「今回のゲストはクムユさんです」
「ぴゃああああ……!」
「……フード取れそう?」
「が、頑張ってやるですよコンちくしょー!!」
顔を隠す程に深く被っていたフードを、一気に広げるクムユ。勢いが着いたので、その勢いのせいで揺れた2つの大きな砲弾にグランの視線が向かう。しかし、すぐさま視線を戻していた。
「よし、じゃあ続けようか」
「は、はい…!」
「クムユはとある銃工房の育ちで、姉としてククルやシルヴァがいるんだよね」
「は、はいです……シルヴァ姉ちゃんも、ククル姉ちゃんも優しくてお父ちゃん達と同じくらい好きです…!」
大好きな人を語っているからか、クムユは少しキョドりながらも年相応の柔らかそうな笑顔を向けていた。
「ククルは銃を作ってたけど…クムユは銃弾の火薬を調合してるんだよね」
「クムユは、お父ちゃん達から教わったのを実践してるだけです。で、でも……いつかは、ククル姉ちゃんやシルヴァ姉ちゃん専用の銃弾を作ってみてーです」
「いいね……あ、俺には無いのかな?なんて」
ちょっとした冗談を言ったつもりだったのだが、何故かその瞬間クムユの顔が真っ赤に染まり、目が凄まじい勢いで泳いでいた。これこそ、目がぐるぐるしていると言うやつだろうかとグランは思ってしまう。
「ぴゃ、ぴゃ、ぴゃ…!?い、いきなりそんな事言われても恥ずかしーに決まってるです!!てやんでー!!」
「……もしかして、俺なんか変な事言っちゃった?」
「お、お母ちゃんが言ってたです!男に渡していい銃弾は結婚指輪と同等だって!!」
銃工房、クムユやククルのお母さんというのはかなり肝が座っている女性なのだが、まるで山賊などの仲間にいる女性のような特徴しかない。いい人なのだが、肝が強い事と偶に冗談とは思えない冗談を口走ることがある。
「……銃工房の常識が分かんないから、女将さんの冗談かどうかがわからない…」
「て、てやんでー……だ、団長さんは…クムユと結婚してーですか…?」
「していいの?」
「は、はわわ……!」
少し楽しくなってきてしまいそうだが、流石にこれ以上乙女の純情を弄ぶ訳にはいかないと、グランはダンボール箱を取り出す。それはお便りの入った箱でありいつもの様に掻き回していた。
「とりあえず、お便り読みあげようか。クムユはどんな質問が来て欲しいとかある?」
「へ、へ?そ、そう言われても……クムユ、ビビりなのを治すためにこれに参加しただけで…よくわかんねーです」
「ふむ……とりあえずこれいってみよう。『銃工房で暑い時は脱ぐらしいですが、火花とか当たった場合火傷しないのです?』アステールだね」
「い、いつも脱いでるので気にしたこと無かったです…それに、火傷も…クムユは身長が足んねーと言われて、触らせてもらうことが少ねーです。だから、火傷はお父ちゃん達もクムユもした事がねーです」
「あれ?ククルが銃作ってる時って、鉄の形整えるためにカンカン叩いて火花出てたけどあれは?」
少し前、銃工房のいざこざが少々起こった際にグランはククルの作業を少しだけ覗き見たことがあった。
無論、部屋の温度管理とかもあるらしいので中に入って黙って見ている程度だったが、その時は程よく火花が散っていたような思い出があった。
「ククル姉ちゃんは、ちゃんと自分に当たらねー様に距離を離していたです。お父ちゃん達も同じようなものです。けど、クムユは身長と腕の長さが足んねーから…力もみんなと比べて弱ぇですし……」
「……持ち上げるのが大変?」
「け、けどあくまで昔の話です!今はクムユも立派な職人……になるために頑張ってる見習いですー!」
「ふふ、ごめんごめん」
プンスカ、という疑問が似合いそうな程に頬を膨らませて両手を上下に振るクムユ。その勢いで2つの大きな砲弾が上に下に勢いよく動いているので、グランの言葉は尻すぼみになって行き黙ってそれを眺めている状態になってしまった。
「……」
「だ、団長さん?何か顔がこえーです……」
「おっとごめん……2通目いって大丈夫?」
「クムユは全然問題ねーです!!」
「んじゃあ2通目いってみよう…」
ガサゴソと箱の中を掻き混ぜいていき、そしてその中から無作為の1枚を取り出す。
「2通目『銃工房はいつもあんなに皆軽装なのか?』アレク」
「工房の中は熱いから、薄着じゃないと倒れてしまって……」
「あー……かなり薄着にしててもすごく汗かいてる時あるよね。前のククルの時とか」
「お父ちゃんも薄着だし、気をつけてさえいれば火傷はしねーですみます。だから、あんまり厚着することがねーです」
そう言えば、とグランは銃工房一家の格好を思い出していた。とりわけ、目の前で見ている分ククルの格好が1番イメージに近い格好なのもあった。
かなりの薄着、厚着してそのまま加工なんてやった日には、熱さで水分不足になる可能性が高いと言わんばかりの薄着。
「クムユも作業の時は薄着になるの?」
「は、はい。けどクムユは、あんまり薄着になったことがねーです」
「今は
「クムユが作業するとなると、あれくれーの格好になると思うです。流石に上着は脱ぐでしょーが」
入団当初は、まるで姉御肌!と言った感じの服を着ていたクムユだったが、後で母親から貰った服はフリフリのふわふわな感じの服だったので、年相応の可愛さが目立つ服装になっていた。
「水着は?」
