ぐらさい日記   作:長之助

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殴蹴連撃

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!! ビリィィィィィィィイイイイイイイイイフ・ブロォォォォォォォオオオオオオオオオ!!!」

 

 特訓所に響き渡る大声。そこでは、ファスティバ特製の人形に対して、本気で打ち合っているフェザーの姿がそこにはあった。実に楽しそうに、フェザーは打ち合っていた。

 

「全然壊れねぇな……」

 

「まぁファスティバが本気出して作ったからね。ガンダゴウザがそれなりに本気を出さないと壊せないレベルらしいよ」

 

「素材が気になるところだな……」

 

「それでいて柔らかいから、自分の自慢の武器を傷つける必要も無いんだ」

 

「たしかに、そりゃあ便利だな」

 

 そして、その傍らでランドルとグランがフェザーの殴打を眺めていた。他にも人形はあるが、ただフェザーがどういったことをしているか気になったので、確認がてら観戦中なのである。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!! これなら、どうだぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!! アニムスッッッッッッ!!!!!!! ブロォォォォォォォオオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!」

 

「つーか、あいつめちゃくちゃ喧しいな」

 

「フェザーはいっつもこんな調子だよ」

 

「あいつそろそろ声帯潰れるんじゃねぇか?」

 

「……有り得そうだ」

 

 フェザーは落ち着いているとそうでも無いのだが、少しでもテンションが上がるとそこからノンストップでテンションが上がり続けていき、同時に声量もまるで比例するかのように増えていく。

 

「あそこまでされて、本当に壊れないんだな」

 

「ま、簡単には壊れないよ……まぁあれは素手で戦う人用のものだけどさ」

 

「武器持ち用のやつもあるってことか」

 

「実際、あれを剣で叩こうとしたらスパッと切れたりする」

 

「……素材が本当に謎だな」

 

 拳や足を傷つけないように、柔らかく出来ているのは当然のことなのだが……全部それ1つで解決できるほど、世の中は甘くないということである。

 

「俺の! ハロウィンの力を!!!! 見せてやるッッッッッッッッッッ!!!!! アニムスウゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウッッッッッッッッッッッッ!!!! ブロオオォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」

 

「……ハロウィン?」

 

「半年は先だね」

 

「アイツ急にとち狂ったか?」

 

「前にハロウィンの格好してたし、ハロウィンパワー入れ込んだんじゃない?」

 

 適当なことを言っているが、『フェザーなら有り得なくもない』と思えてしまうところが、フェザークオリティというものである。実際、パンチの速度は上がっているように思える。

 

「けどまぁ、本当に強くしていってるし……ハロウィンパワーもあながち馬鹿に出来ないんじゃない?」

 

「いや、ノリに合わせて強くしてるだけだろあれ……」

 

「だったらほら、ランドルも人形蹴り壊す勢いで蹴ってきな」

 

「あれに巻き込まれたらたまったもんじゃねぇよ」

 

 平然と喋っているが、フェザーが人形に拳を打ち込む音ばかりが響き渡るこの空間はとてもうるさくなっている。はっきり言うと、なぜそんな状況で喋っていられるのか不思議な程である。

 

「だったらぁぁぁぁああああああああああああ!! これでッッッッッッッ!!!! どうだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!!! 蒼雷ッッッッッ!!!!!!!! 疾風ぅぅぅぅぅぅぅううううううううけぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええんッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」

 

「うるせぇぇぇぇっっっっっっ!!」

 

「まぁまぁ落ち着いて」

 

「さっきからやかましいんだよアイツ!! 幾らテンションが上がってるからと言っても、やっていいことと悪いことがあるわ!!」

 

 喧しすぎる、というのはグランも同意である。声の事もそうだが、拳のラッシュによって響いている音が尋常ではないものとなっているのだ。はっきり言って、特訓所があるフロア中に音が響き渡っていてもおかしくないレベルである。

 

「フェザーだといつもの事だから」

 

「普段からあんな大声なわけねぇだろうが!!」

 

