「ハッピーエンド以外認めない、コルワよ。服のデザインのことなら私に任せて頂戴」
「……はい、というわけで先行されましたが、コルワさんです。服の修理とかのことならほんとにすごいからこの人。でも、ちゃんとお金は払おうな」
「別に団内料金でもいいのよ?」
「嫌ダメだから……特別扱いだめ、絶対」
グランは渋い顔をしながら、両腕で×印を作る。コルワは頭の耳を動かしながら、クスリと微笑んでいた。
「……で、コルワ的に俺ってハッピーエンド出来そう?」
「未来予知なんて出来ないわよ?」
「あぁいや、そうじゃなくて……何かあるじゃんほら、『この人結婚できなさそうだなぁ』とかそう言うの 。主観でいいから教えてくれない?」
「なら……」
そう言ってコルワは考え込み始める。グランは何だかんだ言っても団の皆に慕われている。友情、愛情……そして劣━━━
「いやいやいやいやいやいやいやいや!」
「うわっ!?どしたの……そんなに俺ダメ?」
「へ!?あ、えっと……ちょ、ちょっと妄想がすぎただけよ」
笑って誤魔化すコルワだが、いやらしい妄想をしたために、赤面している事までは隠せない。無論、自分とグランでした妄想である。
しかし、殆どの女性団員が彼のことを慕っている。愛の文字がつき、恋で慕っている。
「周りが認めれば凄く大きくて多いハッピーエンド、認められなかったら……戦争ね」
「え、何それ怖いんだけど……因みにコルワは認める派?」
「……ハッピーエンドに迎えるから認め……あぁでも……」
悩み始めるコルワ。この話題を軽く振ったはいいものの、どうやらコルワにとってかなり集中しなければならない事案らしい。とりあえずこのままではただの思考映像なので、話を変えることにした。
「コルワ、とりあえずコルワに対していっぱい質問来てるから何枚か読んでいい?」
「あ、いいわよ?」
「ん、じゃあまずは……『お仕事で困った事ありますか、誰かに手伝いを頼んだ時はありますか』……無記名だから誰か分からないな」
その質問に対して、コルワは考え込んでいた。自分の記憶を辿っているのだろう。どうやら、無いことは無いらしい。
「そうね、何かの絵を服に描いてくれ…って言われた時はどうしようかと思ったわね。
だから基本、私はそういった仕事は前までパスしてたわ」
「絵描けないの?」
「そういうわけじゃないのだけれど……ほら、私の性格がね?」
「あ、本気でやりたいからこそ断ってたんだ……って、前まで?」
今はそうではないのか、とグランは問いただす。コルワ少し考えた後に、唇の前に人差し指1本を立てて『秘密』という合図を送る。
「確かに、この団に入ってからそういった仕事はしているわ。けれど相手から『名前を出さないで欲しい』って言われちゃってるのよね。あ、仕事内容を話すのもダメって言われてるから、言わないわよ?」
「なら聞かない。嫌な事を聞かれるのは、誰だって嫌だしね。当たり前の話だけどさ」
「そうそう、当たり前当たり前」
「というわけで次の質問は〜……」
ガサゴソとダンボール箱の中身を弄りながら、グランは無作為に一枚を取り出す。そして、手に取ったそれを読上げていく。
「えーっと……『この団内で気になる人はいたり?』これは…ヘルナル……」
「気になる人、って言うと……」
「ん?俺?」
「……そうじゃ、ないわよ!!」
一瞬ぽかんとしたコルワだったが、直ぐにまた顔を真っ赤にする。なぜ真っ赤になるのかわからないグランは、首を傾げていた。そして、コルワは思い出したように喋り始める。
「あ、そうそう!あの子達よヴィーラちゃん達!」
「達…って言うとカタリナも?」
「それに、ローアインとファラちゃんもよ」
意外な人選だと、グランは軽く驚いていた。コルワはそのまま気になる理由を語り始めていく。
「あの子達って恋の三角形どころか、四角形じゃない?どういったハッピーエンドに転がるか、気になってしょうがないわ」
