ぐらさい日記   作:長之助

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千年を継ぎし者、堪忍な?

「今回のゲストはソシエさんです」

 

「よ、よろしゅう……な」

 

「肩の力抜いてリラックスリラックス」

 

「肩の力、抜いて…すー……はー……」

 

 顔を朱に染めながら、ソシエは深呼吸をして自分を落ち着かせようとする。何度か深呼吸を行い、落ち着いたか?とグランが考えた瞬間━━━

 

「グ、グランはん…カメラあるから言うたって、グランはんと二人きりは…かなわんわぁ……」

 

 結局落ち着けなかったのか、顔を先程以上に真っ赤にしてソシエが悶えていた。余程、グランと二人きりで一緒にいるというのが彼女にとっては耐えられないらしい。

 

「二人きりになる事なんてまぁまぁあるから、まぁココアでも飲んで落ち着いて、な?」

 

「お、おおきに……」

 

 ソシエは耳を激しく動かしながら、グランから手渡されたココアをゆっくりと飲んでいく。両手で支えながらゆっくりと飲むその姿は、彼女の育ちの良さを十二分に見せつけてくれる良いものであった。

 

「落ち着いたか?」

 

「ちょ、ちょっとだけなら……」

 

「ならよし、まぁ初めは多少の雑談とかして気を紛らわせていこう」

 

「そ、そうや……グランはん…」

 

「ん?どした?」

 

「尻尾触りたいんやったら……触っても、ええよ?」

 

 グランは先程まで、ソシエをリラックスさせるために笑顔だったのだが、ソシエの顔を赤くしながらのその発言に、レスラー並の真顔ぶりを発揮していた。

 

「尻尾?」

 

「う、うん……ユエルちゃん時もそうやったけど、別にウチら…気にしてないから、な?」

 

「いやまぁ、俺としては触りたいんだけどな」

 

「な、なんかあったん…?」

 

「アンチラに、尻尾浮気はしちゃいけないと泣きながら怒られた」

 

「そ、そらどうしようもない、わ……」

 

「どうしようもないのか……尻尾はお一人様1名までなのか…」

 

 よくわからないことを口走りながら、グランは頭を抱えていた。最早彼自身が何故頭を抱えているのか、それすらも分からないままに頭を抱えてしまっていた。

 

「す、好きな人には……自分だけを触ってもらいたいから…ね…」

 

「好きな人、ねぇ…」

 

 その言葉の意味がわからないほど、グランもアホではないとソシエは思っていた。唐変木とまではいかないが、それなりに人の心を機敏に感じ取れるだろうと。

 まぁ、ここでそういう話題を出すのは少し卑怯だとは彼女自身思っていたが。

 

「……そ、そのグランはん?」

 

「ん?」

 

「番組……進めよか…」

 

「せやな!!!」

 

 グランはお便り箱を迫真の顔で漁っていく。表情の迫真さと、体の地味な動きのギャップがツボったのか、ソシエは声を殺しながら笑っていた。不意打ちだったが、耐えられてしまったことにグランは少し不服であった。

 

「という訳で切り替えて1通目『着物は重くないんですか』」

 

「重くはない、かな…けどどっかの島にはすごい重い着物がある言う話なら知っとるよ…」

 

「まぁ見た目が凄いからね、モフモフの極みというか…その島の重い着物ってどんなやつなの?」

 

「文献で調べたことある程度やけど……なんでも、着物を12枚重ね着するらしいんよ」

 

「それで重くなるの?」

 

「そうみたい…」

 

 実際に見たことがないために、グラン達はその重ね着がどれほど重いのかは想像出来ないが、しかし言うからにはすごく重たいものなのだろうと言うことだけは理解出来ていた。

 

「仮にそれだけ重いとなると、舞は踊れそうにないね」

 

「そ、そう見たい…それに何回も脱いだり着たりするのが面倒やから…しばらく着続けるみたい」

 

「…それってつまり、ずっと着たまま風呂にも入らずって事…?」

 

「……ほんまや、そうなるんだ…」

 

