「怒っていいですか」
「何で急に怒るんですか、本日のゲストのヴィーラさん」
本日の相手はヴィーラ、カタリナにご執心の一途な女性である。但し、最近は他の者とも付き合うようになったため、基本的な態度は軟化している。
「まず初めがお姉様では無かったことに対してです」
「いや、まぁ……1番初めって緊張しやすいから、なるべく破天荒な人物の方が良かったって話」
「…まぁ、確かにお姉様は清く正しくそして高潔であるお方です。その判断は、間違ってないと言えるでしょう」
「まぁカタリナもいずれやる予定だよ、本人がいいならね」
「……その言い方だと、まるで本人に断られたパターンがあるようですね?」
「と言うよりもまぁ……本人の顔が出せないパターンかな、あと名前とかね」
グランは名前を言うことは無いが、例えばどこかの英霊使いの元国王だったりは顔も本名も明かせない存在なので、この番組には出せなかったりする。
「そうなんですか……所で団長さん、1つご提案…というか話したいことがあるのですが」
「ヴィーラから?そりゃまた珍しい……俺が出来そうなことなら手伝いますよ」
「では遠慮なく……お姉様と一緒の部屋に」
「駄目です」
「……出来そうなことなら手伝うと言ったのはあなたですが?」
「団長はなんでも知ってます、それが叶えられるかどうか自分の心にちゃんと聞いてください」
「……くっ」
ヴィーラは日記を書くのが趣味である。その日記の内容としてちょっとカタリナの事に中心になっている事が問題なので、団長であるグランとしては『何か暴走しそうな気配がある』ため却下せざるを得ない。
「まぁいいでしょう……所で、これは1人同士の話し合いですよね?」
「基本的には……ね。場合によっては、複数人と同時に話し合うこともあるよ」
「そうですか……」
「今ローアイン達のこと考えなかった?」
「何故私が?」
「今物凄い殺意と笑みを見たからだけど。殺し合いダメ、絶対」
手で大きくバツを作るグラン。基本的には男は苦手なヴィーラだが、最近ではグランにはカタリナ並に心を開いてきていた。
「ところで団長さん」
「はい何でしょうか」
「お姉様のチョコは如何でしたか」
「刺激的な体験ができたよ」
「そうですか、私もです」
目を合わせるグランとヴィーラ。この2人は結構絡みも多いが、カタリナの作る料理等は2人にとって、絆を深める結果にしかならないことが多い。
「そう言えば、ヴィーラって料理出来るの?」
「領主だった時はさせて貰えませんでしたけどね……この団に入ってから、料理の練習をする事が増えたのでまぁそれなりに…と言った所でしょうか」
「今度デザート作ろうか」
「……二人きりでですか?」
「人が少ない方が好みなら、二人でやるけど?」
「……団長さんって、罪な人ですよね」
「まぁ最近少なくなったけど、秩序の騎空団の檻に入れられることがあったから罪人だよね、うん」
「そういう意味も含めてですよ」
変な事実があるために、妙な解釈をされるとこうなるという見本である。何故これが団長なのか、とヴィーラは思わなくもなかった。
「お便り、読んでくださいません?」
「あぁ、うん……さてでは早速引いてみよう。1通目『一時期凄い格好になっていたっすけど、あれ何でっすか?』これファラからだね」
「何故彼女に……まぁいいでしょう、
「あの時は…確かシュヴァリエが着いてきたことが発覚したんだよね」
「えぇ、シュヴァリエの力を顕現させるとあのような格好になっていました」
「……シュヴァリエが考えたってこと?あの衣装」
背中やへそが丸出しであり、『それ下着じゃね?』と思えるかぼちゃパンツのような何か。彼女の格好はシュヴァリエが原因だったのだが、シュヴァリエのセンスが問われる問題のような気がしていたグラン。ヴィーラも、今ここで言われて、初めて気にしたようであった。
「……今度、聞いておかねばいけないのかもしれませんね」
「ひとまず、あの時の格好はシュヴァリエが自分の意思で作り上げた格好です。まぁ、シュヴァリエの力の一端を使えるあたり凄かったよねあの力は」
「そうですね……仮にも星晶獣なのですから」
無論、今でも行使可能な力である。元々城塞都市アルビオンの星晶獣として君臨していたシュヴァリエだったが、ヴィーラのことをシュヴァリエ自身が気にいり、そこからは彼女を主としてシュヴァリエはグランサイファーに乗っていた。
「にしても…私のあの格好…今にして思えば……」
「ん?」
「腹立たしく思えてきました」
「え、待ってなんで?」
「あのチャラ男や彼女に見られてしまっていたことが、です 」
ヴィーラとファラ、そしてローアインは恐ろしいと言わんばかりに仲が悪い。但し、シュヴァリエ無しであってもパワーバランスはヴィーラが1番上であり、1番下なのがローアインというアンバランスになっているためそれが余計に仲の悪さを深めていた。
と言っても、ヴィーラが一方的に嫌っているだけであり、ローアイン達は嫌っていると言うよりは尊敬や羨望の眼差しを向けることもあるが。
「ま、まぁ……しょうがないと言えばしょうがないよ。制御しようと思ってできていたものでもないしさ」
「それは……そうなのですが……」
「とりあえず…2通目に行こう…『生霊出てるってローアインくん達言ってたけど?』コルワから」
「は?」
グランは、初めて本格的な死を覚悟した。傍から聞けばいつもと同じ、ヴィーラの声が少し不機嫌になっている程度だと認識出来るだろう。しかし、グランは今の彼女の声がまるで地獄からの声のように聞こえてしまったのだ。
それほど、殺気が込められていた。
