「はい、段々と色々慣れてきたところで第五回目のゲストはグレアさんです」
「よ、よろしく」
いつものBGMが流れながら、グランとグレアはお互いに座っていた。グレアの尻尾が妙にソワソワしているかのような動きが、まるで犬を連想させるのでグランはとてもグレアが愛らしく思えていた。当然、自分の娘が可愛いとか姪が可愛いとか……そう言った類のものではあるが。
「早速だけど、まず1つ」
「何かな、団長さん」
「グレアってスカートに尻尾用に穴あけないの?」
首を傾げて聞くグランに、グレアは困ったかのように目を逸らして頬を掻いていた。その反応に、グランも更に首をかしげていた。
「ど、どうしてそう思ったのかな?」
「いや、ユエルとかソシエは尻尾あるけど穴開けたりして、そこから尻尾通してるから……でもグレアはそうじゃないみたいだし……」
「……笑わない?」
「そういった話では俺は笑わないよ」
少し顔を赤くしたグレア。そして、さらに顔を真っ赤にしながらボソボソと呟き始める。
「……が……から……」
「ん?」
グランは耳を近づけて、聞き取れないグレアの声を聞こうとする。グレアはそれを察してくれたのか、もう一度……最早ゆでダコなのではないかと思えるほどに顔を真っ赤にして、何とかグランに伝えようとする。
「あ、穴を開けたら……スカートがちぎれちゃったから……!」
「……あー」
グランは納得しながら離れた。ここで1つ、ユエルやソシエとグレアの違いを述べよう。
まず、前者の2人は尻尾の大半が獣のように毛で出来ている。あの二人の尻尾はもふもふだが、それは毛の塊に空気が入っているからである。そして、毛の塊であるならばある程度尻尾が小さくても通せるのだ。狭いところを通る猫のようなものである。
対して、グレアは竜と人間のハーフである。その尻尾は竜のものであり、それには毛が存在していないのだ。多少の小さいものはあるかもしれないが、どちらかと言えばグレアの尻尾には鱗が多い為に、猫や犬のように多少小さくても通る……と言った事が出来ないのだ。
つまり、グレアの来ているマナリアの制服でグレアの尻尾用の穴を開けると、スカートがちぎれやすくなってしまうということである。
「そんな理由なら仕方ない……とは言っても、スカートの下から尻尾通すのって下着見えない?」
「そもそも尻尾が大きすぎるから見えないよ」
という事は下着は履いていないのだろうか、と真面目な顔をしてグランは考えていたが、さすがにそれを今ここで言うと早速落とされそうな気がするので辞めておいた。
「そう言えば、私には質問のお便りは届いているの?」
「あるよー、割といっぱいだけどランダムで三通だから選ばれなかった人は嘆かなくてもいいよー……っとまずは一枚目」
グランはいつも通りダンボール箱を手に取り、そこから無作為に1枚を取り出していた。
「『何食べればそこまで大きくなるの?』……イオからだ」
「大きく…?えっと、イオは成長期だからいっぱいご飯食べれば、身長は伸びると思うよ」
そうじゃない、聞いているのは驚異的な胸囲の話だろうとグラン内心でツッコミを入れた。知っている人は知っているだろうが、この娘はかなりの純情である。
「グレア、そうじゃない」
「へ?」
「Bの話」
「びーのはなし……?」
やんわりと伝えたが、伝わらなかった。グレアは首を傾げてしまって、なんのこっちゃと言いたげな表情を浮かべていた。
「……あぁいや、後でイオから直接聞くといいよ。というわけで2通目いってみようかな……『ツバサ君のことはどう思ってますか?』アンからだよ」
「ツバサ……って確かあの乗り物に乗っている男子だよね……見た目はアレだけど……でも、いい人だと思う。エルモート先生みたいに、素直じゃないタイプなのかもね」
微笑みながら返すグレア。存外仲良くなれそうだとグランは感じていた。そして、そのまま三通目へと移る。
「『みんなのクリスマス衣装についてどう思いますか?』匿名希望」
「寒そうな人が多いよね……もっと厚着したらいいのに、って思うかも。特にクラリス……」
「あぁ、本人はあれもう気にしてないみたいだけどね。やる気でカバーしてる」
「団長さんは……どう、思うの?」
