ぐらさい日記   作:長之助

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冥闇の剛刃、見たいのか?この顔が?

「今日のゲストはバザラガさんです」

 

「……」

 

「デジャブ」

 

「勝手が分からん、それ以前に……俺はあまり喋らない」

 

 一体何を言っているのだろうか、とグランは思った。確かに、他の組織メンバーに比べれば喋らないかもしれないが、それでも人並みにはバザラガは喋っているのは明白である。

 

「まぁ……それもまた番組らしさだろうし、いいかな」

 

「助かる」

 

「あぁうん……あ、そう言えばバザラガってさ…」

 

「……?」

 

「どうして鎌なの?」

 

「……それは、どういう意味だ?」

 

 鎧の中の眼光が光る。正直、他にもこのような目には散々合わされているので、バザラガの目が中から光るくらい大して驚く要因にはなりえなかった。

 

「いや、前にアルメイダに武器を作ってもらった時…大鎌だったじゃん?アルメイダが勝手に武器を作るとは思えないし、バザラガの指定だよね、あれ」

 

「あぁ……グロウノスが使い慣れていたからな。下手な剣や斧を振るうよりは鎌の方が、慣れてきる分使い勝手がいいと考えた迄だ」

 

「あぁ……結構鎌って特殊な武器だもんね」

 

 基本、鎌というのは内側に刃があるものだ。その特性上、鎌の内側でないと切れない為に他の武器よりも特殊な動きをしなければならない。それの動きに、バザラガは慣れてしまっているのだろう。

 

「それに、下手な武器では簡単に壊してしまいそうでな」

 

「力強いもんねぇ……」

 

 ドラフの男性の宿命と言うべきなのか、バザラガの体はとても強靭な体になっている。

 それに加えて、彼は体のあちこちを改造しているために下手な攻撃では怯まないうえ、恐ろしく強力な一撃をもたらすことも出来るのだ。

 

「皮肉だが、グロウノスのおかげとも言えるだろう」

 

「体の調子はどう?」

 

「グロウノスは、今のところ暴走する傾向はない……だが、いざと言う時は俺を」

 

「はいストップ、それ以上言ったらゼタとイルザ交えて正座させて怒るよ」

 

「……済まない、癖だ」

 

「ほんとにゼタが言う通りだよね……背負いすぎだからさ、ちょっとは頼って欲しいよ」

 

「俺としては頼ってるつもりなのだがな、どうにも頼り方を間違えているようだ」

 

「……もしかしてだけどさ、冗談言ってる?」

 

「何故そう思った」

 

「妙に流暢に喋ってるし…そういう時、バザラガ冗談言ってること多いじゃん……自分の顔ネタにしてる時とか」

 

「……」

 

 どうやら図星だったようで、バザラガは黙る。グランはムッとした表情をするが、それが面白かったのか小さくバザラガは笑い始める。

 

「ククッ……団長、お前は優しいな。しかし、俺をどうするかまでは言ってないぞ?」

 

「え、でもあの流れだと……」

 

「俺を……殺してくれと言うと思ったか?そこまで俺も愚かではない」

 

「……あー、もうからかうのやめてほしい」

 

「済まないな……しかし、こういう冗談を言う場だろう?」

 

「むっ……」

 

 バザラガに一本取られたのが悔しいのか、グランはさらにムッとした表情を取る。そして、しばらくそのまま考え込んだ後にお便りのダンボール箱を漁り始める。

 

「おい、団長」

 

「罰として、お便り箱の質問に答えてもらいます。きっちり三通!」

 

「……くく、ならばその罰は受けるしかないな」

 

 まるで我が子を見守るかのような、そのような笑みを浮かべているであろうバザラガ。その雰囲気につられてか、グランもついつい笑ってしまう。

 

「と、とりあえず1通目!『結局身を固める気はあるのか』イルザさんです」

 

「……どういう事だ?」

 

「え、そのままの意味じゃないの?」

 

「俺に、恋人を作れと?」

 

「作れ、というよりそういう気持ちある?って程度じゃない?」

 

