グランとフェードラッヘの騎士達は、グランサイファーに寄せられた依頼の一つである魔物退治を請け負っていた。
その依頼では、魔物が大量発生しているために数を減らして欲しいというものであり、ある程度強力な人手を募って行くことになったのである。そして、ある程度班分けをして四方八方から攻めることで魔物達を減らしていくという作戦で行くことになり、グラン達も別れて行くことになった。因みに、ひよこ班のメンバーも参加しているが、それはヴェインに全員ついていくことになっている。ほかは、全員一人での参加である。
「……とは言ったけどさぁ!!こんなに多いなんて聞いてないけど!!!」
「いやぁ、しょうがねぇだろ?森の入口から既にすんげぇ数いたんだからよォ」
「私も手伝います!!」
「ありがとう全体攻撃してくれて!!!」
グランはビィとルリアを連れてきていたが、正直なところ魔物の数が多すぎるためにルリアの方が数を倒しているという結果になっている。プロトバハムートは強し。
「うおおおお!!」
切って切って切りまくって、グランは逆に冷静な思考を手に入れていた。『あー、この剣後で洗うの面倒だなぁ』だとか『血の匂いキツすぎてエルーン達から嫌われるんじゃね?』だとか色々なことを考えながら、ひたすらに魔物を討伐して行った。
「GYAOOOOOOO!!」
「ヒドラです!!」
「うるせぇぇぇぇえええええ!!!」
かつて1度殺されたヒドラだが、正直今相手になることは決してないのである。一撃あれば十分だと理解している。
既に、ヒドラは絶命していた。
「ビィ!!他のみんなの様子見てきてくれ!!こっからでも見れると思う!!」
「おう!!」
ビィに他の者の観察を任せて、グランはそのままルリアと共に進んでいく。プロトバハムートの一撃は確かに強力だが、ルリアの体力の問題もあるので乱発することは出来ないだろう。
「ん?」
「どうしたァ!!」
「ジークフリートのいる方角だけどよォ、ウルフが空を飛んでるぜぇ」
「流石ジークフリートさんだ!!空を飛べないはずの魔物を空に飛ばせるなんてなぁ!!」
「GYOOOOO!!」
「ヒドラです!!」
「またかよ!何体いるんだよここの島!!最早ここヒドラ捨てられた説あるだろ!!」
叫びながら、血潮を飛ばして魔物は討伐されていく。死屍累々となった道と共に、グランの体はトマトのように真っ赤に染っていく。こうは言っているが、別段何かある訳でもない。
「倒したはいいけどどう処理すんだよこの魔物達!!グランサイファーの食料庫入れとく!?」
「だったら干し肉にしないとな、ひとまず一種類ずつ食べてみたが…そのまま食べるに適さない魔物もいるから、気をつけよう」
「え、ジークフリートあれ食べたの?一種類ずつでも何体いると思ってんの?」
「サバイバルは慣れっこだ」
「違う、その回答は俺の求めているものと違う」
他愛ない話をしながら、グラン達は魔物の肉の処理を考えていた。いくらなんでも多過ぎると村からも渋い顔をされた。これでも村で8割引き取ってくれた辺り素晴らしくいい村だろう。
「いやまさか一人で100体以上倒す羽目になるとは思わなかった」
「そして倒したのはいいが、ジークフリートが他のヘルプに回れるほど余裕があったことも驚いている」
パーシヴァルが困った顔をしながらそう呟いていた。ジークフリートは首をかしげていたが、そこがおかしい所なんだぞとグランは叫びたくなっていた。
「ていうか日を増す事におかしくなってない?今日どうやって移動してたのジークフリート」
「ん?地面を歩いていると、上からの奇襲に気づきづらいことに気づいてな、枝から枝に飛び移りながら移動していた。無論、時折移動する最中に攻撃も加えながらな」
「頭おかしい……」
「実は星晶獣か何かじゃないのか、お前は」
パーシヴァルでさえそう突っ込まざるを得ないほどに、ジークフリートはおかしなことをしているのだが、ジークフリートはそれに気づいていない。
「……まぁ、とりあえずもっと乾かすか」
「団長、何日滞在するんだ?」
「んー…5日くらいかな。その間に出来るだけ干し肉にしちゃおう、他は……まぁ物を凍らせることが出来る人達に肉を凍らせてもらって、保存が効くようにしよう」
「そうだな、それがいいだろう」
「はー、疲れた疲れた……ん?どったのひよこ班の諸君」
グランは、よく考えたら一言も喋ってないひよこ班の面々のことが気になって声をかけていた。それを代表するかのように、モルドレッドが一言だけ発した。
「基準がおかしくないですかね、団長達」
「……え?ジークフリートじゃなくて?」
「普通これだけの魔物は、100人とか200人の兵でやるものだと思うんですが」
「……?」
「今回、何人で終わらせましたかこれ」
「えー……俺でしょ、パーシヴァルでしょ、ランスロットでしょ、ジークフリートでしょ、ヴェインでしょ、ルリアとひよこ班の4人で……10人だね」
「おかしくないですかね、しかもその内俺ら1割も狩れてないと思うんですが」
「大丈夫大丈夫、ぶっちゃけ俺と同い年の頃だと俺そんなに強くなってなかったよ?多分俺より強くなれる素質あるからさ皆」
「違う、そうじゃない」
グランの勘違いに辟易するモルドレッド。モルドレッドはあれだけの大量の魔物を、自分達4人を抜いた6人で倒しきれるわけがないと話しているのだが、グランは『力が及ばず全く倒せなかった』と勘違いしていた。
「……でも、これどうやって持ち帰る気ですか?」
「そうだなぁ……半分以上村が貰ってくれたとはいえ…それでも食料庫が魔物の肉だらけになってしまうな」
