ぐらさい日記   作:長之助

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剣の賢者、学ぼうかの?

「今日のゲストはアレーティアさんです」

 

「ほっほっ、よろしく頼むぞい」

 

剣聖アレーティア、その剣の腕前は名の通りの剣聖である。つまりは、空の世界において最強クラスと言っても過言ではない。そんな彼はルシウスとティナの父親であり、過去にはぐれて以降グランサイファーで再び出会うまで一度も会っていないのだ。

 

「あれは二刀流だったよね、結構面白い形の剣……まぁ形が面白いのは柄の方だけど」

 

「持ちやすくて便利での、何なら使ってみないかの?」

 

笑みを浮かべながら、アレーティアは冗談を口にする。随分とご機嫌なアレーティアに、少しだけグランは疑問を抱いていた。別にご機嫌なのは構わないのだが、何かあったのだろうかと。

 

「…アレーティア、始める前になんかあった?」

 

「いや、先程ティナからクッキーを貰っての。それがまた美味くて…」

 

「この親バカめ」

 

「褒め言葉じゃの」

 

グランも別に悪口のつもりで言った訳では無いのだが、ご機嫌すぎるアレーティアに苦笑を浮かべるしかなかった。ちなみに今は、剣をちゃんと持ち歩いている。

 

「そう言えば、アレーティアはヨダルラーハと知り合いなの?」

 

「面識はあるぞい、この船で出会うよりも前にの」

 

「そうなんだ…十天衆のオクトーは?」

 

「あやつとも、まぁ面識がないという訳では無いの……人が変わり過ぎていて、少々気づかんかったが」

 

グランサイファーには剣の使い手がかなりいる。それも、異名を持つ剣の使い手ばかりである。随分と多いのはグランも理解しているので、誰が上なのかそうでないのかの区別は余りつけないようにしている。

付けたら、そこからグランサイファー剣術大会が開かれかねない。

 

「……ヨダルラーハもそう言えば二刀流だったね」

 

「優れた剣の使い手は、二刀流に落ち着くのかもしれんのう…ほっほっほ」

 

「ほんとご機嫌だな今日」

 

どれだけティナのクッキーが嬉しかったのかは知らないが、今日はもうずっと笑みを浮かべながら番組を進行するのかもしれない。別に問題は無いし、変な絡みをするような人物でもないので本当に構わないのだが。

 

「…さて、そんなアレーティアさんに対してもお便りは届いております」

 

「ほう」

 

「という訳で、早速一通目…『ティナからクッキーを定期的にもらっているというのは本当か』ルシウスー、そういう話は直接会って話なさーい」

 

「いやはや…ワシもじゃが…面と向かって話しづらくてのう…」

 

先程の勢いはどこへやら、ルシウスの話題が出た途端にアレーティアの顔が神妙な顔となっていた。テンションが下がったというよりは、気まずそうな顔である。

 

「ティナの話だったらしやすいだろうとは思うけど」

 

「いや…むしろ逆でな……」

 

「……というと?」

 

「……ルシウスは、お前さん以外の男が近づくと凄い警戒するんじゃ」

 

「……アレーティアも含まれてんの?」

 

「ワシに1番警戒しとっての……」

 

本人とアレーティアの確執は確かにあるが、グランは今回に関しては全く別の問題のような気がしていた。ルシウスはココ最近というか、妹関連の話題になると過敏になることが多い気がしているのだ。

 

「……まぁ、うん…警戒しちゃうもんは仕方ないとしか…」

 

「ティナはワシに甘えてくるんじゃがのう…」

 

「まぁティナはあんまりそこは気にしてないみたいだし……」

 

気にしていないという訳では無いのだが、ティナはルシウスと共に故郷を抜けた時は3歳だったのだ。鮮明な記憶が残っていないのか、はたまた真実を知って『仕方の無いこと』だと割り切っているのかは知らないが、アレーティアとの間には明確な確執は存在していなかった。

 

「ルシウスが気にしすぎ……とは思わないけどね、本人の気持ちなんて本人にしか分からないんだから…どうしようもない」

 

「その通りじゃが…」

 

「ま、たまにでいいから家族で話すのが1番かもね」

 

