「はい、というわけで今回はアルルメイヤさんです」
「よろしく」
「椅子の高さあってる?」
「心配しなくとも、水晶の上に乗ってるから」
「あぁ、あのでかいヤツね」
最初から軽い会話をしながら、グランとアルルメイヤは会話を行っていく。アルルメイヤはハーヴィンなので、椅子の高さがほかの種族と比べて合うかどうかが分からなかったからだ。
「アルルメイヤってさ、未来予知出来るんだよね」
「まぁね、私はあまり行おうとは思わないが」
「水晶で見るんだよね」
「……?あぁ、と言っても見えるのは私だけで他の人には見えないよ?」
「その角は?」
グランの質問により、アルルメイヤは沈黙する。未来を見るのに、水晶を透して見るのならば、一体頭につけてる角のような飾りは一体何なのか。グランは前からそれだけが気になっていたのだ。
「……ほら、雰囲気でるだろう?」
「え、ほんとにそんな理由?」
「冗談だ。オシャレだよオシャレ」
「そっちの方がいいよ、いや俺の個人的な考えだけどさ」
少しだけ安堵したかのような息を出しながら、グランは椅子に座り直す。そしていつもの如く質問箱をいじって中から無作為にお便りを取り出す。
「というわけで急ですが、質問コーナーです」
「どんどん来たまえ」
「『私、結婚できそうか?』ってイルザさん……何故こんな……」
「悪いが、私は個人のための未来予知はしないんだ。だから、自分で掴み取ってくれという他ない」
苦笑をしているグランに変わって、アルルメイヤは淡々と進めていく。無論、妖艶な微笑はちゃんと出してはいるのだが。
「はい次『この前グランの部屋に入ってきましたが、何か用事でもあったのですか?あんな真夜中に』……これ、ヘルエスだけど…」
ヘルエスからの質問。無作為に取り出したので、全く何かを意識した訳でもない。あまりの不意打ちの質問にグランとアルルメイヤ、両名珍しく焦って訂正をし始める。
「待ってくれ……ヘルエス、君は何か勘違いをしている。確かに真夜中に入っていったことは確かだが、あれは本当に用事があったんだ……」
「そうそう、アルルメイヤはうちの団のハーヴィングループリーダーその1だからね。偶にそうやって報告させてもらってるんだよ、うん。もう次行こう次」
後でヘルエスに弁明するとして、グランは次のお便りを取り出す。先程みたいな質問は、なるべく引き当てたくないところではあるのだ。
「お、これは……『未来予知してみようかな、と思った個人っていますか?』……匿名希望か」
「まぁ、個人に対しての未来予知をしようとは思っていないが……敢えて言うなら、自分だろうか」
「自分?つまりアルルメイヤ自身って事?」
「あぁ……自分に降りかかる厄災、と言うよりかは自分のこれからを見てみようと思ったことは、今でもあるね」
「へー、どういうこと見たいと思ったの?」
アルルメイヤは少し考えながら、カメラの方に目線を一瞬だけ移す。無論、すぐに戻したがグランにはバッチリと気づかれてしまっている。
「……いや、ここでは言わないでおこう。というか、言えるようなものでもないからね」
「そっか、ならいいや」
「いつもは三通だが……テンポが早いせいで凄く早く終わったように思えるな」
「まぁ、ほんとにテキパキ進んでいったからね……アルルメイヤに聞きたいことって、実はあんまり無かったりするし」
「私は眼中に無いかい?」
「そういう言い方は反則だよ。アルルメイヤで気になることを聞いたら、大体すぐに教えてくれたり、気になってることを察して教えてくれるじゃん?だからだよ」
手で静止のようなポーズをして、アルルメイヤを少し叱るグラン。それが彼女にとって何か気に入る要素があったのか、彼女は微笑んでいるだけだった。
「そう言ってくれるだけでも嬉しいよ……あぁそうだ、君に少しだけ聞きたいことがあるんだ」
