ぐらさい日記   作:長之助

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灼脚の麗姫、あたし着いていけてる?

「第2回団長相談室、ゲストはアリーザさんです」

 

「どうもー!!アリーザです!!誰かあたしと勝負してみない!?」

 

「はい騎空艇で暴れないでね、この団で暴れるメンバーみんな強すぎて、船が本当に壊れちゃうから」

 

 第2回団長相談室、部屋に招かれたアリーザは元気よく大声で自己紹介していた。それを、グランは冷静に流していた。第1回の時と同じく、BGMが流れているが、アリーザはそれを気にしない。

 

「で、前の時に思ったんだけどいい?」

 

「え、何?」

 

「これってさ、団長相談室って名前だけど団長『に』相談するんじゃなくて、団長『が』相談するってこと?」

 

「よく気づいたな正解だ。特に何もやれないけど」

 

 アリーザは元気よく話しているが、グランは淡々と進めていた。相も変わらずBGMは鳴り止まずに流れていた。

 

「ていうかこの音楽何?」

 

「なんか、『無茶振りしても許されるBGM』らしい。魔法的なものはなくて、ただそう言われてるだけだが」

 

「それ多分BGMじゃなくて、人の問題だと思うな」

 

 椅子に座って、置いてある飲み物を直ぐに飲み干してアリーザは元気に座り直す。グランは、相変わらずアリーザから視線を外さずに淡々としていた。

 

「で、呼ばれたってことはあたしに何か聞きたいことがあるって事?」

 

「うん、いやというか多分さ……アリーザと組んだ人達から男女問わずに来ている質問なんだけどさ」

 

「うん」

 

「なんでパンツ隠さないの?」

 

 グランの淡々とした質問、だが先程まで活発になっていたアリーザまでもが沈黙してしまう。いや、沈黙というよりはいきなりの質問で思考が追いついていないという方が適切である。

 

「……パンツ?」

 

「パンツ」

 

「……あ、蹴る時?」

 

「蹴る時」

 

 短い単語で会話をする2人、しかしアリーザは今のやりとりで納得したのか安堵の息を漏らしていた。

 

「あぁ、あたし下に履いてるのアレパンツじゃ……あぁいや下着じゃないよ」

 

「え、そうなの?でも服の下に履いてるじゃん」

 

「スパッツみたいなものだよ、本当に見せちゃあいけない下着が見えてたら大変だよ〜」

 

「あぁ確かにそうだもんな、下着なんて見えてたらやばいもんな」

 

 下着みたいな格好している団員もいるし、なんなら下着付けてますか?と聞きたくなるような格好の団員もいるので、見える見えない以前の問題なのだが。

 

「というか前回は第1回だったからな、第2回ということもあってかいろんな団員のいろんな質問を受け取っている」

 

「どゆこと?」

 

「まぁ、要するにアリーザ宛に質問が来ているって話だ。」

 

「へー、どんな質問が多いの?」

 

 グランが取り出した小さなダンボール箱。その中には束になっている紙がいくつも入っており、グランは無作為にその中から1つを取り出して読み上げていく。

 

「んー……じゃあ1つ目『そんなに活発に動き回って胸痛くならないの?』」

 

「え……あぁいや、ちゃんと胸固定出来るものは付けてあるよ?というか誰、これ質問したの」

 

「名前を知られたくない時は仮名か無記名だが……あ、これソーンって書いてある」

 

「ソーンさん……」

 

 同性だから気になっていたのか、ソーンからの質問に俯くアリーザ。ドラフ族特有の体型は、他の種族の者達も気になっているようだ。

 

「えー、じゃあ2つ目……『パンツが気にならない蹴りの仕方を教えてほしい』これシルヴァだね」

 

「うーん、さっきも言ったけど、これ本当のパンツ見せないようにするためだしなー

 予定が合ったら今度一緒にそういうの買いに行こうね〜」

 

「えー、まぁとりあえずこれで一旦最後にしてみよう。『どうやったらそんな風に大きくなれるのでありますか!?』……ってシャルロッテ騎士団長さんが悩んでますけど」

 

「いや、種族的な体型はもうどうしようもないんじゃないかなぁ……」

 

 シャルロッテからの質問に、アリーザはゲンナリしながら答えていく。そして、完全に突っ伏しながら顔だけを上げてグランの方に視線を向ける。

 

