「今日のゲストはレッドラックさんです」
「おう、よろしくな」
「因みに今回、特別にいつもの場所ではなくキッチンでこの番組を行うことになりました……レッドラックめっちゃ食うし」
「すまねぇな団長、無茶振りしちまってよォ」
「いやいや、番組始まる前からめっちゃ食ってるし…そもそも今の会話の中でも既にラーメン1杯食べ終わってんだからあんまり気にならねぇわ」
今回、キッチンで番組を行うことになっている。理由としては、レッドラックが大食いであることと、単純に飯テロをしたかっただけである。キッチンにいるからと言って、2人で占拠してるわけではないので、キチンと周りには団員達がバッチリと写っている。
「いやぁ、ほんとに飯うめぇなぁ」
「今回、レッドラックの大食いっぷりを見せることで皆の胃袋を空腹にさせるという目的があります……」
「あぁ、だから真昼間からやってんだな」
そう、キッチンに団員達がいるということは……要するにグランサイファーの昼飯事情が今からということになるのだ。
「つか、誰が作ってるんだこれ」
「ローアイン、セワスチアン、バウタオーダ、それとファスティバの4人で形成されているぞ」
「おいおい、グラサイキッチンメンツ揃ってんじゃねぇかよ!こりゃあ俺も本気出さねぇとなぁ!!」
「まぁいくらでも飯食っていいから、番組の進行はさせてもらうよ…というか今の間にまた食い終わったな」
色々な料理がある中、喋りながらもレッドラックは食べ終わっていく。律儀なのは、キチンと口の中のものを飲み込んでから喋っており、口の中に物が入っている時は一切喋っていないということである。
「おう、つか俺に来てる質問なんて大概わかりきってんだろ」
「と言うと?」
「ゼエン教、フードファイト、大食いであること、そんでもって過去の話だ」
指を立てながら、レッドラックは数えていく。というか、気になったことを聞くだけなので、その推理はあながち間違ってないかもしれない…とグランも若干ながら納得はしていた。
「ま、例え予想通りの物が来ても俺ァ普通に答えるけどな」
「流石、懐が深い」
「腹の底もすげぇ深ぇけどな!!」
大声で笑うレッドラック。ふと、それを見てレッドラックの口の周りには、ご飯のカスが一切ついてないことに気づくグラン。かなり高速で食べているのに、口の周りがかなり綺麗なのは驚きである。
「…ま、とりあえずお便り行きましょうかね」
「おう!どんどんこいやぁ!」
「1通目『空腹じゃない時ってあるんですか?』」
「ん?そりゃあ飯食ったら空腹じゃ無くなるだろ?」
「いや、レッドラックってずっと何かを食べてるイメージあるから…そのせいじゃない?」
「んー…?」
身に覚えがないと言わんばかりに、レッドラックは首を傾げる。実際、何かをする度に何かを食べているのは事実なのだが、お便りの主はそれがレッドラックに取ってはずっと空腹なためと思ったらしい。
「まぁ、ずっと飯は食ってるな。完璧な満腹感は何度も味わってるがよ、動いたらすぐに腹が減ってなぁ……ついついバクバク食っちまうんだ」
「確かに、フードファイトした後もよく食べてるもんね」
「俺ァフードファイターだからな、いつでも腹が減るようにしてるし、腹が減ったら飯を食えるようにしてんだ」
フードファイト。レッドラックは趣味でよく、突発的に村でフードファイトを行う時がある。無論、ちゃんと許可はとってからするのだが…レッドラックの食いっぷりに、参加者達も笑顔になるという事がある。
そこで稼いだ賞金を、レッドラックは孤児院などに寄付したりしているのも、有名な話である。
「さすがに2回連続でフードファイトした時は驚いたけどね」
「いやぁ、あの時も腹が減っちまってたからなぁ」
「その賞金、全部寄付したんだから尊敬するよ」
「悪ぃな、団の資金に当てられなくてよ」
「いや、レッドラックの趣味で行ってる事だし…別に稼いだお金をこちらに渡さなくてもいいんだよ?依頼料を貰ってるわけじゃないしね」
「そうか?すまねぇな団長」
レッドラックは笑いながら、グランの頭を撫でる。まるで父親のような仕草だが、グランはそれを素直に受け入れていた。まるで本当の親子のようにも見えないことは無い。
「で、結論としてはどうなの?」
「そうだなぁ…満腹になってる時はあるぜ、それがすんげぇ短いってだけでな」
「なるほどねぇ……じゃあ2通目に行こうか」
「おうよ」
「『他の大食いの団員達とフードファイトした事はありますか?』」
「他の、ってぇと…」
「ルリア、アーミラ……それと美食殿のペコリーヌだね」
アーミラ、半人半魔の少女である。戦闘能力は高いが、その性格はとても純粋。美味しいものを食べる時はとことん食べて、眠る時はとことん眠るというまさに子供の様な少女である。
そして、美食殿ペコリーヌ。時折グランサイファーに乗船していることがある少女である。その胃袋に限界はないのか、と言わんばかりによく食べている少女である。恐らく、本当の意味でレッドラックと渡り合えるのは彼女くらいのものだろう。
「そうさなぁ…一回やってもいいが、グランサイファーの資金が底を尽きかねねぇなぁ」
「え、食料庫じゃなくて?」
「おう、資金だ」
「最早大食い大会と言うより、1種の戦争になってない?」
「しょうがねぇよ、それがフードファイター同士が戦った戦場になるんだ…国同士が争ったら土地が荒廃するように、フードファイター同士が戦っちまうと開催場所の資金が荒廃しちまうんだ」