「お、逆パターン……何何、どんどん聞いてって」
「ハーヴィンの女性は恋愛対象かい?」
「……えらくストレートに聞いてくるね。ハーヴィンの女性かぁ……」
ウンウンと考え始めるグラン。アルルメイヤはその様子をじっと見つめていた。
「……うーん、そもそも好きになった女性が自分のタイプだと思ってるんだよね。だから、ハーヴィンだとかドラフだとかエルーンだとか……そういうのはあんまり意識してないかも」
「そうか、ある意味安心したよ」
「ていうか、今の質問って……」
「いや何、君はなにぶん女性に好意を持たれやすいからね。ハーヴィンの女性から告白される時もあると思った迄さ」
「なるほど……まぁ俺がモテるかどうかはともかくとして、まぁそう言ったことも限りなく低いけどありそうな……」
微笑んだまま、アルルメイヤはじっとグランを見つめていた。そして内心、グランは自分の事に関してはとことん自己評価が低いと確信していた。
「君はもう少し自分に自信を持ったらどうだい?」
「とは言っても……みんな、俺の実力とか人柄を認めてくれてるけど……それが恋愛的な意味での好意に繋がるかは別じゃない?」
「めんどくさいね、君」
「はっきり言われた……」
「まぁ、この場合示さない方も悪いといえば悪いだろうけど……ところで、最近異性とどんな過ごし方をしていたんだい?」
「異性?うーんと、ちょっと待ってここ一週間の記憶辿るから……」
そう言って、グランは再び考え始める。団長が相談する場所だったはずなのだが、どうやら今回に限っては立場が逆転していると2人ともうっすらと考えていた。
「1週間前は?」
「えーっと……ゼタと出かけて、服一緒に見に行ったりした。その後にベアトリクスと一緒に団の子供達用のケーキを作って、その後にイルザさんと2人でカフェに行った……かな」
「六日前」
「早朝にヴァジラとお散歩して、朝にマキラと一緒に機械のパーツを買いに。昼にはアンチラと一緒にお昼寝……で、夜にアニラの持ってる羊のぬいぐるみの洗濯が終わったから、部屋に行って渡してきたついでにいくらか話した」
「五日前」
「朝から夕方までユエルとソシエと一緒に出かけてた」
「四日前」
「依頼を受けてたから、フィーナとカルバ、それにマリーと一緒に出かけたかなぁ…やたら変なトラップが多い場所でさぁ、皆でやたら水被ったりしてた」
「……三日前」
「ヴィーラとファラが料理対決してたから、審査員やってた」
「一昨日」
「ベルセルクのジョブで、ナルメアとフォルテと3人で稽古してて……その後に街の武器屋とかに寄ってた」
「昨日」
「一日中クラリスとカリオストロと一緒に勉強してた、錬金術の」
ここ一週間の予定を聞いても、アルルメイヤは微笑みを崩さない。だが、その内心は羨望と嫉妬が少しだけあった。無論、その対象はグラン相手ではなく彼らと過ごした女性達に対して、なのだが。
「……最近私に構ってくれていないね」
「じゃあ、明日1日アルルメイヤに付き合うよ?」
「……本当かい?」
「うん」
「言質は取った、ならば明日は……いや、日付が変わった瞬間から私に付き合ってもらうよ」
「随分ときっちりしてる事で……まぁ、別にいいけどね」
やけに嬉しそうなアルルメイヤを見て、グランもまた嬉しくなっていた。が、直ぐにその気持ちは消えていた。何故ならば、リーシャがドアの隙間から凄まじい眼光を飛ばしていたからだ。
「……」
「グラン?」
「い、いやなんでもないよ……」
風紀が乱れている、と言われてしまえばそれだけで済むのだが、どうにもそれだけじゃないような気がしているのだ。しかしその原因が詳しくわからない以上、グランもあのリーシャを無視する他ないのだ。
「……?」
「そ!それより、さ……アルルメイヤって偶に未来予知してくれるよね