その四角形が血で血を洗っている以上、単なるハッピーエンドで終わるわけがない…とグランは思ったが、楽しそうに語っているコルワを見て追求をやめた。
「ローアインといえば……彼ら、貴方のこと滅茶苦茶慕ってるわよね」
「カタリナ目当てで入ってきたと思ってたんだけど……いや、いつの間にかかなり尊敬されてたんだよね。飯も美味いし性格もいいから、結構慕われてるのが素直に嬉しかったり」
「慕われる、って言うのはいい団長の証拠よ」
「ありがと、じゃあ次のお便り……とりあえずこれで……『種族ごとでやっぱり服の作り方って変えてますか?』、匿名希望です」
質問の言葉に、苦笑いを浮かべるコルワ。やっぱり来てしまったかと言わんばかりの表情である。
「どしたの、その顔」
「うーん、確かに種族ごとで服が違うのは当たり前なのよねぇ……」
「やっぱりそういうものなの?」
「そういう物よ〜」
そう言いながら、近くにあった紙にスラスラと何かを書き込んでいくコルワ。どうやら、各種族が好んで着る服の特徴を書いていってるようだ。
「例えば私達エルーンだと、背中や脇が空いているでしょう?」
「そうだね、凄く気になる」
「それと同じで、ハーヴィンは小さな服が好まれるのよ。場合によっては、1番作るのが難しいとも思っているわ」
「そりゃあ一体どうして?」
純粋に質問するグラン。コルワは先程書いた紙の裏に、今度はある一つの服のデザインを書き込んでいた。ヒューマンが着るような服である。
「例えばこの服ひとつ取っても、4種族分で作るとなるとかなりデザインがここから変わってくるわ」
「ハーヴィンはそのままのデザインで、寸法を小さくしてもバランスが変わらないように……エルーンは脇や背中を空けるように……ドラフは?」
「ハーヴィンとは逆、大きくしないといけないの。女性だった場合、胸囲の方で服がきつくなる可能性もあるわけだし」
「男性だと身長2m超えてるのばかりだから……確かに大きめに作らないとダメだね」
「そ、ドラフは問題ないのだけれどハーヴィンの場合、デザインを小さくするからデザインがおかしくなる時があるのよ」
「それだったら大きくするドラフも同じなんじゃ…?」
グランは詳しくないためか、申し訳なさそうに疑問を呈する。コルワは少し考え込んでから、いい例えが思いついたのか指を鳴らした。そして、笑顔でグランに向き直っていた。
「例えば、この服には色々な花が描かれたデザインにして欲しいって頼まれたとするじゃない?」
「うん」
「大きく見せる場合は、花を追加したり描く花を大きく描いたりすることも出来るけど……」
「あ、小さくすると極論花が小さすぎて描けないとか?」
「そんな所よ、花は花びらだけの存在じゃない。ちゃんと花と認識できるパーツが見えないと、それは花にならないのよ」
なるほど、と頷きながらグランは納得していた。それに満足したのか、コルワはどこか楽しげな表情を浮かべていた。
「……そう言えば、これも前気になってたことなんだけどいい?」
「何かしら?」
「エルーンって背中と脇丸出しの人多いけど女性って下着つけてるの?あれ」
「エルーンはエルーン専用の下着があるのよ」
「そんなのあるんだ……まぁ、女性下着専門店なんて入ったことないし、見たことないのもあたりまえか…」
顎に指を当てて考え込むグラン。ザンクティンゼルでも、ちゃんと女性自体の下着はあった。所謂ご近所付き合いで、干してあるのを見かける程度であり、別にそれを見て思春期の劣情が暴走したとかそういうのはないが、それを基準で考えてしまっているためにエルーンの下着がどうなっているか気になっているのだ。
「背中空いてるけど、どうやって付けてんの…?」
「エルーンってね、ショーツとブラが1つになってるのよ、背中で固定する代わりに、二の腕やショーツと繋がって胸を固定してる感じね。
勿論、ちゃんと背中でくっつけるタイプもあるから、そっちを選んでいる人も多いわ」
「そんな感じなんだ……」
