「今回のゲストは、いつも二人揃ってるんで2人出しますよ。モルフェさんとヴェトルさんです」
「よ、よろしくお願いします!」
「よろしく〜」
「モルフェとヴェトルはよく安眠作用のハーブティーとか、寝るために必要な道具を揃えてくれてるので……よく寝たいなぁって人は1度相談するといいよ」
眠そうに椅子に座っているヴェトル、そして規律ただしそうに座っているモルフェ。この2人の正体は、ヴェトルは星晶獣オネイロスであり、モルフェはオネイロスに作られた存在である。しかし、今は姉のヴェトルと弟のモルフェとしてグランサイファーに乗船しているのだ。
「あの、姉さんが最近添い寝し始めたって聞いたんですけど…」
「同意の上の…合意だから…大丈夫」
「姉さん、それでもあんまり団長さんに迷惑をかけたらだめだよ?」
「いやいや、そこまで迷惑かけられてるわけじゃないし…気にしないで気にしないで」
「ほら、グランもこう言ってる」
「本音でも建前として聞かないと……団長さんも、あんまり姉さんを甘やかさないでくださいね?」
「むー…モルフェの馬鹿……」
膨れっ面になるヴェトル。彼女がグランの事をどう思っているかは明白ではあるが、グランからしてみればヴェトルはルリアやサラ等という所謂『妹的存在』に近いので、異性として認識されてないからこその添い寝許可なのだ。
「もう……」
「はいはい、姉弟喧嘩は後にしてね。番組内で喧嘩されたら俺リーシャにシメられるから」
「グラン…お魚になるの…?それとも鶏…?」
「どこで魚や鳥をシメるだなんて言葉を覚えてきたんですか、お父さん貴方をそんな子に育てた覚えはありませんよ」
「グラン…お父さんじゃない…」
ゆったりながらも、冷静にツッコミを入れてくるヴェトル。モルフェは逆に愛想笑いだけをしていた。どうやらあまりツッコミの才能はないようだ。
「さて、そんなお2人にもお便りがありますので紹介していこう」
「僕達2人なんですけど、時間足りますか…?」
「ちょっと減るかもねぇ…ま、そこはそこで…というわけで1通目『団員の夢の中に潜り込んだりする時はありますか?』」
「僕達2人に関しての質問ですね」
「した事ある?」
「頼まれたり、緊急時の時以外はやらないようにしてます。特に、夢の中なのでプライベートなことを覗いてしまう危険性もありますし」
「まー……グランに言われたら、どんな夢でも教えてあげるけど…」
少し複雑そうな表情を見せるヴェトル。グランはあまり教えたくないため、渋っていると思っているが……実際ヴェトルが考えていることは、ほかの女の子の夢の内容を教えたくないし見たくない……という考えだった。まぁ、要するに男なら普通に教える位のことはするという話である。
「なるほど、夢の中のことは他言無用なわけだ」
「はい、先程も言いましたがプライベートな部分が強いですから…その人の弱みや、叶えたい夢…今やりたいこと等を夢で見ている可能性があります。それを喋るのは、当人達にとって不利益なことにしかならないと思うんで」
「なるほどなるほど……モルフェ、もっと砕けた感じで喋っていいんだよ?」
あまりにも、モルフェが堅苦しく喋っているように感じたグランは少し提案をするが、モルフェはなんの事だかわからずに少し首を傾げていた。彼からしてみたら、これでもまだ砕けている方なんだろう。
「だ、団長さんが言うのでしたら……ローアインさん達にみたいに喋ります!」
「あそこまでしなくていいから」
モルフェがローアインのように喋るのは、それはそれで需要が無いことも無いだろうが…如何せん、モルフェも大人ぶっている子供感があるので、グランは父性をガンガンに働かせてしまってモルフェには絶対あの話し方はさせないと心に誓っていた。
「そ、そうですか?」
