ぐらさい日記   作:長之助

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ピカピカ☆マナリア魔法学院

「……あれ?アン…?どうして団長さんの部屋に?」

 

「グレアこそ…どうしてここに来たの?」

 

 グランサイファー、団長室。ここに今2人のマナリア魔法学院の生徒がいた。部屋の主であるグランはここにはいないが、お互いに何故ここにいるのか、何故ここに来たのかが気になってしまったのだ。

 

「いやぁ、団長さんから呼ばれてたんだけど……いなくて」

 

「私も呼ばれたんだけど……あれ?」

 

「グレア?どうしたの?」

 

 何故ここに来たのかを話していたが、唐突にグレアが部屋の隅で何かを見つける。それは一枚の小さな紙だった。

 グレアはそれを拾って読み上げていく。

 

『古戦場、思ってたより早く始まったわ。ごめん』

 

「……古戦場…?」

 

「朝早くから何人か出て行ったと思ったら……そういう事だったんだ……」

 

 色々なメンバーが、今グランサイファーから抜けている。無論、団長たるグランもその例に漏れないが、グランが選出したメンバーがグランサイファーの運用を行っているので、特に動かせないということは無い。

 

「うーん……まさか本人がいないなんてね…」

 

「結局用事ってなんだったんだろう…?」

 

 恐らくしばらくは帰ってこないだろうと、2人は思った。というよりも、この時期グランはしばらく船から離れるのだ。戻ってこない故に、仮に用事があるものは待たなければならない。急ぎでない限り、基本的に内々的に終わらせるためグランにはあまり相談されることが少ないが。

 

「戻ってこないなら…うん!グレア、お出かけしよっか!」

 

「え?今から?」

 

「ちょっとその辺の野原を散歩するだけだよ!ご飯までに戻ればいいし!」

 

「う、うん」

 

 こうして、急遽2人は出かけることとなった。散歩する事はよくあるが、二人きりで出かけるのは久しぶりなので二人ともどこか楽しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、アルビオン学園…だったよね?ヴィーラさんとカタリナさんが元々通っていた学校って」

 

「へ?急にどうしたの?」

 

「んとね?あそこって町ぐるみで魔物を放してるらしくてさ、街中で魔物との戦闘が行われるんだって」

 

「へぇ……」

 

「でね、マナリアも同じことしたらみんな魔物との戦いに自信がつくんじゃないかな!?」

 

「アン、多分それは間違ってる」

 

 多分どころか、アルビオンの様なことをして成り立っているのは町ぐるみで行われているからだ。普段でそれを行おうとするのは、中々に賭けだろう。下手をすれば、街一つが社会的に崩壊する。物理的に崩壊する可能性も無くはないが。

 

「そう?」

 

「流石にマナリア魔法学院で同じ事をするのはね…」

 

「まぁ……よく考えたら、やることが全然違うから成り立たないのか」

 

 そう、アルビオンは騎士道を学ぶ学園であるのに対し、マナリア魔法学院は魔法を学ぶ場である。運動と研究という全く別のものでは、同じことをしても成り立たない場合が多い。

 

「でも、いざと言う時におどおどばかりしてられないよ」

 

「それは……」

 

「たとえ戦えなくても、人の避難とか…冷静に対処できる人がいたら、戦える人達は安心出来ると思うんだ」

 

 守るべきものが周りにいて、敵が誰を狙うかわからない状況で戦うよりも、敵が自分だけを狙う状況を作り出せたら確かに安心して闘いやすいだろう。グレアは一時前の、力を制御できない自分を思い出しながら、そう思っていた。

 

「……ってなんか真面目な話しちゃったね、せっかくグレアと二人きりで出かけてるのに」

 

「じゃあ楽しい話しよっか」

 

「そうだねぇ……あ、そう言えば前から気になってたんだけど…」

 

「何?」

 

「グレアってさ、前に水着きた時…尻尾どうしてたの?」

 

