今グラン達はとある島に来ていた。というのも。この島で大型の魔物が現れたという話があったからだ。ついでに言うと、この島では過去人間達が争っていたという形跡があり、歴史的にもそこそこ価値のある場所である。
何故そこそこと言ったか、それは価値がある以上にこの島では貧困が凄かったからだ。正確に言うならば、貧富の差というものがとても大きかったからだ。もっと言うならば、それを加速させているのは富裕層、そして加速させている結果貧民層の者達は20歳まで生きれば上等とされている。
そんな中、その状況を改善しようと1人の少年が依頼を出した。依頼を出した時にかかる仲介料が本来発生するが、シェロカルテはそれを特別に無しとして密かにグラン達に依頼を回したのだ。極秘に回さないと、周りがうるさいというのもあるが。
「よーし、じゃあ作戦説明を各メンバー唱和開始」
目の前にいるのは、リュミエール聖騎士団の者達。今回、やれる事が各自で違ってくる者達を連れてくる必要があったのだが、主な作戦をこのメンバーで行うことになった。
「自分は富裕層東地区の制圧であります」
「私は西地区ですね」
「んでもって俺が南と北担当、北に関しては終わった者が順次行うこと」
富裕層、この島のこの村ではかなり小さな規模である。故に、1つの地区を制圧するのも1人で充分だと判断したのだ。
因みに、富裕層は全員貧民層から無茶苦茶な労働などをさせているので、それで逮捕しまくるので制圧するのと何ら変わりない……故に制圧と言っているのだ。
「私は貧民層の街で炊き出しです、広いので先に出向いているグランサイファーキッチンメンツと合流して行う、そうですな」
「私も同様なのです」
「私はブリジールの警護だ」
セワスチアン、そしてブリジールは貧民層で炊き出しである。しかし、貧民層は島の99%を占めているのでとても数人ではカバーできない。ひとまず、料理をひたすら作って貰うためにキッチンメンツも先にこの村に来ているのだ。
「んでもって、他のリュミエール以外のメンバーはいざと言う時のために待機。白竜騎士団と雷神卿も場合によってはこちらに参戦して手伝ってくれるので、その連絡は俺が向こうにいるルリアに何とかして送る」
「各々で問題が発生した場合は、各自握っている信号弾を発射…団内で高速で飛行が出来るものがその場に向かう……でしたな?団長殿」
セワスチアンが確認を取り、グランは確認する。作戦開始まで少しあったので、疑問がある者がこの時間で質問する時間帯となった。
「私たち3人で足りるでしょうか?」
「そこん所は、頑張るしかない。あんまり大勢で来ると警戒されるかもしれんし、せいぜい富裕層の所に来て各自別れる程度がベストだと判断した」
「場合によっては、反抗されるかもしれないのであります。確認なのですが、その場合護衛は」
「殺さないで何とか倒せ。殺すと俺らがやってるのが本当に侵略と変わらないと判断される可能性もある」
「そう言えば…この島には司法は無いのです?」
「元々この島がやばいってのは、各国や他の島々も判断してたよ。けど、今まではのらりくらりとかわされていたのさ。国で駄目なら、個人で動くしかない……案外、依頼として出されたのは好都合だったかもな」
「というと……」
「俺らが、どの国にも属さない騎空団だったからだ。しかも、それなりに強いと評判で人数も多いと来た」
「つまり……あまりにもちょうど良かった、という事ですか」
「失敗しても縁切り尻尾としての役割ができるし、成功したら俺らに報酬丸々入る。そういう面で見ても、各国からはちょうど良かったのかもな」
そうこうしてる間に、時間が来た。グランは時間を再度確認して、全員の作戦をもう一度確認させてから……この島そのもののシステムを破壊するために、動くのであった。
「誰だ貴様!!」
「自分はリュm……っと、今はただの騎士であります!!」
国の名前を出すのは大いに不味かった。自分達が失敗するとは到底思えないが、不安の芽を消すためにシャルロッテはなるべくいつもの口上は言わないようにしていた。
「ふん!ハーヴィンの騎士なぞ恐るるに足りぬ!!衛兵!であえであえー!」
その声とともに、どこからともなく大量の衛兵が現れる。この富裕層は、どうやらハーヴィンを舐め腐っているようだった。それに気づいたシャルロッテは、スっと落ち着いて傍目から見てもわかるほどに雰囲気を変える。
「ハーヴィンだから……それで舐めていては、負けるのは貴殿らの方でありますよ?」
「多少腕がたつようだが…自分の身長ほどもある大剣を、ハーヴィンが振り回せるはずがない、どうせこけおどしだ!やれ!!」
「「「うおおおおおおお!」」」
「仕方ないでありますね……」
迫り来る衛兵たちに、シャルロッテは落ち着いたままである。そして、衛兵の1人が武器を振り上げた瞬間……
1人目の武器を弾き、その瞬間剣で殴り飛ばす。そのせいで後ろにいた他の衛兵たちも何人か巻き添えで飛ばされて、その時点で気絶して終わり。そのまま自分を軸に武器を回転させて2人目の頭から剣で殴って気絶させる。
その勢いで一気に移動して、同じように剣で殴りながら3人目、4人目と進んでいく。
「な、なんだこいつ……」
「この程度でありますか」
「ひぃぃぃぃぃいいいいいいい!?」
10人ほどいた衛兵は、30秒も掛からずに全滅。文字通り『この程度』なのである。所詮、雇われ騎士なのだったらこの程度なのかもしれない。何せ、貧民層に脅しで使う程度でしか使ってこなかったのだから。
