「本日のゲストはイルザさんです」
「イルザだ、よろしく頼む」
「……off?」
「いや、流石に仕事の時の口調にはしないさ……あ、甘いものあるか?」
「色々買ってきたんでどうぞ」
「これは……プリンだな、頂こう…はむっ……」
開幕早々プリンを頬張り始めるイルザ。その食べ方は上品な食べ方であり、彼女を初めて見た人がいれば簡単に惚れてしまうだろう。グランはよく見ている光景なので、『綺麗』としか思わないが。
「……っと、済まないな。私と談笑する物だったというのに」
「いえ、綺麗だったので問題ないですよ」
「そ、そうか……」
顔を赤くしてそっぽを向くイルザ。帽子が小さいので、深く被ることすら出来ないから顔を隠せないという状況になってしまっている。
「そ、それで……私とどういう話が…」
「まぁただの談笑ですよ。どう言った話をするかは、お便りや俺たちの気の向くままってね」
「……あぁ、そう言えば…君は身を固める気はあるのかな?」
「身を固める……」
ここでグラン、身を固めるの意味を理解しているがこのままボケで返すか、素で返すかの2通りで思考していた。
ボケで返す場合『あ、メデューサにいつもされてますよ』と返す気になっていた。しかし、この答えの場合イルザに天然が入って『結婚と離婚を繰り返しているのかこのクソ未満のカスがァ!!』みたいなことになりかねない……いや、流石にないだろうがグランはそう考えていた。
もしくは『…無理やり結婚させられているのか…?』と返されるパターンも考えている。
どちらにせよ、ボケで返すのはあまり得策でないと言える。ボケと気づかれて罵倒されかねないからだ。つまり、最善手はそのまま答えるということである。
この間、1秒未満である。
「少なくとも、今はそんな気がないですかねぇ」
「……そうか、いや…君もまだ子供だものな……うん、まだ早いのかもな……」
「まぁ団内で決めるんだったら……と思うことはありますけど」
「ほう!?」
いきなり前のめりになって、グランに詰寄るイルザ。恋バナが好物の彼女は、どうやら食いついているようだ。
「まだ特に決めてはいないですよ?もし決めるなら…って話ですし」
「因みに、何故そういった考えになったのかな?」
「んー……父親のせいかも」
「君のお義父さんの?」
「文字がおかしい気がしたけど……まぁいいか…」
少し気にかかったグランだったが、構わず話を進めていくことにしたのだ。今気にしてたら、おそらく話が一向に進まないだろうと感じたためだ。
「いやぁ、俺はビィと二人っきりで過ごしてきたし……あぁやって残されるくらいなら、家族で船乗りながら過ごしたいなぁって」
「……」
「代わりに再会した時思いっきり
「ある意味素晴らしいな」
「まー、会えたら…の話ですけどね。『待っていな、イスタルシアで、ボコ殴り』的な」
「それもまた親子の愛情というものなのだろうか……」
「ある意味違うかもしれませんけど……とりあえずお便りいってみましょう」
父親の話を一旦終わらせて、グランはダンボールの中からお便りをひとつ取り出す。
「1通目『スナイパーライフルのことはどう思っている?』シルヴァからです」
「ふむ……遠くから獲物を狙う銃…中々素晴らしいと思うが、特訓してどうこうなるような武器でもないだろう。センスがいる武器だと私は思っているよ」
「使ってみたいとかは?」
「使う機会があれば、使っていたのかもしれないな。私の使っているのは調停の銃ニバス…二丁拳銃だからな。一応、他の者達とは違い私は武器の力を戦闘で生かすことは余りないが」
そう言えば、とグランは思い直していた。ニバスがなくとも、彼女は戦えるように特訓しているのだ。無論、ニバスの力自体は使っているものの、それはおまけ程度であり、彼女の技の一つである『バーストイレイザー』はニバスがなくとも使用できていたからだ。
「しかし……うん、使ってみたいとは思う。純粋にカッコイイじゃないか」
「分かる」
「では、2つ目にいってくれ」
「はいはい……2通目『年下の旦那がいたら、欲しいですか?』ヘルエス様からです」
「…欲しい、というか結婚したい…」
恋バナが好きな彼女だが、一応結婚したいという欲求も存在している。周りが結婚ラッシュしているという噂まではびこっている。
「年上……じゃ、ダメなんですか 」
「いや…年齢的に……あぁでも……」
頭を抑えて仕事モードである普段からは考えられないほどに、イルザは迷っていた。
「あー……ま、まぁ年下年上は好みの問題だろうし…あんまり気にすることじゃあ……」
「やはりそう思うか!?」
「OKOK、一旦深呼吸して落ち着いてみましょう」
明らかに結婚の話題になってから、情緒不安定になっているイルザ。欲求に飢えすぎているのも、些か問題なのではないだろうかとグランはため息をついていた。
「あ、あぁ……すまない……」
「話題転換のために、さっさと三通目いっちゃいましょう……『どういうハッピーエンドを迎えたいかしら』コルワさんです」
「ハッピーエンドか…彼女らしい発想だが、結婚するまではまだエンディングだとは私は思っていないよ」
「……と、言いますと?」
イルザの言葉に、首を傾げながら意味を尋ねるグラン。イルザは調子を取り戻したのか、年上の余裕のようなものをチラつかせながら、語り始めていく。
