ぐらさい日記   作:長之助

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愛宿せし鋼の戦士、出撃しますか?

「今日のゲストはロボミさんです」

 

「よろしく、お願いします」

 

 古代兵器ロボミ。かつてシロウが蘇らせた鋼の戦士である。鋼鉄の肉体に、自立した思考能力……そして現在ではそれに加えて武装の豊富さも備わっている。

 

「……」

 

「……団長? どうか、しましたか?」

 

「腕のドリルは?」

 

 現在、ロボミの体はシロウが作り上げたレプリカで出来ている。その内の武装の一つに、ハレゼナ特性のドリルが備わっていたのだが……今回はどうやら外してきているようだった。

 

「今回は、戦闘も起こらないだろうと、シロウが外しました」

 

「なるほど、あれ外せたのか」

 

「はい」

 

 壊獣との戦いにおいて、必要なのは殲滅力である。要するに近接戦闘くらいでしか使えないドリルは、あまり必要が無いように思われるが、基本的にそこから竜巻を発生させて攻撃しているので、実はかなり役に立っている。

 

「団長は、あれが見たいのですか?」

 

「まぁ、うん……かなり。あのドリル結構好きだからさ……自分でも分からないけど、こう胸の奥が熱くなる感じがして」

 

「それは、熱意……または興奮……などでしょうか」

 

「わからんけど、俺は好き」

 

「シロウにも、そう伝えておきます」

 

 ドリル談義もそこそこに、グランはロボミの体を眺めていく。鉄のような硬さの雰囲気は残しつつも、まるでそれが鎧であるかのような柔らかそうな雰囲気を残してるのは、彼なりにアリなのか考え込んでいた。

 

「団長」

 

「ん?」

 

「女性の体を、眺めるのは……犯罪だと、聞きました」

 

「おっと済まない……ついつい……そのしなやかさを再現出来たシロウすげぇなぁって思って」

 

 因みに、ロボミは完全な機械ではない。その思考能力、というか意識は過去に現実に存在していた人間をベースにしたものである。それは、ロボミを実際に作りあげた夫婦の……妻の意識のものであり、鉄の体であっても女性であることには変わりないのだ。

 

「この体は、シロウが作りあげたものです……随分と、苦労をかけたと……思っています」

 

「ま、これからあの二人守ると思って……」

 

「……そうです、ね」

 

 機械なせいか、微笑んでもあまり微笑んでいる様には見えないロボミ。しかし、グランにはバッチリと微笑んでいる様子が目に浮かんでいるのであった。

 

「さて、とりあえずロボミにもお便り届いているので読み上げていきましょう……1通目『バレンタインの時やハロウィンの時等に、何故イベント仕様に出来ているのですか?』」

 

「シロウが、してくれたからです」

 

「まぁ、そういう答えになるのはわかってたけどね。俺も気になってたけど、お菓子とか発射しても形が全く崩れないから不思議だなって思ってたのよ」

 

「発射速度の低下、並びに威力を抑えることによって、安全、安心に……かつ、子供達なども喜ばされられる様な、システムをシロウが構築してくれました」

 

 ここまで聞いて、『やっぱりシロウすげぇな』という気持ちばかりが強くなっていくグラン。バレンタインの時やハロウィンの時にお菓子が飛び出てくる様子を見ていると、やはり子供達は喜んでいるから好評なのだろうと予測できる。

 

「兵器だった私に、子供を喜ばせる……そんなことがあるなんて、思いも、しませんでした」

 

「実際、子供たちの喜んでいる姿を見てどう思った?」

 

「……すごく、嬉しかったです」

 

「でしょ」

 

 古代兵器ロボミ、そう呼ばれていた時代よりは文明が退化しているのは事実である。シロウが見様見真似で作ったシステムに、奇跡的にロボミが宿った。しかし、少なくとも兵器である人生に幕を閉じてしまった女性に、喜びを与えたのは紛れもないシロウなのである。

 

「……シロウって、罪作りな男だなぁ」

 

「シロウは、『団長には言われたくない』と言うかもしれません」

 

「いや、今のはものの例えです。実際に僕は罪作ってるので、シロウ君とは比較にならないです」

 

 まるで謙遜しているかのような言い草だが、だったら捕まるようなことをするなよ、という話に落ち着いてしまう。ロボミもそう思っていたが、別に言わなくても支障はないため言わないでおくことにした。言ったところで、またいずれ秩序されるのは目に見えているからである。

 

「因みに、ドリルからも出るように設計中です」

 

「ドリルからどうやって出すんだ……?」

 

「側面が開き、クッキーが出ます。先端からチョコクリームを出して、デコレーション出来ます」

 

「お菓子作るのに万全の機能になってる……」

 

 シロウはパティシエなどにロボミを貸出すのもいいのではないだろうか、もしくは量産型ロボミのお菓子作りver.でも渡してあげればいいのではないだろうか……と考えていた。

 

「確か、ミサイル打つところは……」

 

「ビスケットが出ます」

 

「……ロボミの武装って、調整次第で幾らでもお菓子作りに貢献できそう」

 

「シロウも、作りがいがあると、言っています」

 

「でしょうね……」

 

 機械を作るのは、彼の趣味であり仕事である。恐らく、パティシエからの依頼は群を抜いてあるのではないだろうか、とさえグランは思っていた。恐らく、それが事実だということもあながち間違いではないだろう……とさえ思っている。

 

「とりあえず、2通目『他にどんな武装があるんですか?』」

 

「試作段階、または予想外のことが起こって、取り付けられなかったパターンも参照しますか?」

 

「まぁ、とりあえず3~5個位で」

 

「分かりました」

 