 ソシエも気づいていなかったのか、驚いた顔でグランと目を合わせていた。特にソシエは尻尾のあるエルーンの為、自分の体の匂いなどには敏感なのである。放置していると、尻尾に汚れが溜まっていくのだそうで。

 

「……む、昔の人て…体臭いの気にならんかったんかな…?」

 

「気にならないわけが無いだろうし…なんかで誤魔化してたのかもしれない」

 

「な、なるほど……」

 

 ソシエは耳を激しく動かしてグランの意見に聞き入っていた。その仕草が、とても子供っぽい可愛らしさを出していることにグランはにやけ顔が止まらないでいた。

 

「ぐ、グランはん…?なしてそないに顔が崩れてるん…?」

 

「いや、ソシエって子犬みたいだなぁって」

 

「う、うち…ワンちゃんなん…?」

 

 なぜ急にそんなことを言われたのか。それをソシエは今一理解していなかったが、グランが人を貶すようなことは言わないと信じているので、きっと褒め言葉なのだろうと解釈していた。

 そして、褒め言葉だと認識した途端心が暖かくなるような嬉しさも覚えていた。

 

「何かさ、ソシエの反応と耳の動き見てたらついね」

 

「あ…ウチ、耳動いてた?」

 

「そりゃあもう、空に羽ばたくんじゃないかってくらい」

 

「…空飛べるくらい?ウチが空飛んだら…ユエルちゃん喜んでくれるかな…?」

 

「いやそれはわかんないけど……まぁとりあえず2通目行こう。『寝る時の体勢ってどうしてますか?』」

 

「…?寝る時…ウチは横向いて寝てるよ」

 

 多少首を傾げながらも、ソシエは少しの言葉で会話をおわらせる。横向きとなると、尻尾と胸がどちらも上にも下にも向いていないということになる。

 

「やっぱり、尻尾に体重かかるの辛い?」

 

「そ、それもあるけど……毛に癖ついてまうんよ…」

 

「あぁ…」

 

 睡眠時間がいかほどかは知らないが、仰向けで寝た場合寝返りすることを含めても、1時間かそこらはずっと尻尾が下になるために、潰されてしまうのだ。そうなると、毛に癖が残って翌日からのケアが大変だということである。

 

「うつ伏せは…」

 

「呼吸しづらくて辛いんよ…」

 

「だろうね」

 

 ソシエもユエルも、それなりのものを持っているからね。とグランは言葉を出そうとしたが、出した瞬間落とされてしまいそうな気配を感じたので喋ることは無かった。こんなタイミングで落とされたら、番組が終わってしまう。

 

「他の子はそんなことないみたいで…羨ましいわぁ」

 

「尻尾ついてる間柄でそういう話題ってやっぱりあるの?」

 

「ウチらでしか共有出来ひんし……コウ君に聞いても、うつ伏せで寝てることあるらしいわ…」

 

 コウ。それはユエルやソシエと同じ尻尾付きのエルーンの少年であり、彼女達2人の関係性を示す『九尾』関係の少年でもある。現在はとある島に住んでいるという話がある。

 

「まぁ彼は男の子だしね」

 

「そういう時…男の子にちょっと憧れるわ……もしウチが男の子やったら、ユエルちゃんも守れるかもしれんのに…」

 

「ソシエが男……」

 

 今のソシエを男にしても、グランはピンと来なかった。純粋で天然な少年になるだけでは?と、グランは思ってしまっていたからだ。

 

「……そ、そないに変かな…?」

 

「いやまぁ、ちょっとイメージしづらかっただけだから気にしないで」

 

「そ、そう…?それやったらええんやけど…」

 

「じゃあラスト、三通目『なぁソシエー、ウチの事大好きー?』…ユエルだこれ」

 

 質問と言うよりも、まるで友達か恋人にするかのような軽い疑問。しかし、それでもユエルから来たものは嬉しかったのかそその表情はまたとても嬉しそうなものへと変貌していた。

 

「う、ウチは…ユエルちゃんの事大好き…あ、後…」

 

「ん?」

 

