「本日のゲストはリーシャさんです」
「よろしくお願いします」
「……秩序しない?」
「何ですかその単語……」
キレイな姿勢で席に座っているリーシャ。いつものことがあるためか、グランは少し脅えてしまっていた。いや、リーシャにではなくいつ逮捕されるのかという怯えだけだが。
「いやぁ、リーシャに連れていかれるのはいいけど……秩序の騎空団の檻の中って、ベッド少し薄いから……」
「分かりました、モニカさんに伝えて牢内のベッドは少し厚手にしておきます」
「……一応聞くけどさ、犯人というか……犯罪者でも牢内とはいえ結構いい暮らしできるよね」
「秩序の騎空団ですが、あくまでも『公平に』しているだけです。これは秩序の騎空団限定なので……他の国だとそうは行きませんが」
そう言えば……とグランはいつぞやの、捕まっていたランスロットを思い出していた。あの時のランスロットの扱いは本当に酷いものであり、壁に鎖で繋がれていたのだ。
「他の国の牢もあぁいう風にした方がいいのかもね」
「それは国が決めることですからね……私達に犯人の引き渡しを要求した場合、私達は渡さなければなりません。残念ながら、その後は私達ではどうすることも出来ません……」
「……うーん、まぁ……そうなっちゃうのかァ……」
「私達は、公平にしているからこそ……その公平さが、時に刺さることもあるのです」
「……そっか」
リーシャの言葉が、真面目すぎる言葉がグランの心に染みていた。しかし、この番組は別にそんな真面目な話をするための番組ではないので、さっさと切り上げていつものお話に戻そうとしているので、グランはお便り箱から3枚早速引き抜いていた。
「とりあえず、1枚目から行こう。『秩序の騎空団は男性しか見ませんが、他に女性団員はいるんですか?』」
「いますね……とは言っても、私やモニカさんが珍しいようですが」
「確かに俺も見た事ないや……いると言うけど、普段はどこにいるの?」
「本部で書類仕事です」
「リーシャ達が珍しいって言うのは?」
「現場に出ている女性は、私達くらいという話ですね」
確かに、とグランは納得した。本部で書類仕事ならグラン達と出会う事はほとんどないし、逆に現場に出ているリーシャやモニカの2人が珍しいという話も納得できるものであるからだ。
「けど、リーシャ達に憧れて現場に出そうな人は増えそうなものだけどねぇ」
「単純に、男性に囲まれるのをあまりよく思ってないだけかもしれませんね……実際、男嫌いという程では無いですがあまりよく思わない女性陣もいるという話がありますし」
「何でだろうねぇ」
と、グランは惚けているが……それには理由がある。単純な話だが、男性側は本当に男性側なのだ。時折、リーシャ派かモニカ派で別れて人気投票などを隠れて行ってたりもしているので、女性陣が嫌うというか……まぁちょっと距離を置こうとするとのも、理解できるのだ。
「……まぁ、私たちとしてはあまり近づかない方がベストなのかもしれませんが」
「というと?」
「団内恋愛禁止があるんです、ルールに。しかし男女の距離が近いとそうなる可能性も高くなってしまうので、今の距離が案外良かったりもします」
「へー……団外は?」
「問題ないです、むしろそっちでして欲しいくらいです」
「何故そんなに食い気味なのか……」
団外で食い気味なのは、要するにリーシャにとってもそちらの方が都合がいいからなのだが、グランはそれに気づく事は無い。気づかない方がいいということもある。
「まぁ、いいや……とりあえず2通目。『男性は兎も角、リーシャさんやモニカさんはその格好は大丈夫なのですか?』」
「大丈夫じゃなかったら着てないですね」
と、リーシャは言っているがグランは微塵も大丈夫だとは思っていなかった。モニカは全く露出はないが、1部の大きな部分が服を押し上げているため、非常に目を引く状態になっている。
リーシャの方は、へそや肩や脇などを露出しているために秩序を乱してるのは明白と言われてもおかしくない格好をしている。
「大丈夫だといいね」
「へ? いや、だから……いえ、そうですね……大丈夫だといいですね」
何かを察したのか、リーシャはグランの言葉を反復していた。まぁ、実際の所リーシャの言う通り大丈夫だから着てるのだから、ある意味でしょうがないと言える。
「実際のところさ、身軽な格好はいいとしても……スカートってありなの?」
「下に短パン履いてます」
「嘘だろおい、浪漫が一瞬で壊されたよ」
「お望みなら女性用下着身につけますか?」
怖いオーラを身にまとっているリーシャ、その雰囲気に飲まれそうになったのでグランは即座にそれをお断り願っていた。さすがにそんな趣味は彼にはないのだから。
「まぁ、今のは冗談として……リーシャの格好は寒くないのかなって思う時はある」
「寒い時は上着を着用しますからね……それに、男性職員が着てるようなやつしか無いから、結局自分の好きなような格好にするしか無いんですよ」
「モニカは?」
「モニカさんも同じようなものですよ、ある意味私達の特権とも言えるんでしょうけど」
特権と言えば聞こえはいいかもしれないが、実際は服が足りないだけである。さっさと本部はこの2人にタイツを支給しろと、グランは内心考えていた。
「今変なこと考えませんでした?」
「あーごめん俺赤ちゃんだから変な思考とか持てな……ごめんなさい変な事言ってすいません」
即座に目を見開くリーシャに、グランはすぐに謝っていた。秩序を執行しようとしている時のリーシャは、グランにとってはリッチの顔面よりも怖い。
