ぐらさい日記   作:長之助

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血貴、楽しませてくれよ?

「はい、今回のゲストはヴァイトさんです」

 

「……よろしく」

 

 ため息を吐きながら、ヴァイトは少し面白くなさそうな表情をしていた。番組に参加することは、ちゃんと了承してくれたのだが、実は嫌だったのでは? という気持ちがグランの頭によぎっていた。

 

「……嫌だったら断っても良かったんだよ?」

 

「いや、僕が呆れてるのはそうじゃなくて……団長サンは、女性にモテるねって思ってさ」

 

「そう?」

 

「番組が始まるまでに、何人の女性と会話した?」

 

「多分10人くらい? でも全員団員だし、話しかけられたり何か話ししたりすることはあるんじゃないかな」

 

 更にヴァイトはため息を吐く。グランは意味がわからず頭に疑問符を浮かべていたが、ヴァイトはそのまま姿勢を正して座り直す。

 

「まぁ、人間は『英雄色を好む』と言うらしいし? 団長サンがどんな趣味嗜好を持っていても、僕は受け入れるしかないよね」

 

「まさか俺がそんな風に思われてるなんて……あながち間違ってないな……」

 

「団長サン、せめて否定はして欲しかったよ……」

 

 さらに呆れたように、ヴァイトはグランを白い目で見ていた。グランは軽く笑いながらも、ヴァイトから目線を反らせていた。そのまま流れるように箱をとり、そしてお便りを取り出していく。

 

「と、とりあえずお便りを読んでいこうか。時間は有限だからな!」

 

「明らかに適当言って誤魔化してるけど……いいよ、僕もその通りだと思ってるから」

 

「じゃ、じゃあ1通目『ヴァンピィさんと兄弟らしいですが、どちらが上ですか?』」

 

「一応……僕は弟、ヴァンピィは姉ということになっている」

 

 反面教師なのか、はたまたただの性格の違いなのかはわからないが、はたから見たらとてもヴァイトが弟であるようには見えない。ヴァンピィの方が妹に見えることもあるが、一応ヴァイトが言った通りなのである。

 

「ほんと、あんまりそういう風には思えないよね。特に初めて会う人には」

 

「『自由奔放な妹に困らされている兄』という立場だったら、まだ幾分か……いや、その場合ヴァンピィがより好き勝手になってこうな気がするな」

 

「今の『自由奔放な姉に困らされている弟』の方が収まりがいいのかもね」

 

 まだヴァンピィが『お姉ちゃん』でいる分には、『弟』であるヴァイトの面倒を見ようとしてるので、案外ありかもしれないと思えていた。

 

「まだこっちの方が良かった……っていう発見が見つかった時点て僕はちょっと落ち込んでるよ……」

 

「だったらそんな落ち込んだ気持ちを解消するために、2通目に行ってみましょう」

 

「ん……」

 

「2通目『自力で飛べるんですか?』」

 

「飛べたら苦労はしないよ、いや本当に」

 

 羽自体はあるものの、飛行に至るまでのものではないのだ。そもそも、飛べるんだったらもっと早くにそれを見せていてもおかしくないはずである。

 

「滑空は?」

 

「するとしてどこでするのさ」

 

「蝙蝠だと自力で飛んでる扱いにならないの?」

 

「確かに飛んでるけど、あれでどこまで速度がでるのかって話だけどね」

 

 確かに、とグランは思った。騎空艇で飛んでいるからと言って、人間が自力で空を飛ぶ術を覚えた訳でもない。それこそ、マキラの様に飛力をどこかで身につけなければならないだろう。あれ自体で飛んだとしても、速度がどれだけ出るのかという話になるが。

 

「僕としては、自力で空を飛んでいる人間がいることが一番の驚きだよ」

 

「……確かに自力で飛んでるの何人かいたわ」

 

 人間は飛ばないものだとグランは認識をしていたが、よく考えたら魔力が高いものは結構な頻度で空を飛んでいた。ヴァイトが言ってようやく思い出したが、自力で飛ぶ人間が何人かいるのを完全に忘れてしまっていた。