 ロボミはどこから取り出したのか、大きな設計図のようなものを取り出して机に置き、広げる。そこには色々な武装の説明が描かれていた。

 

「これは?」

 

「未完成や、取り付けられなかった……武装達です」

 

「へぇ……」

 

「両肩に大型の大砲、熱放射による敵撃破を狙った右腕部、攻撃や高速移動を兼ねた、エネルギーウィング」

 

「色々あるんだ」

 

「しかし、バランスの問題や、エネルギー消費の問題、その他様々な問題があって、見送られました」

 

 ドリルが、ギリギリのバランスで保てていたというのはまた面白い話である。浪漫もあり、尚且つ兵器として成り立っていてこその武装なのだろう。ただ、大きくて強いものを使えばいいと言うだけではないということを、ロボミは語っている。

 

「様々なバランス、ねぇ……」

 

「ほかには、可変機能なども考えられていましたが、構造上見送られ、ました」

 

「変形はかっこいいけどする必要性なくない?」

 

「はい、私もシロウにそう伝えました」

 

 独立飛行自体は可能なので、エネルギーウィングや可変機能ははっきりいっていらないとさえ思う。グランでさえそう考えたのに、シロウは言及されてようやく思い至ったようだった。

 

「それと、右腕部が有線で繋げられている代わりに、遠くまで飛ばすことによって、相手を掴んで引き寄せるという武装も考えられていました」

 

「切られたらまずそう」

 

「シロウも、それを考えていました。それ以上に、私の大きさではその武装はあまり意味をなさないとされました」

 

 それなりに大きさがあるのならばともかく、ロボミの身長はほかの一般人とほぼ同程度のものしかない。それでは、確かに腕を飛ばせたところで同じような大きさの敵しか掴むことは出来ないだろう。

 

「後……3mくらい大きかったら良かったのかもねぇ」

 

「そうです、ね。それくらい体が大きければある程度の敵にも、対応はできたと思います」

 

 しかし、それだけ大きなものを0から作る技術は今の時代には存在しない。ゴッドギガンテスは羅生門研究所を改造してできたものであり、なおかつロボミを大きくすると言うだけで頭が痛くなりそうな課題にもなるのだ。

 

「ま、武装はもっと適切にって話だ……とりあえず三通目『マリエさんの赤ちゃんの様子どうですか?』」

 

「今は、元気に育っています。シロウがいないことも多いので、私がマリエと赤ちゃんの様子を、見ています。但し、シロウも子供用玩具武装を、私に取り付けて、居ます」

 

「そんな武装まで取り付けてたのか……」

 

 お菓子作りといい、子供用玩具といい、シロウは戦闘用以外の武装を作るのが上手すぎやしないか? とグランは疑問に思っていた。いや、実際うますぎるのだが。

 

「はい、ドリルは、安眠用の子守唄オルゴールです」

 

「ドリルがオルゴール……?」

 

「自分でネジを回すことが出来て、自分で音を鳴らせる……素晴らしい武装です」

 

 実際に見て見ないと、よくわからない武装だということだけはグランによく伝わっていた。ドリルがオルゴールになるというのが、全く予想できないのだ。

 

「……と、とりあえず今度その武装を見せてもらおう……もうそろそろ時間だし、終わります」

 

「皆様、ご視聴ありがとう、ございます。また次回、この時間で、団長とお話、しましょう。さようなら」

 

「あ、俺のセリフ取られた……」

 

 ロボミに自分のセリフを取られて少しがっかりしながらも、グランはキチンとカメラの電験を落としに行く。そうして電源を落としてから、再びロボミの前に座る。

 

「今度羅生門研究所におじゃましていい?」

 

「分かりました」

 

 今回話し合った武装を確認したかったのと、マリエの赤ちゃんがどれだけ成長しているのかも気になったので、そう伝える。即座にOKが出たので少し拍子抜けだったが、グランはこうして羅生門研究所にいける切符を手にしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー……大きくなったもんだ」

 

 赤ん坊のベッドで寝ている赤ちゃんの頬を軽くつつきながら、グランは破顔していた。つつく度に、笑みを浮かべるその姿はまるで天使のようである。

 

「団長、これが、例の武装です」

 

「オルゴールドリルか……」

 

 見た目は、あまり普通のドリルと変わりはない。むしろ、これを見せつけられて泣かない2人の赤ちゃんが図太い精神を持っているように思える。

 

「これを、回すと音楽が……鳴ります」

 

 そう言いながら、実際にドリルを回し始めるロボミ。その速度はとてもドリルと言えるような速度ではなかったが、確かに綺麗な音楽が鳴り始める。

 

「……その速度って、それが最高速度?」

 

「はい」

 

「まぁ、オルゴールだし当たり前だよな」

 

 綺麗な音を聞きながら、グランも心が癒されていた。時折羅生門研究所に遊びに来ることはあるが、こうやって癒されるのは珍しいことだったからだ。どちらかと言うと、メカを見て興奮しているのがいつものことなこともあったので……

 

「……いやぁ、今日ここに来てよかったよ」

 

「それは、何よりです」

 

「……また赤ちゃん見に来る」

 

「はい、そうしてあげてください。その子も、貴方と会うと喜びます」

 

「ふっ……まさか、赤ちゃんからもモテるなんてね……」

 

「罪作り、ですね」

 

「あ、セリフ取られた……」

 

 武装と、赤ちゃんを見に来ただけで帰ったグラン。新作メカなどのテスト調整を手伝ったが、それ以外は終始癒されっぱなしを味わったまま今回はそのままグランサイファーに帰宅したのであった。




コラボキャラどうすっか悩んでます。
ロボミは可愛い

偶には長編とか書いて欲しい

  • はい(ギャグノリ)
  • はい(シリアス)
  • いいえ

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