「うーん…身長が小さいから、胸が大きいのって案外結構しんどいんだよ?」

 

「それ、他のドラフ以外の女性の前で言ってみな。多分すごい目で見られると思うから」

 

「そういうものかな?」

 

「他の種族、ってのは分かってるだろうけどそれでも羨ましくはなるもんだろ?俺だって、ドラフ男性の身長の大きさとか筋肉の付き方とか、結構羨ましいと思ってるしさ」

 

 グランの言葉に、アリーザは少々納得していないようだが、ドラフ男性の体格のことを出されて思う部分があったのか、どうやら概ね納得してくれたようだ。

 

「まぁ、そういうものなんだって言うのは理解出来たかも」

 

「理解出来たならよろしい」

 

「……そう言えば、今回は落とされないんだね?」

 

「あ、パンツの話の時に?」

 

「うん」

 

 自分が質問されることはあまり考えてなかったのか、グランは意外そうな顔になっていた。

 アリーザも、そこが気になっているのか姿勢を直してグランの事をじっと見ていた。

 

「いや、あれリーシャも気になってた話題だったんだよね」

 

「あ、そうだったんだ……にしても皆気になるなら聞けばいいのにね」

 

「え」

 

「え」

 

 驚いた声を上げるグランに対して、アリーザも意外そうな声で返していた。そして今そこでなんで驚くのか、と言わんばかりの表情をグランに向けていた。

 

「いや、お前さすがにそれはないわ」

 

「え、なんで?」

 

「え、じゃあ逆にスタンがアリーザ以外に『今日何色のパンツ履いてますか?』とか聞いていいの?」

 

「そんなのいい訳ないじゃん」

 

「そういう事だぞ?」

 

「ん?……あ、もしかして普通にセクハラ?」

 

 全くその可能性に行き着いていなかったのか、アリーザは意外そうな顔でそう答えていた。

 グランは少しだけ呆れていたが、しかしそこがまたアリーザらしいと言えばアリーザらしいので、あまり強く言わない方がいいとそれ以上のツッコミは控えた。

 

「逆になんでお前セクハラになんないと思ってたの?」

 

「いやぁ、いつも見せてるものに対して聞かれることがセクハラになるとは……」

 

「アリーザからしてみればいつも見せてるものだろうけど、他の人達から見たらパンツ見えてるよ、って言うに言えない状況だからな」

 

「え、なんで?」

 

「パンツ見えてるって意外と言えないもんだよ、異性には」

 

「男って不憫だね」

 

「単純に性別の問題だから男どうこうって話じゃないけどな、隣の芝生は青いって奴だ……使い方違うなこれ」

 

 自分で言ってから悩むグラン。その様子を眺めながら、お代わりしたジュースをアリーザは飲み干していた。

 

「……そう言えば、ドラフ族って寝る時どうしてんの?」

 

「寝る時?」

 

「いや、角があるから横向きになれないじゃん?かと言って男はともかく女性はうつ伏せもキツそうだし」

 

「あー、やっぱりそう思うんだ」

 

 明るく微笑みながら、アリーザは深く座り直す。そして自分の角を指さしながら答え始める。

 

「まぁほとんどその通りなんだよね。確かに、うつ伏せなんて出来るのはほんとに小さい時だけだよ」

 

「ヤイアですらあれだからな……ドラフ女性って成熟しやすいのか?」

 

「そうなんじゃない?他の人の意見も聞いてみないとわからないけどさ、ハーヴィン族よりは大きいとはいえ、ヒューマンの10代前半くらいの身長しかないから肉体的にはかなり早く早熟するんだろうね」

 

 ヤイアの例もあるので、早熟しやすいと言われればそういう物なのだろうと納得はできる。

 グランはこの団にいる色々な女性ドラフの事を思い出しながら、うんうんと頷いていた。

 

「あ、話題戻していい?」

 

「え、何?」

 

「胸固定出来る下着って割と頑丈なやつ?」

 

 何故か下着のことを聞き始めるグランに、アリーザは目を点にした。もしかしてそういう趣味があるのか?と思ってしまうほどに頭が混乱していた。

 

「え、何でそんなの聞くの?グランも付けるの?」

 

「なんで俺がつけるんだよ……そうじゃなくて、この間依頼に行った時にソフィアとシルヴァの下着が壊れたって話してたからさ、できれば教えてあげて欲しいなって」

 