「眼福」
「……そう、私も考えておく」
「……ん?今なんて━━━」
「そんなことより他の話題って何かある?」
グランの言葉を遮ってグレアは新しく話題を振る。お題三通のノルマは既に叶えているので、新しく話題を振ろうとするが、尻尾の話も既にしてしまっているので、新しく振る話題を考え始める。
「……あ、そう言えば団長さん」
「ん?どうしたの?」
「団長さんって、マナリアに通おうとは思わなかったの?」
「……うーん、魔法は一応使えないことも無いけど……」
「え、あれだけ使えて『一応』の範囲内なの?」
グレアは心底驚くような表情をした。今度はグランが頬を掻く番となっていた。グランも、自分が手を出すもの手を出すものを次々マスターしていく事に驚いているのだ。
「いや、本職と比べるとね……って考えちゃって」
「……充分すごいと思うけど…」
自慢の剣を始め、魔法を使うようにすれば各属性の魔法を使いこなし、拳主体で戦うようになれば、並の格闘家では歯が立たないほどの筋力を持ち始め、神官になればありとあらゆる傷を回復させることが出来る。
しまいには獣の本能を持ち始めたり、魔法とは違う忍術を使いこなし始めたり、刀や銃…そして弓矢などもプロ顔負けには使いこなし始めている。
「……団長さんの言葉を聞いたら、他のプロの人達泣きそうだよね」
「え、なんで?」
「多分、そういう所で……」
グランは頭に疑問符を浮かべていたが、しかし追求しては行けないような気がして、そのまま話を終わらせることにした。
そして、別の話題をふりはじめる。
「あ、そう言えばグレアはこの団に慣れた?」
「あ、うん……皆優しい人ばかりだしね」
「そっか、それは良かったよ」
「あ……後コルワさんに服作って貰えるようになったんだよ?」
「そうなんだ、凄いでしょ?コルワの作る服って」
「うん!」
グランが微笑み、グレアが微笑み返す。グレアがこの団で楽しく暮らせていることに、グランも喜んでいるのだ。彼女は竜と人間のハーフである、人間は自分とは違うものを排除しようとする者が多いが…この団ではそれがないというのがグレアにとっては良い環境となっているようだ。
「あ、部屋にピアノ置けた?」
「前に団長さんが買ってくれたピアノのこと?あれならちゃんと置けたよ」
「まぁ、マナリアにおいてあるやつとは違うけど……」
「それでも、嬉しかったよ。私の入団祝いにくれたのは……本当に嬉しかった」
「気に入ってくれたようでよかったよ」
「団長さんって、他の人達にもこういう事ってしてるの?」
「プレゼントって事?頼まれたら基本してるよ」
グレアは納得しながら少し遠くを見るような表情になっていた。それだけ、グランが人に好かれる理由がわかったからである。無論、好かれて嬉しい気分にはなるが、複雑な気持ちにもなる。
「皆にプレゼントをあげるって、お金大丈夫なの?」
「その分稼いでるしね、依頼をいっぱいこなせばこなすほどポケットマネーも増えるし」
「団長さんも、団自体にお金を入れてるんでしょ?」
「そうじゃないとダメに決まってるしね」
「基本的に、騎空艇の中にいたり買い出しする人達とかのお小遣いだったり、必要な物資とか買うため……とかだよね」
「そうそう、とは言っても待機組も依頼を受けることあったりするんだよね」
「え?そうなの?」
意外な事実に、グレアは驚いた声を出していた。てっきり、魔物と戦うことが出来なかったりする人達もこの団にはいるので、そういった人達は依頼を受けないものだとばかり思っていたからだ。
「……あ、もしかして勘違いしてない?」
「へ?」
「依頼と言っても、魔物と戦ったりするだけじゃないんだよ。例えば『コックの数が足りないから料理得意な人は手伝ってくれ』みたいな依頼があったりするし、災害が起こった土地に行って救助活動したりするよ」
「そうだったんだ……」
「まぁ、今言った2つだと活躍することが多いのはローアインとファラだけどね」
「料理上手なんだよね、その2人って」
「これがまた、すんごい美味いの。グレアも食べた事ある?」
「ないかなぁ……そもそも、この団っていっぱい人いるのにご飯みんな食べに来るよね、食費ってどうなってるの?」
