ぐらさい日記   作:長之助

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眠れる輝竜、舐めると痛い目を見るよ?

「はい、今回のゲストは白竜騎士団見習いのひよこ班アーサー君です」

 

「よろしくお願いします」

 

「えー、ゲスト紹介の時に何故この団に居るのか?という疑問を持った人もいると思うので、解説をどうぞアーサー」

 

グランはカメラに向かって手を伸ばす。アーサーはその方向に目線を合わせて、体を向けて体を強ばらせながらもハキハキと喋り始める。

 

「は、はい!えっと……ランスロット…さんが言うには、この団にいる事で騎士団生活で自分がどのように過ごすかの練習……と聞きました!」

 

「って事です、因みにここでは団員全員差がないように俺が徹底してるので、団長だとか隊長だとかで優劣をつけないようにしています。

別に団長とか隊長って呼ぶ分には構わないんだけれど……ランスロットはそこら辺凄まじく徹底してるので、呼ばせないようにしています。敬語でようやく許されました」

 

「えっと……団長はどうなんですか?」

 

再びグランを向き直り、首を傾げながらアーサーは問う。グランサイファーに乗船している団員は、軽く100は有に超えている。これだけの大きい団を従えているグランは、団長と呼ばれることにどう思っているのか……それを聞こうとしていた。

 

「どうって何が?」

 

「自分が団長と呼ばれる事に」

 

「うーん……まぁ、実際団長だから受け入れてるよ?」

 

「本音は?」

 

「俺を尊敬してくれて嬉しいけど、呼ばれるのめっちゃむず痒い……皆もっと俺の事名前で呼んで欲しい、フランクにいってもいいんだぜ?」

 

「そこまで行くのはどうかと思いますけど……」

 

「ま、こんな本音はこういう時だからこそ…言えるもんなんだよね。偉い人と会う時とか、グランって呼ぶ人は皆団長呼びになる」

 

「公私分けて接している、という事なんですね」

 

「ま、そんな所だね……さて俺の話はさておいて…アーサーの話に行こうか」

 

「あ、すいません……話逸らせちゃって」

 

少し申し訳なさそうにするアーサーに、苦笑しながらグランは大丈夫だと一言言う。そこまで気にしていることでもないし、そもそも談笑する番組なのだ。なんら問題がある訳では無い。

 

「いいよいいよ、気にしないで。って訳で……今回代表としてアーサーを読んだ訳だけど、実はアーサーの所属しているひよこ班は全員ここに所属しています

この団の生活はどう?」

 

「結構楽しんでますよ、色々勉強になることも多いし……ただ」

 

「ん?」

 

「ランスロット…さんは『騎士団にいるよりこっちの方が生活が濃密だ』と言っていたんですが……それがよく分からなくて」

 

「あー……」

 

「団長さんはどういう意味かわかりますか?」

 

「分かる、分かるけど……よし、簡単に…説明しよう」

 

「は、はい」

 

グランの勢いに押されて、アーサーは再び体を強ばらせてグランの話を真面目に聞こうとする。再三申し上げるが、別にそこまで真剣なことは言うことはほとんどない。

 

「騎士団とこの騎空団が共通していることはみんなが同じ生活、同じ規律で生活する空間……って言うこと、それは分かるよね?」

 

「はい」

 

「けど、騎士団は自分だけじゃなくてある程度他人も含めた共同生活……こっちはプライベートや趣味丸々持ってきてもらってるから1人部屋なんだよ、そこに違いが出てくる」

 

「……えっと、例えば?」

 

「人には見せられない趣味がし放題……あ、犯罪はダメだよ?」

 

どの口が言うのかはわからないが、グランはカメラ越しに注意する。どこぞの女騎士の部屋の前に立って、観察する元アルビオン領主が幾度となく確認されているので遠回しすぎる注意である。

 

「犯罪じゃない範囲で人に見せられない趣味……?」

 

「極論女装とか」

 

「……確かに見たら関係がギクシャクしそうだなぁ…」

 

アーサーは渋い顔で反応を返す。頭の中で誰かが女装していたのだろうか?それを問う気も起きないグランであった。

 