「それくらいならいいけど、ちょっとビックリしちゃった」

 

「オーダーメイドじゃない限りは、出来る限りいいお店は紹介しあった方がいいしな

 強制はしないけど」

 

 グランのその言葉に、3杯目のジュースを飲み干したカップを置きながら、アリーザは少し疑問を持った風でグランに喋り始める。

 

「グランってさ、その辺ドライだよね〜

 まぁみんな好きに出来てるのはそれが理由なんだろうけどさ」

 

「まぁなかよしこよしを押し付けたらダメだと思うしさ。これだけ大きな団になってくると、全員が全員手を繋いでお店に行こう……なんて出来るとは思ってないよ

 皆違って皆いいって奴」

 

「ふーん……まぁ、いろんな人乗ってるから価値観の違いすごいよねここ」

 

「王族から村人まで、老人から子供まで……色んな人がいるな、確かに」

 

 色々な団員を思い出していきながら、グランはこの団の多種多様性を改めて思い知っていた。自分が団長ということも忘れて。

 

「価値観が違うから、他種族間の恋愛とかの話も聞く時あるからね〜」

 

「1番の例がお前達だけどな」

 

「あ、そういえばさっきの体型の話に戻るんだけどさ」

 

「お前が戻すのか……」

 

 急に話を戻すアリーザ。苦笑いしながらも、グランは話を聞くことにする。すると突然、アリーザは自分の胸を両手で持ち上げ始める。

 

「ドラフの女性ってみんなこんな胸大きいけど、他の種族から見てどう見えてるの?」

 

「どう、見えてる、とは?」

 

 グランは、ポヨンポヨン弾んでいる胸を見ながらアリーザの問いに問いで返していた。というか、話を聞いていられるほど冷静になれていない。

 

「だってさ、ドラフ男性ってこの胸に余り興味が湧いてないんだよね」

 

「何だと!?」

 

「ど、どっちかというと控えめな方が興奮する?とかなんとか」

 

「お前それどこで知った」

 

「この騎空団に入る前まで、お見合いが多かったけど……その時にいた人の1人かな」

 

 グランはつい立ち上がって大声を出してしまったが、アリーザの言葉を聞いて席に着く。そして、少し思考し始める。

 興奮する、というのは自分とは違う部分……もしくは間違いを犯すということを意識することで初めて興奮材料たり得るのだ。つまり、エルーンはもしかしたら着込んでる人が好みなのかもしれないし、ハーヴィンは大きい人が好きなのが多いのかもしれない。あくまでグランの予想であるが。

 

「……そうか、なるほど…ドラフ男性ならまぁ分からなくもない。見慣れたものには興奮しないからな…」

 

「そういうもの?」

 

「そういうもの……だと思う」

 

「ふーん……」

 

 アリーザは素っ気なく返事をする。『そういうもの』だと言われれば確かにその通りなのかもしれない。自分と同じ所に惹かれるのは、ナルシストみたいでどうにも落ち着かない感じがしたからだ。

 そして、グランは何を思ったのかアリーザの胸を凝視しながらすごく真面目な顔つきで、喋り始める。

 

「というわけでアリーザ、俺がちゃんと興奮できるかどうか確かめる為に胸をm━━━」

 

 そこまで喋ったところで、グランの姿が急速に下に動く。セクハラを働き掛けていたので、別室にいるリーシャがスイッチを押したのだ。

 アリーザは一瞬驚いたが、テーブル越しにグランが落ちた穴を見て苦笑いをする。

 

「うわぁ、本当にこれ空に投げ出されるじゃん……」

 

 今回はリーシャは現れないようで、しばらく待っていても現れなかった。仕方なく、最後にお代わりで入れたジュースを飲んでカップを置いてから、アリーザは部屋から出ていくのであった。

 

「……あれ?そう言えばポットも何も無かったけど……あのジュース、誰がお代わり入れてたんだろ……他に、誰もいなかったよね……?」

 

 ……少し、考えて怖くなったのでアリーザはそのことに関しては特に何も考えないでおこう……と、思ったのであった。




見せパンって下にパンツ履かないらしいですね。でもアリーザは履いてることにしました。

偶には長編とか書いて欲しい

  • はい(ギャグノリ)
  • はい(シリアス)
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