ぐらさい日記   作:長之助

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ディリジェントナイト、とことん頑張るのです?

「今回のゲストはブリジールさんです」

 

「よろしくお願いします、です!」

 

 ブリジール、元リュミエール聖騎士団の一員だったが、脱退して今はグランサイファーに在籍するハーヴィンの女性である。ハーヴィンなので子供っぽく見えるかもしれないが、シャルロッテ同様成人女性である。声が色っぽいのが、成人女性である分かりやすい証明なのかもしれない。

 

「一日十善をモットーに、掃除洗濯が趣味とのことで」

 

「はいなのです、休日もお掃除とお洗濯を率先してやるのであまり遊んだことは無いのです。けれど、あまり剣の方は…」

 

「そっちはあんまり無理して語らなくていいよ、苦手な事の一つや二つあるんだろうし」

 

 彼女は、あまりにも体力と力がない。剣も数回振ればバテてしまうために、その事を気にしてバウタオーダに剣の鍛錬の師をお願いしているほどだ。

 

「でも、騎士団に在籍しているのに……」

 

「どこに在籍してても、苦手なものは変わらないよ。問題なのはそれに取り組んでいるかどうかだし」

 

「団長さん…」

 

「ブリジールはちゃんと剣の鍛錬してるじゃない。バウタオーダからちゃんと報告も受けてるし……そうやって努力をしている事が、重要だと思うよ」

 

 グランはそう語っていて、途中ブリジールを見てから気づいた。感動した目でこちらを見ているのだ。

 

「ありがとうございます!!」

 

「うん、どういたしまして……という訳で話が一段落したところで、そろそろお便り紹介いってみようか」

 

「はい!」

 

 いつもの様に、グランは箱を取り出すある程度掻き混ぜては中身の上下を変えるようにひっくり返したりして、無作為性を上げていく。そして、1通目の手紙を取り出す。

 

「という訳で、まずはこのお便りから……『一日十善と聞きますが、まずはどのようなことをしているのでありますか?』シャルロッテからだね」

 

「シャ、シャシャシャ……シャルロッテ団長から…!」

 

「ステイステイ、大きく息を吸ってー」

 

「すー…」

 

「吐いてー」

 

「はー……」

 

 シャルロッテのものからだと言われた瞬間に、ガチガチに緊張し始めたブリジールだったが、グランは深呼吸を促してなんとか落ち着かせようとしていた。

 

「緊張の糸はほぐれたか?」

 

「は、はい……なんとか……」

 

「で、一日十善は主に何をしているかって話な訳だけど…」

 

「主なこと、と言えば人のお手伝いなのです」

 

「なるほど、ブリジールらしい」

 

 一日十善、文字通り1日の間に良い事を10回行うというものである。無論、ブリジールはそれ以上…下手したら倍以上を毎度行っている可能性があるが。

 

「ただ、力仕事は1度行うと……」

 

「あぁ……」

 

 彼女は、先程も言った通り力がない。剣が振れないほど、と言うよりはシャルロッテのような身の丈にあっていない大剣なんて、持ち上げることはほぼ不可能な程である。

 

「力はなんとか付けようと思っているのですが、何故か今以上の体力と力が中々付かないのです……」

 

「んー…まぁ成人しちゃうと、どうしても筋肉も成長しづらいのかもしれないしねぇ…」

 

 ハーヴィンの体躯だから、という言葉は出てこなかった。というのも、この団に在籍しているハーヴィン達のことを考えると、あまり腕力が育たないというのが、種族特有のものでは無い気がしていたからだ。

 

「そういうものなのですか…」

 

「あくまでも、多分だけどね……人の手伝いって言うけど、毎日違った人の手伝いをしてるの?」

 

「はいなのです、ただナルメアさんだけは毎日手伝ってるのです」

 

 ナルメアは、ハーヴィンを全体的に子供として見ている。見た目が完全におじいちゃんのヨダルラーハの様なものならばともかく、彼女からしてみればハーヴィンは皆子供のようなものだと思っているのだろう。