「モルフェがそれで砕けてるなら、モルフェはモルフェらしく喋ればいいんだよ」
「わ、わかりました!!」
「モルフェ……単純〜」
「ヴェトル、俺特製の飴ちゃんをあげよう」
「わーい……はっ…!」
渡された直後に、ヴェトルは気づいてしまった。グラン特製と言うだけで、簡単に飛びついてしまった自分の単純さに。
「ぐ、グランは……狡猾…そうやって、女の子を落としてきた……」
「わぁお、すっごい人聞きの悪いこと言われた」
顔を真っ赤にしながら照れるヴェトルに、グランは軽くツッコミを入れる。飴を貰ったのがそんなに恥ずかしかったのか、ヴェトルは顔を真っ赤にしたままだった。
「とりあえず2通目『夢の中で夢を見る、というのは実際にあるんですか?』」
「うーん……」
「あれ、なんか悩む質問?」
「実は、夢の中で夢を見るっていうのはあんまりないんですよね」
「というと?」
「確かに、凄く深いところで眠っているのならともかく……基本的には『夢から目覚めたという夢を見てる』って言った方が正しいかもしれません」
グランはモルフェの言ったことを、頭の中で反復させながらどういうことかを考える。そして、辿り着いた結論が1つ出てきた。
「つまり、初めに夢を見ててその夢が終わったあとに『自分が夢から覚めるという夢』を見てるってこと?」
「大体そんな所です、少しわかりづらいんですが……」
「いやぁ、まぁ確かに納得できる答えではあるよ」
夢の中で夢を見ていた、というのは中々実証できない。何せ、実際見ていたのは『夢から覚めている自分の夢』なのだから。その答えでグランは、納得してうんうんと頷いていた。
「でも……本当に、夢の中で夢を見る…はあるよ…」
「実際、そんな状態になってたら危ないって聞くけどどうなの?」
「すごく深い眠りに着いてて、尚且つ基本的に『自分が目覚めたくない』って思ってたら見ている時がありますね」
「基本的に、って言うと?」
「大体、夢の中で夢を見ている場合…その夢の中の夢というのは、本人にとっての悪夢が多いんです。勿論、悪夢じゃない場合もあるので一概に『目覚めたくない』って思っている人じゃないですが」
「なるほどね」
「悪夢の場合、自分が現実を受け入れたくないために『これは夢だったんだ』という錯覚を起こさせる為の夢…とも取れます」
モルフェの説明に、グランは理解を深めていく。実に分かりやすい説明をしてもらっているので、本当にグランの夢に対する理解が深まっていくような気がしていた。
「なるほど、グダグダ話すつもりがここまでの勉強会になるとは思いもよらなかったけど、案外ためになるかも」
「団長さんの為になっているのなら、良かったです」
「いえいえ、こちらこそどういたしまして……というわけで基本的にはラストの3通目『ハーブには詳しいんですか?』」
「ハーブティーの調合は僕の趣味ですね」
「私は…夢の話を聞くのは好きだけど…」
「なるほど、ハーブティーはモルフェの趣味ってことか」
「モルフェは……真面目、だから…」
にっこりと微笑むヴェトル。顔を赤くしてはにかんでいるモルフェ。仲のいい姉弟を見せつけられて、グランの顔もニッコリと微笑んでいた。
「ハーブティーの調合っていうのは、安眠作用とか?」
「主にそれですけど……後は気持ちをおちつけたり、リラックスする事が出来るハーブティーもありますよ」
「ハーブティーって、俺触ったことないからよくわからないけど…モルフェに教えて貰ったら、結構知れることが多いかも」
「……むー」
何故か少しだけ頬を膨らませているヴェトル。飴をもう1つやっても機嫌は治らなかったので、飴ではダメなようだった。因みに、飴は普通に食べていた。
「ヴェトルー?どうして不機嫌なのかなー?」
「グラン…モルフェとイチャイチャしてる…」
「その発言は一部の人間に多大な影響を及ぼすのでやめて欲しいかな!!」