 ソシエがグランを見た瞬間、グランは自分に指を指す。見たことがバレて恥ずかしかったのか、ソシエは手で持っていた扇で自分の真っ赤になった顔を隠していた。

 

「ほ、ホンマにみんな…大好き、やから……」

 

「ここにユエルがいたら、ソシエに抱きつきながら頭撫でそうだ」

 

『ウチもソシエのこと大好きやでぇー!!』と言いながら抱き着く姿を、グランとソシエの2人は容易に想像していた。ユエルならやりかねないと、いい意味で予想して2人で顔を合わせてつい笑ってしまう。

 

「…ふふ、確かにユエルちゃんならしてそう…」

 

「でしょ?ユエルのスキンシップって、親しくなればなるほど激しいからね」

 

「た、多分そういうことすんのは……ウチと、ルリアちゃん…ビィに…グランはんだけやと思うわ……」

 

「他にはしそうな人いないの?」

 

「せ、せいぜいコウ君くらいやないかな……でも、ユエルちゃんは自分が大好きな人くらいにしか、ホンマにスキンシップせえへんから…」

 

 誰とでも仲良くなるスキルを持っていそうなユエルだが、それでもあまり過剰なスキンシップはしていないとソシエは言う。おそらくそれは男性限定で、女性に関しては抱きつく人は多いのでは?とグランは思っていた。実際のところ、どちらなのかは2人にもよくわからないままなのである。

 

「さて…今日はここまでかな」

 

「あ……もう、時間なん?」

 

「そうそう、まぁ案外短く感じるよね」

 

「せやなぁ……もっと、グランはんと二人きりでおりたかったわ……」

 

「はは、俺の私室まで二人き」

 

 毎度の事ながら、グランは落とされていた。最近雑に落とされすぎじゃない?とか思っているが、しかしまぁ今のは落とされてもしょうがないとは思っていた。

 流石に今のベリアルばりのセクハラは頂けなかったのだろう。

 

『特異点、そういう時はこう言うんだ』

 

「ベリアル、お前…死んだはずでは…!?」

 

『いやこれは特異点の妄想だし』

 

 グランの心の中のベリアルが、何故か語りかけてきていた。因みに今のグランのセリフは、言いたかっただけである。

 

「それで?落下している俺が言うべきセリフとは?」

 

『決まっているだろ?特異点、君もよく聞いてるはずだ』

 

「はっ……まさか…!?」

 

 グランは、妄想の中のベリアルが何を言いたいのか理解した。そして、妄想の中のベリアルと同時に、そのセリフをグランサイファーの底面に向かって言い放つ。

 

「『俺と姦淫しないか?』」

 

「グラン、その誘い方はないわ」

 

「あ、はいすんませんでした」

 

 因みに、既にメーテラに拾われているので今のセリフはガッツリメーテラに聞かれていた。

 ちょっとまんざらでもなさそうだが、メーテラはそれを口に出さない。

 

「ほら、いつも通り船に戻しとくから」

 

「あぁ、うんありがと」

 

「…あんた、頭おかしくなってんなら休みなさいよ?」

 

 メーテラにまで頭の心配をされてしまったので、グランは仕方なく今度病院に行くことになってしまった。

 そこまでおかしいことを呟いていただろうか?と、グランは思っているが、正直なところ頭の中に妄想のベリアルがいるという時点で立派な精神病である。

 

「……明日、団全体を休みにするかな…」

 

 余談だが、次の日のグランサイファーは一切仕事をせず、とある島で1日休んだり遊んだりをする団員で溢れかえったという。

 グランもその中の一人だったのだが、休んでいる時に来てくれたソシエにこう言い放ったという。

 

「なぁソシエ、休みの日って何すればいいんだ…?」

 

「……う、ウチとユエルちゃんと一緒に出かけるとか?」

 

「……そうだな、ユエルも誘って出かけるか」

 

 多少呆けながらも、グランはとりあえず2人と出かけたのであった。




ソシエの背中触りたいという欲望があるのは自分だけでしょうか

偶には長編とか書いて欲しい

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