「今日のゲストはノアさんです」
「よろしく、こういうのに出るのは少し気恥しいね」
「いつもと表情が変わらないように思えるけど……まぁでも、多少緊張してくれても話すのに支障が出なければ問題ない問題ない」
「そうかい?そう言ってくれると多少気が楽になるよ」
星晶獣ノア、彼は艇造りの星晶獣である。それ故に、艇自身と話せたり艇に合う材質の木材を選んだりと…能力の応用法は多岐に渡っている。彼自身は、過去にラカムと一緒にいた事があった。1度は離れたものの、今また一緒に団内にいて艇を飛ばす為にラカムの力になってくれていた。
「団長さん、少しいいかな?」
「はいはいなんですか?」
「僕が入った時は、全くと言っていいほど人がいなかったのに…グランサイファーも随分賑やかになったよね」
「確かに…」
「それに、人間だけじゃなくて多種多様な種族を乗せてる。人間に関しても、4種族以外の種族の人種も乗せてるし…本当に賑やかになったね、グランサイファーも楽しそうだよ」
ヒューマン、ドラフ、エルーン、ハーヴィンの4大種族に加えて、星晶獣や動物、4大種族以外の種族の人間と、グランサイファーは多種多様な種族の者達が乗っている。その事を話しているノアは、実に楽しそうに語っていた。まるで、自分の事のように。
「そう?グランサイファーが迷惑がってなくてよかったよ」
「艇というのは、乗られることで喜びを見出すものだよ。誰もいなくて…人の声が聞こえない艇なんて、寂しいと思わないかい?」
「確かにね…厳格だけならともかく、人の話し声がしないなんて寂しいよ」
「グランサイファーは、毎日がお祭り騒ぎなのが気に入ってるみたいだよ?人が多いと…それだけ、人を祝ったりすることが多いからね」
確かに、とグランは頷いていた。ほぼ毎日誰かの事を祝っていてもおかしくないのだ。無論、皆で盛り上げていくので何ら問題がある訳では無いのだが。
「……ノア自身も楽しい?」
「もし楽しんでいなかったら、僕はラカムに言って団長さんに文句を言ってもらうつもりだから」
「えっ」
「冗談だよ、ちょっとからかってみただけさ。大丈夫、僕はちゃんと楽しく過ごせているよ」
笑顔でサラリと冗談を吐くノア。その事にグランは苦笑いでしか返すことが出来なかった。
「さて、いつもの通りだとお便りというのがあるんだよね?」
「そうだね、ノアにもいっぱい届いてるよ」
ガサゴソと、箱の中をかき混ぜるグラン。そうして、1枚を取り出して読み上げていく。
「1通目『ノアさんって女ですか?男ですか?』」
「一応男だよ」
「まぁ正直ノアは顔綺麗だし間違えることもある……のか!?」
ノアは、はっきり言うと美男子である。それに加えて話し方や肌の白さ、そしてイケメンと言うよりかは可愛い系統の整った顔立ちをしているので、まぁ美少女という風に見える人もいるにはいるのかもしれない。
「僕はあまり気にしないけどね」
「気にしたほうがいいぞー」
性別不詳というのはいるにはいるが、ノアをその括りに入れると色々と危険な香りがするので止めておいた。
「あまり性別には拘っていないよ」
「星晶獣ってそういうものなの?」
「星の民がそうしたのか、それともそういう風に偶然できてしまったのか、はたまた僕だけなのか分からないけど……まぁ、少なくとも僕は気にしてないよ」
ふと、ノアのラカムへの態度を思い出すグラン。あまり性別を気にしていないとなると、スキンシップが比較的落ち着いている方であろう彼の方が、助かる。
因みに、ノアは基本的にラカム以外と積極的に絡みに行こうとしないので、ラカム以外での態度があまり思いつかないというのが理由でラカムが選ばれている。
「でも考えたら…メデューサは性別を気にしてるというか、意識してる方だもんね」
メデューサには2人の姉がいる。そして、その姉のことをメデューサ自身が姉と認識している以上、少なくともメデューサは男女の違いの区別はつけているようだった。
「そうだね、彼女や彼女に近しい星晶獣達のことを考えたら、僕の方が少し異端なのかもしれない」
「……」
「団長さん?どうしたの?」
「やっぱり星晶獣って呼び方してるけど、人間と何ら変わらないよねぇ…ただ大きさが自由に変えられるって人達がいるくらいで」
星晶獣というのは、基本的にでかい。そりゃあもう果てしなくでかい。しかし、ティアマトやユグドラシルは人と同じような背丈になって今はグランサイファーに乗船しているので、そういうものなのだと解釈することが出来る。
無論、人並みのサイズだったりそれ以下のサイズでしかあったことがないような星晶獣もいるにはいるのだが。
「そうだね」
「ノアも大きさ変えられるの?」
「さて、どうだろうね?少なくとも僕はこの姿だったからこそ、ラカムや団長さん達と出会うことが出来たとも言えるわけだし」
ノアは誤魔化したが、大きさを自由に変えられない星晶獣もいるかもしれないので、もしかしたら『そういうもの』だという認識をどこかでしておく必要があるのかもしれない。
アテナやメデューサでさえ、人並みのサイズで生活しているのだから。
「っと、話結構逸れちゃってたね。というわけで2通目いってみよう。『今まで騎空艇を見てきてどんなのが気に入った?』ラカムからだね」
「多分、グランサイファー以外の話かな?」
「そうじゃないかな?」
「うーん……そうだね、僕はグランサイファーとよく似た船を知ってるよ。誰が乗ってたか、どんな船だったか……それは言わないでおくけどね」
