ぐらさい日記   作:長之助

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鉄人GO

「……うん、確かにいい刀だ」

 

「俺のお気に入りだよ」

 

羅生門研究所にて。グランはシロウと一緒にメンテナンスついでに、武装を触らせてもらっていた。今は、ギガントスライサーを手に取って確認している最中である。

 

「綺麗なのに、これが機械だなんて信じられないよ」

 

「だろ?本格的なのを目指したかったしさ、ちゃんと使い方も練習してたんだぜ?」

 

「ガラドア辺りに見せたら、結構興奮してそうだ」

 

「あのドラフの人だよな?確か、鉄が好きだっていう」

 

「そうそう」

 

手に取って見ながらも、他愛のない会話を繰り返していくグランとシロウ。そのまま確認が終わったのか、グランはギガントスライサーをシロウに渡す。

 

「けど本当に助かったよ、手伝ってくれて」

 

「いや、手伝うのは別にいいんだけどさ……俺がこれやってもよかったのかなって」

 

「ダメだったらやらせてないさ。団長だからいい、って感じかな。信用できるし……なんでも出来るだろ?」

 

「何でも出来るわけじゃないけど……まぁ、メカを見ることは普通にできるけどさ」

 

普通は出来ないのだから、信頼されるのも当たり前なのだが……グランは一応謙遜はしていた。過度な謙遜になっているが、本人はそれに気づいていない。

 

「普通は、素人はメカを見るのも出来ないんだけどな。その辺団長は、信頼出来る」

 

「シロウに褒められるのなら悪い気はしないよ……ところで、スーツは見なくていいの?」

 

「あれは点検すると言うより、様子はどうかを聞くって感じかな」

 

黒いスーツのことを確認しながら、グランとシロウは黒いスーツに視線を寄せていた。あのスーツは、壊獣細胞…しかも進化した壊獣であるデスロウのものを移植してあるのだ。言葉こそ喋らないものの、あれにはきちんと自立した意識が宿っている。

 

「何か、言葉を喋るように出来たら嬉しいんだけどね」

 

「発声器官が着いてないからなぁ……まぁ、言葉をしゃべられるようにするって言うのはありかもしれないな」

 

喋れる様になれば、今よりももっと対話が可能になる。デスロウがひねくれていない前提の話になってしまうが、対話さえ可能になればそこはどうとでもなる壁だろう。

 

「シロウ」

 

「ん?ロボミ?どうしたんだ?」

 

二人で話しあっている最中、ロボミが部屋の扉を開けて入ってくる。急ぎの用事がある風でもないので、伝言だろうかと二人で予想し始める。

 

「マリエが、ミルクを買ってきて欲しいと」

 

「あ、そっか…うし、じゃあ買いに行ってくるよ」

 

「いつのものもので、という伝言もあります」

 

「あぁ、分かってるよ。ついでにオムツも買ってくるよ、マリエさん今日は何作るって言ってた?」

 

「夕飯、は━━━」

 

夕飯のメニューを聞いて、オムツとミルクと夕飯に使う食材の買い出しに出かけようとするシロウ。ロボミと話してるのを聞いて、グランはふと思った。

 

「いい旦那がすぎる」

 

「え、なに急に」

 

「いや、シロウがここまでいい旦那さんになるなんて……って考えちゃって」

 

初めてであった時は、マリエに怒られる程にはメカオタクだったシロウ。自分の趣味を追求するあまり、研究所に使う予定のお金すらもメカの開発にかけてしまうほどだったのに、今では役に立つメカだけを作り自身の妻を甲斐甲斐しく手伝う旦那となっていた。

 

「確かに、私も考えてはいました」

 

「おいおい、ロボミもか。俺だって、やれば出来るんだよ」

 

「まぁ、シロウは優しいし強いしいい人だから……自分の妻のためにちゃんと色々してくれるってのは、ある意味では予想出来たけどさ」

 

「団長の、言いたいことも理解できます」

 

