「今回のゲストはシロウさんです」
「よろしくお願いするよ」
「今回ゲストとして誘ったの俺だけど、奥さん放置していいんすか」
「俺も最初は断ろうかと思ったんだけどね、マリエさんが『偶には機械いじり以外で息抜きしてこい』って言われてね。だから問題ないよ」
シロウ、機械技師として名を上げている人物である。羅生門研究所というところに務めており、そこの娘であるマリエとの間に子供がいるのだ。
かつて、壊獣という存在と戦うためにロボミを起こしたり、自分が戦ったりしていたのだが、壊獣の被害は最近落ち着いてきているので、出動することはあまり多く無くなっていた。
「いやぁ、しかしあの黒いスーツ見てると壊獣にされた時のこと思い出すよ」
「あの時は大変だったなぁ」
1度、シロウとグランは壊獣に改造されているのだ。しかし、シロウは見た目そのままなのに対して、グランは見た目完全な壊獣にされてしまっているという差がある。その辺が、少しグランはシロウに対して羨ましさを抱いていた。
「大変といえば、ハレゼナはどう? 最近」
「ハレゼナちゃんは『マリエとマリエの子供の安心安全を守る!』って言ってるよ、頼もしい限りだよ」
ハレゼナは、自前の武器『
こういったモノを作ったということもあり、羅生門研究所にハレゼナは懇意にしてもらっている。
「もう娘みたいなもんでしょ、ハレゼナは」
「はは、実は年齢差10未満なんだけどね俺とハレゼナちゃんって」
「そういやそうだった」
娘にしては、年の差がえらく近くなってしまうが……ハレゼナのしおらしい態度などを見ていると、本当に娘のように思えるから不思議である。
「さて、そんなシロウさんにも色々お便りが届いています」
「ははは、楽しみだな」
「はい、というわけで1通目『白いアーマーの時に金色になるのはなぜ?』」
「その話始めると、多分2時間くらいかかると思う……最短で」
「最短で2時間」
そんなに長い間、会話を行うわけには行かないので今回詳しい話とかそういうのは一切抜きにしてもらうことになった。
「はい、じゃあ取り敢えず専門用語一切抜きでお願いします」
「そうだなぁ……ハイパーメガトンキックする時に、エネルギーを貯めるんだけど、そのエネルギーを過剰にすることで一時的にエネルギーをオーバーフローさせているんだ」
「そのオーバーフロー状態の時が、あの金色の鎧?」
「そういうことさ、そうして漏れだしたエネルギーを使ってハイパー斥力斬を使っている……って事だよ」
「はー、凄い納得した」
はっきり言うとグランはただの演出だと思っていたのだが、実際はちゃんと理由があったようだ。どちらにせよ、かっこいいのでグランとしては全く問題がないのだが。
「ハイパー斥力斬でエネルギーを全部使ったから、元に戻ることもあると」
「そうそう、そんな感じだよ」
「ん……じゃああれは? 黒い方の鎧も、銀色になることあるけど」
「あー……あの鎧があぁなるのは、よく分からないんだよ。偶になる、程度の理解しかないよ」
黒い鎧。かつて、シロウの姿を模した壊獣『デスロウ』という者がいた。そのデスロウが使っていたのが黒い鎧なのだが、シロウが普段着ている白い鎧に、デスロウの細胞を移植した結果、白い鎧が黒く染ったのだ。
しかし、そうした結果黒いスーツは生きるスーツとなりシロウでさえも、未だ未知数の部分が多いスーツとなっている。その代わりに、戦士として鍛えられた今のシロウで釣り合うスーツはその黒いものしかないのだ。
「あれそんなに偶然性高いんだ」
「まぁ、うんそういう事……俺もあの状態をもっと制御出来ればいいんだけどね、あのスーツは生きている……だからこそ、もっと理解しないといけないのかもね」
「スーツを理解……まぁ、機械にせよ生物にせよ……理解するのは当たり前のことなのかもしれないね」
「そういう事」
「というわけで2通目に移行します。『量産型ロボミってどうなったんですか』」
「あれはまだ色々な街に配備されてるよ、最近は離れた場所からでもコンピューターのアップデートが出来るようになったからね」
「へぇ、離れた位置から……」
グランからしてみればよくわからない単語が飛んできているのだが、今その言葉の解説をしている暇はないので、知らない人はシロウに聞いてね☆って態度で進めていくことにした。
「まぁ、最近は壊獣の被害も落ち着いてきてるし……」
「そもそもココ最近が被害としては酷かったのかもしれないしね」
「そうなんだよなぁ……ま、もし壊獣が居なくなったとしたんだったら……量産型ロボミも、ギガントスーツも何か別のことで役に立てていきたいよね」
「シロウはやっぱり立派だなぁ」
「もう俺は一児の父親だからね」
子供を持つと人間変われるものなのだと、シロウは語る。いつかそういう子供を作るような相手が、自分に出来るのだろうか……とグランは考える。
好意に気づいているのかいないのか、という事ではなく。ただ星の島イスタルシアに着くまでに、どれだけ時間がかかるかという話である。
「そうなんだなぁ……」
「あー、でも魔物退治で使うにはスーツは強すぎるかもなぁ……」
「出力を抑えるとかさ、後は……あれだ。星晶獣と戦う時に使うとか」
「星晶獣か……星晶獣は相手にするには本音としては怖いな」
「……確かに、そうだね」