「あれはまた用途がちげーですし……そもそも足を見せるのは、危ねーです。薄着になると言っても、流石に足の方は危ねーんで分厚いズボンを履いてるです」
「そう言えば、ククルもズボン分厚かったね」
「はいです」
ただの薄着ならば、男性は最早下着で良くなってしまう。しかし、上半身はともかく下半身は守っておかねばならないのか、よくよく考えたらククルはそういった格好になっていた。
「なるほどねぇ……」
「早くクムユも、ククル姉ちゃんみてーな格好をしてお父ちゃん達のお手伝いをしてーです」
「銃工房の女将さん達も、こんな親思いな娘がいて大層感動してるんだろうなぁ……」
「く、クムユはまだそんないい子じゃねーです!ビビりだし…」
「ビビりと言っても、それは大分改善されてきたじゃないか。最近大きな物音がしてもビックリしなくなっただろ?」
「そ、それはそーなんですが……」
「大丈夫大丈夫、クムユの思いは親御さん達に伝わっているからさ」
そう言いながら、グランはクムユの頭を撫でていた。その行為に赤面するクムユ。まるで仲のいい姉妹のような風景だった。グランは赤面するクムユが可愛いと思い、そのまま撫で続ける。それに比例するかのようにクムユの顔も真っ赤に染まっていく。
「……おっと、このままほのぼの映像を流し続けていたいところだけど、そうなるとちょっとまずい事になってしまう。三通目に行こう」
「そ、そう言いながらなんで頭を撫でるのを止めねーんです!?」
グランは片手でクムユの頭を撫で続け、そして器用にダンボールを脇で抱えながら余った腕でお便りを探す。
「ほい『銃使いの団員の弾を作っていたりするんですか』」
「流石にそこまでのことは、クムユに任せたら駄目じゃねーかと思うです」
「まぁそれは確かにそうだけど……理由は?」
「銃に一人一人の癖が染み込んでるのと同じように、弾丸も一人一人の癖が詰まってるから……って感じです」
「弾丸に?」
イマイチピンと来ないグラン。銃ならば理解できるが、銃種に合った弾を選ぶというのならばともかく、使い手の癖が詰まっているというのがイマイチ理解出来ていなかった。
「弾丸ってーのは、銃が同じでも使い手の使いやすさによって、変わってきちまうんです。それに、弾を込めたら銃の総重量も変わってくるんで……あんまり自分に合ってない重さの弾丸だと、重心がブレる可能性だってあります」
「はー……なるほど。確かに使える銃によっちゃあ、複数の弾丸を使用することも出来るしね」
「だから、無闇にクムユが使うよりは1番自分に合っていると思う弾丸を作ることが重要、ってー考えです」
「シルヴァやククルの弾丸は?」
「シルヴァ姉ちゃんは、狙撃銃のスペシャリストなんでクムユの作った弾丸も使ってくれます!ククル姉ちゃんのはちょっと特殊なものもあったり……だから、クムユが関わっている場合とそうじゃねー場合があるんです」
「なるほどねぇ……」
グランはシルヴァの狙撃銃と、ククルが使っているオリジナルの銃を思い出していた。
ククルが最近使っているものは、大量の弾を一気に撃ち続けると言った方式のものであり、狙撃銃とは違って大量の敵を掃射するのに適している銃である。
「っと……そろそろ時間だ」
「そう言えば、さっきから気になってる事がありやがるんですが」
「え、何?」
「団長さん、さっきからクムユのどこを見てやがるんです?」
「そりゃあ勿論おっ」
久しぶりの落下である。というか13歳の少女に対して、胸を見ているというのは最早セクハラ以上の犯罪なのではないだろうか。
そして、あまりにも久しぶりすぎてグランもそう言えばセクハラしたら落とされる…というのを完全に忘れていた。
「だ、団長さん!?」
自然な落下、一応下で待機してる者達がいたためギリギリで落下死する事は免れているが、いきなりだった為クムユはついつい驚いてしまう。
「そろそろし始める頃なんじゃないか、と思ってましたよ」
「ぴゃあ!?」
そして唐突に隣に現れるリーシャ。追加で驚くクムユ。突然人が隣にいたら誰だって驚くだろう。
「こ、こんちくしょー!!!」
そして、何故か叫びながらクムユは部屋から大慌てで出ていった。その顔には半泣きのせいか、涙が少しだけ溜まっていた。どうやら、驚き過ぎてキャパオーバーしたようだった。
「……え、あれ…今のもしかして私のせいですか?」
そして、困惑したリーシャの質問に答える者は誰一人として居ないのであった。
その後、グランの部屋に大泣きしているクムユが入ってきて、暫くあやすことになったのだが……グランはその時に、クムユを慰めるとは別でいい思いをしているのはまた後日の話である。
「団長さんは意地悪ですぅ…! 」
「え、まだ俺なんもしてないけど!?」
ボロ泣きクムユをあやしながら街に出る訳にも行かず、何故かリーシャに真後ろを着いていかれながら、グランは何とかクムユをあやしきったのだった。
その時にリーシャが言っていたのは、『お胸が豊かな小さな少女を泣かしている男の図』のようにしか見えないという事だった。
グランは反論しようとしたが、リーシャには反論が許されないというのも思い出して、そのまま泣き寝入りをする子のごとく、黙ってリーシャが着いてくるのを我慢するしかないのであった。
水着クムユの隣でSRの水風船をレスラーで割りたいだけの人生でした。