「いつも貴方のすぐ側に、何だかんだいつも落ちた俺を助けてくれる救世主ことメーテラさんがゲストです」
「はぁい、メーテラだよ〜」
そう言いながら、胸を強調させつつ投げキッスをするメーテラ。さすがに良い子の性癖がねじ曲がる可能性があるので、これ以上はグランがさせなかったが。
「実は存外意外なんだよね」
「は?何が?」
「いや、メーテラってこういうの面倒くさがるもんだと思ってたから」
基本的に、メーテラという女性は彼女自身が面倒臭いと思ったことは、絶対にやらない性格である。そう考えると、グランが落下した時のために下に待機させられるのを彼女が良しとしているのもまた意外である。
「……まぁ、あんたの為って言うだけよ。あんたじゃなかったらやらないわ」
「……」
その言葉に対して、グランは真面目な顔で思考し始める。その言葉の意味を、ちゃんと理解するために思考を繰り返していく。
「何よ」
「それが本音かどうか、考えてる」
「あんた鈍くない?」
「そもそもカリオストロとか、メーテラみたいな性格の女性達が『団長大好き!』をした直後に『冗談だよ』ってやらされすぎてるから、単純に信頼の問題だと思う」
「……」
メーテラは申し訳無さそうに首を背けていた。そう、たとえ本当に心の底から好きだとしても、それを普段冗談で使っていたらその類に関しては信用がなくなるのは彼女も理解しているのだ。
「…いや待って、カリオストロがあんたに好きって言ってたの?」
「猫被ってたら大体そんな事言ってるぞ」
「じゃあ猫かぶってないときは?」
「……」
顔を背けるグラン。猫を被っている時のカリオストロの『好き』は信用していないが、猫を被っていない時の彼女の反応は…彼にとっては珍しくて案外信用出来ているのかもしれない。
「あちゃあ…アタシも普段猫被っとくべきだったか……」
「いやいや、メーテラはそれが魅力だから」
「は?じゃああんた本気でアタシに興味ないの?」
「少なくとも暇だから『いい男居ないかなぁ』とか言ってて特定の異性を愛してるって効かないと思う」
「……あー、うん…確かにそうだわ……ごめん、それに関してはあんた何も間違ってないわ」
顔を抑えるメーテラ。さすがに照れ隠しなのか、顔が真っ赤になっていることがグランでも理解出来ていた。
そして、グランその間にダンボールを取り出してお便りを探し始める。
「それ、いつものお便り箱よね」
「そうそう、何かこういう質問とか来そうだなぁってのある?」
「……何でアタシが天才で美しいのか、とかありそうよねぇ〜」
「実際にあると思うけどね……スーテラ辺りから送られてきそう」
「……あの子、本気で送ってそうだわ」
スーテラとは、メーテラの妹である。メーテラとはほぼ真逆と言ってもいいほどの性格をしているが、スーテラはメーテラに心酔していると言ってもいいレベルなので、偶にメーテラですら怯ませることがある。天然は強し。
「さて、それじゃあ1通目行ってみよう。『何故いつもあんな服きてるんですか』」
「動きやすいからに決まってるじゃない」
「解決!!って訳にも行かない……スカートとか履かないの?」
グランの質問に対して、メーテラは髪を弄りながら答えていく。枝毛を見つけたのか、ちょっとしかめっ面になっていた。
「一時期は履いてたわよ?それこそスーテラやアステールみたいにね」
「じゃあなんで今は履いてないの?」
「邪魔だったのよ、空飛ぶ時に」
「…邪魔?」
邪魔、というのがイマイチ理解できないグラン。空を飛ぶのに、どうしてスカートが邪魔になりうるのか。
「スカートってさぁ、下から風吹いたりするとめくれるのよねぇ。アステールみたいな服だったら、もうやばかったわ絶対」
「アステール…がふっ」
「アステールで妄想したら殺す」
「イェスアイマム……」
魔導弓で腹を殴られながらも、グランは少し抑えながら話す程度だった。何だかんだ、妹達が好きなので不埒な妄想をしたら流石に理解してしまうようだった。
「……後、五月蝿い」
「何が?」
「下にいる奴らが」
グランはすぐには理解できなかったが、空を飛んでいる時の話だというのを少ししてから理解した。
そう、スカートで空を飛べば当然下にいる人達が気づいてこぞいて覗こうとするだろう。
「あぁなるほど……で、結局今みたいな格好になったってわけ」
「ちょっと肌寒いけどねぇ」
「ズボン…というかパンツ履く気は?」
「いやよ、デザインはいいの多いかもしれないけど…動き易いの選びたいし」
どうやらお気に召していなかったようだ。まぁ、短パンなどを履かずにいる時点でそういった類のものを身に付ける気は無い、というのは分かりきっていた話なのだが。
「じゃあ2つ目…『いつから空飛べるようになってたんですか』」
「気づいたら」
「えぇ……」
「だってアタシ天才だし?なんか『飛べる気がする』とか思ったら飛んでたって感じ?」
自分のことを棚に上げるが、事実自分一人の力で宙を浮遊することが出来るのは限られたもののみの特権である。それこそ、全空に名を轟かせている十天衆並でないと行えない芸当なのだ。
この団にも自分の力だけで飛べる人物が何人かいるが、その誰しもが団内でも有数の実力者である。
「まぁ、メーテラって確かに天才だもんねぇ」
「まぁ、スーテラもかなりの天才よ。アタシが規格外すぎるだけで」
この流れで唐突にスーテラを褒める。スーテラの事はなんだかんだ言っているが、仲がいいのはご愛嬌である。本人は口では否定しているが、態度でバレバレである。