「えっ」

 

「え」

 

 お互いに真顔になるグランとランドル。フェザーが大声なのはグランからしてみればいつものことなので気にしていなかったが、ランドルはうるさいのは嫌い……という状態らしい。

 

「おーい! 団長ー! ランドルー!!」

 

「あ、もう終わりでいいの?」

 

「あぁ! いい汗かけたぜ!」

 

 十分に満足出来たのか、フェザーはグランたちのいる場所に戻ってくる。グランは笑顔で迎えていたが、ランドルは少し気に食わなさそうな顔をしていた。

 

「ん? どうしたんだランドル」

 

「いや、てめぇの五月蝿さにほとほと呆れていただけだ」

 

「よし、なら拳で語り合うか!」

 

「人形相手とはいえ、あんだけ散々やっておいてまだ殴り足りねぇか!!」

 

「人形はまだ練習相手だからな! やっぱり人と拳を合わせてこその特訓じゃないかと俺は思う!!」

 

 ランドルがキレて、フェザーが斜め上の方向に受けとりながらその怒りをスルーする。その光景を眺めながら、なんだかんだ2人は仲がいいなぁと、グランは傍観を決めていた。

 

「……つーかよ、俺達はまだあの人形相手に練習できてねぇよ。てめぇとやるにせよやらないにせよ、体は温めておきてぇ」

 

「そうか……よし、なら2人の準備が完了するまで俺はここで体を動かして待ってるぜ!」

 

「ちっ……言われなくても、勝手に俺らはやってるぜ」

 

「久しぶりに手と足を使うなぁ……」

 

 ココ最近は、素手を使うジョブになっていなかったグラン。ココ最近はクリュサオルばかり使っていて、剣の腕ばかりレベルが上がっているのだ。それでも、まだ勝てない人物たちもいるが。

 

「剣を振る時の筋肉と、素手で戦う時の筋肉は微妙に場所が違ぇからな。ちゃんと、温めておけよ」

 

「ん、了解……とりあえずレスラーになろうかな……」

 

「げっ……またあの格好すんのか?」

 

 ふとランドルが思い出すは、ブーメランパンツとチャンピオンベルトをつけて、覆面を被り羽毛が凄いマントを羽織っていること以外は皮膚が露出しているレスラーの姿だった。

 

「いやぁ、あの格好は自分でも『ひでぇわ』って思う時あるよ」

 

「じゃあ別のを着るようにしろよ」

 

「それがそうもいかなくてねぇ、似た系譜のジョブだったら問題ないんだけど……こう、気分の問題がさ」

 

「気分……?」

 

 服を着替える時に、微妙に気を入れ直したりすることはそれなりにある事だが、グランはジョブチェンジの際に行われる衣装チェンジで、スイッチを切り替えるかのようにその服装にあった気分になっている。

 

「だいぶ前に、レスラーになろうという気分でグラップラー着てたんだけどさ、違和感凄くてまともにレスラーで戦えなくて」

 

「あぁ……」

 

「仕方ないから、ちゃんとした服を着るようにしてるんだよね」

 

「そういう事か……」

 

「でもまぁ、ランドルの言いたいこともわからなくはない」

 

「ん? なんか他にあんなやべぇ格好のヤツいたか?」

 

 レスラー並のやばい格好という訳では無いが、グランはアリーザを思い出していた。いつもの格好ならそうでも無いのだが、ある時期に行われた『サウザンド・パウンド』という大会があった。その時のアリーザの格好が、ヘソ見せのノースリーブのシャツが1枚だけというなんとも上半身が素晴らしい服装だったのだ。

 

「やっぱりドラフって凄いなぁ……」

 

「おい、まじでいきなりなんの話してんだ?」

 

「あ、いや大丈夫何でもない」

 

 最近厳しくなってきているような気がするリーシャ。下手なことを言うと、後ろから突然肩を優しく叩かれるといったことも少なくは無い。ココ最近は秩序の騎空団にお世話になってないので、余計に下手なことは言えない。

 

