「はい、今回のゲストはアステールさんです」
「が、頑張るのです!」
「アステールは、メーテラとスーテラの妹分なのだけれど、使う武器は2人とは違ってボーガンを使用してます」
「わたしにはまだ弓を引けるほど力がないのです…」
自前のボーガンを取り出しながら、少しだけアステールは俯く。その頭を撫でて、グランは無言で彼女を慰める。そして、ボーガンを手に取ってカメラに写しながら眺めていく。
「にしても、ボーガンなんて考えたよねぇ……」
「は、はい!ちゃんと認めてもらえてよかったのです」
「案外、守り人の条件ってそこまできつくないのかもしれない…やることはきついけど」
「そうなのです…」
星晶獣マルドゥーク。メーテラ、スーテラ、アステールの3人の故郷にいる星晶獣である。守り人であるスーテラとアステールは、その星晶獣によって凶暴化した魔物の退治などを行っている。
しかし、つい最近だが━━━
「倒したんだよね、マルドゥーク」
「はい、一時的に故郷に戻っている時にメーテラ姉様と一緒に」
実は、一時的にスーテラ達はこの船から離れていたことがあった。その時に、偶然にもメーテラまでもがその島に戻っていて色々あってマルドゥークを完全に倒したという話になったのだ。
「おかげでメーテラ姉様は大忙しです」
「やることなくなったようなもんだからねぇ」
「島の人達も、外に出てこれて嬉しそうだったのです…ただ」
「ただ?」
「怪しい男に引っかかるなと逐一言われたのです、私とスーテラ姉様まで」
スーテラとアステールの思考は、どちらかと言えば故郷の村の人たちよりである。つまり、今まででたことの無い外の世界にとんでもなく期待をしている…という事である。
「スーテラはともかく…アステールはまだ1人で外に出ちゃだめだよ。変な人に連れていかれるから」
「む…私はそこまで不用心じゃ無いのです!!」
「飴ちゃんあげる」
「わーい、ありがとうなのです……はっ!!?」
グランが唐突に取り出した美味しそうな飴を、アステールはなんの疑いも無く手に取って口に運んでいた。少しの間美味しそうに舐めていたが、すぐに冷静になって顔を赤くしていた。
「……」
「……ちょ、ちょっとだけ不用心だったのかもしれないのです」
「ちょっと?」
「う…かなり、なのです……」
「まぁいじるのはこの程度にしておこう。そろそろお姉さんの魔導弓から仕返しの攻撃が飛んできそうだ」
もう1つ飴を渡しながら、グランはアステールの頭を撫でる。口の中でコロコロと飴を転がらせて、頬を膨らませたり凹ませたりするその姿は紛うことなき子供っぽさが現れていた。
「さて、アステールに一つ質問をします」
「質問、なのです?」
「うん。まあ難しいものじゃないし、ただ聞きたいだけだからリラックスお願いします」
「は、はいなのです」
「じゃあ聞きます……グランサイファーにいるの、楽しい?」
「っ…!はいなのです!!」
グランが微笑みながらその質問をすると、アステールもまた嬉しそうに頬を緩ませながら肯定する。守り人という使命があると言っても、未だ12歳の子供なのだ。子供は子供らしく遊んでいるべきなのだろう。
「さて、そんなグランサイファーを楽しんでいるアステールにもまた、お便りが届いています」
「う〜…ドキドキするのです」
「1通目『よく遊ぶ子はどなたですか?』スーテラからです」
「クムユちゃんや、サラちゃんとよく遊んでもらっているのです」
「クムユとサラ」
サラは9歳なのだが、かなり大人びている少女である。手を出そうものなら、保護者一同と彼女の守護をしているグラフォスにぶっころぽんぽんマンだろう。
「編み物や…どこかの島に降りた時は、船の近くでかけっこをしている時もあるのです」
「クムユがかけっこ」
クムユはドラフの少女である。走った時の光景が、まるで走馬灯のようにグランの頭の中に広がっていた。それを、一切の鼻の下を伸ばすことはせずに真顔で考えていた。
「実に楽しそうだね」
「そうなのです!」
「ぬうぅ……眩しい…これが若さゆえの純真さか…!」
「…?団長さんとアステールは、そんなに歳は変わらないと思うのです」
「そんなアホな」
「アステール、何と12歳なのです」
「出会ったのいつだっけ?」
年齢の話題を、簡単にきりだせる。他の女性にこのようなことをしようものなら、細切れの後からのミンチだろう。
そして、グランはついつい聞いてはいけないことを聞いてしまっているが、アステールはそれを華麗にスルー。それは、世界的に答えられない事である。
「次に、行こうか」
「はいなのです」
「2通目『服装は風でめくれないんですか?』これか…俺も気になってたんだよね、実際のところどうなの?」
アステールが着ている服はワンピースのような服装である。つまり、上と下が一緒くたになっているために風が吹いてしまってスカートがめくれてしまった場合、一気に上までめくれあがる可能性が高いという事である。
「抑えておけばどうとでもなるのです」
「まぁそりゃそうか……1箇所抑えておけば、余程の強い風じゃ無い限り上まで持ち上がらないはずだもんな」
「大体そういう感じなのです…ただ、ポートブリーズは風が強い日が結構あるのです」
「確かに……」
ポートブリーズ諸島、ティアマトが守護している島でありいつも穏やかな風が吹いているのだが、スカートが一気にまくれ上がるほどの風ならば割と定期的にめくれることが多いこともある。
