゃんまで担ぎあげちゃうかも」
「……ん?」
「ん?」
何故か微妙に会話が成立していないような気がしたグラン。しかし、あまり気にしていると頭が痛くなりそうだったので、ここらで序盤の雑談は切上げて置こうと思うのであった。
「さて……そろそろお便り行ってみよう」
「待ってました!!」
「さてさて……『団内で料理を作れるメンバーの中で、教えてもらったり逆に教えたりすることはありますか』匿名希望」
「うーん、全員!!」
「え、それってどっちの意味で?」
「どっちの意味もだなぁ……って言うのもさ、俺達が作る料理って微妙に違うものなんだよね、同じもの作るにしても」
「ん?例えば?」
「そうだなぁ……ローアイン達と俺の料理だと、レストランとかの売店で売る料理の作り方、俺は騎士団に振舞ったりする料理の作り方……って感じかな?」
「何となくわかるようなわからないような……」
要するに、何もかもが同じでもどういった料理を作るか…料理を作る癖が無意識に染み込まされているということなのだろう。
「だから、全員で教えあってるって状態なんだ」
「へぇ……」
素直に感心するグラン。同じ料理でも、そこまで違いが出るのなら自分も教えて貰いたいものだ、と考えるのであった。
「とりあえず、2つ目行こうぜー」
「よし来た……2つ目は…『自分の武器以外の武器を使ってみたいと思ったことはありますか?』」
「うーん……」
「ないならないでいいと思うよ?」
「いや、むしろ多すぎるんだよなぁ」
「え、そんなにあるの?」
「剣も槍も弓矢も銃も何もかもを1度は使ってみたいと思ってる、騎士団のみんなとかランちゃんの為になることなら、なんだってしたくなるしさ」
根底にあるのは、白竜騎士団に対する気持ち。それがあるからこそ、ヴェインは色々は武器を使ってみたいと思うのだろう。無論、自分自身に対する興味もない訳では無いのだろう。
「でもヴェインは、何となくだけど重たそうな武器を使ってるイメージがあるかも」
「え、なんで」
「……いつものイメージ?」
「あっちゃあ……そうかイメージかぁ…一応、俺だってククルちゃんの使ってる武器とかは使ってみたいとか思ったことあるぜ?」
「あれは特注だからねぇ……まぁでも、使ってみたいと思わなくもない」
「団長ならきっと使えるって」
謎の励ましだが、グランは褒められて悪い気はしていなかった。しかし、あれはククル専用の武器なので、自分が使うには自分専用のを作ってもらう必要があるだろう。
「そうだといいけど……と、とりあえず三通目行ってみようか」
「よーし、ラストだな!」
「『よく子供たちと一緒に居ますが、子供が好きなんですか?』」
「子供かぁ……大好きだぞ?」
「よく遊んでくれてるしね……俺が構ってやれない分、団の大人達が子供たちをちゃんとお世話してくれてるから俺達もちゃんと動くことが出来ます」
この団には、子供だけが乗船しているというパターンがある。ヤイアや、アレクなどがいい例である。
「おかげでいい子に育ってきてます…!」
「おいおい、随分と子沢山の父親だなぁ」
グランのことを父親と言いながら、楽しそうに笑うヴェイン。それほどまでにグランの顔が父親のように見えたのだろう。
未だ少年の身で団長になっているような人物なのだ、いくらか早熟であってもおかしくはないだろう。
「あぁそう言えば、偶に白竜騎士団のみんなに頼んで、子供たちの親とかの様子を見に行ってもらってる時があるんだよ」
「あ、ヤイアのお父さんとか?」
「そうそう、子供の心配とかしてる人もいるし……逆に、今ご両親がどんな状態なのかを報告しに行ってる」
「助かるよ」
「いいよいいよ、それにこれ白竜騎士団だけがやってる訳じゃないんだよな」
「え、そうなの?」
「リュミエールも、他の騎士団だってみんなこの団の役に立とうとしてる。この団に救われたと思っている人も多いってことさ」
「……人徳ってやつ?」
「人徳ってやつ」
ヴェインのその言葉に破顔する程に笑みを浮かべるグラン。自分が褒められるということが、彼にとってはかなり嬉しいことなのである。とはいっても、毎日褒め倒されているような気がしなくもないヴェインなのであった。