どう言ったことなら個人のための未来予知をしてくれるの?」
「基本的にその人物に危険が訪れる場合だね。例えば、君が今から吹き飛ばされる未来を見た場合、私は吹き飛ばされないように君の立ち位置を変える……なんてことも出来る」
「因みに今の俺が吹き飛ばされる、って言うのは?」
「無論、ただの例え話さ」
「ならよかった」
落ちるのでは無く、吹き飛ばされるという状況とその光景がわからない以上、グランは吹き飛ばされるのならば安心は出来ないと考えていた。普通、落ちることも不安に感じるものなのだが、慣れてしまっているグランにとって落ちることは不安を煽るものでは無いのだ。
「ところで……ふと気になったことだが」
「何?」
「ハーヴィンに性的な要素は求めるかい?」
「待って待って、え、どういうこと?」
「いや……いつもならば、そろそろセクシャルハラスメントの1つや2つやり始めている頃だと思ってね」
「それを言われてセクハラをするほど俺は大胆な男だと思ってるの?」
真顔で返すグランだったが、アルルメイヤは表情一つ変えずにさらにそこから切り返していく。
「目の前にヘルエスがいて、今のような話題を振られたらどうする?」
「背中を指で撫で━━━」
そして、グランは落下した。まさか自分ではなく、この場にいないヘルエスに対するセクハラで落ちるとは、アルルメイヤも分からなかったのだ。と言うよりも、予知しなくても落ちること自体は分かっている話なのだが。
「やはり、運命は変えられないか……」
虚空を見つめるアルルメイヤ。その瞳には何を見据えているのか……それは、彼女だけにしかわからない事である。
少しだけ虚空を見つめたあと、アルルメイヤは椅子から降りてそのまま部屋を出ていった。既にグランのいない部屋は、彼女にとっている必要のない場所である。
「アルルメイヤさん、ひとついいですか」
「リーシャかい?一体どうしたんだい?」
「団長さんの部屋に、夜行っているという話について聞きたいので部屋まで同行願います」
「……私の運命も、変えること能わず…か……」
そしてそのままアルルメイヤは、リーシャに引っ張られて自分の部屋とはまた違う部屋へと連れていかれるのであった。
「やれやれ、まさか3時間の拘束とはね……秩序の騎空団は恐ろしい……」
アルルメイヤは、自室に戻ってからぐったりとして横になっていた。しばらく、思考を回さずにベッドで横たわりながらぼーっとしていたが、ふとあることに気付いて起き上がる。
「……もしかして、私はセクハラをされる対象ではないということか?」
本来、女性はそのようなことは望まないはずなのだが、自分だけセクハラをされなかったことがどうにも気になってしまった。そして、自分が女性として見られていないのでは?という考えも持った。
「最初はハーヴィンはそういった対象に入らないと思っていたが……シャルロッテやルナールは、彼からかなり愛されて……愛されて……?」
シャルロッテやルナールがグランと関わっている事を、ふとアルルメイヤは思い出していた。だがよく考えてみれば、グランが2人と関わる時はシャルロッテはまるで我が子のような扱い方であり、ルナールはまるで我が子を見るかのような母親のような目で見ていることが多かった。
「……やはりハーヴィンは恋愛対象では無いのか…?少し確認に……」
そうして、グランに聞きに行こうと思ったアルルメイヤだったが、部屋の扉を見た瞬間にその考えは改めた。何故ならば、リーシャがドアの隙間から覗き込んでいたからだ。
「……今度にしよう」
そうして、アルルメイヤは全てを頭の中から捨てて眠りに没頭し始める。正直ドア付近が恐怖の塊そのものなので、全く寝られないのだがそれでも寝ようと没頭するのであった。
アルルメイヤよりリーシャが目立ってきている……