そういうグランは、いつも皆にスカートの下に短パンを履かせてから移動している。
「まぁそこら辺は俺がいつも注意喚起してるし…めくれても下着は見えないと思うから、安心して━━━」
「……」
何故か顔を赤くして俯いているアステール。喋っている途中だったのだが、グランはつい言葉が紡がれないまま止まってしまう。まさか、1度下に短パンを履かないで出かけたのかアステール、と。
「……アステール」
「……その、ラスティナさんの話なのです」
「え、この流れでラスティナ?」
ラスティナはドラフの女性である。特徴として、大きな爆発を起こすことも出来る武器を持っているが、とんでもないレベルでのドジをほぼ毎日起こしている。その度に、殺せと言われるので最近そのセリフを言う度にグランはどうしてやろうか考えている。
「その、風でスカートが捲れあがったのです」
「彼女が履いてなかったの?」
「いえ、履いてたのです」
「…?」
履いていたのなら、ラスティナであっても問題は無いはずである。そこから脱げたとかでもない限り。
「けれど、風に驚いてころんじゃって」
「あっはっは、ラスティナらしいなぁ」
「そのまま何やかんやで鎧が全損、服もほとんど破れてあられもない格好に……」
真っ赤にして再び俯くアステール。しかし、グランは男としての反応よりもまず、過程が知りたかった。風でスカートが捲れあがって、どうしてそのような事になってしまうのか。あいつはマジシャンかなにかなのか。そう思わずにはいられなかった。
「まぁこれ以上聞くのは、ラスティナの名誉に関わるので辞めておこう。というわけで三通目いってみよう」
「は、はいなのです」
「『グランサイファーで探検をすることもあるそうですが、最近あった面白いことってありますか?』……って、探検なんてしてたんだ?」
「危険なところなどには寄ってないのです…けど、毎日新発見があるのです」
「へぇ……例えば?」
「最近隠し通路を見つけたのです」
「マジで!?」
隠し通路、男としてはロマンの塊だろう。しかし、まさかこのどれだけ広いかも分からないグランサイファーに、隠し通路があるのはグランも驚きながらも興味を惹かれていた。
「ど、どんなやつ!?」
「カタリナさんの部屋と、団長さんの部屋に繋がってる通路だったのです」
「…ん?」
ここでグラン、少しだけ嫌な予感がしていた。別に、グランの部屋とカタリナの部屋はそこまで近い訳でもない。かつてこれにグラン達以外の人が乗っていたとして、そうやって部屋を結ぶ利点もない。
となると━━━
「その隠し通路、ヴィーラ━━━」
グランの横に何かが通り過ぎる。通り過ぎたそれは、後ろの壁に刺さって左右にぶれながら独特の音を奏でていた。無論、それは剣である。よく見て、グランも見なれている……ヴィーラの剣である。
「お怒りに触れてしまったようだ。後でお鎮めしなければ」
「…?」
頬に掠って、血が出ると言ったことは無かったのでそこは安心である。かすり傷というのは、血が出ると跡が残りやすいのだ。
「とりあえず、今日はこんなところかな…皆さんご視聴ありがとうございました。またこの番組でお会いしましょう、さようなら」
「なのですー」
カメラの電源を切って、グランはアステールと共に部屋から出る。アステールをリードするために、彼女の肩を抱いて部屋を出て歩いていくのだが……まぁ、はっきり言ってその状況の見た目が良くなかった。
「団長、いつものだ」
「はいはい、今日は一体なんの罪だ」
「幼女暴行」
「ふっ……ていうか今回はてっきりヴィーラが来ると思ってたぜ……」
「彼女は今ちょっとメカってる」
「メカってる…?」
謎の会話をしながら、グランはアステールを置いてモニカに連行されていく。アステールは困惑も何もしていなかった。彼女は純粋なのだ、手錠も何もされずに連れていかれたグランは、きっと秩序の騎空団のお手伝いをしに行ったのだと……なんかそれっぽいことを考えていたのだ。
「ねぇ、今回オチ雑じゃない?」
「オチ?なんの事だかわからんが団内始末書をまとめてきたから読んでくれ」
「ほう、脚に重石を乗せられている拷問状態でか?」
「そのままパジャマに着替えて寝ようとしてる君が言えることじゃないな」
「そんな馬鹿な……」
グランはパジャマに着替えていた。脚に重石を乗せられたままだったが、しかし動くことに一切の支障は無いことの証明だった。
グランは始末書報告を読みながらモニカと談笑していく。
「にしても、最近団の女性達からのアプローチがキッついぜ」
「それはもしかして私も含まれているのか」
「いやぁ、まさか拷問監禁されてまで俺を独占したいなんて……モテる男は辛いなぁ」
「拷問されているという自覚はあるんだな……」
「あ、ベアトリクスまた壁に穴開けてやがる……あいつだけ今度お菓子屋でもやらせて稼がせてやろうか」
「それは彼女からしてみれば本望なのではないか?」
他愛のない談笑をするには、絵面があまりにもシュールすぎるのだが、モニカも諦めたのか一切のツッコミをすることは無いまま、グランと談笑を続けていた。
そして、談笑が終わって団長としてのグランの仕事が終われば、グランはそのまま眠りについた。眠れるのかと突っ込んだが、グランには一切関係がなく……少なくとも開放されるまではその状態が続いてたという。
アステールって打つと、何故かアステールプラザが出てきます。