「さて、場も温まってきたことだしお便り行ってみよう」

 

「お、俺にあるんですか!?」

 

「あるよー?あるある……さて1通目…えー……」

 

チラッと『攻めですか?受けですか?』の質問が見えたが、グランはそれを華麗にスルーして別のを取り上げる。そろそろ賢者モードにぶち込んでやらないとだめだろうか、とルナールの顔を思い浮かべながら内心渋い顔をしていた。

 

「『騎士団では剣を扱いますが、この団でも剣の使い手は沢山います。誰かを目標にしていますか?』」

 

「そうだなぁ……確かに、この団には剣の達人が多いですよね」

 

「そうだね、アーサーは誰か勉強になると思ったことはある?」

 

「やっぱりヨダルラーハさんやアレーティアさんですよ!」

 

「あの二人から教わるのは至難の業じゃない?」

 

教えて貰えるには教えてもらえるかもしれないが、あの二人は達人を飛び出た何かなので、単純に見たり聞いたりする場合では確実に勉強にならないと……グランはそう思っているのだ。

 

「いえ!2人の心意気や剣を使っている時の感覚などを聞くのも勉強です!!」

 

「まさかの精神論の方を学んでいたとは……」

 

剣の使う道ではそれも確かに重要なのかもしれないが、そちらの方がよっぽど習うより難しいのではないだろうか?

 

「まぁ、この団には他にも色々な剣の使い手はいるからね。ただ武器として振り回すんじゃなくて、演舞として舞うための剣の使い道なんかもある」

 

「ガイーヌさんやユエルさんですね……」

 

「ん?2人となんかあった?」

 

「い、いえ……その、色々と凄いなぁと思ってて……」

 

そういうアーサーの顔は真っ赤である。未だウブな少年の心から見ると、あの二人の格好は色々と刺激的すぎるようだ。グランはもう慣れているので、寧ろこっちから攻めていくが。しかし、そんなことを少年に言えるはずもなく……

 

「確かにねぇ……さて、2通目いってみよう」

 

誤魔化すしかないのである。そして、そのまま流れるように別のお便りを読もうとハガキを漁る。アーサーも、それで話が流れたので何も追求することは無かった。

 

「『騎士団では料理も食べますが、この団の料理で驚いたことはありますか』」

 

「驚いたこと、かぁ……むしろ、料理が得意な人がこれだけいること自体が驚きのようなものですかね」

 

「ん?そうなの?」

 

「はい、しかもどれも絶品な美味さなんで……」

 

「多分騎士団だと料理作るのって給仕の人がやってくれると思うんだけど……」

 

「どっちかと言うと僕らの味はヴェイン……さんの方ですかね」

 

「あぁ、美味しいよねヴェインの作るスープ」

 

豆を煮込んで作るスープ、単純だが質素且つ美味しいという大変お財布にも優しいスープはグランの心を蕩けさせているのだ。実際美味しいものなのだから仕方が無い。

 

「ヴェインのスープ……じゃなかった、ヴェインの料理以外で印象に残ってる人の料理とかある?」

 

「んー……セワスチアンさんの…」

 

「やはりリュミエールグルメか……まぁ確かに美味しすぎるのがいけないんだけどね」

 

恐らく団最高の食事は、リュミエールグルメが支配しているだろう。あれを突破することは愚か、肩を並べることすらも難しいレベルだとグランは考えていた。

これからもこんなのを食べられ続けるリュミエール聖騎士団が、グランはとても羨ましかった。

 

「俺が女だったらセワスチアンに結婚申し込んでる」

 

「え、何の話ですか急に」

 

「いや、リュミエールグルメずっと食べ続けてたいなぁって……」

 

「料理で結婚相手決めますか……」

 

「料理は必要なファクターさ……っと、話逸れた…三通目『騎士団生活では他の人と相部屋になるので、趣味を持つことは難しいです。そんなアーサーさんの趣味はなんですか?』」

 

「その流れで趣味を聞くんですか…?」

 

「正直俺もびっくりした……まぁとりあえず趣味ってなんかある?」

 