「へ?」

 

「だって、水着って下着程度の面積しかないのに、グレア普通に水着着てたからちょっと気になって」

 

 水着を着ていたグレア。面と言われると彼女は恐らく赤面するだろうが、彼女の尻尾はかなり太い。その尻尾が外に出たまま水着を着るというのは、どういう原理なのか……アンはそれを質問しているのだ。

 

「え、えっと……答えなくちゃだめ?」

 

「ダメ」

 

「う、う……あ!あそこに団長さん!」

 

「え、嘘!?」

 

 一瞬アンが後ろを向いた瞬間、グレアは猛ダッシュで逃げていた。どうやって逃げるかをテンパリながら、ひたすらに走って逃げていた。

 

「あ!待ちなさいグレアー!!」

 

「ま、待てって言われてまつ訳ないよ!」

 

「尻尾のこと聞くのってそんなにダメなのー!?」

 

「ダメー!!」

 

 赤面するグレア。尻尾を見せることはなんら問題ないのだが、どうやら尻尾に関係することだと、彼女の中の羞恥心が刺激されてしまうようだった。

 そう言えば…とアンは前にグレアの尻尾が大きくなっていた事を思い出した。太ったとグレアは思っていたが、要するに体が成長するに合わせて尻尾も適切な太さになっていたという話なのだが……要約すると、尻尾はいろんな意味で彼女の弱点である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どこまで逃げるつもりだったの……」

 

「そ、それは……」

 

「と、というかここどこだろ……」

 

 あれからひたすらに爆走していた二人。ついにアンがグレアを捕まえたと思われていたが、気づけば見知らぬ場所に立っていた。

 

「島だから…多分真っ直ぐ走ってたと思うし、戻れば辿り着けるかな…」

 

「……ごめんなさい」

 

「どうしてグレアが謝るの?追いかけたり、聞いたら行けないこと聞いた私が悪いんだから」

 

「でも……」

 

「ほら、グレアは気にしないで?早くグランサイファーに戻ろ?」

 

「うん……」

 

 手を繋いで来た道を戻る二人。戻ると言っても、真後ろに方向転換して歩くだけなのだが。

 しかし、手を繋いでもグレアの顔は沈んだままだった。

 

「……まだ気にしてる?」

 

「だって、私のせいだし……」

 

「もー、グレアのせいじゃないって言ってるよー?」

 

 アンは苦笑しながらグレアを励ます。アンはグレアに対して怒っている、と言ったことも全くないし落ち込んでいるグレアを見て純粋に励まそうとしていた。

 

「……ありがとう、アン」

 

「ううん、どういたしまして」

 

 そのアンの心が伝わったのか、グレアは笑みを返してまたアンも笑みを返していた。

 

「それにしても、のどかだねぇここは」

 

「そうだね」

 

 2人で手を繋ぎ、並びながら景色を見つつ歩いていく。こんな綺麗な景色を2人で見れると考えたら、案外道に迷ったのも悪くない……とグレアは考えていた。

 

「そう言えば…オーウェンは?」

 

「オーウェンは今日はいないよ。普段私から離れることなんて滅多にないんだけど……今度の学園での健康診断関係みたいだったから」

 

「え、なら私達も…」

 

「男子のことは男子にしか分からないってやつだよ」

 

「そういう……ものなのかな?」

 

「そういうものだよ」

 

 そんな話を続けながら、2人は歩き続ける。それなりに離れていたのか、歩くにつれて日が段々と沈んでいく。お昼を食べる前に戻るつもりだったが、彼女達がグランサイファーを発見した時にはもう既に夕方になっていた。

 

「いやぁ、晩御飯が楽しみだ!」

 

「そうだね……けど、団長さんはまだ戻ってきてないみたい」

 

「本当にしばらく居ないみたいだねぇ……結局、何の用事だったんだろ?」

 

「うーん……わかんないなぁ……」

 