「さて、どうするでありますか?」
「て、抵抗しないから殺さないで!」
「さて、ご飯が出来ましたよ」
「わぁ…!お爺ちゃん!これ食べていいの!?」
「えぇ、どんどんお食べなさい」
一方その頃、セワスチアンは貧民層の村で炊き出しを行っていた。最早料理対決を一人で行っているのか、と言うくらいに大量の調理器具を取り出して、その場で調理を行っていた。
「凄い…こんな食べ物見たことがない……」
「ほほ、遠慮しなくていいんですよ」
子供たちと会話しながら、セワスチアンは作る料理を決めた。お粥である。何故お粥?という話になるだろうが、それは今の会話で子供達が具材の食料の事を『見たことがない』と言い放ったためである。
食料もまともに見た事がないレベルとなると、あまり本腰を入れて作った料理を、胃が受けつけないかもしれない。となると、消化が早くて食べやすいお粥をベースに色々な味付けを行っていった方が、子供達のためになると判断したのだ。
「と、なると白米が大量に必要になりますね……」
そう考え込むセワスチアン。信号弾に関しては、どんな些細なことでも使っていいとも言われているので、躊躇わずに打ち出そうとする……が、その前にセワスチアンの目の前に1人降りてくる人物がいた。
「その必要はないわ、セワスチアンさん」
「貴方は…十天衆のソーンさんでしたな」
降りてきたのはソーンだった。全力で飛ばしてきたのか、その額には汗が浮かんでいた。それと一緒に、山積みになった袋詰めの白米も持ってきていた。
「今の話は全部聞かせてもらっていたわ、お米が必要なのよね?持ってきたわ」
「手際が良すぎて怖いくらいですな……しかし、貴方は耳がいいとは聞いたことがありませんが…?」
そう、ソーンは魔眼を持っているがそれはとんでもないくらいの目の良さ…というものなのだ。それと同等の聴力を持つという話は、セワスチアンは聞いたことがなかった。
「セワスチアンさん、読唇術って知っているかしら?」
なるほど、とセワスチアンは十天衆の規格外をこんな所で感じ取っていた。そして、同時に持ってきた大量の米を見て、これなら子供達の分どころか大人達の分までも補える…そう確信したのであった。
「いやぁ、グランサイファー全員で力を合わせるっていい事だね」
「そうなのです!」
「いやぁ…ブリジールは凄かったよ。大量に並べられた鍋を、一人で管理してとても美味しいスープを作っていた」
「私も、少々大人気ないところを見せてしまう程に…この島の富裕層に説教をしてしまいました」
そして、依頼を完了した後に全員で打ち上げを行っていた。楽しそうに飲み食いしているのを見ながら、キッチンメンツも全力で楽しんでいた。
「あの富裕層達はどうなるのです?」
「違法なレベルでの税の徴収を行っていたみたいだし、見事に全員お縄さ」
「全員、秩序の騎空団に送られましたよ」
「お、リーシャ……仕事お疲れ様」
「ありがとうございます、それと貧民層の人達の為に各国が力を上げてあそこを発展させるようですよ」
「定期的に様子見に行かないとなぁ」
そんないい感じのことを話しながら、グランはグランサイファーから島を見ていた。これからどのようにあの島が発展するのか、それを考えて少しだけ楽しみな感情と、安心感が入り交じっていた。
「団長殿、ローアイン殿がチャーハン作り対決を挑んできたので審査員をお願いできますか?」
「チャーハン……食べる!!」
まぁ主な目的なヤイアのチャーハンを食べるためなのである。無論、それもバウタオーダも分かっているので、ヤイアのチャーハンに負けないようなチャーハンを作ることを心がけている。事実、彼はヤイアのチャーハンが自分のよりも美味いと思っているからだ。
「ふふ、グランサイファー内での幾度とない料理対決……今日こそは勝ってみましょう」
「カタリナが参加しないことを、祈っておいた方がいいと思うよ」
参加させてしまったら、対決なんてかなったものでは無い。そこは他のメンバーが何とかして、彼女を遠ざけてくれる事を祈っておくしかないのだ。
「あ、具材…というか食材残ってる?依頼で大半使い果たしたような…」
「ご心配なく、シェロカルテ殿がいい売り場を紹介してくれまして……そこで購入していこうと考えております」
「よし、許した。というわけで早速美味しい美味しいご飯対決といこうじゃないか」
「えぇ、絶対に負けるわけにはいきません……審査員として誘った私が言うのもなんですが、団長殿は参加しないのですか?」
「いやぁ、俺はいいよ」
ぶっちゃけ、自分の腕も食べられるほどのものではあると思っているグラン。しかし、相手が相手なので勝てる気がしないというのが本音である。
料理を副業または本業として行なってきた者たちに、せいぜい飯食えたらいいわ程度でしか料理を嗜んでこなかったグランが勝てるとは、彼自身思っていないのだ。
後、セワスチアン参加するので100%勝てる気がしないということもある。
「なるほど、では参りましょうか」
「はーい」
その後、チャーハン対決は盛り上がりに盛り上がった後、サプライズとしていつの間にか作っていたカタリナのチャーハンを、彼は団長権限で全部食べたのであった。
書いてから気づいたんですけど
今回リーシャが真面目なんですよね
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