そんな発言をされてしまうと、一部の別の意味で腐ってらっしゃる人達が反応するのだが、それを恐れたグランは即座に否定を入れる。
「……広めさせたくないなら、後で一緒にお昼寝…」
「何時間でもしてやるぞ」
「…やった…」
それで機嫌が治ったのか、ゆったりと微笑むヴェトル。いつの間に、ここまで他人を動かすことに慣れてしまったのかグランは少し悲しくなっていた。まるで娘のように接していたのだから。
「姉さん……わざとそんな態度とったでしょ……」
「勝利者は…私……」
Vサインをするヴェトル。ヒソヒソと話している2人に対して、グランは声が聞こえていなかったので、さらに追加で疎外感を味わってしまっていた。
「……と、とりあえず…今回はここまでです…皆さんご視聴ありがとうございました、また次回この番組でお会いしましょう。さようなら」
「夢に関しては…私達に、相談…だよ……」
最後にヴェトルが宣伝をして、カメラの電源が切られる。切られた瞬間、ヴェトルはグランに思いきり抱きついて顔をグランの腹あたりで擦りつけていた。
「えへへ…」
「ヴェトルは甘えん坊だなぁ…」
「……あれ…?」
ふと、モルフェは思ってしまった。ヴェトルと添い寝するという事を、ヴェトル自身の口から番組放映中に言っているのだ。そして、団長たるグランは少なくともこの団の女性達から好意を持たれている。
そして、この番組はこの船全体で流されている。それが一体どう言ったことを指し示すのか……モルフェは考えようとして、止めて、そして部屋から勢いよく飛び出していた。
「……?モルフェはどうしたんだ?」
「…さぁ……?」
飛び出したことには理由がある。1つ、今回に関しては自分は全く関係がないからだ。いや、ヴェトルが関係しているからそれを言えば関係してると言えなくもないが、自分はグランに添い寝するわけじゃないからだ。
2つ、それでも姉を守りたいので来るであろう方向から、道を塞がねばならない。あの部屋は一方通行でしか来れないので、1つ道を塞げば来れないとモルフェは判断したのだ。
「姉さん達は…僕が守らないと……」
しかし、モルフェは…純粋なモルフェは気づかなかったのだ。新しい通路が、作られていることに。しかも、よりにもよって部屋の前ではなく部屋の中に直接行けるような道が、
「うわっ!?ちょっとリーシャ!?急にどうした!?」
「天井から、現れるなんて……」
「えっ」
部屋の中から急に現れた声に、モルフェは振り向いていた。まさかこんなに早く、しかも直接部屋から現れるとは思っていなかったのだ。
「え、ちょっ!?姉さん!?団長さん!?」
「流石に子供と寝るのはアウトです」
因みに、人間年齢で言うとヴェトルとモルフェは11歳だ。星晶獣であろうとも、人間的な事を言えば精神年齢は子供同然なのだ。それでもヴェトルは、それを利用してくるのだが。
「一緒に寝るのダメなの!?」
「団長さんだとちょっと絵的に…」
「酷い!!」
「え、なんで開かないの…!?」
外からガチャガチャとドアノブを弄り回すモルフェ。部屋の内側ではリーシャがドアノブに手を添えているので、それで開かなくなっているのだ。
「まぁ、とりあえず……反省室で反省文書いてもらいますよ」
「……俺だけだよね?」
「ヴェトルさんにもちょっと来てもらいますんで」
「ヴェトルは甘えてるだけなんだ…だから慈悲を……」
「駄目です」
そして、それっきり部屋から声がしなくなっていたかと思えば、既に部屋はもぬけの殻になっていた。
「い、一体何がどうなっているんだ…」
モルフェはそれだけしか呟くことが出来なかった。何が一体どうなってこうなっているのか……彼には、全く理解できないのであった。
ヴェトルをひたすらに甘やかしたいだけの人生だった…