「今日のゲストはモニカさんです」
「よろしく頼む、不埒なことを考えたら即切り捨ててやるからな」
「怖っ、リーシャより過激じゃん」
「……さすがに今のは冗談だ」
「俺も冗談です」
軽い会話のジャブ同士から、番組は始まった。モニカは秩序の騎空団団長である。本来は、蒼の騎士ヴァルフリートなのだが今現在はそうなっている。
「しかしな、一つだけ貴君に言いたいことがあるのだ」
「俺に、一つだけ?」
「私の格好はそこまで破廉恥ではないぞ」
「っ……!?」
モニカの言葉に、グランは今まで見せたことないような表情になっていた。それこそ、本当の意味での驚愕の表情と言わんばかりに。その表情を見て、モニカはさらに困惑を深めていた。
「何故そんな表情をするんだ……」
「いやいや、だってそうでしょ?」
グランは目線をずらして、その部位の主張だったりとかを改めて再認識する。少し照れ恥ずかしいのか、モニカは顔を赤く染めるだけで特に何も言ってこなかった。
「そもそも、スカート短すぎますよ」
「何? しかし、リーシャとほとんど同じ位置取りにできるような作りなのだが……」
「そもそも、リーシャのを基準に考えたら長さが違いますやん」
口で言ったら怒られるし、なんだったら切られるためにグランは言わなかったが、モニカの身長は低い。それこそ、1部の特徴的な大きさがなければ間違われるくらいに。それでも、時折ドラフの女性に間違われるらしいが。
「……確かに私の身長は『少し』リーシャより小さいが……それでそこまで変わるものか?」
「そもそもリーシャそこまで短く無くない? もうちょっと長いかと……」
「……なら、今度からもう少し長めにするか……」
「あぁいや、長さはそのままで」
「何? 貴君もよくわからない男だな……」
グランの要望により、モニカのスカートの長さは今のままの長さを保たれるようになった。なぜそんな要望をするのかモニカは理解出来なかったが、そこまで困っていなかったためグランの要望をすんなりと受け入れた。
「……スカートだけか?」
「まだもう1つあるけれど、今それをここで高らかに宣言したら確実に秩序されるのでいいません」
「……ど、どれだけ破廉恥な事を言うつもりだ貴君は!!」
顔を真っ赤にさせて恥ずかしがるモニカ。その様子を見て、素直にグランは可愛いと思っていた。身長で分かりづらいが、彼女は成人女性である。つまり、合法である。
「さて、ここまで綺麗に話が整ったところで、お便りのコーナーいっちゃいましょう」
「お、おい、話を勝手に━━━」
「1通目『モニカさん本当にヒューマンなんですか?』」
グランはモニカに喋らせないように、間髪入れずにお便りを読み上げる。真面目なモニカは、それを応えようと仕方なくグランへの追求を今は諦めていた。
「どこからどう見てもヒューマンだろう、ドラフの特徴的な角も、エルーンのような耳も、ハーヴィンの様な体躯でもないだろう」
「エルーンやハーヴィンじゃない、って言うのはまぁたしかに見たら分かるんですけどね」
「……確かに、『少し』身長が小さいせいでドラフ族と間違われることはある。しかし、その場合『何故角が無いのにドラフだと間違われる』のか、だ」
『そりゃあ服の下から盛り上がって主張している胸部でしょう』なんて、グランは口が裂けても言えない。本人が自覚しているのかどうかは不明だが、ひとまず言え無いものは言え無いのである。
「……まぁ、偶にエルーンやドラフって自分の特徴的なところ隠してる人いますし……意図的なのか偶然なのかはともかく」
「例えば?」
「フォリア」
「あぁ……」
フォリアはとある別空域の女性である。見た目は子供、ドラフの様な特徴的な胸部もないので、本当にパッと見はヒューマンの子供に見えるのだが、それは帽子を被っているせいでそう見えるだけであり、実際はエルーン族だった……というパターンがある。
「しかし、私は時折帽子は外しているぞ? それでも勘違いされるのだが……」
「そのツインテールに隠してるとか思われているのでは……?」
本来ならありえないが、角が小さい人なら隠れるくらいにはモニカのツインテールはそれなりに大きいものである。そして、角が小さいということはまだ大人ではないと認識されているのである。
「そこまで思っているのなら、普通ヒューマンだと思いそうなものだがな……」
「……そうっすね」
その通りなのだが、実際ヒューマンの成人女性とは思えない所があるのもその通りなので、グランはこの話にケリをつけてさっさと別の話に行くことにしたのであった。
「とりあえず、2通目。『仕事が休みの時は何をしてますか』」
「ココ最近休みを取った記憶が無い」
「そう来たか……じゃあ、仕事が一段落着いた時で……」
「いや、待て……そうだなぁ……」
少し考え込むモニカ。必死に思い出そうとしているのかもしれないが、ココ最近休みを取った記憶が無いとなると、あまり期待できそうな答えはないように感じるが……
「……あぁ、そうだ。服とかを買いに行くことが多いな」
「ほう、服」
「お出かけ用……と言うやつだ。まぁまだ私が秩序の騎空団に入ったばかりの頃だったが……」
そこまで言ってから、モニカは遠い目をしながら視線を上に向けて、虚空を見つめ始める。まるで、黄昏るかのように。
「……買ったのはいいが、その服を使うような相手がいなかったことに当時気づいてな……」
「あっ……」
「相手がいないのでは、見せることも無いだろうと……」