「え、なんで?」
「大っぴらに話すことでもないからね。でもまぁ、団長さんには後でこっそり教えてもいいかもしれないね。ただ一言言うのであれば…船も乗っている人も、お互いを信用しているようないい関係だったと思うよ」
「ノアにそこまで言われてるんだから、相当いい人なんだろうなぁ……」
「ふふ、そうだね。とてもいい人達が乗っていたと覚えているよ」
微笑みながら少しだけ語るノア。まるで親が子を見守るかのような表情で微笑んでいるが、ふと思い出したかのようにグランは話を戻し始める。
「他には印象的には船ってあった?」
「そうだね…配達艇、っていう名目で素早い速度で飛ぶ騎空艇なら見た事があるよ」
「どれだけ早いの?」
「最高速度だと……まともに甲板に立ってられないとか、合ったりするね」
「それ船として成り立ってる…?」
「まぁそれを防ぐために色々ほかの騎空艇とは、形が違ってたりしてたけど……」
「世の中にはいろんな艇があるんだなぁ…」
しみじみと語るグラン。ノアの話を、偶には長々と聞いてみるのもいいかもしれないと、ふと考えていた。
「さて、そろそろ3通目に行こうか……『最近グランサイファーで思うところはありますか』」
「…というと?」
「多分なんでもいいんじゃない?実際、グランサイファーがどうなってるのかとか……団長として聞いておく方がいいだろうし」
少し考え込むノア。そして、しばらく考え込んでから思い出したかのように口を開いていた。
「最近、補修作業が多くなってきたから1度大きなメンテナンスをしておいた方がいいかもしれないよ」
「なるほど、じゃあ1回ガロンゾに寄った方がいいなぁ……」
ガロンゾに寄るのは資材を集めるためなのだが、最近技術力がある団員もそれなりにいると気づいたので、グランは1度グランサイファーの団員だけで治すのもいいかもしれないと考え始めていた。
「その方がいいかもしれないね」
「やっぱり職人に任せた方がいい?」
「それでもいいかもしれないけど……グランサイファーを自分たちの手で直したい、って団長さんの思いはグランサイファーにもちゃんと伝わってると思うよ」
「ありゃ、ばれちゃってたか……でも伝わってくれてたら嬉しいなぁ」
職人に任せた方が確実なのは確かだが、自分達の艇は自分達手で直したいという思いも皆あるのだ。それを否定せず、肯定することでノアはグラン達の考えは決して間違いではないと遠回しながらに伝えているのだ。
「…あ、もうそろそろ時間みたいだ」
「ふふ、こうやって最近団長さんと話す機会も減ってきてたから、新鮮だったよ」
「俺もだよ、やっぱりこうやって一対一の話をするのは楽しいもんだよ」
団員が多くなってくるということは、一人一人との取れる時間が減ってくるということでもある。それでも皆、ちゃんとグランに着いてきているので信頼関係はきちんと構築されているのだが。
「では、ご視聴ありがとうございました。また次回この番組でおあいしましょう、さようなら」
「ここの部分の素材は?」
「さっきと同じだよ」
番組が終わってから、グランはグランサイファーの修理に使う素材をノアに聞いていた。同じ艇と言っても、場所によって使われる素材が違ってきていたり、グランサイファーその物が気に入る素材で作らなければならないという制限が少しある。その為、ノアに聞くのが手っ取り早いという事になったのだ。
「艇を修理するには素材から、素材を知るにはノアから聞くのが1番……やっぱり間違ってなかった」
「団長さんは、判断を間違えることはあまりないよね。けど、聞くだけじゃあ駄目だからね」
「分かってる、木材の加工の仕方とかも覚えないといけないし」
「この騎空団には、鉄の扱いが上手な人達がいたね。鉄と木じゃあまるっきり変わってくるけど、つなぎとめるために必要な釘なんかは、彼らに頼むといいよ」
「木材に関しては……」
「種類を聞くならユグドラシル、加工方法は…僕に聞くのが手っ取り早いかな」
ユグドラシルはルーマシー群島にいる星晶獣、鉄の加工が得意な人というのはガラドア等のことである。ノアに聞いても問題は無いが、艇造りの星晶獣なので簡易的に木材や鉄のことは分かっても、プロフェッショナルに聞いた方がいいというのがノアの判断である。
「分かった!聞いてみる!!」
「うん、行ってらっしゃい」
早速聞きに行くために走り出すグラン。ふと、その後ろ姿を見てノアは考える。グランが自分でグランサイファーを直せるようになった場合、彼の新しい技術が目覚めているのでは?と。
「最近、色んなジョブを手にしてるから……艇造りのジョブを覚えたりするのかな」
戦闘で使えるのか、という話になってくるが……そもそもドクターやセージを戦闘で使っているので、どうとでもなる話である。
「……ふふ、それでも僕は楽しみだよ団長さん」
星晶獣ではあるが、若い人間の活気を見るのは彼もまた楽しんでいる節がある。自分でも自覚はしているが、それでも人間の成長を見るのは1つの楽しみになっていた。
「星晶獣は永い時を生きる……だからこそ、こうやって成長を眺めるのが楽しいのかもね。そうは思わないかい?グランサイファー」
語りかけるノア。言葉こそ喋らないが、グランサイファーの思いはきっちりとノアに届いていた。
それを聞き、ノアは微笑みながらグランサイファーの甲板で空を眺めるのであった。
肌が白すぎる
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