「今回のゲストはシャルロッテさんです」
「団長殿」
グランと、テーブルの上から覗く金色の王冠。グランはそれを手で指し示して『シャルロッテ』と言った。知らない人が見たら、自分の顔を出さない人物の様に思えるだろう。
「顔が映っていない様に見えますが、ちゃんと写っているのが真実ですのでご安心を」
「団長殿」
「さて、ではシャルロッテさんの簡単な自己紹介から━━━」
「団長殿!ちょっといいでありますか!!」
「……どしたのシャルロッテ、ちゃんと番組始まる前の君の要望聞いたじゃない」
「うぐっ……き、木箱を取ってくるのであります」
そう言って、王冠は姿を消す。さて、何故こんな事になっているのか…簡単な説明を行おう。
番組が始まる前、シャルロッテは自分がよく使う木箱は今回使わないと伝えた。理由としては、誤魔化すのは問題だからだと。
グランはそれをやめておいた方がいいと注意はした。しかし、意思の硬いシャルロッテを簡単に曲げることは難しいので、そのまま始めた方が効果的だと思ったのだ。
因みに、木箱がない場合丁度頭だけが隠れるようになっている。視点によっては、頭髪が極稀に見える。
「取ってきたであります」
「ほら、ちゃんと椅子の上に載せろよ?」
「載せたら椅子に乗れないであります」
「大丈夫だって……俺が載せるから」
そう言ってグランはシャルロッテを脇から抱き上げて持ち上げる。ハーヴィンなので、グランからしてみれば持ち上げるのは容易いだろう。実際、肩車しても恐らく苦にはならない。
「……団長どにょ!!」
「どした急に」
顔を真っ赤にしたシャルロッテ。その性格と、お子様ランチが好きだという所からよく子供扱いされるが、彼女はこれでも20歳を超えた成人女性である。
サラの方が大人っぽいなんて言う話はしていない。
まぁそんな成人女性の体に触れて持ち上げるというのは、かなり問題がある行為である。
「いきなり触られると驚くのであります!!」
「宣言したら?」
「……それは、まぁ…覚悟決めるのであります…」
「とりあえず載せるよ」
そして、グランはシャルロッテを席に載せる。そして同時に、その手首に手錠が掛けられる。
「流石に今の普通にアウトですけど」
「やっぱり?やましい気持ちはなかったんだけど」
「無くてもアウトです、後本人の前でそういうのやめておいた方がいいですよ」
手錠をかけた人物と、軽く話をするグラン。ちゃっかり、グランの台詞で女性として見られてないと思ったシャルロッテが、ショックを受けていた。
「あの、ところで君誰…?」
「リーシャさんの部下です」
「リーシャは?」
「古戦場の後始末しに行ってます」
「そっかぁ……」
そのまま連れ出されるグラン。シャルロッテは少しショックを受けていたが、それ以上にそのまま連れていかれたグランに驚きを禁じえなかった。
「え、これ……進行不可というものでは……」
「ご安心を」
「うわぁ!?」
突然、影から現れる人物。黒い肌に細身ながらもがっちりとついた筋肉。彼の名前はジャミル、グランを主として使えている人物である。
「ここからは私が進行させて頂いてもらいます」
「よ、よろしくであります……」
「いざと言う時、私に全てを任せてくれました。主がいない今、私がその力を振るう時」
「振るうところ間違ってるであります……というか、失礼でありますがこういう事はやったことがあるのでありますか?」
シャルロッテは、ジャミルにこういったトーク関係のことをした経験がないと感じた故に、このような質問をぶつけていた。実際問題、ジャミルのことを知っている者達であれば少し不安になることもあるだろう。
しかし、ジャミルはそんな不安を払拭するかのように口角を上げて笑みを浮かべていた。
「勿論あるはずがないでしょう」
「え、その笑みは何でありますか」
「無くても、どうにかしなければならないのが私の役目…故に、こういう時は逆に自信を持てと主に教わりました」
「団長殿…色々間違っているであります」
しかし、続行されるものはやらねばならない。お互いに真面目な性格故に、ボケはあってもツッコミがない…という酷い状況になってしまっていた。
「では、続けましょう……確かこちらの方にお便りがあるのでしたね。ではそちらを読んで言って、進行してもらいます」
「……分かったのであります」
ため息をつくシャルロッテ。しかし、先程も言った通り彼女もまた真面目な性格なので、この番組は進行してしまうのだ。
「さて……確か無作為に3枚ほど取るのでしたね…これでいきましょう」
手でかき混ぜた後、適当な1枚を掴んでからジャミルはお便りを取り出す。
「『どうしてその王冠は、そんなにバランスがいいのですか』」
「頭につけてるこれのことでありますね」
「恐らくそうでしょう、確かにそれは結構長いのに中々落ちるところを目撃したことがないですね……頭に縫いつけてたりするんですか」
「そこまでしていないのであります……」
シャルロッテと言えば、頭の上にある特徴的な王冠が目印である。彼女の身長を、これでもかという程には強調してしまっているが、シャルロッテはそれに気づいていない。
「では、何故落ちないのですか?」
「特訓の成果であります。頭の上にこれを乗せながらでも、戦って落とすことがないようにしておくくらいに、バランス感覚を鍛えたのであります」
「そうですか」
