ぐらさい日記   作:長之助

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シークレットナイト、正義を問うか?

「今回のゲストは、リュミエール聖騎士団遊撃隊最後の切り札こと、コーデリアさんです」

 

「よろしく頼む」

 

「一応言っておいて欲しいとの事なので言いますが、彼女は女性なのでそこのところよろしくゥ!!」

 

「ありがとう団長、しかしそこまでメインで発表するとは思わなかったよ」

 

 凛々しい顔で少し微笑みながら、コーデリアはグランに少し注意を入れる。女性だが、可愛いと言うよりも凛々しさが勝っているために、イケメンという言葉がよく似合っている女性である。

 

「さて、ここで紹介の際に行った『遊撃隊って何?』って人もいるかもしれないので、紹介しましょう」

 

「遊撃隊というのは、大まかに言えば主力部隊の補佐をする部隊でね。情報収集は勿論のこと、場合によっては工作員のようなことも行う。戦闘の際には、哨戒や撹乱なども行う部隊のことを指すんだ」

 

「という事らしい……やること多くない?」

 

「まぁね、サポートというのは元来やる事が多いのさ……まぁ私の場合、正義審問を行う立場もある」

 

「シャルロッテが倒れた時のとかね」

 

 正義審問、簡単に言えばリュミエール聖騎士団の者にちゃんと正義が自分の中にあるかを問うものである。と、簡単に言えば楽そうだが場合によっては剣を抜く場合もある……どころか、基本剣を抜く羽目になる。何せ、そのようなことになっている時点でリュミエール聖騎士団から疑われているということになるのだから。

 

「しかし、正義審問って名前は堅苦しいイメージがあるけど、結構やっていることは物騒だよね」

 

「まぁ、上から疑われているとなるのだから物騒なのも当たり前だと思うけどね」

 

「確かに……前の時の理由は何だったっけ」

 

「リュミエール聖騎士団を抜ける者が多いので、示しが付かなくなってきた。だからちょっと聞いてこい……という理由だったかな、簡単に言えば」

 

「まぁ普通そうなるよね……普通考えたら、頻繁にポンポン人が抜けるような騎士団って、人からあんまりいい印象持たれなさそうって思う」

 

「上の方もそう考えたのだろう。その上、抜けたのがリュミエール聖騎士団団長なのだから、尚更だ」

 

 そんな事態になっているのに、あまり重要な扱いをされてないあたり、上層部はあまり好かれていないのではないだろうか…とグランはふと思った。それを察したのか、コーデリアはただ1度だけ頷くだけだった。

 

「とまぁ、やることが多くて仕事で疲れてるコーデリアさんに対して、お便りの発表を行います」

 

「こういう事をやっていても、多少の息抜きにはなるのでね……頼らせてもらうよ、団長」

 

「ご期待に応えられるように頑張るぞい……1通目『女性相手の仕事が多いのですか?』」

 

「あぁ多いよ。特に、私のような見た目だと女性に好かれやすいらしくてね。私自身が女性ということもあって、喜ぶ手段が男性よりわかりやすいだろうと言う判断さ」

 

「まぁ理論的にはわかるし、筋も通ってるんだけどさ……」

 

「何だい?」

 

「普通そういうのって、優先的に男に回しそうなもんだよね。いなかったの?」

 

「さぁね、私に回ってきたということは、上層部のお眼鏡に叶うようなものはいなかった……ということじゃないかな?」

 

 リュミエール聖騎士団の男性諸君が、グランはとても不憫に思えた。いや、恐らくコーデリアがいる時点で回ってくるのは明白なのでもしかしたらイケメンがいるかもしれないが。

 

「そもそも上層部がどういう構成してるのやら……」

 

「それは残念だが、流石に言えない。この場だと結構口がゆるくなってしまいかねないけどね」

 

 少しだけ微笑みながら、コーデリアは自分の指をグランに軽く押し当てて、言えないという意思表示をする。こんなことをされたら、確かに女性達は堕ちるのが分かると、グランは理解した。

 

「そういうのされるとギャップで惚れるぞ」

 

「…ふふ、そういうのは冗談でも言うべきじゃないよ」

 