 ブリジールが手伝っているのが、もしかしたら彼女の目には子供が母親のお手伝いをしている図のように見えているのかもしれない。

 

「他に毎日してるメンバーっている?」

 

「うーん…あまりいないと思うのです。連続して、というのはありますけど平均的に考えたら、基本的にほぼ平等くらいにできていると思うのです」

 

「なるほど…ブリジールは皆のアイドル的存在なのかもしれない」

 

「あ、アイドル?ちょ、ちょっと照れるのです…」

 

 はにかみながら、顔を軽く赤面させるブリジール。声のせいも相まって、ギャップ的な可愛さが存在していた。グランも、心の中で親指を立てていた。主にサムズアップ的な意味合いでの。

 

「でもまぁ、そうやって誰かのために動けるというのはとても素晴らしいし、俺はいいと思うよ」

 

「そう、そうですか?」

 

「うん、まぁこの団だと基本的に皆誰かの手伝いしてるっぽいけど、それでもブリジール並に誰かの手伝いをしている人なんて全然いないよ」

 

「え、えへへ…」

 

「さて、一応解決したっぽいので2通目行きましょう。『自炊するのですか?』

 ブリジールって確か、ご飯作れたよね」

 

「なのです、騎士団では自炊係をしていたのです」

 

 あまり話題にならないが、ブリジールも料理を嗜んでいる。こちらもかなり美味しい料理なのだが、ハーヴィンでは料理をするのがキッチンの高さ的に難しいのか、あまりしているところを見たことがない。無論、料理人のエルメラウラは例外としているが。

 

「ハーヴィン用のキッチン作るか」

 

「えっ!?急にどうしたのです!?」

 

「いや、作れるならもっと作る機会増やした方がいいかなと思って」

 

「大丈夫なのですよ?ただちょっと、こちらの体力の問題といいますか……」

 

「あぁ……」

 

 そもそも忘れてはならないのが、この団に居る料理人の中には依頼を終えて帰ってきてから、料理を作る者達もいる。その依頼は、基本的に魔物退治のことを指しているのだが、そんなことをする猛者がいるのでブリジールが自分の体力を低く見ているのだ。高いかどうかは別として。

 

「でもまぁ、キッチンたまに使う時台を使ってるでしょ?それはさすがにどうかなと思うわけで」

 

「まぁ…台を使わずに済むのなら、確かに楽に調理できると思うのです…けど、それはきっと楽な道にただ逃げてるだけなのです」

 

「ブリジール……」

 

「私は作られても、恐らく普通のキッチンを使うのです」

 

「そこまで覚悟が決まっていたなんて……しょうがない、キッチンの件はまた検討しておこう」

 

「はい、ありがとうございますなのです」

 

 ブリジールの懇親の笑顔が、グランの心にグサリと刺さる。眩しい笑顔が邪な心を浄化しているかのような、そんな眩しさを誇っている笑顔だった。

 

「ブリジールって大人のお姉さんだよね」

 

「なのです、これでも20歳は超えてるのです」

 

『ハーヴィンという種族をこれほどまでに生かしたギャップが他にあっただろうか、アルルメイヤがいたわ』とグランは思った。その後心の中でアルルメイヤに謝罪をしながら、次の話に移ろうとする。

 

「さて、最後の1通、三通目…『コーデリアさんとは仲がいいんですか?』」

 

「なのです、同期の仲なのです」

 

「いつも仲良さそうにしてるもんね」

 

「です、コーデリアちゃんはとても優しくていい人なのです」

 

 コーデリアの話題を出すのが嬉しいのか、ブリジールは満点の笑顔を向けていた。仲がいいのは、周知の事実だが同期というのはリュミエール聖騎士団員達と、グラン達ぐらいしか知っていない情報だろう。

 

「コーデリアの方はいつもブリジールのやることなすことに目を光らせてるけどね」

 

「そうなのです?」

 

「凄いよ、うん」

 

