「今日のゲストはユーリさんです」
「よろしくお願いします」
「えーっと、ユーリはファラと同期の元帝国兵なんだよね」
「はい、ファラを久しぶりに見かけた時はまぁ…驚きましたよ」
「だろうね、同期が何故か指名手配してる奴と一緒に居るんだし」
この指名手配というのは、グラン達のことである。ユーリと初めてあった時は、そんな事もあった…という雰囲気でしか話さないほどにはネタになりかけているが。
「親父さんが帝国兵なんだっけ」
「はい、立派な帝国軍人になろうと思ってました。今は帝国兵では無いですが…今は、親父の顔に泥を塗らないようにいるつもりです」
「信念を持つことはいい事だ…」
うんうんと、まるで歳上であるかのように頷くグラン。言うほど歳は変わらないはずなのだが…とユーリはふと疑問に思ったが、褒められていることは素直に嬉しいと直ぐに思い直していた。
「まぁデリフォードとかよりは、結構帝国軍人ってわかりやすいんだよね」
「そう…でありますか?」
「初めてあった時は帝国兵の鎧着てたしね、デリフォードは帝国兵って一瞬分からなかったもん」
「成程…しかし、デリフォード殿は団長達と出会った時点では既に帝国兵を辞められていましたし、鎧も自分で買ったものになっていたのでは?」
「ま、そっちか帝国にあのタイプの鎧を貰ったか…だろうね。とりあえずそろそろ談笑は終わらせて、お便り紹介といこうか」
例のごとく箱を取り出して中を漁る。かき混ぜつつ、グランが直感的に1枚のお便りを、箱から取り出していた。
「……1通目『帝国兵になったばかりは、皆同じ任務をすると聞いたのですが本当ですか?』」
「まぁ本当ですよ、最初は全員荷物運びです」
「それって物資を届けるとか…そういう役割ってことだよね」
「はい」
「確か任務効率がよかったんだっけ」
「えぇ、その部隊の隊長が指示をする。それに従って規律正しく動く、適度な緊張感を持ちつつも心の重荷にならない精神的負担の軽さ……まぁ色々最初としては結構いい任務なんですよ」
部隊によっては、談笑しながら行われるらしい。ユーリは真面目だったが、この任務では肩の荷を下ろしている者もいるのだとか。それだけ最初の任務ということで、比較的楽なものを選ばせているのだろう。
「結構効率がいいんだなぁ……」
「騎空士にはそういうものはあるのですか?」
「うーん……初心者の騎空士達にはこれ!って言うのは思いつかないかなぁ…多分、シェロカルテに聞いたら何かわかるかもしれない。帝国兵は指針があるけど、騎空士はやりたいことによっては各々で指針が違うからそこが違いなんだろうね」
「成程……」
「多分効率がよくて、初心者向けのものってなったら……偶に屋敷の草むしりとかあるし、それかなぁ個人的には」
「そのようなものがあるのですか?」
「まぁ偶に掃除し忘れた屋敷のお偉いさんが、その依頼を出してくる程度だけどね。それでも滅多にないよ」
「ふむ…」
「まぁ、グランサイファーではほかの簡単そうな依頼にまずはついて行かせる…っ感じかな、戦闘できるメンバーに関しては…だけど」
「戦闘できるメンバー?」
「ヤイアとか…後ローアインもだね、戦えないけど他でやれることはあるよ?って人はその仕事を任せてたりするし、その特技を活かせる依頼に行ったりしてるよ」
「成程…」
ユーリは勉強会でも来ているかのように納得しては、それをメモ書きしていた。これではまるでどちらがインタビューされているか分からないし、そもそもこの番組で勉強すると以降のメンバーが萎縮してしまいかねないので、堅苦しいのは禁止にしてあるのだ。
「さて、勉強会は程々にして……2通目『ファラさんは帝国兵の時はどんな人だったんですか?』」
「今とあまり変わらない、それだけですかね」
「あっさりしてるねぇ…元々カタリナ追いかけてたり、転びやすかったり料理が得意だったりしてたの?」
「はい、ただ料理が得意なのが一人いるだけで…大分心が楽になるって話があるんですよね」
「へぇ、そうなんだ」
「俺らの時は…偶に野生動物を狩っては捌いて焼いてましたね」
「……携帯食糧とか、無いんですか?」
「基本的に携帯食糧を使うのは、本当にその辺に食べられるものがなかった場合ですね。携帯食糧って…まぁ基本肉なんですけど」
干し肉などが主な携帯食料だが、ユーリはあまり食べなかったらしい。それよりも、野生動物を捌いて食っていた方が彼としては好みなようだ。
「でまぁ、話を戻すんですけど…ファラって結構調味料とか持ってるんですよ」
「鎧の中に?」
「鎧の中に」
ファラらしいといえば、ファラらしいものである。料理選択掃除等の家事を得意とする彼女は、常にまずい飯を食うのが嫌だったようだ。
「生肉焼いて食うより、塩とか胡椒かけた方がやっぱり美味いらしくて」
「なるほど…今度から依頼行く時ファラ連れていこうかな……」
ファラを連れて行けば、料理が華やかになること間違いなしである。グランも料理はできるから、可能な時は基本的にやっているが…やはり手は欲しいものである。
「団長殿は、野営する時はどんなものを作ったことがありますか?」
「あー…基本的にそっちと一緒だけど、木の実とか食べられるものを潰してソース作ってたなぁ」
「ソースですか…」
「ま、果実とかになってくると、基本的に甘いソースしか作れないんだけどね」
「酸っぱいのとか、なかったんですか?」