「……あ、もしかしてガンダゴウザのおっさんの話か?」

 

「あー、うんうんそうそうガンダゴウザガンダゴウザ」

 

 ランドルが勝手に勘違いしてくれたおかげで、グランもそれに便乗する事が出来ていた。ガンダゴウザは本当に意識していなかったため、少し反応が遅れてしまったが凄い頷くことで無理矢理ランドルを納得させていた。

 

「お、おう……そうか、確かに上半身ほとんど何も着てねぇもんな」

 

「まぁ、それだけ筋肉がすごいってことでしょ」

 

「……そう言えば少し気になってたんだが……ドラフの男ってよ、特訓してなくてもああなんのかな?」

 

「……そう言えばそうだね。みんななんだかんだ鍛えられるような空間にいたし、一切鍛えていないドラフの男性って体つきどうなるんだろ……?」

 

 逆にハーヴィンだと、それ相応の筋肉しかつかないらしい。それ故、攻撃力よりも手数や技術が優先される事が多いのだとか。

 

「永遠の謎だな」

 

「確かに……でも実際、ちょっと見てみたいよね。一切筋肉がなくてお腹タプンタプンの男ドラフ」

 

「……だな」

 

「さて、行くか」

 

「少しでも体を温めておかねぇとな」

 

 そう言って、2人は人形相手に特訓を始める。グランはレスラーなので殴る蹴るや体当たりなどの戦法、ランドルは言わずもがな足主体の戦法である。

 

「おぉ! 2人とも凄いな! 俺もまたやりたくなってきたぜ!!」

 

「てめぇはもう下がってやがれ!! 今は俺たちしか居ねぇとはいえ、てめぇさっきまで使ってたじゃねぇか!! また使う気か!?」

 

「いや! シャドーボクシングしておく!!」

 

「……そうかよ」

 

 呆れた様子を見せるランドル。しかしそれも直ぐに終わらせて、再び人形相手に特訓を始めていく。グランはその光景を眺めながら続けていた。

 

「……そう言えば、この後依頼行くつもりなんだけど2人ともついてくる?」

 

「あ? なんの依頼だ?」

 

「魔物退治、温めた体を使ういい機会じゃない?」

 

「……うし、なら俺もついていくぜ」

 

「俺も行くぞ!!」

 

「了解、なら行くか」

 

 そういうこともあり、2人はグランの依頼に付いてくることとなった。偶然か、はたまた予め誘っていたのかはわからないが、その依頼に付いてきたのが何故か素手主体メンバーばかりなので、その依頼にはパンチングや蹴りの音が響き続けたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、依頼煩かったなぁ……あっはっはっ」

 

「笑ってる場合か? 魔物退治は出来てたがよ、音のせいで魔物が逃げて逃げて逃げ続けるせいで、無茶苦茶時間かかったじゃねぇか」

 

「だからメンバー結構多いでしょ?」

 

「全員素手だから起きた問題だけどな」

 

 依頼終了後、全員でとあるレストランにやって来てるグラン達。席わけはその場で決めて、グランはランドルと共に飯を食べていた。要するに、あまりメンバーで2人組になったのだが。

 

「グランサイファー帰ったらどうする?」

 

「俺ァ、時間によってはそのまま寝るかもな」

 

「俺はまた特訓所で練習だァ!!」

 

「てめぇ時間考えておけよ? マジで迷惑行為したら、また反省文書かされんぞ」

 

「……くっ!」

 

 反省文という言葉を聞いて、少しだけ落ち着くフェザー。ランドルはため息を履いて、再び飯を食べ始める。

 そんな光景を見て、グランはふと思ったのだ。

 

「……やっぱり、仲良いよねぇ」

 

 その言葉はとても小さかったので誰にも聞こえなかったが、それだけグランはそう思ったのである。

 この後、戻った後に色々処理してると、グランサイファー中にパンチング音が響き渡ったのは別の話である。




フェザーはうるさい(褒め言葉)

偶には長編とか書いて欲しい

  • はい(ギャグノリ)
  • はい(シリアス)
  • いいえ

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