『え、星晶獣そんな怖いかな』って思ったグランは、直ぐに自分の感覚が麻痺していることに気づいた。よく考えなくても、普通に騎空士をやってる分にはここまで星晶獣と戦うことは無いだろう。
「そう言えば、メカっぽい星晶獣ってたまに居るけどさ」
「コロッサスマグナとか、メカっぽいもんね」
「あれってコックピットあるのかな」
その言葉で、グランに電流走る。マグナではない通常のコロッサスは、まだ鎧を着た巨人とも認識できなくもないが、コロッサスマグナは完全にメカである。
確かに、羅生門研究所が変形したメカのようなコックピットはあるのかもしれない。
「考えたこと無かったな……」
「今度ルリアちゃんに確かめてもらう?」
「そうしよう」
変な約束が取り付けられたところで、話がズレていることに気づいたグランは、一旦咳払いをしてから最後の3通目のお便りを読み上げていく。
「えー、気を取り直して3通目行きます」
「最後だな!」
「『お金ってどこから出てるんですか?』」
「随分と現実味のある話に……」
「正直なこと言うと、俺も気になってた」
羅生門研究所は、シロウに子供ができる前……つまりはマリエと付き合う前はシロウとマリエの父がよく無駄なメカを使っては、資金を消していたという話がある。
だが、その資金の出処は一体どこなのか? グランもそれが気になっていた。
「簡単だよ、人の役に立つメカを作ってそれを売ったりしてるのさ」
「量産型ロボミも?」
「あれは売ると言うより……何と言うか、定期的にお金を貰うことでずっとロボミを渡す契約もあるけど……レンタルに近いかも」
「レンタルに近いの? つまり、回収する時あったり?」
「簡単なものなら、今は離れててもいいんだけど……修理とかになってくると、そうはいかないんだよね」
「まぁ、確かにそうか」
量産型ロボミは、ロボミを再現しようとしたシロウの努力の結晶である。それ故に、直せる者はほとんど居ないためにシロウやマリエの父親が出張っては修理するという流れになっている。
「月一で、渡してる街に出向いて直しに行ってるんだけどね。どうしようもない時は一旦回収させてもらってるよ」
「どうしようもない時って?」
「本格的に傷が酷い時かな、場合によっては修理するよりも新しく作り直したりする方が早い時もあるから」
「それって中身が壊れてたりとか?」
「そう、エネルギータンクが壊れてたりする時もあってさ。そうなると、治すときにヘマしちゃうから、新しいエネルギータンクを作ってはめ直したほうがいいんだ」
「へぇ……」
直すよりも、作り直した方が早いという感覚が機械技師にはあるのだろうと、グランは理解することは出来た。しかし、メカニックというジョブを使っていても、まだ自分はその域に達していないのか理解出来ていないことに少しだけ凹んでいる彼もいた。
「……あ、そろそろ時間だ」
「もうか、結構早いもんなんだな」
「ごめんね、時間取らせちゃって」
「いや、俺も充分楽しませてもらったよ。いい息抜きになったと思う」
「では改めて……皆様ご視聴ありがとうございます。また次回この番組でお会いしましょう、さようなら」
そうして、グランはカメラの電源を落とす。消してから、シロウがなにか気になるのかカメラをじっと眺めていた。
「え、何……どうしたの?」
「……それ、俺に改造させてくれないか?」
「え、いいけど……どうするの?」
「まぁ、それはあとのお楽しみってことで」
「というわけで、さっきシロウに改造してもらったカメラ君です」
「グランよォ、見た目が変わってることからしかオイラわかんねぇよ」
ビィが不満そうに声を上げる。とは言っても、グランも口頭では教えられていないのだ。口で教えるより、渡された説明書を見た方が早いと思って、渡されたのだ。
「結構大型になってたあのカメラだけど、まず支えになってた足の部分がタイヤになりました。これで移動がかなり楽になってる」
「そりゃあ見たらわかるぜ」
「次に……ここの2本のレバーを操作することで、乗りながらの移動が楽になりました」
「乗れるのは楽だなぁ」
ある程度の台が設置されており、そこに両足を載せることで乗りながらの移動が楽になっていた。これで無理にカメラを持ち上げて移動しなくてもいいようになったという。
「最後に、階段なんかの段差の場合足が生えて勝手に登り始める機能も追加されました」
「……ってオイ! 移動が楽になってるだけじゃねぇか!!」
「カメラの精度に関しては、全く問題がないみたいだしなぁ……シロウも『今は触らない方がいい』って言ってたし」
「今は?」
「大掛かりにやる時に触らせて欲しいだって……因みにアタッチメントで背もたれ付きの椅子が付けられるよ」
そう言いながら、グランは椅子を取り出す。ビィは溜息をつきながら、しかし便利そうではある事には納得はしていた。
「今後これでやっていくのか?」
「まぁ、ぶっちゃけ楽になったからね。ガンガン使っていくよ」
こうして、団長相談室のカメラは移動がかなり楽になったので相談室以外のところでも、相談室を開くことができるようになったのであった。
因みに、きちんと対価は支払ったのでシロウがマリエに怒られることはなかったという。
よく考えたらデスロウのせいで1回全裸晒されてるシロウさん