「いざと言う時、知っておかないと困るわよ?」
いつもの流れで言ってしまったコルワだったが、後から言ったことを少し後悔していた。これではまるで、エルーンと付き合うことが前提の言葉ではないかと顔を真っ赤にした。
しかし、グランの返答はどこかズレた回答となっていた。
「え、女性用下着をつける機会なんて結構無いよ?」
無論、誰かと付き合うからみたいな解答が返ってくるとはコルワも考えていなかった。しかし、グランの言い方はまるでどこかで下着をつけたことがあるかのような言い方になっていた。
「……今のは、聞かなかった事にしてあげるわ」
「……?」
コルワの態度にグランは首を傾げたが、直ぐに何かを思いついたかのように、座り直した後にコルワに真剣な表情を向ける。
「ねぇコルワ、気になるから見せてくれない?」
「へ?何を?」
「エルーンの下着」
「見、見たいの?」
「うん、というかほんとに形だけ結構気に━━━」
瞬間、グランの体が真下に向かって消えていく……と思われたが、グランは両腕を広げて何とか自分が落ちようとするのを回避していた。つまり、空いた床に対して両腕を広げることで、つっかえ棒のような状態にしているのだ。
「さ、流石に三回目ともなったら慣れてくるに決まってんでしょうが!!」
「……そ、そんなに見たいの?」
コルワはしゃがみ、テーブルを挟んだ向こう側のグランに対して話しかける。正直、見せるくらいならどうって事ないと思ってはいるのだ。しかし、グラン相手となるとコルワはまともに思考が働かない状態になっているのだ。
「気、気になるんだよ!だからその上の服を一旦脱い━━━」
しかし、つっかえ棒にされることくらいは予想済みだったのか、グランが乗せている腕の部分だけが更に開いて、やはりと言うかなんというかグランは空に向かって落とされるのであった。
「あ……やっぱり落ちちゃったのね…」
少し残念そうにしているコルワだったが、下の方でアンチラがグランに抱きつきながらも救出してるところを見て、少し羨ましいと思ったり少し嫉妬しちゃったり。
「……まぁ、後で形だけなら見せてあげましょうか…」
「駄目ですからね?」
「うわぁあ!?い、いつから居たのよ……」
突然聞こえてきたかと思えば、背後にはいつの間にやらリーシャが立っていた。幾らそちらに注意を向けていなかったからと言っても、ドアの音すら立てないで入ってきたことは恐怖でしかない。
「団内の風紀を乱すことは許しません。例え、下着を見せるだけであってもその下着を着ている状態を見せることは、団内最悪の事態を巻き起こすことになります」
「……最悪の事態?」
「最終的に、団内には団長さんの子供だらけになります……母親は皆別で」
「あのね、リーシャちゃん。流石にそれは飛躍しすぎよ?服を作ったら失血死した、ってレベルで明後日の方向にぶっ飛んでるわよ?」
コルワは、リーシャがこんな思考が明後日の方向にいってる少女だっただろうか?と思ってしまった。もっとまともなタイプだと思っていたが、団長が絡むとどこかおかしくなるようだった。
「まぁ……団長さんモテるものね」
「……はい」
コルワが苦笑しながらリーシャの頭を撫でる。それで少し落ち着いたのか、リーシャは落ち込みながら素直に撫でられていた。
「じゃあ、私部屋に戻るわ」
「あ、はい……あ、質問とかの回答お願いしますね」
「えぇ、分かってるわよ〜」
そう言って、コルワは部屋から出ていく。そしてその後リーシャは空いた床を元に戻していくのであった。
因みに、落ちるのが3回目ともなって慣れたのか、グランは落ちることに対してあまり驚かなくなっていたし、落ち方も考えておこうとか思うようになっているのであった。
という訳でコルワさん回です。全員呼び捨てかそれとも何人かは敬語にするかは目下考え中です。
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