「結婚が終わりだと思っていたら、直ぐに関係が破綻しかねない……そうだなぁ、もうここはいっそ孫に囲まれる老後までをゴールにするべきじゃないか、と私は思う」
「孫……そりゃまた、長い話ですね」
「当たり前さ……色々と、あるかもしれないしなぁ……」
何故か遠い目をするイルザ。その瞳は一体何を見ているのだろうかと、グランは疑問に感じたが、今ここで問いただしてしまうと恐らくさっきの二の舞になりかねないので止めておいた。
「まぁ、その色々とやらを乗り越えてこそハッピーエンドがあるってことですね」
「そういう事だ!というかだな、君は一体誰と身を固めるつもりだ!?」
「……ん?」
「10代でフラフラしているのも構わないが、20代になってから焦っても遅いんだからな!!」
「イルザさん?」
「何だったら全員と身を固めるか!?それだったら━━━」
ここから、映像が途切れている。別にカメラが壊れたわけとかではなく、グランがちょっと危険を感じたので映像と音声を差し換えたのだ。因みに、差し替え先はグランサイファーから見える一番いい景色の窓の映像と、その音声である。
「……すまなかった、頭が痛い」
5分ほどしてから、イルザはテーブルに突っ伏しながら寝ていた。グランはその際に、形の変わっているイルザの膨らみ2つを視界の中心に起きながら、イルザにクリアオールを掛けていた。
「いや……何でアルコール入ってたんですか」
「恐らく先程食べたプリンだろう……カクテルが入っているのが売りだと聞いたが、ゆっくり食べるものなのだろうな……本当は……」
「そんなプリンあるんですね……」
「一部の人に人気のスイーツだからな……」
「なるほど……」
先程暴走していた理由は、プリンの中に含まれるアルコールが彼女を酔わせたことが判明した。しかも、プリン本体に含まれるものではなく、冷ましたあとのカラメルに混ざっているものであり、それが今頃になって効いてきたようだった。
「頭まだ痛いなら、継続してクリアオール掛けておきますよ」
「済まない、助かる……」
「カメラはまだ回してないんで……復活できそうですか?」
「……精神的なのが混ざって、今日はもうだめそうだ…部屋で甘やかしてくれ……」
「まぁ、それくらいならいいですよ」
「助かる……」
イルザはグランに背負われて自室へと運ばれていく。その際に、やたら背中に体を押し付けられていたので、グランは溜息をつきながらどうやって寝かせるかを考えながら運んでいくのであった。
「……何をしてる、グラン」
「それはイルザか?」
「あ、ユーステスとバザラガ……どしたのこんな所で」
「いや……暴走気味だったから少々心配になったのでな……その様子では、酒が入っていたか」
「ご名答……今から部屋に運ぶところ」
「災難だな」
「この程度のことなら日常茶飯事だし……問題ない問題ない」
そのままグランはイルザを運んでいく。本来、このような場面を見られたら何かしらの反応があるはずなのだが、どうやらイルザは爆睡してしまっているようだった。
泥酔では無いだけマシだと考えるべきだろう。
「んん……」
「はいはい、今部屋に運んであげますからね」
今はこの船にいるから問題ないものの、彼女の部下などにこの姿は見せられないだろう。あくまでも、うちの団限定での姿ということになる。
「……そう考えると、レアなものを拝ませてもらってるんだな…にしても、あのプリンのアルコール度数はどうなっているんだ…」
落ち着いたとはいえ、あのイルザがここまで酔うのはよっぽどの事である。後でこのプリンを提出した誰かを、叱るべきだろう。そう言えば、そもそもあのスイーツは誰からの差上げだったか。
「……俺やん」
最序盤に自分で言っていたにも関わらず、忘れていたグラン。自分に反省を促しながら、イルザを部屋まで運んで行った。
無論、ちゃんと寝かせる時に仰向けにして寝かせて、着替えとかは同性であるゼタに任せて、自分はその場を離れるのであった。
「……流石に、寝てる異性の服を勝手に脱がすのは……ねぇ?」
「オイラに言われても困るんだけどよォ」
呆れた顔をしながら、グランの愚痴に付き合うビィ。愚痴、と言う割には誰かに対する罵倒や、汚い言葉遣いが全く出てこないが、代わりにどれだけこの団の女性陣が刺激的な格好をしているか……ということが度々言われていた。
「いやいや、理解してくれよビィ…お前にしか喋れないんだよ……」
「オイゲンやラカム辺りでいいじゃねぇか」
「どっちも『男なら全員娶っちまえ』って帰ってきたんだからな」
「ダメ大人じゃねぇか!!」
「まともな相談相手がビィしかいねぇ……」
セクハラはする癖に、意外とマメだったり紳士的だったりするのは少しおかしい話なのだが、それでも恋愛対象として見ている女性が未だに居ないというのは、ある意味鋼の心だ……などと思いながら、グランは大きなため息をつくのであった。
「……あ、今度二人きりになった時に背中の感触の感想語ってみようか」
「お前ほんっっっっっっっっっと、そういう所だからな?」
「ビィさん口調変わってますぜ」
ちゃっかり、今回の話でも落ちていないというのが、ある意味奇跡だとも言えるのだが……その事に、グランとビィは気づいていないのであった。
5周年記念チケットで取りに行きます、水着の彼女。
あるのかは分からないけれど