ぐらさい日記   作:長之助

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マナリアプリンセス、魔力漲ってる?

「今日はアンさんです」

 

「はーい!というか、団長さん酷いよ」

 

「え、何が?」

 

「グレアを先にした事だよ!!」

 

「やはり文句を言われたか……いや、その時アンとオーウェンはしばらく戻ってこない状況だったし……」

 

「まぁ、そうだけどさぁ……」

 

 アン、マナリア学園に通う女生徒でありグレアとはとても仲のいい関係を築き上げている。オーウェンはマナリア学園に通う際に、付き添うことになった騎士であり、彼は1歩引いた位置でアン達を見守っている。

 

「折角グレアの可愛い姿が見れると思ったのに!」

 

「まぁまぁ、そこら辺の埋め合わせをしてあげるからさ」

 

「ほんとに!?じゃあ今度グレアと合わせて3人で出かけよ!」

 

「別にいいよ」

 

 オーウェンは、誘うつもりなのかはたまた勝手についてくるからと初めから来るだろという予想だけで言ったのか、グランは強く聞くことが出来なかった。

 

「とりあえず、例のヤツやってよ例のヤツ!!」

 

「例のやつ……というのは、やはりお便りの事かな」

 

「そう!私が答えれることなら、なんだって答えてもいいという凄いもの!」

 

「そんなに凄いもの?」

 

「自分の言葉で語れるんだからね、そりゃあ凄いよ?あ、別に実家で私に発言権が無いとかそういうのじゃないから」

 

 直ぐに訂正を入れてくるアン。しかし、オーウェンという気のいい紳士が送られてきているのだから、アンの実家がそういったものでないことは、十分に理解している。

 

「じゃあ……1通目『アンさんの制服、グレアさんの制服、オーウェンさんの制服、ツバサさんの制服、なぜ4つとも細部が違うのですか?』」

 

「あれ?違ったっけ?」

 

「結構違う……まぁ、男女で違うのはしょうがないとして、同じ性別でもみんな結構違ってたりするんだよね」

 

 そう、マナリア学園には制服がないのだろうかと言わんばかりに、この団に所属している生徒達は制服が変わっている。細部が違うと言われているが、パッと見てその違いが一目瞭然の部類なので最早細部が違うどころの話ではないだろう。

 

「まぁそもそも私達が代表として言われてるけど、そもそも立ち位置結構浮いてるよね」

 

「ん?そう言われてみると……」

 

 アンは、お姫様である。そしてオーウェンはそれに仕える騎士。当然一般生徒かと聞かれると首を横に振るまでは行かないにせよ、首を傾げる者もいるだろう。

 そして、グレアは竜と人とのハーフである。当然その立ち位置も違うし、何より制服の形が彼女の背中の羽や尻尾に合わせているため、違うのは当たり前である。

 そして、ツバサは不良である。校則に背いているのに、制服のルールは守っている……という訳でもないのだ。

 

「なるほど、確かに全員立ち位置が特殊だ」

 

「でしょ?そもそもマナリア学園って制服の縛りそんなに強いわけじゃないと思うよ」

 

「まぁ、確かに」

 

 ツバサはよく先生などに怒られているらしいが、その理由もケッタギアやテストの点数、出席日数などが理由であり制服や髪型に関しては特に言われていることも無いようだ。

 

「さて、こんなところかな?」

 

「結構真面目に答えてくれたし、俺も納得したしで…」

 

「ふふん、これでも話は上手くなるように努力してるんだよ」

 

「目標は?」

 

「喋りと言ったらこの人!っていうレベル」

 

「志が高すぎる」

 

 それの範囲が、ファータ・グランデなのかそれとも全空に知れ渡らせるつもりなのかは、グランは敢えて聞くのをやめておいた。フンスッと胸を張っているアンを見ているだけで心が幸せになるからだ。

 

「さて、じゃあ2通目に行くか」

 

「はーい」

 

「『アウギュステで授業があったらしいですが、水着は現地買いですか?』」

 

「ううん、マナリア学園の近くにあるんだよ実は」

 

「団長さんにも手伝って貰ったもんねぇ……というか、ごめん1ついいかな?」

 

「はいなんでしょう?」

 

「マナリア学園じゃなくて、マナリア魔法学院だから」

 

「はい、というわけで皆さん間違えて学校の名前を覚えないようにしましょう」

 

 マナリア学園ではなく、マナリア魔法学院。それが正式名称である。因みに、グランを含めて『別に意味伝わるしよくね?』って思ったのがかなりいたりする。

 アンも、実はマナリア学園の方がわかりやすいから、そっちの方が好みだと言うことを偶に思っている。

 

「で、本題に戻るんだけど……」

 

「水着の話だね」

 

「珍しいよね、海もないのに水着の販売なんて」

 

「まぁね……でも需要があるから売れるんだよ」

 

「なるほど、確かに」

 

 海での授業は、マナリア学園…もといマナリア魔法学院では恒例行事である。つまり、その度に水着の販売が行われるということになるので、その分需要が大きくなる……という事である。

 他の島などでは、こうはいかない。

 

「ザンクティンゼルとかなら兎も角、ファータ・グランデの主な島々は水着の販売なんてしないからねぇ」

 

「水浴びする時とかどうしてるの?」

 

「ザンクティンゼルは……」

 

 グラン、ここでふと思考に入る。よく考えたら、自分の島は田舎である。他の島とほぼ交流がないと言わんばかりに、各島を行き来する定期便の騎空艇が来ない程である。

 ルリアやカタリナが来なかったら、今もあの島で修行を行っていたのかもしれない。

 とまぁ、そんな話は置いておき……それほどまでの田舎の島での常識、下手をすれば引かれるのではないだろうか?