「さて、お便り全部読み終わったわけだけど……実際、この番組どう思う?」
「楽しいと思うぞ!俺もずっとこの団にいるけど、まだまだちゃんと知らない人とかいたりするしな。ちゃんと知り合えてこそみんなで食べる飯がさらに美味くなるってもんさ!」
「そうそう、元々知らない人同士が知り合える機会を作るのがこの番組の目的なんだから」
「の割には、女性団員にセクハラ働いてないか?団長」
「それは言わないで欲しいかなぁ」
苦笑いをしながら、グランはあさっての方向に視線を向ける。男の欲望に忠実すぎるのも、如何なものかという話だが……グランはどうにも辞められないようだ。
「ま、本人達が本気で嫌がるようなことはしないのは分かってるしな、団長は……そこら辺のボーダーライン見極めるの上手じゃないか?」
「そうかな?確かに本気で嫌がることはしたくないけど……」
「まぁ普通、セクハラはしちゃあダメなんだけどな」
「ごもっとも……」
「まぁ何度も落とされてるのに、セクハラやれる不屈の精神は逆にすごいと思うぞ」
同意を求めている訳では無いが、しかしそれでも言ってしまうことがあるのはしょうがないだろう。というのがグランの弁解である。10にも満たない子供でも、もう少し我慢はできるそうなものだが。
「……っと、時間大丈夫か団長」
「あぁ、もうそんな時間か……」
そして、気づけば番組終了の時間が迫ってきていた。やはり、話し込むと時間が経つのがとても早く感じてしまう。グランはもう少し長めにやれないかと思ったが、それは冗長になりかねないので自分自身で即座に頭を降って否定した。
「さて、今日はこの辺で終わりにしたいと思います。皆様ご視聴ありがとうございました、また次回おあいしましょう」
そう言ってから、グランはカメラの電源を落とす。そう言えば、今日はルナールが引っかかりそうなことを言っていなかったな、と自分の基準でグランはそう思っていた。
何が琴線かはわからないが、おそらく今回は大丈夫だろうとグランは踏んでいた。
「あ、団長俺これからランちゃんとパーさんと出かけるから、また後で」
「あ、うん了解。じゃあまた後でね」
そう言って、一旦部屋の外に出てから別れるグランとヴェイン。その後、グランは何となくルナールの部屋の前に来ていた。
「鼻血やら前もって医務室にいるやら……段々と悪化して行ってたが…今回は大丈夫だろう、今回は……」
溢れる嫌な予感を抑えながら、グランはルナールの部屋の扉をノックする。返事は帰ってこない、留守なのだろうか?
「……ルナールー?居ないのかー?……ん?」
ドアをノックしているうちに、グランは気づいた。ドアに鍵が掛かっていないのである。この団では、一応部屋の扉にはそれぞれ鍵を設けている。殆どの団員がノックしてから入るため、あまり意味を為していないが、プライバシーを遵守する……主にルナールが鍵を使用しているのだ。
「……ルナールが部屋を開けてる…?お邪魔しまーす…」
本来、いようがいまいがルナールは部屋に鍵をかける。耽美絵を見られたくないからだ。それと、未成年には見せられないのものとかもあるのでそれを見せないようにするための保護として、である。
だからこそ、開いているわけがないのだ。
「ルナールー…はっ!?」
ドアを開けた瞬間、そこにはルナールが倒れていた。それも、まるで天寿をまっとうしたかのような笑みを浮かべていた。
「ルナール!!お前なんで死んでるんだ!!」
「……」
「ん?何だ?」
ルナールの口から漏れている言葉、それを逃すまいとグランはルナールの顔に耳を近づける。
「めっちゃ……尊い………」
「お前……尊さが……」
つまりはこういうことである。ヴェインのランちゃんの連呼で、それだけで尊さが彼女の中で振り切ったようなのである。
グランはこの後泣きながらソフィアの元へと連れていった。そして、ちゃんと蘇生してもらってからルナールは自室へと戻って行ったのであった。その時のソフィアの困惑した表情は、グランもルナールも忘れることは出来ないであろう。
ヴェインはサブに入れておけば多分なんとかなる感じのSSRだと思います
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