予想はできるが、いざ目の前にするとやはり困惑してしまうというやつである。事実、グランはそれなりには驚いていたのだ。

 

「……昔の俺って、そんなにダメ男に見えてた?」

 

「ダメ男じゃなくてさ、熱血漢だけど趣味に没頭するタイプって感じで見てた。世間一般のダメ男と比べたら、遥かにいい人だろうし」

 

そもそもダメ男の基準がそれなりに曖昧なので、シロウがダメ男かどうかというのは、結論が簡単に付けられないものではある。しかし、ダメ男と言われるほどダメな部分はグランには思いつかなかった。

 

「ありがとう、団長」

 

「いやいや、本音だしね。気遣いできるのはわかってたけどさ」

 

「じゃあ、俺買い物行ってくるよ」

 

「俺も手伝うよ、俺自身が買いたいものもあるしね」

 

「ならお願いするよ。ロボミ、あとは任せたぞ」

 

「了解しました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、結構な買い物になったな」

 

「グランサイファーだと、お買い物なんてこれ以上するけどね」

 

「そう言えば、また人増えたんだって?今何人だっけ?」

 

「多分100人は超えてると思う」

 

他愛のない会話をしながら歩く二人。そんな中、シロウが何かを見つけたのか、足を止めてショーウィンドウの中を覗いていた。グランもそれに気が付き、シロウの視線の先を見る。

 

「……ウェディングドレス?」

 

「そう言えば、簡単な式しかあげてなかったなぁって」

 

「コルワが聞いたらガチ切れしそうな案件」

 

「まぁ、俺もマリエさんも…あんまり派手なのを挙げずに、静かにやりたかったっていう結論出しちゃったし」

 

「でも、着せてあげたいんでしょ?」

 

「まぁ、うん……そうだな…マリエさんには、これ着てもらうのもいいかもなぁ」

 

結婚式は、別にいつ上げても問題ないだろう。グランはもとい、恐らくグランサイファーの仲間達も手伝ってくれるだろうという予想が、グランにはあった。

 

「って言ってもなぁ……」

 

「どしたの?」

 

「……やるとしても、祝ってくれる人多くないか?」

 

「グランサイファーでの知り合いは皆祝ってくれると思うから、相当多いな、何なら司教役も調達できるし会場も調達できるし」

 

「グランサイファーに乗ってる人たちの素性が気になってきたぞ……」

 

王族騎士団ゼエン教徒に十天衆更には、星晶獣なども乗り合わせているグランサイファー。メンツさえ揃えられれば、グランサイファーで結婚式は余裕で行えるレベルである。

 

「まぁまぁ、コルワもいるし衣装はばっちりだよ」

 

「でも赤ちゃんがなぁ……」

 

「なら一緒に参加したらいいよ、ロボミも絶対喜んでくれるだろうし」

 

「……そう言われたら、遠慮してばかりは悪いのかもな」

 

「よし、じゃあ早速準備しよう」

 

「え、もうか!?」

 

「行うのは1ヶ月後だ」

 

こうして、急遽シロウとマリエの結婚式が静かに始まろうとしているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、お2人は永遠の愛を誓いますか?」

 

急遽行われた結婚式。場所はウェールズ城、場所提供者はアグロヴァルとパーシヴァル。結婚式を執り行う司祭としてソフィア、その他シロウと仲の良かったグランサイファー団員を軸に結婚式は始まった。

金持ち軍団が、シロウへの祝い金としてとんでもない額を提示してきたが、それをグランはダメにした。あくまでも数万程度で収めるように、と。何人かは、3桁×万ルピを提示してきたので仕方の無い話だが。

 

「はい…誓います」

 

「俺も、誓います」

 

「では、指輪の交換と……その、誓いの口付けを━━━」

 

恥ずかしいのか、少し顔を赤くしながらも進行していくソフィア。しかし、その最中にロボミのセンサーとシロウが持っている小型の壊獣発券機から凄まじい音が鳴り響く。

 

「こ、この音は…!?」

 

「シロウ君!壊獣よ!」

 