「何ですか生霊って」
「い、いや……俺じゃなくてローアインが言ってる事ね?」
「……ではあのチャラ男達が何を言ってるのか…知っていますか?団長さん」
「……まぁ、大まかには伝えられたよ。だいぶ前にコルワが合コンしてたって話…覚えてる?」
「あぁ、懇親会でしたっけ……団からの出費を出す訳には行きませんでしたが、彼女達が自分で行っていたあれですか…あれがどうかしたんですか?」
「あの時に言ってたらしいんだよね、ローアイン達がヴィーラの話題を出すと何故かヴィーラに睨まれたかのような感覚になるって」
「は?」
何故一々殺気を向けられねばならないのだろうか、とグランは吐きそうになっていた。戦うことには慣れてしまっているが、しかし彼女からの殺気はただただ『殺す』という意思しか感じられないのだ。
「だ、だから俺を睨むのをやめて……ローアイン達が言ってたことなんだからさ」
「あのチャラ男共…1度本気で……」
「まぁ、真面目な話」
「……はい?」
「シュヴァリエの防御機構でも働いているんじゃないの?」
シュヴァリエは今や、ヴィーラという個人に力を貸している存在である。ヴィーラが敵と認識したものを、シュヴァリエもまた敵と認識している為に起こっているのではないか?とグランは予想していた。
「さぁ……幾らシュヴァリエでも私個人があの男達を睨んだ時の感覚なんて再現して何の得になるのか……という話になりませんか?」
「む……それを言われるときついな……」
「……いやでも、私の生霊ですか…」
「……」
何かを企んでいるなとグランは思ったが、何だかんだで一線は超えていないので恐らく大丈夫だろうと考えることを放棄した。また何か口を出して殺気を出されたのでは……おそらく吐いてしまう自信があったからだ。
「三通目『団の中で1番だと思える男性はなんでありますか!?』ペンネーム顎男爵さんからです」
初めてペンネームを使われたとグランは思った。しかし、この名前は…1人しか思い当たらないのだが、タイアーがこんなことを聞くだろうかとも思っていた。
「団長さんです」
「……意外な返し」
「あら、これでも団長さんは尊敬しているんですよ?私の考えていることや、他愛のないことでも話してくれる魅力的な方だと思っています。
ただ……」
「ただ?」
「女性で無いのが残念です」
女性だったらどうなっていたのか、グランは怖くて聞けなかった。可愛い物好きも、大概にしておけよヴィーラ……と言えたならどれだけ精神が図太くなれるだろうか。
「しかし……全員が全員団長さんを目指すという訳にも行きませんからね」
「全男性グラン化計画なんて碌でもないな」
「そんなことをしている暇があるのなら、もっと魅力的になれるように自分を磨くことだけをやって欲しいものです」
言っていることは至極まともなのだが、なぜだかヴィーラがいうと別の意味に聞こえてこなくもない。
果たして、自分磨きをしたところで男性は彼女に相手にされるのだろうか。
「まぁ、冗談なんですけどね」
「ヴィーラが言うと冗談に聞こえないんだけど」
冷や汗を流すグラン。そして、ふと時間を確認するとそろそろ終わりが近い事がわかった。
「……さて、今日はここまでにしよう」
「そうですね、いい時間ですし」
「皆さんご視聴ありがとうございました、またこの番組でお会いしましょう」
そう言ってグランはカメラの電源を切る……と同時に扉が大きく開かれる。
「秩序の騎空団だ!御用改である!!」
突如入ってくる秩序の騎空団所属であるモニカとリーシャ。突如入ってきた2人に、グランは驚いていた。
「え!?待って俺まだ何も悪いことしてねえよ!?」
「いや、今回は彼女の方だ」
そう言って、モニカはヴィーラの方に指を指す。ヴィーラは何も言わずにモニカを見ていた。
「とある筋からの情報だ。どうやら、カタリナ・アリゼの部屋から星晶獣の気配がしたそうだ。詳しく調べてみると……彼女の部屋のベッドの下から、星晶獣シュヴァリエが発見されたらしいな」
「なるほど……もうバレてしまいましたか」
「えっ、えっ…」
「盗撮の疑いで現行犯だ…」
そう言ってヴィーラはそのまま連れていかれる。彼女は一切の抵抗なく、また何かを恨むようなことも一切なかった。ただ、やり切った顔でそのまま連れていかれたのだ。
「……一体全体、何がどうなっているのやら…」
その場に残されたグランは、ただそう呟く事しか出来なかった。自分が逮捕されなかったことも、ヴィーラがシュヴァリエを盗撮カメラ扱いしていたことも、そして何故かやり切った顔をしていたことも……全てが彼にとっては困惑の材料となり得るものだった。
「…とりあえず、部屋に帰ろう」
恐らくいつもの自分のように、ヴィーラは解放されるだろう。というかシュヴァリエを盗撮のカメラのように使って、リアルタイム生中継を自分の目だけで見れるようにするとは……
「……という事は、俺とルリアの視界も繋がる可能性が…ん?」
手元からなる金属音。ふと気になって見てみれば、自分の手には手錠がつけられていた。そして、隣には先程モニカと一緒に戻ったはずのリーシャが立っていた。
「盗撮未遂で逮捕です」
「してないのに…」
「する気満々だったでしょう」
「ふ……負けたよ」
「エリクシールは使えないので、リベンジボーナスだけで耐えてください」
そして、何だかんだでグランも一緒に連れていかれるのであった。因みに、本当にルリアと視界が共有できるかどうかは知らない。
個人的にはグランとカタリナが好きなヴィーラが好きです。
ジータとカタリナが好きなヴィーラはもっと好きです。