「規格外の天才だよねぇ、ほんと。自由奔放だけど」
「アタシを押さえつけたいなら、それだけの価値をアタシに示して欲しいわ。村のしきたりとか、アタシを抑えるには魅力がまったく足りなかったけど」
「そう言えば、アステールのことはどう思ってるの?」
「え?アタシより劣るけどあの子も天才じゃない?」
身内にはかなり甘い判定の姉上。今この場で褒められている2人は、恐らく手を振り首を振り否定するかもしれないが、事実スーテラもアステールも弓の腕はかなり良い方である。アステールは、まだ小さいため弓ではなくボウガンを使用しているが。
「なるほどねぇ……じゃあ三通目行こうか」
「何そのニヤケ笑い……いや、聞いたら薮蛇っぽいし何も聞かないけど…」
「『ソーンさんと関係はありますか?』」
「ソーン……ってあぁ、十天衆の…」
「あれ、もしかして関わったことない?」
ソーン、十天衆の内の一人だがメーテラと同じく弓使いである。そして、十天衆である以上その強さは折り紙付きであり、2人が折り紙付きの弓使いであることを考えれば、かかわり合いがどこかで発生する……と考えていたのだが、そうではないらしい。
「関わったことないっていうか……アタシが避けてる」
「どうして」
「だってほら……何か、入りづらい雰囲気だし」
「……シルヴァと?」
「うん……というか、同じ弓使いの天才ってだけでそこまで関わることもないと思うわ」
ソーンはシルヴァと仲がいいが、メーテラはどうやらその2人の間に入ることを拒んでいるらしい。シルヴァが苦手…という感じでもないため、本当に2人が放つ独特の雰囲気に入りづらくなっているのだろう。
「そんなもんかな」
「そんなもんよ」
メーテラは呆れているかのように言い放つ。人との関わりを、彼女はあまり気にせずに行うのかと思いきや、そうではないようだった。
「なんていうか、距離感間違えてる感じの友達よねアレ」
「言いたいことは分かる」
『見た目がイチャイチャしすぎてる』という話だが、おそらく本人達はそんな気は全くない…筈。グランはあくまでも予測しか出来ないので、これ以上追求するのは難しいのだが。
「まぁー、良くもあんだけイチャイチャ出来るもんだわ」
「羨ましい?」
「は?」
「いや、別にそういった風に見える程仲良いのが羨ましいのかと」
「別に?スーテラとはいい感じの付き合い方出来てるし?」
一切スーテラの話題は出ていないが、やはりどこか仲良く出来ていないと思っているのだろう。
2人が仲良くしていたら、グランは嬉しいのだ。普通の意味でも裏の意味でも。
「まぁ、ならそういうことにしておくよ」
「はいはい……で?もう終わりなの?」
「そうだねぇ…ちょっと早いけどもうそろそろ時間だし終わりにしようか」
「あっそ、ならアタシ帰るわ。後片付けよろしくねぇ」
そう言いながら、メーテラはそのまま部屋を出ていく。ここまで付き合ってくれたのだから、グランは文句を言う気は起きなかった。
……だが、ふとメーテラの背中を見ると変な欲求が生まれてしまう。ユエルやソシエの尻尾を見たらモフりたくなるように、背中丸出しの格好を見ると、ついつい指が伸びてイタズラをしてしまうのだ。
「えい」
「きゃうんっ!?」
「ギルティ」
「ぎゃふんっ」
グランが指を伸ばしてメーテラの背中に触る、メーテラが聞いたことないような高音を出す、リーシャが現れて鳩尾に右ストレートを入れる、グランが悶絶する。
まるで予め決められていたかのごとく、これら1連の動作が行われてしまった。
「さ、流石リーシャだ……的確な一撃を入れてくれる……」
「団長さん、セクハラダメ絶対」
「ふ…触りたくなるような背中をしていたから、ついね……」
「あ、アタシの魅力が凄すぎたってやつだわぁ……!」
顔を真っ赤にしながら震えているメーテラ。流石に背中に触られるのには、慣れていないようだ。
「はい、ひとまずメーテラさんはこれを着てください」
「何これ」
「ジャージです」
「え、ダサっ」
「着ろ」
「…う、うん……」
そして、メーテラはメーテラでどこからともなくリーシャが取り出したジャージを着せられる。緑色だったが、リーシャの圧が凄かったので何故か断ることが出来なかった。
「……じゃあ、もう問題ないですよ」
「…じゃあ、アタシ部屋に戻るわ。アンタも無事に行きなさいよ」
「うぃっす」
その後、メーテラが部屋から出た後に謎の断末魔が聞こえてきたのだが……特に知りたいとも思わなかったので、そのままスルーして戻っていくのであった。
「姉様…?その格好はどうしたのですか?」
「何か、着せられた……」
道中、妹のスーテラと出会うメーテラ。スーテラは、いつもの露出度高めの格好をしているメーテラを見て、困惑の表情を浮かべていた。
頭からつま先まで目線を動かして、よりその困惑の表情を浮かべていた。
「随分と……露出が減りましたね」
「……もしかして、あの秩序の人それが目的…?」
今となっては聞くことが出来ないが、リーシャがこれをメーテラに着せたのはそれが目的だったのか…?とメーテラ自身がそう考えた。しかし、後日それを脱いでいつもの服装にしても、特に何も言われなかったのでメーテラはより困惑を深めるしかないのであった。
火メーテラって上着てるんですかねと思ったあの頃
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