「……じゃあ、この騎空団にいる間にその服着てみたら?」
少しだけ考えてから、グランはその言葉をモニカに投げ掛ける。グランは『せめてこの騎空団だけでも、私服でいるようにしたらいい』程度の考えだったのだが、モニカはそれを別の意味として捉えたのか顔を真っ赤にしていた。
「なっ……!? き、君の前でその服を着ろと!?」
「うん」
「君が私の相手になると!?」
「Yes」
「『そういう意味』だと受け取っていいんだな!?」
「何だったら着た次の日に寿退社させるくらい濃密に━━━」
そこから、カメラの映像が乱れる。そして、音声もブツリという音を最後にしばらく聞こえなくなる。そして、数分が経過してから再び映像と音声が回復する。
「えー、申し訳ございません。私団長ことグランが少々暴走してしまいました。引き続き番組は続行致します」
「うぅ……」
何故か傷だらけのグランに、顔を真っ赤にさせているモニカ。一体何があったのかは、この番組を見ている全員が察したので、そのまま何も言わずに番組は続けられることになったのであった。
「はい、では三通目にいかせてもらう。『もし秩序の騎空団を退団するような事態になった後、または秩序の騎空団に入らなかった場合の自分の生活はどうなってると思いますか?』」
「……では、前者の場合から応えよう」
「答え分かれる感じか……」
「質問が少し曖昧だからな、別に悪いことではないのだが……」
「で、どうなの?」
「そうだな……退団する様な事態となると、主に大怪我等になるだろうな。まぁ私に伴侶が出来て……子供ができるという事もあるかもしれないが……」
「じゃあ後者で、前者だと結構悲しい」
「……そうだな、では後者で語るとしよう。とは言っても……家事をしたり、家族団欒したり……他の家庭がやっていることと、特に違いはないだろうな」
少し微笑みながら、モニカはそう答える。それを少し楽しみにしているのが、グランは感じ取れていた。
「じゃあ初めから入ってない場合だと?」
「少し考えづらいな……伊達に長い間いる訳では無いからな、必然的に何をどうしたらいいのかは少しわからなくなっている」
「んー……まぁ出ないのもまた答え」
「いや……そうだな、もしかしたら普通の主婦になってたりするのかもしれないな。もしくは、パティシエか」
「パティシエ? なんで?」
「……まぁ、ケーキ等が好きなんだ。恐らく目指していたかもしれない程度のものだがな」
「なるほど」
照れ隠しをするかのように、モニカはそっぽを向いていた。しかし、それもまた本当にやりたかった事なのはグランにもよく伝わっていた。
「……そうだな、大体の意見だと……『今よりはゆったりしている』という結果になるか」
「というか秩序の騎空団が忙しすぎるのでは……?」
「……そうかもしれないな、秩序を維持するのも仕事だが……他にも頼まれたら、やらなければならない仕事などもある。そういった仕事をまとめて行うのが、秩序の騎空団というところだからな……」
「やっぱり忙しいんじゃないか……」
秩序の騎空団の忙しさに驚きを隠せないながらも、グランは落ち着いていた。依頼を受けて報酬を貰う普通の騎空団だと、あまり考えられない忙しさとも言える。
「……さて、ここまでご視聴ありがとうございました。また次回この番組でお会いしましょう。さようなら」
「む……何だ、もう終わりなのか」
グランがいつものセリフを言ってから、モニカが驚いた表情をしていた。いつもこんな反応をされているので、グランもそろそろ慣れてきていた。
「時間が経つのは早いもので……」
「確かにな……」
ふと、少し考え込むモニカに対してグランは頭に? マークを浮かべていた。このタイミングで、一体何を考える必要があるのかと。そして、しばらくその表情を眺めていたがふと覚悟を決めたかのように……モニカは凛とした表情……かつ少し赤面した表情で、グランに向き直る。
「そ、その……この後時間あるだろうか」
「無いですけど」
「……その、私の部屋に来て欲しい……」
「よし、なら今すぐ行こう」
「そ、そうか? 助かるな……」
こうして、2人はモニカの部屋に向かって歩き始めるのであった。赤面したモニカ、そしてその表情のまま部屋に誘われる。その事実だけで、グランは部屋に向かおうと決めたのであった。
その後、部屋につくなりモニカに正座をさせられて、数時間ほどお説教を受けたのであった。何故赤面して言ったのか、に関しては。
『説教するためとはいえ、異性を部屋に招くのは恥ずかしい』
……とのことであり、他に一切の他意は無いという。そして、モニカの説教が終わった後に関しては、今度はリーシャのお説教がその場で始まっていた。
『本日2度目ですね』
そのセリフを最後に、グランの意識は遥か遠くの空へと飛んでいっていた。因みに今回、落とされなかったのには理由がある。
『落とすより、説教の方が今回に関してはいい気がした』
という理由である。実際、流石に団内でちょっと淫猥なことが行われかけていると察したリーシャは、映ってはいないものの既に1度目をグランに味わせているのだから。
『……でもやっぱりモニカが赤面する必要なくない?』
これが、グランが最後に発した言葉なのであった。合唱。
あれでヒューマンは無理でしょ
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