「あぁ!行くぞロボミ!!」

 

「はい、シロウ」

 

そう言って、赤ちゃんを預かったマリエは心配そうな表情でシロウを見送っていた。そして、2人が出たあとにグランは立ち上がる。

 

「戦闘できるメンバー集合!!壊獣と戦える武器は持ったな!?」

 

「「おう!」」

 

「結婚式無茶苦茶にしやがったあの壊獣達におしおきしに行くぞ!!」

 

「「「おー!!」」」

 

そして、凄まじいテンポの良さでグラン達も何人かは壊獣退治に向かった。せっかくの結婚式のタイミングで、出なくてもいいでは無いか、と叫びながら……慟哭しながらグランは突撃して言った。

 

「だ、団長さんまで…?」

 

「あ、あの……こんな結婚式になっちゃいましたけど……」

 

ソフィアが申し訳なさそうに謝っている。彼女は一切悪くないのだが、それでも責任は感じていたのだ。それに対して、マリエも申し訳なさそうにしていた。

 

「い、いえ!気にしなくていいんですよ…?私も、ちゃんと進むと思ってませんでしたし……」

 

「……でも…」

 

「それに、私達からしてみたら……こう言うのは、ある意味日常なんですもん。シロウ君は心配だけど……それでも、ちゃんと帰ってきてくれるって信じてる」

 

「ふふ、好きなんですね」

 

「えぇ、とても」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぞロボミ!!」

 

「はい、シロウ」

 

「「ダブルハイパーメガトンキィィィィィィッッッッッッック!!!!!!」」

 

2人の戦士の蹴りにより、一気に倒されていく壊獣達。そして、その一撃により、今回出現した全ての壊獣が全滅したのであった。

 

「これで全滅か?」

 

「はい、そのようですシロウ」

 

「団長達もありがとう、手伝ってくれ━━━」

 

「というわけでさっさと戻るぞ!!マリエさんも待ってるだろうし!!」

 

グランは迫真の顔でそう叫ぶ。まだ結婚式は続いている、さっさと戻って続きをしろという圧力が、シロウ達にもかかっていた。シロウも早く戻りたかったのは戻りたかったのだが、グランほど熱意と感情が籠ってるのを見ると、逆に冷静になってしまう。

 

「あ、あぁ……ロボミ、頼めるか?」

 

「了解です、シロウ。担ぎあげて、そのまま高速飛行モードへと移行します」

 

ロボミは自分の背中の上にシロウを乗せて、そのまま空を飛び始める。走って戻るよりも、障害物のない空中を飛行することによって、時短を狙っているのだ。

 

「よし!俺らもさっさと戻んぞ!!」

 

そして、グランも着いてきてくれたグランサイファーの者達と共に、さっさとウェールズ城へと戻っていくのであった。因みに、グラン達が完全に戻りきる頃には既に結婚式は行ける所まで行っていたという話があるが……それはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの時!壊獣さえ!!現れなければ!!!」

 

「ま、まぁまぁ……俺もマリエさんもそれはしょうがないって割り切ってるしさ……それに、壊獣に対しては1部の武器しか通用しないし」

 

「くっ……それは分かってる、分かってるけど……」

 

後日、シロウとグランは二人きりで飲んでいた。グランは未成年なので、飲むというか2人でレストランでの食事なのだが。

 

「それでも、手伝ってくれて助かったよ」

 

「というか、出撃しなくてもよかったんじゃあ……」

 

「数は多かったし、結果的に俺とロボミが出て正解だったよ」

 

「ぐっ……それでもだなぁ!!」

 

しばらくは、グランの愚痴は続いていた。自分の愚痴ではなく、他人の事に対しての愚痴を、本人に対してただただ呟いていく。シロウは、そんなグランを見てふと思うのだ。『だから人が寄ってくるのだろう』と。

その日、シロウはグランがスッキリするまでその愚痴に付き合ったのであった。




また何かのイベントで出てくんないかなぁ…コラボイベでもいいから……

偶には長編とか書いて欲しい

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