「……今は考えられないな、気が変わればまた別かもしれんが…」

 

「というと?」

 

「人間、恋愛すれば変わる可能性があるからな。恋に恋する…という柄でもないが、俺がそういう気持ちが固まれば相手が見つかるかもしれないな」

 

 鎧の兜をカンカンと指で軽く叩きながら、バザラガは思考する。少なくとも、今は恋愛に関しては気持ちが動いていないようだった。

 

「今は好きそうな相手が見つかってない?」

 

「俺が気づいていないだけの可能性はあるがな……だが、今は身を固める気は無い。それもまたいいかもしれない……と思うことはあるがな」

 

「ふーん……」

 

「俺よりも、お前のことだ団長。身を固められる相手は多いだろう」

 

「なぜ急に俺に振る……いやいや、そもそもこの話前にしたから!!」

 

「ふっ……それもそうか」

 

「はぁ……」

 

 急に前にしたのと同じ話を振るバザラガ。歳が倍近く上なのがあるせいか、どうにもグラン相手にはまるで親のように振舞っている節がある。グラン自身も、そのことには気づいていた。

 

「……とりあえず、二通目いくね『いつも兜を被っていたり包帯を顔に巻いていたりしますが、お風呂の時はどうしているのですか』」

 

「……聞きたいか?」

 

「……正直、俺も気になる。兜被ってる時と、包帯とフードの時あるよね……兜は錆びるし、包帯は湯気で取れそうなものだし」

 

「ここで回答したら、俺の顔見たさに俺と一緒に風呂に入ろうとする奴らがいるだろう」

 

「多分居るね」

 

「……ならば却下する。無用なトラウマを植え付ける訳にも行かない……それに、俺自身に変にストレスがかかる」

 

「……まぁ、顔覗いてトラウマになるとかならないとかは兎も角、勝手に覗きに行くのは迷惑かかるね。

 というわけで、迷惑かけないようにしてあげてくださいねー」

 

 カメラに向かって、グランがそう話す。基本的に良い人物ばかりなので、好き好んで誰かの迷惑になりに行くようなことはしないだろうが、一応の注意である。

 

「まぁ、好き好んで覗きに来てもガッカリするだろうがな」

 

「え、なんで?」

 

「グロウノスの侵食のせいか、こちらの好きなタイミングで兜が生えてくる」

 

「え、待ってそれすごい気になる」

 

「……冗談だ」

 

「……ほんとに?」

 

「本当に冗談だ」

 

 言葉がおかしくなっているが、一応兜が生えてくるというのは冗談らしい。しかし、グランは冗談だとわかっていてもその事ばかりが気になって、ソワソワしてしまっていた。

 

「……ひとまず、3つ目に行ってくれるとありがたい」

 

「あ、うん……『ご飯食べる時っていつ食べてるんですか』」

 

「鎧の時は……隙間に入れられるからそこまで疑問ではないだろうな」

 

「偶に顔に包帯巻いてる時あるよね……あの時は?」

 

「ずらして食っている。だったそれだけの事だ」

 

「まぁ、普通にそうなるよね」

 

 実に単純明快な答えである。しかし、ずっと顔を隠しているために気になっている団員がいたのも事実である。ある程度答えは決まりきっているようなものなので、これはすぐに終わる質問だった……のだが。

 

「……兜は兎も角として、包帯の時いつずらして食ってるの?」

 

「さてな」

 

 兜の場合、隙間から通すだけなのでさほど問題でもないのだが、包帯の場合一々巻いているのをずらしてから食べて、そして戻す……などと言ったことをするにはあまりにも面倒な手間がかかりすぎているのだ。

 

「……まぁ、いいか別に」

 

「……俺が言うのもなんだが、あまり回答が出来ていないな」

 

「まぁ無理にプライベートな所迄答えさせるっていう趣旨じゃないし、別に問題ないよ」

 

「そう言ってくれると助かる」

 

 大きく座り直すバザラガ。言葉だけでしか判断出来ないが、グランはバザラガが落ち着いたように見えていた。

 