 

「あれって、島と島を渡れるのかい?」

 

「……少なくとも、何人かはそれが出来る気がする」

 

 恐らく十天衆クラスなら……とグランは思っていた。アンチラと出会った時は島と島の間の空であったので、彼女も恐らく島と島を直通で渡ることが出来るのだと確信していた。

 

「そうかい……人間は恐ろしいな……」

 

「まぁ、そんなの世界に名を馳せる強者レベルじゃないといけないと思うけどね」

 

「十天衆だっけ? 確かに、あれだけの実力者が揃っていたら……まぁ出来そうだね」

 

 ソーン、フュンフ、ニオ、ウーノ……十天衆で飛べるのはこの4人である。しかし、十天衆は空の世界でも最強クラスの人員が集う騎空団。残念ながら、ヴァイトはその基準に達してはいないのだ。

 

「あとは……星晶獣も飛べるよね」

 

「飛べるって言うか……元々が浮いてるっていうか……」

 

 ヴァイトの言う通り、星晶獣も空を飛ぶことが出来る。しかし、元々が地面から浮いて生活しているようなものなので、基本歩いているのは少ない……と思われる。ココ最近は、仲間の星晶獣も増えたので歩いているのをよく目にすることがあるが。

 

「……今ので思ったけど、星晶獣って仲間になるもんなんだね」

 

「まぁ元々ティアマト、コロッサス、リヴァイアサン、ユグドラシルの4人はルリアの中に基本いるとはいえ、仲間みたいなもんだしね」

 

「彼女が召喚するんじゃなくて、自分の意思で戦っているのも今じゃあ結構いるね」

 

「まぁお陰で助かってるんだけど……」

 

 星晶獣は、人間よりもその属性の力が強めである。その分に特化しているため、弱点属性による攻撃もより通じやすくなっている。とは言っても、星晶獣なのでタフさはとんでもないものがあるのだが。

 

「羽の付いた星晶獣でもいれば参考になるんだけどな……」

 

「いるよ、羽の着いた星晶獣」

 

「え、ほんとに?」

 

「ついでにヴァイト同じようなタイプ(属性)だから、話も合うんじゃないかな」

 

「今度紹介してよ」

 

「1人この番組ガン見してるし、いいよ」

 

 そう言うグランの頭の中には、自分の事を悪魔だと思い込んでいる堕天司の星晶獣の姿があった。恐らく、散々口で罵倒しながら否定した後に了承するだろう。性格はひねくれているが、それなりの良心はあるのだ、アザゼルは。

 

「へぇ、そうなんだ」

 

「うんうん、とんでもなく白い肌に紫がかった黒い服、あと角生えてるから分かりやすいと思うよ」

 

「角……? わ、わかったよ」

 

 少しヴァイトは困惑していたが、グランは別に情報を誤魔化している訳ではなく、真実を話しているので後は探せるように祈っておくだけである。

 そして、この話のオチも着いたところでグランは3通目へと手を伸ばす。

 

「3通目『短剣を使っていますが、他にも使える武器はありますか?』」

 

「使ってみたい感じはあるけどね……あの武器が個人的には1番あってるよ」

 

「武器の色も金色で綺麗だしね……」

 

「武器の色に関しては、銀色だと吸血鬼の体にダメージが入るからなんだけどね……まぁ純銀だから通るダメージであって、鉄なら大丈夫なんだけどさ……」

 

「用心はしたいもんね」

 

「うん……」

 

 ヴァイトは、先程も言っていたがヴァンパイアである。そして、その体は銀が弱点であり、銀によって普通の攻撃の時よりも高いダメージを与えられる。

 刃物を扱っていると、場合によっては自分の体を傷つけてしまう可能性があるため、ヴァイトはそんな心配を避けるために銀では無い武器を使っている。

 

「因みに個人的に使ってみたい武器とかある?」

 

「軽くて持ち運びやすくて銀じゃない武器なら何でもいいよ」

 

「前半2つで結構絞られるんだよなぁ……銃とか?」

 

「銃か……僕が知ってる銃を使う人間は、結構大型のを使ってないかい?」

 