 グランが帰ってくるのは、まだ先の話である。そして、その間グレアとアンはゆったりまったりとグランサイファーの中で過ごそうかと予定を立てるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁああああ!!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 そして、場所は代わり。現在グランはリーシャと共にそこそこ大きな魔物を殴り倒し続けていた。

 しかし、倒せど倒せどその数は一向に減らないでいた。

 

「多くない!?」

 

「古戦場ですし!!ところで団長さん!!」

 

「何!?」

 

「今回の目的は!?」

 

「二王弓!!」

 

「分かりましたいきます!!」

 

 こちらも他愛ない話をしながら、魔物を切り倒し続けていた。時折星晶獣が出ているような気がするが、そんなことを気にする余裕もないままただひたすらに倒し続けていた。

 

「ニオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 とりあえず叫びながらグランは倒し続ける。一体何体倒したか……そんなことを考えている間があるならば、2匹は倒せる。弱くはない、魔物達も並の騎空士ならば倒されてしまう可能性があるものだ。

 しかし、今のグランの気迫は魔物達を圧倒していた。ひたすら剣を振り回し、切り刻み、消し飛ばす。まるで嵐のように動き回るグランを見て、本能的に危機を察知しているのだ。故に群れ全体で対処しなければならない。

 何故か月末になると、大量の騎空士達によって乱獲される彼らだが、存外しぶとい種族のようで未だにその数は減らせていなかった。

 

「ところで団長さん!」

 

「何ですか!!」

 

「久遠の指輪ってあるじゃないですか!!」

 

「はい!!」

 

「付けてください!」

 

「ないです!!!!」

 

 その瞬間、たった一瞬だったが空気が凍りついたような感覚にグランは襲われていた。

 背筋が冷え切って、心臓どころか背骨とかほかの色々な所全てを握られたかのような……そんな感覚に陥っていた。

 

「え?」

 

「いや、ないよ」

 

「何でですか?」

 

「ヒヒイロカネを作りたいから……」

 

「……分かりました、じゃあ街中で500ルピくらいで売ってる玩具のやつでいいです」

 

「えぇ……いやまぁ、それくらいならいいけど」

 

「言いましたね!?約束ですよ!?言質取りましたからね!!」

 

 グランは思った。『あ、これ絶対に拒否っとかないとやばいやつだったんだ』

 まさか500ルピで、ここまで迫真になるとは思っていなかったからだ。これは、指輪を付けるだけでは済まないだろうなとしかめっ面をしながらグランは考えていた。

 

「え、ていうかいつ!?」

 

「これ終わってからです!!」

 

「そっかぁ!!」

 

 グランは考えるのはやめた。考えるよりも、今は目の前にいる魔物を狩って時間を進めていたかったのだ。今は古戦場、時間があるなら回して数を稼がないといけない。

 そう、数は大事なものなのだ。稼がないといけない。

 

「うおおおおお!!!」

 

 本来、こういうのはシリアスな雰囲気で行われるものかもしれないが、そういうのは一切なくグランはただ仲間と共に狩り続けるだけである。

 血を頭から被り、匂いがこびりついてしまったせいで段々と魔物が近づかなくなってくるが、それでも追って殺す。星晶獣が出たら、とりあえず殺す。それくらいの勢いでやらないと、古戦場では生きていけないのである。

 

「キュベレーだ!!下のライオンを今日の晩飯にすんぞ!!」

 

「またですか!?朝昼晩連続してますけど、何回目でしたっけ!?」

 

「知るか!数えるくらいなら殺して食うぞ!!」

 

 正直、グランをここまで変貌させている古戦場に、仲間たちは戦慄していた。ただ変態であっても優しい団長なら良かったのに。セクハラするクズだったけど優しい団長だったのに。

 でも、古戦場だといつもの事なので仲間たちはすぐに考えるのをやめて魔物狩りに勤しむのであった。




サポート団っていいですよね

偶には長編とか書いて欲しい

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