 少し間があったことに、グランは気づいていなかった。そこまで間がなかったからかもしれないが。

 

「とりあえず、2通目を頼むよ」

 

「ほいさ……『趣味は何ですか』」

 

「…あまり口外したくないな」

 

「俺は知ってるんですけどね、まぁ本人が言いたくないと言っても言えないようなことが趣味ってわけじゃないですよ。ただ言うのが本人の性格的に言えないって話なだけで」

 

「まぁ、そのくらいしか言えないとだけ言っておこう」

 

 彼女の趣味は、所謂乙女趣味と言うやつである。別に隠している訳では無いが、彼女の性格が何となくその趣味のことを話したがらないと言うだけの話である。

 

「ブリジールに私が可愛いと言われるのは、そこが由来なのかもしれない」

 

「そういう時は『お前の方が可愛い』とかなんとか言ってやりな」

 

「それをブリジールに言うと、他の女性と同じように勘違いして…いや、ブリジールならいつもの私だと流すか…?」

 

 本気で考え込み始めるコーデリア。ブリジールの事になると、いつもこうなるのかとグランは思った。しかし、よく考えてみればブリジールと長い付き合いなので、心のどこかで過保護なものが芽生えているのかもしれない。実際、見てないと何が起こるかわからないのだから。

 

「おーい、コーデリアさんやー」

 

「っと……すまない、考え込んでしまった」

 

「正直見てたらかなり心配になるのは分かるけど、今は番組を進行させるんで、思考の切り替えお願いしまーす」

 

「……すまない、いやほんとに」

 

「ってわけで三通目『コーデリアちゃん、どうしていつも心配してくれるのです?』ブリジールから」

 

「逆にブリジールを知っているものからすれば、何故君が心配にならないと思わない?」

 

 実際その通りである。一日十善、その行いのために彼女は街に出ては人を助けるために一生懸命である。

 しかし、人を助けるその行動の合間合間で不幸に見舞われているような、もしくはドジを踏んでいるような、そんなことが起こっている気がしてならないのだ。

 

「とりあえずチンピラを追いかけては、怒鳴られて驚いてるをやってる気がする」

 

「最近は、チンピラ程度だと驚かなくなってきたけどね…」

 

「まぁ最近、誰をどうチーム分けするか…って言うのを分かってきたから…最近というか、メンバーが一気に増えた辺りから」

 

「いつからだろうな、急激に仲間が増えるようになったのは」

 

「夢で緑の恐竜が現れた時くらいかな…最近は赤いモッp」

 

「団長、何を言ってるのかわからないが……モップではなくおそらく雪男だ、どんな見た目をしているのかは知らないが」

 

 そんな夢の話は頭の隅に置いておき、グランは最近よくブリジールと組んでいる…というか組ませている者達を想起していた。

 まずはクムユだ、肝っ玉担当。ブリジールと同じように、仲間になった当初はビビりだった……が、今はなんとか肝っ玉になりつつある。そこを利用して、ブリジールに年上の威厳を見させてやるという気持ちにさせるのだ。

 次にスフラマール先生だ、大人の余裕しかない。同じハーヴィンなので、コミュニケーションが取れやすいとも言える。

 そして最後に、レスラーの格好をしたグランだ。ただ黙って後ろからついて行くだけの存在、スフラマール先生以外の2人からは怖がられている。

 

「レスラーってこういう時便利だよね」

 

「あれに後ろに立たれるのは心臓に悪い」

 

「そんな怖い顔してる?」

 

「団長、どんな恐ろしい顔よりも真顔で無言なのが1番怖いんだ」

 

 どこかで経験があるのか、コーデリアは迫真の顔でそうグランに諭していた。グランはコーデリアの後ろに立った記憶がなかったが、何故か自分が原因のような気がしていた。

 

「さて、話を戻そう……そうやって組ませてくれる間はいいが、何かしらの用事や体調不良でブリジールが前に出る、または1人になる場合がある」

 

「そういった時に、心配でついて行くんだね……後ろから」

 

「あぁ、別にそんな時だけという訳では無いが」

 

「えっ」

 

「あっ」

 

