「さぁ始まりました、グランサイファー団内料理対決。実況は私グランと解説にビィさんをお迎えしております」
「なぁ、これってなんの」
「まずは選手の紹介を致しましょう、NO.1ヴィーラ選手です。真剣な表情をしていますね、専用のエプロンを纏っていることからもそのやる気が伺えます」
突如始まった謎の料理対決。ビィは理由も説明されずに連れてこられたため、グランに大して説明を求めようとするがグランはその言葉を遮って、選手の説明に入り始める。
「なぁ、話を」
「NO.2ローアイン選手です。本日はトモイさんとエルセムさんを連れてこずに、1人で戦うと言った所存でございます。大会開始前に言った一言は『ダチは巻き込めない』でした」
「おい」
「NO.3ファラ選手です。いつもの鎧姿ではなく、ノースリーブの上からエプロンを羽織っています。その姿はさながら、配給のおばちゃんの格好です。ギャップが可愛いですね」
ここで一旦、グランが黙った。ようやく話を聞いてくれるのかと思ったビィだったが、真っ青になって冷や汗で襟元を濡らしているグランを見た瞬間に、言葉を失っていた。
「……そして、最終NO.……カタリナ選手です」
「なんで姐さんが参加してんだァ!?」
「料理と言ったらこの人、この人と言ったら料理。彼女から料理を抜けば剣の腕だけが残ります」
「じゃあ剣の腕で戦って欲しかったぜ……」
呆れたかのような表情をするビィ。自分にも被害が及ぶ可能性を考慮したが、既に逃げられないことを悟ってしまったためその現実から必死に目を背けていた。
「ルールの説明をします。今から4人には、それぞれ料理を作っていただきます。
そして、それらの料理を作った選手以外が食べ、そして1番美味しいと思った選手の札をあげる仕組みです。それで1番標数の多かった選手の優勝となります」
「……?そのルールだと同数になった時とかどう済んだよ」
「いい質問ですね解説のビィさん。しかし、その問題は既に解決しているのです。
因みに、料理を作る順番はもうクジで決定致しました。ここにボードを張り出します」
グランの取り出したボードに、それぞれ料理を作る順序が書かれていた。1番カタリナ、2番ローアイン、3番ヴィーラ、4番ファラ……の順となっていた。
「……おい、姐さんが1番って…」
「さて、作ってもらいましょう。まずはカタリナ選手、調理お願い致します」
「おいおい、大丈夫かよ……というか、ほんとに発端はなんなんだ?」
「……実はな━━━」
「━━━グランサイファーで1番料理が上手い人物は、誰なんだろうな?」
「キャタリナさん?どうしたんすか急に」
「そうっすよ、珍しいっすね。先輩がそんなこと言うなんて」
「ああいや……ふと気になっただけなんだ。忘れてくれ」
今から約2日ほど前、突然カタリナかそんなことを言い始めた。その時、キッチンにいたローアインとファラが物珍しそうに、カタリナを見ていた。
「なんか気になることでもあったんすか?」
「この団には料理上手がたくさんいるだろう?しかし、よく考えてみたら全員が納得するような味を作れるものばかりだから、1番があるのなら知ってみたいと思ったんだ」
「……そう言えば…」
「考えたこと無かったっすね。実際どうなんすかね」
ローアインとファラは顔を見合わせる。あまり考えたこともなかったが、良く考えればそういった事を今まで思いつかなかったのが不思議である。
「だったら、ダンチョに相談して料理対決とかしてみるのも良さそうっすね」
「おお、それは名案だな。よし、ならば私も参加しよう」
「「えっ」」
「という事なんだ」
「悪ぃ、オイラには一切理解できなかったぜ。というか、開かなかったらいいだけの話じゃ無かったのか?」
「いや、俺が聞いた話の時は料理対決するから的な事しか聞かなかった。後からカタリナが参加することを知った」
「おいおい……参加メンバーくらい聞いておこうぜぇ?」
「普通回避したと思うだろうが……」
「つーかよう、そういう話だったら……」
ビィはヴィーラに目を向ける。そう、今の話ではヴィーラは一切出てなかったのだ。なのに何故参加することになっているのだろうか。
「あぁうん……ダメもとでカタリナも出るって言ったら……出場決めてくれたよ」
「あぁ……」
「……因みに、カタリナの作った料理は残りの3人が食べる訳だが、参考で俺も食べることになった」
「何でそんなことになってんだよォ…」
「……団長だし、さ。さすがに団員が自分から毒を食べに行ってるのに、俺一人が食べない訳には行かないだろう?」
遠い目をしながら、グランはそう語る。ビィは呆れながら選手達の様子を目で追うが、カタリナ以外全員がもれなくグランと同じように遠い目をしていた。
「………さて、カタリナ選手が料理を作っている中で他の選手達の意気込みを聞いてみましょう。
ヴィーラさん、やる気はどうですか?」
「…そうですね、2日あれば問題ないと思います」
「おいおい、食べてから2日の間昏倒してるじゃねぇか……」
ヴィーラのコメントに、ビィが突っ込む。しかし、いつもならば睨みつけるはずのヴィーラも、この時はビィにむける意識すらないのかただ小さく優しい笑みで微笑んでいるだけだった。
「なるほど、どうやら自信満々みたいですね」
「今のコメントからやる気を感じられるなんて、お前どうかしてるぜ」
「ありがとうございます。では次はファラ選手に聞いてみましょう。ファラ選手、意気込みの方や如何に?」
「そうっすね……こっちも2日あれば……いや、1日半でいけるっす」