「うーん……鍛錬ですかね?」

 

「もっといろんな趣味持とうぜ!って俺が言えたことじゃないか、俺も趣味が鍛錬……というか学ぶ事?」

 

「団長さん色んなことやってますし、あれ全部趣味なんですか?」

 

「訳分からんくらい強い婆さんと戦うことは、趣味のうちに入らんぞ。ほんと何だあの婆さん」

 

「でも強いひととは戦っていきたいです、強くなりたいですから」

 

少し前のめりに意見を言い放つアーサー。彼の飽くなき強さの探究心は、これほどまでに強いのである。

 

「うんうん、その気持ちをこれからもちゃんと持っててくれよな……っと、もうこんな時間か」

 

「話し込んでると時間ってあっという間ですね」

 

「そうだな、まぁ別に何か重要な話をするような場じゃないし……こんなもんだよ」

 

「こんなもんですか」

 

終わりの時間が近づいてきたことで、少しだけ名残惜しくなっているアーサー。しかし、当然のことながら別段大切な話はしていないとグランは改めて説明をし直す。

 

「さて、今回の団長相談室はここまでとなります。皆さんご視聴ありがとうございました。」

 

そうしてカメラの電源を切って、アーサーとグランは部屋の外に出る。アーサーは自前の剣……無論鞘に収めたままのものだが、それを見せてグランを誘う。

 

「団長さん、この後1戦どうですか?」

 

「お、鍛錬か?いいよいいよ、十分に付き合ってあげるから」

 

グランも今装備している武器を見せながら、いい笑みを浮かべる。ふと、今の会話をルナールが聞いていたらどうなっていただろうと思ったが、流石に今回は放送中にそういうルナールが聞いたら尊死する様な単語や文章を発した記憶はないので大丈夫だと、グランは少しだけ油断していた。

 

「……いやでも、この流れだと…」

 

「……団長さん?どうかしましたか?」

 

「ん?いや……ごめん、ちょっとだけ待っててくれない?」

 

「へ?は、はい……」

 

アーサーを置いて、グランはとある部屋に向かっていく。無論、ルナールの部屋である。前は鍵が開いていたので、簡単に中に入ることが出来たが、今回は鍵がかかっているらしくキチンとドアは開かないようになっていた。

 

「……ルナール、いるのか…いないのか……何か音がするし、多分いるなこれ……」

 

中からは奇妙な音が聞こえてきていた。グランはその音に聞き覚えがあった。それは、大急ぎで書類にサインしてる時に出るペンと机がぶつかり合う音だ。今回は、それを更に激しくしたかのような音量になっていた。

 

「……ん?なんか声も…」

 

「ふ、ふふ……ショタ同士…滾るわ……!」

 

「……」

 

グランは正直、ドアがあったらそっ閉じしたい気分になった。恐らく今の自分の顔は、真顔を通り越して死んでいることだろう。それほどまでに感情が死んでしまった。

 

「そ、それを敢えて寝取らせて…!?そしておじさんのハーレム……うーん、偶にはそっちもいいかもしれないけど…無しね」

 

そのおじさんはどこから出てきたのかとか、何故ダメだったのかとか、そもそもハーレムっておじさんなにしてんのとか、色々と突っ込みたいところはあったが、抑えるまでもなくグランの口からそのツッコミが出ることは無かった。

 

「……帰ろう」

 

グランは、ルナールを今回は放置することにした。ペンが動かせている以上、唐突に死んだりしない限りは大丈夫だろうという考えである。本音を言えば、今の状態のルナールにはあまり関わらない方がいいという教訓があるので、関わり合いたくないということである。

 

「さて、アーサーとの特訓に行くか」

 

そしてそのまま、グランはアーサーと特訓に行ったのである。後日発見されたルナールは、何かをやり遂げたかのように凄くいい笑顔で眠っていたという。

無論、未成年をそういった青年本に出すのは駄目である。仮にランドセルを背負っていようが、18歳以上にしなければならないのである。そのせいで、ルナールはリーシャオリジナルの懲罰房行きになったのであった。




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