ランスロットとアーサーが話し合っているが、あまりいい案が思い浮かばなかった。事実、山のように積まれた魔物の肉をどう処理するかは問題なのだ。保存するとは言っても、量が量である。
「……よし、なら団から助けを呼ぼう…そして突発的だけど肉だらけのバーベキュー大会だ」
「まぁ、突発的に英気を養えると思えば……」
というわけで、何だかんだでグランサイファーで肉の処理を行うことになったのであった。それでも、一体どれほど食べればいいのかは全くわからないが。
「まさか、先に風呂に入ってこいと言われるとは思っていなかった」
「いや、寧ろなぜ言われないと思っていたんだお前は……」
現在、グランサイファー備え付けの浴場施設で一同は体を休めていた。血の匂いを落とすために、せめて石鹸の匂いになってこいと団員の殆どから言われたためである。
「もう血の匂い染み付きすぎたから、あえて誰も言わないんじゃないかと……」
「いやぁ、それはちょっと無理だろ」
「だよねぇ」
「俺達も……しばらく鎧は着込めないな」
「あぁ、綺麗に手入れしてやらないとな」
「ランちゃんの鎧真っ赤だったもんなぁ、パーさんみたいになってた」
ヴェインが、魔物の血塗れになったランスロットの鎧を思い出しながら体を洗っていた。
黒い鎧のジークフリート以外は、全員服や鎧が真っ赤に染っていたのは最早仕方の無いことである。
「うーん……俺の服も取替えないとなぁ…青色が真っ赤になってたし」
「寧ろあの修羅場でよくルリアちゃんを守れてたよなぁ、団長」
「返り血一滴も浴びてませんでしたね……」
「匂いすら染み付いてなかったけど…どういうことなんですかね…」
ルリアの体の匂いからは、血の匂いは感じ取れなかったのだ。彼らの鼻が麻痺しているだけでなく、唯一そのままバーベキュー大会に参加し始めているというのが明確な証拠である。
「星晶獣の力でしょ」
「便利っすね……」
「まぁ、早く体洗ってバーベキュー大会行かないとね」
そう言いながら、グランは男風呂の前におそらく鼻血を出して倒れているであろうルナールを思い浮かべる。偶然浴場の入口で鉢合わせしたのだが、一緒に風呂に入ると言った途端謎の奇声を発していたのだ。ハンサム・ゴリラでも飲んだのだろうとグランは脳内解釈をしておくことにした。仮に倒れていたとしたら、バーベキュー大会に参加していないメンバーが介護してくれているだろう。
何だったら、ジャミルが助けているだろう。
「……そう言えば、ジャミルも風呂入れば良かったのに」
「んー?どうした団長ー」
ヴェインが顔をのぞき込む。『なんでもない』と一言だけ言ってそのまま体を洗い終えたあと、よく体を拭いてバーベキュー大会へと乗り込む準備をするのであった。
因みに、鼻血のあとすらも残さずルナールは消えていた。ジャミルだろうか。
「あー、バーベキューバーベキュー」
「いっぱい食おうなぁ、皆ァ!」
「流石の俺も空腹が過ぎている……」
「あぁ、魔物の肉とはいえ食べれるのも多かったからな」
「……ヒドラから得た肉は美味しそうだったな」
それぞれ思い思いの言葉を言いながら、甲板へと向かっていく。グランサイファーで行われている突発的なバーベキュー大会は、突発的だったにも関わらずほとんどの団員がその肉を頬張っていた。何人かは、体重を気にしていたが。
「おらおら!ひよこ班の君らもいっぱい食べろよ!?騎士団にしても騎空団にしても、体が資本だからな!!」
「「「「はい!!」」」」
綺麗に揃った返事は、流石は白竜騎士団の見習いと言ったところだろう。その元気な声を聞きながら、グランは肉を頬張っていた。他の者達も遠慮なくガツガツと食いはじめる。
「ふむ……タレが美味いな」
「確かに……何を使っているんだろう」
「これあれだなぁ、多分……まぁ作った人に聞いてみっかぁ」
ヴェインは肉のタレの味を噛み締めながら、タレの味を作ったものを思い浮かべる。恐らくはローアインやバウタオーダのどちらかだろうと踏んでいた。リュミエールグルメだと、ohmyリュミエール!と叫んでしまいかねないからだ。
「はー……にしても…」
「ん?どうかしたか団長?」
「……仕事おわった後の飯は美味いなぁ」
そう呟いたグランの顔はとても穏やかな顔をしていた。あれだけ多くの敵と戦い、そして終わらせたのだ。皆の協力があったとはいえ、疲れるものは疲れるのである。
「……もっと食うぞぉ!!」
「「「「「「おー!!」」」」」」
周りにいた団員達が、グランのその声と共に大声を出す。パーティなので騒がしくて当たり前なのだが、そうやって騒がしくしていられることにグランは嬉しさを感じて、そのまま肉をひたすらに頬張り続けるのであった。
「ルナールさん、最近失血し過ぎですよ」
「尊さが……」
「はいはい、尊いのは分かったので……私の蘇生も確定じゃないので、多少のきついのは我慢してくださいね」
「え?」
「実はあれ失敗すると余剰エネルギーが体を駆け巡って、すごく痛いですから。
今まで1度で成功していたのでルナールさんは、知らないでしょうけど」
「あ、待って、自分で立てるからちょっと待っ」
この日、医務室からルナールの叫び声が1度だけ響き渡ったという。因みに、ソフィアの蘇生には別に余剰エネルギーだとかそういうのは存在しない。あまりにも頻度が高いので、これ以上厄介にならないようにソフィアが着いた冗談である。
ルナールはそれを鵜呑みにしてしまったせいで、無駄に大声を張り上げてしまったようだが。
色々とオリジナルです。