「というか何ですか赤ちゃんって」
「いや、コッコロって子がたまに乗るんだけど……あの子の言う『主様』が、一時の間ほとんど赤ちゃんのようなものだったみたいで……」
「よく分かりませんね……」
「っと、話がそれた……まぁ逸れたついでに三通目行こっか」
「了解です」
「『秩序の騎空団って結婚して退団する、みたいなのはありなんですか?』」
「ありですが、した人は私は見た事はありませんね」
「それって雰囲気でできなくなってない……?」
『周りがしてないし、俺もしてはいけないのでは?』という、存在しない圧力によって結婚したいのに出来ていない、彼女を作りたいのに作れない……という状況になっているのではないか? とグランは邪推していた。リーシャも、それを言われて少し考え始めていた。
「それも……そうですね……団内で恋愛禁止にしている分、結婚はしては行けないと考えている人は多いんでしょうか」
「考えたこと無かったの?」
「今も、以前も……正直考えたことは無かったです。やはり、団内恋愛禁止というのが行けないのでしょうか?」
「というか、本当にそのルール生きてるのか俺は甚だ疑問に思うけど」
「……というと?」
「元々規律が凄いせいで、そのルールを知らなくて付き合えないって思ってる人が多いかもしれない」
つまりは、ルールの形骸化とも言えるべき現象。恋愛禁止というのを、ルールではなく雰囲気で覚えてしまっている事態。このルールが形骸化したことで、誰も団内団外問わずに恋愛禁止だと把握してしまっている可能性が非常に高くなっているのだ。
「……確かに、団長さんの言う通りかもしれませんね」
「まぁ、都合がいいならこのまま放置でもいいと思うけど」
「……複雑なところですね。いくら忙しい秩序の騎空団だからと言って、完璧な恋愛禁止にまでしてしまうのは……」
「でも団内じゃないと出会いなくない? 普通は」
グランのその言葉に、リーシャは驚いた表情をしていた。その考えが、全く自分になかったという感じだったのを見て、グランは何となくそれを察していた。
「全く違和感がありませんでした……」
「……団内恋愛禁止解除してみる?」
「……それも、ありなのかも知れません。公平さを明言している秩序の騎空団が、違法な労働時間やルールを行っている組織と同等の状態になっていたなんて……」
過去に何があったかはわからないが、要するに今のような組織を罰することも秩序の騎空団は行っているのだろうか、と的はずれな考えをグランはしていた。
「まぁ、そこら辺は俺と言うよりはモニカと話し合って決めた方がいいかもね」
「そうですね……この後モニカさんと話し合って決めてみます」
「うんうん、その方がいいその方がいい……というわけで、時間もほぼぴったりなところで、お時間がやってまいりました。また次回、この番組でお会いしましょう……さようなら」
綺麗な流れで番組を終わらせるグラン。終わった瞬間、リーシャに肩を優しく叩かれていた。その瞬間、グランの顔から笑みが消えて闇の深い真顔となっていた。
「というわけで団長さん、一緒に秩序の騎空団に来て貰えますか?」
「どこでアウト判定出ましたか……」
「……へ? いや、ただちょっと来て欲しいなぁと思いまして」
「……何やて?」
秩序の騎空団に来て欲しい理由を一言で言うと、こうである。『今の話を早速話し合いたいから、第三者としてきて欲しい』である。その理由に納得したグランは早速秩序の騎空団に向かうのだった。
「驚くほど話がサクサク進んだ」
「みんな思うところはあったのでしょうね」
数時間後、まさか数時間で開放されるとは思ってなかったグラン。行きの移動時間を含めてのこれなので、かなり早く会議は終了していた。
「早く終わることはいい事です」
「しかし、まさか恋愛禁止がこうも簡単に無くなるとは……」
「とは言っても、あくまでもプライベートのみということですけどね。仕事中は流石にイチャつくのはご法度です」
「なるほど……」
そこら辺の線引きはきちんとしているので、結構安心はできる。しかし、妙にリーシャがイキイキしてるのがグランは少し謎だった。
「さて、団に戻ったら……」
「その前にお買い物して帰りませんか? キッチンの調味料が、いくらか少なくなってるのを確認しているので」
「ん、なら買って帰るか」
「はい!!」
その後、幾らかの調味料と多少の2人のお出かけを楽しみつつ、グランとリーシャはグランサイファーに戻るのであった。グランは気づいていなかったが、リーシャがある程度自分の気持ちに素直になって少しだけ連れ回していたのだ。それにグランが気づくことは無い。
「なぁ、グランよぉ」
「どしたのビィ」
「おめぇって鈍感ってやつだよなぁ」
「え、何でそうなんの?」
「いや……今日連れ回されてたけどよ、なんで連れ回されてたのか分かってんのか? って話だよ」
「そりゃあ、俺が変なことしないように見張るためだろ? 後、変なことしたら即座に秩序出来るように」
グランのその回答を聞いて、ビィはふと思った。普段からの行動次第では、『この人に限ってそんなことは無いだろう』ということが起こってしまう場合があるのだと。
ビィは、自分はなるべくそんなふうにならないように行動に気をつけておこうと、自分のことを省みるのであった。
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