 

「アンの実家のところはなかったの?」

 

 そう思い至ったグランは即座にアンに話を振る。引かれるのは別にグランとしてはまったくもって問題ないのだが、番組が放送事故を起こすのは問題なので回避出来るところは回避していかねばならない。

 

「え、私?私の実家は特にそういう事は無かったなぁ……だから、あんまり海って言うのと関わる機会がなかったんだよね」

 

 あまり焦ることなく、アンは自分のことを語っていく。その頭からは既にザンクティンゼルのことは抜けきっているようだった。

 

「で、水浴びする時とかどうしてるの?」

 

 訂正、忘れているなどといったことは一切起こっておらず、普通に聞き返してきていた。

 グランは放送事故を起こさないようにしなければならないので、ここで頭を高速でフル回転させなければならないのだ。

 

「ザンクティンゼルは特にそんな感じのはなかったかな。足は水に付けてる程度でさ」

 

「ヘー…他の島のことは分かる?」

 

 グランは安堵した。事実は語っているが、語っていないこともあるだけなので嘘つきと言われても嘘は言っていないので、これでなんら問題ないと、グランは判断した。

 

「さぁ……少なくとも、水浴び程度ならどこの島でもあるんじゃないかな?」

 

「ポート・ブリーズの辺りは無さそうな気がするけどね!」

 

「あー、確かに。あの島、熱くもなく寒くもなくで適度に涼しい風が吹いてるから夏でもそこまで汗で不快なことにはならないんだよね」

 

 風の島、ティアマトが守護する島だが、ティアマトの加護なのかポート・ブリーズ諸島は結構涼しいことになっている。ちなみに、ルリアの中にいるティアマトと、団員としてこの船に乗船しているティアマトとはまた別なので気をつけよう。

 

「バルツは…」

 

「あそこはそもそも水分が空気中に少ないんじゃないかな…ジメッとした暑さじゃなくて、カラッとした乾いた暑さというか」

 

「なるほど…」

 

「アルビオンはわかんないけど…ルーマシー群島は多分木々が多いから日陰が多くて涼しくなってる気がする」

 

 と、自分の推理をとりあえずファータ・グランデの島々で説明していくグラン。本当はもっと色々な島のことを語っているのだが、今回はここまでとして割愛させて頂くことにした。

 

「さて、3つ目と行こう……『グレアさんとよく仲がいいですが、他に仲のいい人はいますか?』」

 

「これって学院の事?それともこの船でのこと?」

 

「船のことでお願い」

 

「じゃあツバサ君!」

 

「え、結構意外……」

 

 別段、交わらない訳では無いと思うが、ツバサの方から積極的に向かうことは基本ないだろう。つまりアンが積極的にツバサに話しかけていってるという事になる。

 物怖じしないその性格は、グランも見習わなければいけないと心の中でそう決めていた。

 

「そう?でも、彼結構面白い話聞かせてくれるんだよ!」

 

「例えば?」

 

「ケッタギアの話!私あれ乗ってみたい!」

 

「ケッタギアにのるお姫様……」

 

 正直、パワーワード感が強すぎるが、あまり突っ込まない方がいいのだろうと、グランは思った。光景もシュールなので突っ込みたくなったが、所謂ツッコミに対してボケが過剰供給されている状態なので、どこから突っ込んだらいいのか分からないのだ。

 

「オーウェンが止めそうだけどね」

 

「確かに!でもオーウェンも乗ればきっとわかるよ!風になるって多分いいものだし!」

 

 完全に魅了されてしまっているようだった。それだけ、新鮮なことは彼女の好奇心をそそるのだろう。

 微笑ましいとも言える。

 

「……っと、悪いけど今日はもう時間だね」

 

「うーん、短かったなぁ」

 

「まぁまぁ、個人的な話なら後で俺の部屋にぃっ……」

 

 純粋にただ普通に落ちた。今のグランの様子を言葉にするならそれに尽きるだろう。最近回りくどい方法が多かった様にも思えるので、この程度が案外問題なかったりするのだ。

 

「……え、あっ…え!!?!?!??!?!」

 

 アンも反応がつい遅れてしまい、一瞬何が起こったのか理解出来ていなかった。グランが落ちたと認識した時にようやく反応ができるようになっていた。

 

「……びっくりしたぁ…」

 

 アンが確認した時、グランはすでに空を飛べるもの達によって拾われているので、その時点で既に問題はなくなっていた。落下した本人であるグランも、あまりにも綺麗に落ちたために自分が落ちたことを認識していなかったほどなのだから。

 

「…とりあえず、今から団長さんの部屋に行こっと」

 

 恐らくグランも部屋に戻るだろうと予想したアンは、先にグランの部屋で待っておくことにした。誘われているのだから、行っても問題ないだろうという考えである。

 まぁ、考えも何もグランが今さっき誘っていてなおかつ『あとで』と言っているのだから、ほとんど何も問題がないように感じるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツバサ君、どうするっすか?」

 

「っべぇよ…マジマブだべ……」

 

「そうだなぁ……とりあえず、姫様ん為にケッタギアそれっぽいの作ってやろうぜ」

 

「「うぃーっす」」

 

 そして、グランサイファーの別の一角ではアンの為に不良達がケッタギアを新しく作ろうとしているのは、また別の話である。

 

「あ、グレアちゃんのはどうするっすか?」

 

「……」

 

「ツバサ君?」

 

「ヘルメット入んねぇから駄目だ」

 

 そして、さりげなくグレアが話題に上がっているが、不良らしからぬルール遵守による乗り物乗車拒否も、きちんと行っていた。

 しかし、不良とは名ばかりで彼らが元々いいところの学校の生徒でそれなりのルールや規範はあるということを……忘れてはならない。

 




制服の基準どうなってんですかねあの学校

偶には長編とか書いて欲しい

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