「さて、これでお便りは全部だけど……何かバザラガの方から言いたいこととか聞きたいこととかある?」

 

「……いや、特にないな。せいぜい風呂に入る時は俺と被らないように気をつけろ…と言うくらいだ」

 

「まぁ、そこは大事なことだしね」

 

 何度も伝えるようにするグランとバザラガ。それは本当に大事なことな為に、伝える必要があるのだ。そして、これを言った後に2人はふと考える。

 

「……これ、言っちゃうと気になって見に行く団員がいるんじゃないの?」

 

「……カシウスだな」

 

 最近団員になったカシウス。彼は大雑把に言えば月に住んでいた元『組織の敵』であり、彼は気になることはなんでも調べたがるタチなのだ。そして、この空の世界では彼の知らないものがそれこそ恐ろしい数存在しているので、興味を持ってしまえばそれを知ろうとするだろう。

 

「いや、流石に本人が嫌だと言ったら諦めるよカシウスは」

 

「だといいがな」

 

 元々組織の敵だったということもあり、他の団員達と比べて組織の者達は皆カシウスに何らかの警戒があった。ベアトリクスはそんなことも無いが、それも彼女だけである。

 それも、最近は薄まってきてはいるが……やはり、完全になくなるにはいまだ早いようだった。

 

「さて、今回の団長相談室はここまでとなります。ご視聴ありがとうございました」

 

 そして、終了の時間だということを理解してからグランはカメラの電源を切る。

 

「お疲れ様、バザラガ」

 

「あぁ……しかし、俺をこういう場に呼んでよかったのか?」

 

「え、なんで?」

 

「俺は喋らない。そして、喋ったかと思えば冗談か冗談じゃないかわからないことを言う……到底、こういう場には向いているとは思えわないがな」

 

 バザラガの鎧の奥にある瞳が、グランを見たような気がした。グランはそのまま少し考えた後にこう言い放つ。

 

「俺は別に、盛り上げたくてやってるんじゃないよ。みんなに、全員の事をちゃんと知ってもらういい機会だと思っただけだよ」

 

「つまり、喋ろうが喋るまいが……」

 

「全然関係なし!勿論、完全に無視されるくらいなら喋って欲しいけどね?そんなこと絶対にありえないだろうし」

 

「ふっ……団長に信頼されている分、これからも頑張らねばな」

 

 バザラガは鎧の中で微笑んでいた。そして、ゆっくりと立ち上がってそのまま部屋の外にグランと一緒に出ていた。

 

「俺は今からイルザ達と集まり、少々話し合いだ。団長、済まないがここで一旦別れる」

 

「ん、分かった。夕飯の時間までには終わらせてね」

 

「あぁ、他の者たちも重々承知していることだろう」

 

 そう言ってバザラガは、一旦グランから離れて別行動をとる。組織メンバー同士での話し合いだ、団長のグランであっても聞かれたくないことなどがあるのだろう。

 

「……にしても、鎧のせいもあるかもしれないけど…声、響いていたなぁ……」

 

 ふと、グランはバザラガが去った後にそう呟いていた。バザラガは元々声が低く渋いタイプであり、それが鎧を被っていることによりいい感じに響いていることが実は内心ずっと気になっていたのだ。

 

「……俺も歳食ったらあんな感じの声出せるかな?」

 

「いやぁ、そいつは無理だと思うぜぇ?」

 

「いきなり来たかと思えば、俺の未来の否定か……ビィ」

 

「いや、何でそんなに深刻に捉えるんだよ……めんどくさい奴かよお前」

 

「冗談だって……しばらく組織メンバー達は話し合いっぽいから、適当にお菓子でも食べて待っておこうか」

 

「おう」

 

 そして、グランもまたいつの間にか居たビィを連れて、自室へと足を運んでいくのであった。この後、特に何も用事がないため久々に部屋でゴロゴロするつもりである。




あと2日でバレンタインですけどバレンタインの話書くかはわかりません

偶には長編とか書いて欲しい

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