 闇を垣間見た気がしたので、グランはこの話を即座に終わらせた方がいいと判断した。時すでに遅しと言うべきか、口から出た言葉は他人が知るまで二度と戻ってこないと言うべきか……今のでコーデリアの印象が恐らく180度くらい変わってそうだ。

 

「……まぁ、話題の転換も何ももう時間なんですけどね」

 

「……そうか、もうそんな時間なのか」

 

「というわけで皆さんご視聴ありがとうございます。次回またこの番組でお会いしましょう……ではまた」

 

 そしてカメラの電源が落とされる。そして、直後にコーデリアがテーブルに突っ伏していた。

 だが、そんな時である。突如扉が大きく開かれたのだ。

 

「大変です団長さん!!」

 

「リーシャ!?どうしたんだ!?」

 

「ブリジールさんがこの島の1番大きなマフィア組織に絡まれてます!!」

 

「どうしてそんな事に!?船にいてコーデリアのを見るって言ってたよな!?」

 

「その前に買い物に行って、飲み物片手に真剣に見ようとしていたらしいんです。しかし、途中でお婆さんが困っていてそれを助けていたら、マフィアの下っ端に絡まれてしまったらしいんです」

 

 ちなみにこの説明を行っている時点で、コーデリアは既にいなくなっているのだがそのことに2人は全く気がついていなかった。

 

「その光景を目撃したランドルさんが、マフィアとの喧嘩に発展したらしいです。しかし、それを偶然見かけてしまったフェザーさんが入ってきて状況はさらに悪化」

 

「……」

 

「下っ端が上の者を呼び、さらに呼んで言って…今じゃあマフィア側は数百人いる状態です」

 

「えっと、ここにリーシャがいる理由と……ブリジールがいない理由を…」

 

「ブリジールさんは『自分が原因だから』と残ってます、数が多いので驚いていましたが、一人一人の戦闘力はそこまででもないのでブリジールさんも普通になぎ倒していってました。

 私がいる理由は、同じように参戦しようと思ったのですがブリジールさんにいい顔で『団長さんを呼んで欲しい』と言われました」

 

「まぁ、何だかんだブリジールもかなり強くなってるもんね…」

 

 状況が混沌としているせいで、ブリジール連れて帰ってきた方が良かったのではないか?と思わなくもなかったが、しかしまぁさっさと迎えに行った方がいいと思い、グランもさっさと準備を行い始める。

 

「…ん?ランドル、フェザー、ブリジールの3人だけ?」

 

「いえ、カリオストロさんにソリッズさん…ブローティアさんにアテナさん、サラーサさんにエッセルさんとカトルさんもいます」

 

「なんだその過剰戦力!!マフィア側が全滅なんてルート決められたら、とっても面倒なことになるじゃないか!!」

 

 さっきまでブリジールの心配をしていたが、この明らかなまでの過剰戦力を聞かされたらブリジールよりもマフィア側が心配になってしまう。

 皆、誰かを殺すようなことは無いと信じてはいるが、人間がアリと遊んで殺さないなんてなかなか稀である。というか、追いかけてくる奴らにマフィアが追加されるのが恐ろしく面倒なだけである。

 

「とりあえずさっさと行こう!!」

 

「はい!!」

 

 因みに、向かった先では既に全滅させられていたので、仕方なくグランはボロボロのマフィアのボスと『お話』することで追いかけられずに済むようになったのであった。

 その後、全員で戦闘場所の補修作業に入ったのだが……

 

「…そう言えば、コーデリアは?ブリジールは?」

 

「ブリジールなら、私が連れて帰ったよ」

 

「コーデリア…いたのか……」

 

「先程ブリジールをこの場所から離してグランサイファーに連れて帰っていたのさ。そして、団長が入れ替わりでここに来たというものだからまた来た…という話さ。

 私も補修作業、手伝うよ」

 

 手伝われることは嬉しいが、グランが全速力を出してもここに来るのに数分はかかるというのに、コーデリアはどのくらい速度が出ていたんだろうか…そう思ったが、グランは聞く気も起きなかったので……そのまま一緒に戦闘場所の補修作業に入ったのであった。




もっと2人でイチャコラして欲しい

偶には長編とか書いて欲しい

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  • はい(シリアス)
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