「はい、ファラさんです」
「何か雑じゃないっすか!?」
「んなことない、んなことない……というか今日は
「大丈夫っす!この程度全然寒くないっすよ!!」
現在のファラの格好、ノースリーブである。いつも来ている鎧は、今日は着ていないのだそうな。
「えー、ファラは騎士修行中の身……なんだよね一応」
「なんすか?何か足りないところでもあったっすか?」
「いや……ファラって料理上手というか、家事上手だから騎士というよりも主婦目指した方が…って考える時あるよ」
「あはは、褒めても何も出ないっすよ団長。ただ出来ることをやっているだけっす」
ファラの料理の腕は、ローアインやほかの厨房メンバーも舌を巻くほどである。それに加えて、旅に出たばかりのグラン達の厨房係も務めていた事もあった。
さらに、洗濯も掃除も上手となれば最早主婦である。
「そう言えばさ、俺ずっと思ってたことあるんだけどいい?」
「なんすか?」
「帝国の騎士ってさ、ちゃんと男女いるんだよね?」
「当たり前じゃないっすか、寧ろなんでそんな当たり前のこと聞いてくるんすか?」
「だよなぁ、普通そうだよなぁ」
グランがこんなことを聞いた理由。それは、帝国兵にカタリナやファラ以外の女騎士をまともに確認した記憶が無いからだ。七曜の騎士などはともかくとして、一般兵で声だけで判別できる範囲内では見たことがないのだ。
そんなに女性騎士が少なくて、本当にいるのだろうか?と疑問に感じているのだ。
「あぁでも、ファラと一緒の班は別の意味でヤバそうだなぁ」
「どういう意味っすか?」
「いや…料理洗濯といった家事が出来る女性……甘えちゃいかねない」
「……?」
「魅力的な女性って話だ」
「成程!団長はそういう女の子が好きって話っすね?」
少し話がズレてしまうファラ。しかし、ここでふとグランの悪戯心が働いてしまう。別に他意はないが、ファラのような性格の女の子はからかってみたくなるのだ。
「そうだね、ファラとなら結婚できるよねって話」
「……はっ!?」
不意打ちで顔が赤くなるファラ。冗談で言ったつもりだったのだが、真面目に反応されるとボケ殺しになってしまうため、グランまで素っ頓狂な顔をしてしまっていた。
彼が望む反応としては軽くスルーされるか、ヴィーラのような殺意を向けられるかの二択のつもりだったのだが。しかし、ファラにヴィーラ並の殺意を向けられたら、軽く死ねるほどの絶望を味わってしまうという面倒くささがついて回っているが。
「ななな、何言ってんすか急にぃ!?」
「いや、それくらい魅力的って話なんだけゔぉ」
上から降り注ぐ理不尽な武器の雨あられ。ザックリザクザクという軽快な音を立てながら、グランの上から床と垂直になるように武器が降り注ぐ。トドメと言わんばかりに、上からウロボロスが降ってきて押し潰す。
「ちょ!?団長ー!?」
「あぁうん大丈夫大丈夫、生きてる生きてる」
「え、生きてんすかそれ!?」
「ギリギリ生きてる。ファランクスとかで生き延びてる」
「ファランクス凄いっすね!!」
70%カットしても確定で死んでそうな事になっているが、ファラはもう突っ込む気にもなれなかった。
瓦礫の山から生えるかのようにグランの腕が出てきて、ダンボール箱を探してお便りを取り出す。
「じゃあお便り読み上げていこうか」
「え、そのままやるんすか?!」
「あ、確かに今のままだと読めないな……ちょっと待って今出るから」
何事も無かったかのように、グランは武器の山を掻き分けて出てくる。出血もまるでしておらず。よくある武器の形をした玩具だったのではないだろうか…とファラは思考を放棄した。というか、しないとやっていけないと直感で感じ取っていたのだ。
「はいはい1通目…『カタリナさん以外からは、剣を教えて貰ってますか?』」
「ししょーっすね!!」
「確かヨダルラーハに教えて貰ってたよね」
「はいっす!!」
グランも後から知ったことだったのだが、どうやらファラとヨダルラーハはいつの間にやら師弟関係となっていて、それなりに剣の教えをしてもらっていたようだった。
とは言っても、ヨダルラーハレベルになってくると教えも上手いのか最近はかなり腕が上達してきているが。
「団長は師匠に教えて貰ったんすか?」
「いや、剣自体は独学だったよ。俺が教わったのは…せいぜい極意とかくらいかな」
「仲間になった時点で、既に教えられることはないほどに強かったんすね」
「んー……いや、そうじゃないと思う」
「ほぇ?どういう意味っすか?」
ファラが不思議そうに聞くが、説明しづらいのかグランは考え込みながら言葉を発していく。
「んー…多分、だけど…独学が過ぎた、とかじゃないかなぁ……」
「……と言うと?」
「うーん……ファラってさ、ランスロットの剣術とジークフリートの剣術は一緒だと思うか?」
「ランスロット卿は二刀流の手数主体、それと違ってジークフリート卿の剣術は一撃特化のように思えるっす」
ジークフリートは、あの1本で手数を表現し始めるからこそ恐ろしいのだが、今言いたいのはそういうことではないので割愛をする。要するに『剣術の違い』というものを言いたかったのだ。グランは。
「まぁヨダルラーハの剣術と、俺が独学で学んだ剣術はお互いに違ってるものだったって事だよ」
「……うーん」
「……説明ムズいんだよ、俺だって」
「いや、言いたいことは理解してるっす。カタリナ先輩がジークフリート卿から剣術を教わっても、違いが大きすぎて教えにならない…みたいな話っすよね」