「平均1日20~30万……多分もっといってると思う」
「……もう一種の施設だよね、ここ」
「シェロにも言われたよ……『団長さん達の団は金の羽振りがいいですね〜』って」
無駄に似ている声真似を披露しながら、グランはため息をついていた。団長という立場になると、色々仕事があるのでそれによるため息なのだろう。
「……でも実際お金すごい動かしてると思うよ?」
「まぁ、そうだろうね……この団に所属してくれている以上、依頼達成料から残るお小遣いとは別にお給料も上げてるし…」
「あ、偶に色んな人がお金入った袋を渡しに来るのって、そういうことだったんだ……」
「よくよく考えてみると、よくお金溜まってるなって思ってたりするよ……もしかして、お金徴収しすぎてないかな……」
心配するのはそこなのか、とグレアは苦笑していた。しかし、自分よりも団員のことを心配してくれるからこそみんな着いてきてくれているのだ。
「団長さん」
「ん?」
「いつも仕事しっぱなしだし偶には休んでみたら?」
「休むって……具体的には?」
「……一日中寝るとか?」
趣味は鍛錬、暇があればナルメアやジャンヌなどといった、猛者達と戦っているようなグランの休み。考えてみれば、趣味以外で休めることなんてそうそうないし、新しく探すにしても疲れてしまっては元も子もない。
故に、少し考えてから提案したグレアの意見はただの惰眠を貪ることだった。
「流石に一日中は……」
「だ、だよね」
「あー、でも……皆でピクニック行きたいなぁ…」
「……なら、今度二人で行ってみる?みんなが行けるような場所の下見……ってことでさ」
「いいね!じゃあ今度二人で出掛けようか!」
グランは指を鳴らして楽しそうにし始める。グランは気づいておらず、またグレアが狙った事なのだが、これはつまりデートなのである。あわよくば……みたいなことをグレアは内心考えている。当然、グランはグレアがそんなことを考えているなんて微塵も思っていない。
「ふふ……その時は、草原の上で寝てもいいかもね」
「それもいいなぁ……あっ」
唐突に、何かを思い出したかのように間抜けな声を出すグラン。グレアは突然どうしたのだろうかと首を傾げていた。
「ところでグレアってさ、寝る時どういう寝方してるの?」
「へ?仰向けだと尻尾が邪魔になるし……うつ伏せだと胸が苦しいから、基本的に体は横向きにしてから頭を上に向けて寝てる感じかな…」
「なるほど、つまり寝ながら抱きついた時いい感じに胸に当たる事、がァ!!」
「っ!」
突然大声を出すグラン。原因は、開いた床に足を当てて落ちまいとしている姿だった。段々と落ちるタイミングが分かっているようで、グラン自身対処し始めているのだ。
だったらセクハラをしなければいいんじゃないか?という結論が出ないのはご愛嬌である。
「だ、団長さん……引っぱってあげようか?」
「あぁうんお願いグレア」
股が180を超えているかのような開きっぷりを、グランは見せていた。人体構造としてソレはどうなのかと思いながら、グランはグレアが差し伸ばしてくれた手を掴んで━━━
「グレアさん、そういうの番組的にどうかと思います」
「きゃああああああああああ!!!!?!?!?」
「あっ」
突然現れたリーシャに驚き、グレアはそのまま腕を勢いよく振ってしまった。グレアが振ったのは、竜の血が濃く出ている腕の方……簡潔にいえば『力の強い方』である。そして、グランが掴んだのもそっちの腕である。
そして、グレアはグランの腕を掴んでいないので、当然振り回せばグランの手はグレアからすっぽ抜けて勢いよく飛んでいく。
グランサイファーを勢いよく飛び出し、放物線を描きながらグランははるか遠くまで飛んでいきながら、落下し始めていく。
「「━━━だ、団長さぁぁぁぁぁぁぁぁあああああん!!」」
腕を振ってしまったことを後悔しているグレアと、流石に驚かすのはやりすぎたと後悔しているリーシャ。2人の叫びは空に消えていくのであった。
グレアって寝てる時本当どうしてるんでしょうね……
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