ジャミルは突っ込まなかったが、しかし内心『そうではない』と突っ込んでいた。シャルロッテは、それなりに大きな剣を使って戦っているのだが、それのせいか戦い方は自分を軸に剣を振り回して相手を斬ることが多い。
そう、回転しているのに王冠は落ちないのだ。故に『そうではない』
「では2通目に参りましょう」
「え、今の終わりでありますか」
「何か問題でも?」
「団長殿はもう少し会話をしていたであります」
「はっきりと申し上げると、これ以上聞くと明らかに尺が足りなくなってしまいます。残念ですが、この話題はここまでにします」
「む、むぅ……」
確かに、これ以上聞くのは中々時間が長くなってしまう。シャルロッテもそれは分かっているため、ジャミルの言うことに反論をすることがなかった。それを確認してから、ジャミルは改めて新しくお便りを取り出す。
「『この団にいるハーヴィンの人達と戦ったことはありますか』」
「ヨダルラーハ殿と特訓でなら、何度か戦ったことであります」
「他の人物はいないのですか?」
「いるでありますが、ハーヴィンで剣士という共通点があるのであくまでも例として挙げさせて貰ったであります」
「なるほど……因みに、ヨダルラーハどのは器用さと手数が特徴的な戦い方ですが……」
「自分も、それなりに闘えているつもりはあるであります。あくまでも、自分の主観なのでこれで満足するつもりは毛頭ないでありますが」
シャルロッテは大きな剣の一刀流、ヨダルラーハは刀の二刀流。同じ剣士と言っても、武器の少しの違いで戦い方はまったく変わってくるのだ。
「なるほど……そういった努力の積み重ねで強くなっていったのですね」
「そんな所であります」
「では三通目『どうしてお子様ランチをよく作ってもらっているのですか』」
「バウタオーダ殿が、理由をよく話してくれるであります」
「あれは子供を成長させるに必要な栄養素が、多く含まれている食材で構成されています。さらに、子供が喜んで食べるためにゼリーなどの甘味や、旗などといったものまで付いている……」
お子様ランチの特徴を上げていくジャミルだったが、ここまで言ってから『やはりシャルロッテは子供では?』と疑念を抱くようになった。
見てしまったら確かにそう思うのもわからなくもないが、しかし大人だである。合法だ。
「今自分のことを子供だと思ったでありますね」
「いえ、そんなことは無いですよ」
全く自然に、一切の表情を変えることなく、顔の筋肉を動かすことなく、ジャミルはガチで誤魔化していた。シャルロッテは訝しんでいたが、しかし時間も時間なので仕方なくここはスルーを決めることにしたのだ。
「まぁ、今言ったことがお子様ランチの大体の特徴であります。けれど、自分は身長を伸ばしたいのであります……ですから、牛乳もセットにして、よく運動してからよく寝る生活を続けているのであります」
「ハーヴィンですから、それ以上は伸びないのでは」
「壁は超えるために存在するのであります、自分はそうやって努力で壁を超えてきたのであります」
「なるほど」
ジャミルはなにか思う所があったのか、今のシャルロッテのセリフをメモしていた。キリッとしているシャルロッテだが、その顔はどこか嬉しそうで若干にやけていた。
「さて、そろそろお時間ですね」
「おや、もうそんな時間でありますか。相手が今回はジャミル殿でしたが名残惜しいのであります」
「それは褒められている、と受取りましょう……さて、ご視聴ありがとうございました。恐らく次回は主殿が復活する予定ですので、画面で主殿を見たい方は安心してください」
「自分との剣の勝負も受けて立つであります」
「ではまた」
瞬時に消えるジャミルの姿、その瞬間カメラの電源が落とされて番組は終了していた。シャルロッテは真面目同士もう少し語ってみたいような気がしたが、それはまたの機会ということにしておいてそのまま部屋から出ていくのであった。
アマルティア島。はっきり言うと、グランは今取調室にいた。目の前にはアマルティアのお菓子が出されているが、一切手をつけていなかった。
「食べていいんですよ?」
「身内ならともかく、明らかに個人の私物だよねこのお菓子。君の懐から出したヤツだよねこれ、というか目の前で出されたんだけど」
「人のものだってわかると、さすがに手を出しづらいんだけど」
ちょっとクシャってなってる包み紙のせいで、より懐に割と長い間入っていた感が強くて、グランは余計に手が出せなくなっていた。
「いや、流石に出して困るようなもの出してたら秩序の騎空団やっていけないよ」
「いやまぁ、そうなんだけどさ……つかいつリーシャ戻ってくんの?」
「後始末終わったらですよ」
「後始末ねぇ…?こんな長いことかかるもんなの?」
「流石に魔物の死体そのまま放置してたら、結構やばいんですよね実は」
「まぁそれはわかるんだけど……そんなに連れて行ってないの?人」
「そういう訳でも━━━」
いまさっき知り合ったと言っても、過言ではない程には面識が薄い目の前にいる秩序の騎空団団員の人。その人と適当にだべりながら、グランはリーシャを待っていた。
しかし、リーシャを待ち続けていたのはいいのだがその後リーシャが戻ってきたのはまさかのその日を超えた……というオチであった。
要するに、グランは唐突に丸一日秩序の騎空団にお世話になっていたと言うだけの、そんな話なのであった。
シャルロッテ1回書いてなかったっけという錯覚に襲われ続けて書いてました。
書いてたらすいません。