 ラカムやオイゲンのことを言っているのだろう。ラカムは比較的小さい方なのだが、それでもヴァイトには大型に感じるらしい。確かに、懐に忍ばせておくには少々大きいかもしれない。

 

「うーん……そうなると……」

 

「やっぱり、僕に合ってるのはこの短剣ってことになるかな」

 

「うーん、ヴァイトにピッタリすぎたか」

 

「戦闘スタイル的にも、1番あってるしね」

 

 連撃に次ぐ連撃、軽い武器だからこそなせる連撃の嵐。その連撃のスタイルこそがヴァイトの戦闘スタイルであり、彼にとっても1番扱いやすいかつ、1番慣れている戦闘スタイルだと言える。

 

「ま、使ってみたい武器はあるけどあくまで『みたい』だからね」

 

「使う気はそんなにないってこと?」

 

「そういう事」

 

「なるほど」

 

 あくまでも希望なだけであり、別にそこまで率先して興味がある武器がある訳では無いようだ。グランはその言葉に納得してから軽く時間を確認する。どうやら、終わりの時間だということをヴァイトも今の行動で認識したようである。

 

「というわけで本日はここまでです。ご視聴ありがとうございます、また次回この番組でお会いしましょう。さようなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで団長サン」

 

「ん? どした?」

 

 番組が終わってから、ヴァイトはグランに話しかける。ヴァイトは先程グランが言っていた、アザゼルのことについて聞こうとしていた。最も、名前は教えられていない訳だが。

 

「さっき言ってた人なんだけど……」

 

「アザゼルか、なんならちょっと会っていく? めっちゃ面白いやつだから」

 

「え、あ、うん」

 

 グランに促されるまま、ヴァイトは部屋から出ていってグランと共にアザゼルの部屋へと向かう。あっという間の出来事だったせいで、ヴァイトは心構えとか全く出来てないままこちらに来てしまっていた。

 

「アザゼルー、入るよー」

 

「貴様! また来たのか!!」

 

「今日何食ってんの」

 

「貴様に教える義理はない!!」

 

「美味しそうだね、その骨付きチキン」

 

「くく、貴様にはやらんからな」

 

「いや別に人の食ってるもん横取りするほど、俺性格悪くないからね。じゃあまた」

 

「おい待て! お前なんの用事でここに━━━」

 

 扉を開けたかと思えば、コントのようなやり取りを軽くしてからグランは扉を閉めていた。ヴァイトは、その勢いに飲まれて呆然としていた。

 

「どう? あいつめっちゃ面白かったでしょ?」

 

「え……あ、うん……」

 

「因みにあいつ飯を出しても、まずいまずい言いながら食べるんだよ。けど本気で美味い時って1回黙るようなタイプだよ」

 

「……よく食べる人なんだ?」

 

「え、どうなんだろ? よく食うって言うか、美味い飯が好きな面白いやつってイメージだけど」

 

「おい!」

 

 突然開かれる扉、そこにはちゃんとチキンを食べ終えたアザゼルの姿がいた。食べ終わってから、グランを探そうとして扉を開けたのだろう。

 

「え、どしたの」

 

「何の用だ」

 

「いや、ヴァイトに合わせようと思って」

 

「そのガキか、何故だ」

 

「いや、なんか共通点多そうな気がして」

 

「俺よりももっと適任の奴がいるだろ、探してきてやる」

 

「あ、ならお願い」

 

「代わりにあと二つチキンをよこせ」

 

「ローアインに頼んどくよ」

 

 そのやり取りをしてから、アザゼルは部屋から出て歩き始めていく。再びそのやり取りにヴァイトは呆然としていた。

 

「……チキン、好きなのかい?」

 

「さっきも言ったけど美味い飯ならなんでも食うぞ」

 

 ヴァイトはふと思っていた。相変わらずグランサイファーには、面白い人間がいっぱいいるんだな……と。しかし、関わるには相当濃いメンツだということもふと考えていたのであった。




オリヴィエ(SR)いたけど多分アザゼルさんの方が面白い
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