 正確にはブリジール本人ではなく、ブリジールに近づく者達に対して目を光らせているのだが。ブリジールは、あまり人を疑うことはしない上に、直ぐに信じてしまう癖がある。その上怒鳴られたら驚いてしまうため、チンピラとかに絡まれたらとても大変なことになってしまう。

 時折そういうことが起こってしまうので、コーデリアは目を光らせて観察していることが多いようだ。

 

「コーデリアちゃんは私の事になると、途端に大袈裟になるのです」

 

「いやぁ、多分大袈裟じゃないと思うなぁ」

 

「私はこれでも…元…聖騎士団の一員なのです、そんな簡単にやられたりしないのです」

 

 元の所だけ小さく呟いて、ブリジールはすぐにグランに向き直る。きっちり聞こえているので、何ら問題は無い。

 

「じゃあ俺が今から言うことやることにNOを叩きつけてみて」

 

「はいなのです」

 

「うん、じゃあまずは飴ちゃんあげる」

 

「わーい、なのです」

 

 そのまま飴を受け取って、懐にしまうブリジール。既に言われたことを達成できていないのだが、それに気づいていないのかワクワクと緊張がおりまぜになった表情をグランに向けていた。

 

「ブリジール、ブリジール」

 

「?」

 

 念のために確認を取ろうとしたが、ブリジールは名前を呼ぶとキョトンとした顔をしていた。『あ、これ本当に気づいてないパターンだ』とグランも完全に気づいて、1度この話題を区切った方がいいと確信した。

 

「そろそろ時間だし、続きは後でやろうか」

 

「あ、はい、分かったのです!!」

 

 ブリジールは何も疑うことなく、純粋にグランの言葉を受け入れていた。『終わったらネタばらしをしよう』と、グランは考えていた。無論、その時の反応がどうなるのかというのが彼はとても気になってしょうがないのだが。

 

「と、というわけでご視聴ありがとうございます。また次回この番組でお会いしましょう」

 

 お決まりの言葉を言ってから、カメラの電源を落とす。その後、ブリジールと一緒に部屋を出ながら、どうやってブリジールにこの簡単なゲームをクリアさせるか…むしろその方に躍起になっているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

「…?ブリジール、どうしたんだい元気がないじゃないか」

 

 撮影からそれなりに月日が経ったある日、ブリジールは船の甲板で黄昏ていた。そこに、コーデリアが声をかけていた。

 

「コーデリアちゃん……実は、体重が増えていたのです」

 

「体重が…なるほど……」

 

「でも、理由が全く分からないのです……」

 

 コーデリアは知っていた。ブリジールが太ったのは、団長であるグランが事ある事に、飴やらパンケーキやらをブリジールに食べさせているのだ。

 番組内で行われていた例の遊び、あれは未だに続いておりその度にグランはブリジールに甘いものを食べさせていたのだ。

 

「何故……」

 

「…何故だろうな」

 

 コーデリアは、どちらを怒るべきか悩んでいた。太った理由が理由なため、グランを叱るべきなのだろうが……甘いものの食べすぎで太っていることも伝えるべきなのかというのも考えているのだ。

 

「とりあえず、動かないと痩せられないのです」

 

「そうだな、私も手伝おう」

 

 そしてコーデリアが取った選択肢は、『助言はしない』ということだった。彼女もまた、ブリジールの純粋性ではいずれ危ない目に遭うと知っているのだ。

 

「……まぁ、それはそれとして団長とは1度話し合わなければならないのかもしれないな…」

 

「コーデリアちゃん?どうしたんです?」

 

「いいや、何でもないさ」

 

「ふふ、とりあえず一緒に雑巾がけするのです!」

 

「足腰を鍛えるには丁度良さそうだ」

 

 友人として、そして仲間として……コーデリアはブリジールのサポートをするだろう。とりあえず、最近騙そうとする度に出てくるものの料理が派手になっていくグランは、1度きっちりと話し合っておくべきだと思いながら、コーデリアは腰に帯刀している剣を構えるのであった。




SR化して……
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