「いやぁ、記憶にないかなぁ…1番いいのは胡椒とか塩だよやっぱり……って話だいぶ逸れてきたな」
ふと気がつくと、ファラの話から野営時の食べるものの話になっていることに気がつくグラン。話を変えるために、最後の3通目の手紙を取り出す。
「3通目『盾は持たないんですか?』」
「盾は基本的に帝国兵士は持たないですよ」
「そう言えば、剣を両手持ちが基本だよね」
戦っている帝国兵や、ユーリの姿を見て思い出しているグラン。帝国兵は基本的に剣1本で戦っている様だった。カタリナも、レイピアとは言え剣1本で戦っていた。
「デリフォードが例外な感じなのかな」
「まぁ、一般的な鎧があれなだけですし…功績を積めばそれなりに自由は貰えますし」
「なるほど…まぁ槍の名手だなんて呼ばれてるし、功績は凄かったんだろうなぁ…」
「デリフォード殿は1から頑張っていたようですしね」
「確かに…」
よくよく考えてみれば、功績を詰んでるであろう異名を持っている帝国兵は、皆どこか武装が他と違うというパターンが多かった。とは言っても、全て帝国兵から始まっている訳では無いだろう。そうなると、帝国幹部が何人かおかしなことになるから。
「帝国って、兵士以外にも軍に入れるルートあるの?」
「まぁ、余程の例外か…それとも指揮能力に長けていたら直ぐに指揮官クラスには抜擢されると思いますよ」
「フュリアスとかそのルートなのかなぁ」
フュリアスを見る限り、指揮能力は見ても人格などはあまり重要視されていないらしい。結構問題行動は多いように思えるのだが、大丈夫なところを見ると本当に人格はどうでもいいらしい。
「フュリアス将軍ですか…」
「帝国内だとどんな噂なの」
「口が悪い同僚が言ってたことですが、『有能なガキ』らしいです」
「マジで口が悪いなその同僚…」
「というのも、見た目では無く言動やその性格からそう言ってたらしいですが…」
「まぁフュリアスも口は悪いけど、あの立場でいたんだし本当に将軍クラスでいいくらいには強かったんだろうね…遠慮無くえぐいこと出来る性格というのは、恐ろしい」
口こそ悪いが、躊躇してしまうようなところを遠慮無く行える、冷酷とも言える冷淡さ。それがフュリアスの強みだろう。無論、自分の思い通りにいかないと偶に癇癪を起こす所は子供っぽいと言われても仕方ないと思えるが。
「まぁ、正直なことを言うと帝国内でもあまり評価は良くなかったですね……あくまでも、一兵士達の間で…ですが」
「ま、俺は軍にいた訳じゃないからよく分からないけど…あれが『嫌味な上司』ってやつなのかな…」
「団長殿、恐らくそれは全く違うと思われます」
「あ、マジで?」
「はい」
「そうか、違うのか…」
嫌味な上司所ではないのだが、如何せんいきなり騎空団の団長をやっているので、どうにも想像がつかないようだ。そもそもグランサイファーに嫌味な人なんていないのだから。
「まぁ違うなら違うでいいけど……そろそろ時間なので終わるか」
「おや、もうそこまで…」
「そこまで進んでましたよ、はい。というわけでご視聴ありがとうございました、また次回この番組でおあいしましょう。さようなら」
電源を切り、番組を終わらせるグラン。ユーリも、席から立ち上がってササッと片付けをする。
「ところで団長殿」
「どしたの」
「この後何か予定はありますか?」
「あと1時間もすれば依頼かなぁ、一緒に来る?」
「あ、行きます」
このあとの予定を軽く会話しながら、グランとユーリは部屋から出る。部屋から出た後は特に重要でもない話題を話しながら、予定の島につくまで時間を潰す。
「そう言えばさ」
「はい」
「帝国兵ってみんな共通して武器は剣なの?」
「というか剣が1番扱いやすいですし…次に銃とか、ボウガンですかね…ただ、こちらも剣に比べたら技術がいるので…」
「まぁ、剣はとりあえず振っておけば勝手に技は決まってくるしね…」
「団長殿が言ったら、妙に説得力ありますね」
「そう?」
「まぁ、ええ」
独学で剣術を覚えているグランは、はっきり言えば才能の塊だろう。簡単に色々な武器や技、それに術なんかを会得しているのだから。
「まぁそれ言ったら、この団にはそういう人多すぎるからね…」
「確かに……」
どんな武器でも、必ずそれ1つに絞ればとんでもなく強かったり才能があったり…そんな人物がいる。それに関しては、十天衆がいい例だろう。
無論、グランは一時的にとは言えその十天衆に勝っているのだが。
「自分も、いつか団長殿の様に強くなりたいですね」
「俺を目指すより、両手剣ならジークフリートを見習ってくれ」
「……そんなに凄いのですか?実は、一緒になったことがないので…」
「なら丁度いい。今から行く依頼はジークフリートが来るからその時に見てみるといい……すごい驚くぞ」
実際、その後ユーリを連れてジークフリートと共に依頼に向かったが、曲芸士や軽業師もびっくりのアクロバティックかつ器用な動きを披露しながら、魔物を屠っていくその姿にユーリは驚きしかなかったという。
その時、ユーリが言った言葉が『本当に人間ですかあれ』だった。
正直なことを言うと、ジークフリートは実は星晶獣の力を埋め込まれた元人間だよ、と言っても通じそうなくらい彼は強いのだ。
「ま、本当はただの人間なんだけど……本当に人間?」
「一応、人間だ」
「人間の限界って何処なんだろうなぁ……」
SR風ユーリは強い