「何で微妙に張り合ってんだよ…それでも1日は昏倒してるじゃねぇか……」
ビィがまたもや突っ込むが、ファラもまた気にしていなかった。カタリナが料理を作っている間、ファラはどうして空は青いのかを考え始めていた。
「お二人共、やる気に満ちあふれついるコメントありがとうございます。では最後にローアイン選手、やる気はどうですか?」
「ポジティブ思考すぎるな……」
「そうっすねぇ……俺のマジ硬キング胃袋がどこまで持つか…それが分かれ目っすねぇ。俺も、他の2人と同様に…イヤ、半日で復活してみせますよ」
「なるほど…素晴らしいコメントありがとうございます」
「今のを素晴らしいと言えるお前の脳みそはちゃんと機能してんのか?」
ローアインは覚悟を決めた目をしていた。それは、彼が(妄想の中で)マッチョを狩る時と同じを目をしていた。グランはその覚悟を、きっちりと感じとっていた。
「ていうかよぉ、自然治癒で直す気なのかぁ?」
「例えすぐさまメタノイアをかけたとしても、直ぐにまた気絶させられるのは目に見えているからな。だったら、自然治癒に任せた方が治りやすいと踏んだ迄さ!」
「何でそんなにキメてんだよ……」
もう何度呆れたことだろうか、ビィは最早自分が何回呆れたのかを数える程には呆れているような気がしていた。
しかし、ふと思ったことがあった。それは、『何故自分がここにいるか』という事である。
「なぁグラン、オイラは何したらいいんだ?」
「終わった時に、こっそり助っ人呼んできてくれ。さすがに4人も倒れて、いざと言う時に船が傾いて、いい感じに落ちる可能性があるから」
「あぁ……てっきりそんなことだろうと思ったぜ…呼ぶのは誰でもいいのかぁ?」
「出来れば二人以上を同時に担げる人が好ましいかな…その方が人数割かなくて便利だしさ……」
出来れば筋肉がある人が好ましいと、グランは付け足す。理想的な案としては、ファスティバが彼は1番理想的だと考えていた。しかし、そのファスティバは今日はいない。
「ファスティバが1番よかったんだけどな……」
「今日いねえのかぁ?」
「カジノに行ってるよ……今日はデュエルの当番らしいからさ、少なくとも明日まで帰ってこない」
「じゃあ他のドラフに任せるしかねぇんだなぁ……」
幸い、ドラフの男性はみな筋肉質で力持ちである。そしてこの団にも、いっぱいドラフの男性はいるので、助っ人には困らない……と考えていた。
「……あれ?」
「どうしたぁ?」
「バザラガは組織メンバーで仕事、アギエルバも仕事…その他の男性ドラフ達皆今日は依頼や、個人の用事でいない可能性がでてきた」
「えぇ……」
グランは真顔のまま内心とんでもなく焦っていた。しかし、ビィが何とかしてくれるだろうと直ぐに思考を切りかえた。今日の彼は、最早諦めが早い性格なのではないかと疑うほどに、切り替えが早くなっていた。
「さて、そうこうしている間に料理が完成しそうですね」
「早すぎねぇか?」
「さて、カタリナ選手…改めてお聞きしますが……何を作っていらっしゃるのでしょうか」
「そうだな……今回はあえてシンプルにオムレツを作ってみた。卵と、塩コショウという最低限だけで勝負を挑もう」
そういうカタリナの作っているオムレツだが、色が水色だった。それも、鮮やかな水色ではなく、何やら紫色の煙を発している毒々しい水色だった。
「姐さん……ほんとにそれその3つだけなのか?」
「あぁ、卵も高いものだが……市販のものを使っている。何か、まずかっただろうか?」
きっとまずいのは料理だけでは?なんてツッコミは野暮だろう。カタリナは市販のチョコが、何故か劇的に不味くなる才能の持ち主なのだ。普通の卵が変色するくらいよくあることだろう。
「おい、あれほんとに食う気かぁ?」
「何をゲホッ…言う、ゲホッゲホッ…実に刺激的な見た目と、香りゲホッではないか…ゴホッ...ヴ...ゲホッゴホッゴホッ...」
「目を真っ赤に充血させながら、咳き込みまくってるせいでまるで説得力がねぇぜ……」
そして、人数分のオムレツが出来上がり……それぞれの席へと置かれていく。
既に皆死にかけの表情である。
「ヘヴンみえらぁ……」
「私…これを食べ切れたら、団で白いモフモフの犬を飼いたいと思いました…」
「それ、死亡フラグっすよ……」
「では、いただきます」
「「「いただきます」」」
そして、全員が全く一緒のタイミングでカタリナオムレツを口に入れる。瞬間、訪れたのは━━━色とりどりとなった視界だった。グランの視界は歪み、色々な色へと変色していく。
自分の体が溶けていき、この空へと一体化するかのような感覚も味わっていく。この感覚をもって、ルリアは大丈夫かとふと考えたが…そもそもよく考えたらカタリナの料理を食べれる人材だった。
意識は飛んで、ありとあらゆる可能性を見て行った。それが現実なのかはたまたま走馬灯なのか。ただの妄想なのか現実逃避なのか。誰にも分からなかったが、ただ1人……グランだけはとある境地へと至った。
世界の仕組み、それを理解したような気分になった…グランは麻薬もびっくりの境地へと至ったのであった。
「あれ、ここは…」
グランは再び訪れていた。バレンタインの時にそういえばここ来たなぁとか思いながら、川の石を積んでは崩して積んでは崩して……それをただ繰り返していき、復活までの暇つぶしを行うのであった。
この3人と来たら、と考えたら料理対決になりました。
ごめんなさいカタリナさん出すしかなかったです。
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