「フードファイトを戦争に例える人初めて見たよ」
自慢ではないが、グランサイファーの資金はそれなりにあるのは誰もが知っていることである。かなりの人数の団員がいるのに対して、一人辺りの平均の持ち金の10倍は用意しているとグランはちゃんと帳簿をつけている。
つまり、それが吹き飛ぶということは団が完全な壊滅をするということにほかならない。フードファイトをした結果、団が解散なんて全くシャレにならないことである。
「しょうがねぇさ…あの嬢ちゃん達は、俺と渡り合えるレベルでのフードファイター……お互い本気を出しちまったら、取り返しが付かねぇ…」
「……とりあえずグランサイファーでフードファイトはやらない方がいいって言うのは理解したよ」
「わかってくれて何よりだぜ、団長」
「……兎も角3通目ね。『美食殿のペコリーヌさんとは、交友は持っていますか?』」
「おう、もちろんあるぜ。フードファイター同士、ってのもあるが各地の美味い飯の話なんか、会ったら良くしてらァ」
先程言ったが美食殿とは、友好な関係を築き上げている。しかし、そもそも美食殿は自分達の島から離れることはあまりないのと、グランサイファーでも中々寄れないような土地にある為実際の交流はほぼ手紙な事もある。
それでも、時折乗船しているので気の合う者同士の会話が、その時に頻繁に行われている。
「俺はペコリーヌの嬢ちゃんとよく話してるがよ、他はどうなんだ?」
「コッコロちゃんはよくナルメアと話してるね。お世話するもの同士、って事で気がめっちゃ合うみたい」
「あのエルーンみてぇな子は?」
「キャルだね、あの子は……気の合う人と話してる、っていうよりかはペコリーヌの世話を焼いていることが多いかも」
「そういやぁ…よくつるんでんなぁ……」
ふと思い出すと、ペコリーヌのブレーキ役としてキャルはよく動いているとレッドラックも思い出していた。因みに、3人の想い人のような存在として1人の少年がいるが、彼も3人と1緒に乗船していることがある。その時は、コッコロがお世話しっぱなしになっているが。
「苦労人だなぁ、あのキャルって子は」
「コッコロちゃん程じゃないけど、誰かの世話焼いてないとダメだったりするのかもね」
「はは、そいつァアレだな?所謂『ツンデレ』って奴のせいもあるんじゃねぇか?」
「かもねぇ」
やつのせいも何も、よく文句を言いながらもペコリーヌの世話をしていたり、他の者達の世話を口では嫌々ながらも率先してやっている辺り、相当な世話焼き家である。本人にそれを言うと、恐らく怒って拗ねてしまうかもしれないが……それでも世話は何だかんだ言いながらやってそうだと、グランは心の中で笑っていた。
「さて……そろそろ時間です」
「もうか?早くねぇか?」
「いつもこんなもんだよ、それに俺とレッドラックが本気で話し合いしたら…本気で駄弁ってるだけになっちゃうしね、ここ団員の紹介番組でもあるしさ」
「なるほどなぁ……」
「まぁ、長時間駄弁ってたらグダっちゃうっていうのもあるんだけどね」
「はは、それはそうかもしれねぇなぁ」
「……とまぁ、改めて。皆さんご視聴ありがとうございました。また次回、この番組でお会いしましょう。さようなら」
そう言って、カメラの電源が落とされる。そして、グランは軽くため息をついていた。
「ん?どうした?」
「いや、このカメラまた運び戻さないとなって思ってさ」
「大丈夫だよ、俺も手伝ってやるから」
「助かるよ」
食堂から、一応下まで持っておりなければならないため、グランはそれで少しため息をついていたのだ。持って上がる分には少し体力を使う程度で済むのだが、降りるとなると階段でコケないように登る時以上に集中しなければならないため、疲れる……らしい。
「じゃあ、お願い出来るかな?」
「おう、任せとけ……とその前に飯の片付けしねぇとな」
「…そう言えば、めっちゃ食いながらだったもんね」
気づけば、レッドラックの周りには大量の皿が並んでいた。これでも、途中途中でグラサイキッチンメンツが回収していたのだから驚きである。
「よう!美味かったぜ!!」
レッドラックがそう言って、無理のない範囲で皿を一気に持ち運んで行くのを繰り返していく。
それは、グランも手伝ったためすぐに終わった。そして、そこからようやくカメラを運ぶ事になる。
「これ結構重いよ?」
「それを、1人で持ち上げて来たお前さんが言うのかね」
「…まぁ、そう言われたらぐうの音も出ないけど」
パッと見はドラフの男性よりも筋肉が無いにもかかわらず、実際はとんでもなく力が強いグラン。カメラを運ぶのにも一苦労とは言っているものの、どちらかと言えば重いからじゃなくてコケないように注意しすぎているため、と言っても過言ではないだろう。
「よーし、とりあえず運ぶか」
「OK、お願いするね」
「任せとけ任せとけ!この筋肉は伊達じゃねぇって言うところを見せてやるよ!」
そう言って、レッドラックとグランでカメラを運んでいく。実はこの後、レッドラックはまた腹が減ったため飯を掻き込んでいた。その為、グランサイファーの食料庫がすっからかんになってしまったので、急遽飯を買いに近くの島に寄ることになったグラン達なのであった。
ペコリーヌとどっちが食うかは見てみたいんですよね私
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