「あぁうん、まぁそんな感じ……ってあれ?今何が疑問だったの?」
「いや……そもそも団長はある意味で模倣の達人みたいな所あるから、剣術が違うから…みたいなこと言われてもピンと来なかったっす」
自分の得意分野である趣味の圧倒的追求力。それがまさか、こういった所で足を引っ張るとは思ってもみなかったグラン。確かに、二刀流使うジョブとかあれば自分はそれを学んでいるのかもしれない。
「そもそも手数の話をするなら、前に言ってた剣豪や侍がそうじゃないっすか」
「あ、ほんとだ」
一体何回コロッサスマグナに奥義を打ち込んだだろう。最早見慣れた景色レベルまである。閑話休題。
「まぁ……団長はあんまりにも趣味で色々しすぎているからこそ、教えられなかったのかもしれないっすね。固定観念が着きそうな気がするっす」
「そうかな……そうかも……」
そういった事にしておいた2人。時間が推しているのでさっさと2通目に行こうとしてお便りを取り出す。
「2通目『カタリナさんに向けているのはLove?それともlike?』」
「どういう意味っすか!?」
「恋愛か友愛かということじゃないかな」
「ふふん、そういうことならLove一択っす!!」
『それは絶対ない』と心の中で断言するグラン。Loveだと言い張るならば、最低ユエルやソシエのクラスにまで登り詰め無ければならない。そのクラスに行くためには、まだファラには経験値が足りていなかった。
「はい答えが出たので三通目に行こう」
「もっと会話を広げて欲しいっす!!」
「いやこれ以上この話題続けたくないし」
「何でっすか!?」
「え、何?後ろにいるヴィーラに刺し殺されたいの?」
「三通目行くっす!!」
先程から負の念を送り続けているヴィーラ。なぜだか負のオーラを感じとってしまったので、グランには恐怖の対象でしかない。
ファラにもそれを感じてもらえて何よりである。
「三通目『団内で「あー、自分でも意外だな」と思える尊敬出来る人物を上げてください』」
「ローアインっすね」
「本当に意外なチョイス…どして?」
「いやぁ、よくめげないなってところがっすね」
「なるほど」
撃沈回数が光の速さで増えていっている、という噂を持つローアイン。しかしそれでもめげずに、ひたすらに策を練っては告白を繰り返し続けていた。確かに、あのガッツは見習うべきものがあるだろう。
「まぁそれ以外は料理の腕くらいなだけで……あんまり尊敬できるってわけじゃないっすけどね」
「酷い言われ様だ…」
「そもそも頭の中の妄想で、女性を機械化させるって割とどうなんっすか」
「ファラちゃんそれ言っちゃあいけないやつぅ」
果たしてキャタピラの事なのだろうか、それともメカヴィーラの事なのだろうか。どうでもいい話題だが、そこだけを追求したくなったグランだった。
「……これ最後急ぎ足になっちゃったな」
「まぁ時間がないんで仕方ないっすよ」
「……まぁというわけで、今日の団長相談室は終わりです。ご視聴ありがとうございました」
そう言ってからカメラの電源を切るグラン。切った後に、ファラと一緒に部屋から出ていく。
「そう言えばさ、ファラって白と青好きだよね」
「突然なんすか」
「いや、鎧は青色だけど普通の服とか着てる時って白色多いなぁって」
「そうっすか?」
「今もそうだけど……水着とかさ」
歩きながら、他愛のない話をしていくグラン。ファラは楽しそうに話を続けていくが、ふと何かを思い出したかのようにファラがピタッと止まる。
「ファラ?」
「忘れてたっす!!今から先輩と一緒に修行っす!というわけで団長、また後でっす!!」
そのまま一瞬で走り抜けるファラ。1人置いてけぼりにされたグランだったが、まぁ今日はファラの脇が何度も見れたのでよしとした。何がよしなのかは分からないが、良しとしていた。
「じゃあ逮捕ですね」
「ねぇリーシャさん、さすがにそれはキツくない?」
「秩序の為です」
「秩序のためかぁ…ならしょうがないなぁ…」
「というか本当に脇だけ見てたんですか?」
突然現れては手錠をかけるリーシャ。別段、グランは手錠をかけることは何ら気にしないのだが、リーシャのふとした質問は答えずに顔を逸らしていた。
「……団長さん、素直に答えてください。さすがに本気でしばきますよ」
「え、俺しばかれるの?」
「はい、シヴァかれます」
「あ、発音的にやばいやつそう」
「シヴァさんに焼かれるのと、サラーサさんにホームランされるのとどっちが好みですか?」
「流石にどっちも本気で痛いからやめて欲しいかな……」
痛いで済むのか、とリーシャは呆れ顔だがこの2人のコントを聞かされている周りの部屋の住人達は、なんだコイツらと疑問顔にもなっていた。
「あ、そうだ」
「なんですか唐突に」
「今日の晩飯アマツタケにしよう、ファラ見てて思い出した」
「団長さんの出費ですか?」
「……団の出費に」
「出来ると思ってるんですか?」
「デスヨネェ……」
アマツタケは高級食材である。主に繁殖している島の住人の民度があれだが、それでも高級食材である。食材の味だけは嘘をつかないのだ。値段はぼったくり価格だが。
しかし、それを団1つで補おうとすると当たり前だがとんでもない出費となるだろう。
「……やっぱりイノシシ鍋で…」
「出費はどうするんですか?」
「……狩ってきます」
こんなやり取りをしながらも、本日のご飯のためにグランサイファーは秋の味覚が素晴らしく美味しいであろう島に向かうのであった。
苗床化、その言葉が当時の僕の心を揺るがした。
実際はキノコにされるだけですけどね、設定的に。