「……そうじゃな、家族で話すのが1番じゃな」

 

そう言って微笑むアレーティア。家族で時折話してはいるようだが、やはりルシウスとはあまり会話が進んでいないようである。ルシウスの方も意固地になっているのか、はたまたあちらも気まずいのかは分からないが。

 

「……さて、2通目に行こう『バレンタインのチョコどうだった?』……え、貰ったの?」

 

「ティナからは貰ったぞい」

 

「あぁなるほど、ティナかこれ……というか家族会話のネタをここで使うんじゃありません」

 

「まぁまぁ……」

 

ティナは基本的にチョコは渡している。特に、グランとルシウスとアレーティアには心を込めて渡している。しかし、アレーティアに渡すのをルシウスがそれを見逃すとはとても思えないグランは、少し疑問になっていた。

 

「よくルシウスが渡すのを許したというか…」

 

「近くにいたんじゃがの…ティナから説得されて渋々という感じじゃったな…」

 

「……」

 

ティナは一応ルシウスの妹なのだが、そのルシウスに対しても皆と同じように、母のような態度を取ることがある。はっきり言えば、世話を焼いているのだ。

 

「……思ったことあるんだけどさ」

 

「む?」

 

「ティナから説教されたことある?」

 

「前に…その、1度だけのう…」

 

「あら意外、自分で聞いておいてなんだけど説教されるようなことしたんだ?」

 

「いや、説教というか…ルシウスの言葉に特に反論しないでいたら……『もっと思ってることを言え』と、のう…」

 

「あぁ、なるほど」

 

説教というか、それは恐らく喧嘩両成敗に近いものだろう。ルシウスの言葉を聞いているだけではなく、きちんと話し合うということをしろ、というある意味で助言である。

 

「まぁ、会話って話を聞いてるだけじゃないしね」

 

「自分でもわかっておるんじゃが…どうしても、会話が弾まなくてのう……」

 

「JJにでも話弾ませるコツ聞いてきたら?」

 

人選をこの上なく間違えているのだが、アレーティアは何故か納得した表情を見せていた。JJと知り合えているというのが、グラン的にはびっくりなのだが。

 

「あの者の会話の仕方は独特での…いつか教えを請おうと思っておったんじゃ」

 

「え、嘘でしょ?確かにヒップホップは面白いとは思うけど、アレーティアがあの喋り方するの?」

 

とてもじゃないが、グランは想像出来なかった。というか、まずあの話し方が出来るほど、精神的に元気があるのかという話でもある。

 

「剣の道以外でも、習うのは悪くないからの」

 

「攻めて料理でも習ってなさい、ティナ辺りから」

 

「料理のう……」

 

アレーティアには伝えてないが、ルシウスも刃物を扱うのが得意ということで、それなりにティナの手伝いをしていることがある。最近では、厨房の包丁係なども率先してこなしている。切り口が綺麗だと、かなり評判にもなっている。

 

「……いいかもしれんのう、料理か…」

 

「家族水入らずで料理をするっていうのも案外いいかもしれないしね」

 

「そうじゃの……今度、誘ってみるとするか……」

 

「という訳で、3通目『団内の剣士でいちばん強いのって誰ですか?』……ってこれ最初に話した話題じゃん」

 

「あまり優劣は付けたくないのう」

 

笑みを浮かべながらいうアレーティアだが、実際それに関してはグランも同意だった。そもそも、剣士同士の戦いで順列を決めるとなるとそれぞれが本気で斬り合いを始めるだろう。そうなると、必然的に周りの土地が吹き飛びかねない。

 

「……いやいや、全員で斬り合い始めたらシャレになんないって…」

 

「剣士と言っても1口に色々いるからのう」

 

「手数で戦う系統なら兎も角、ジークフリートみたいな一撃が重たいのも含めたら、グランサイファーが壊れちゃうよ……いや、他の島に降りたとしても島の地形が変わりかねない」

 

「ワシらをなんだと思っとるのかのう」

 

「少なくとも鍛錬と称してジークフリートと互角の斬り合い始める人達を見て、俺は普通の人間のレベルを超えてないなんて言えないけど」

 

「力には捌き方があるんじゃよ」

 

「おかしい…それは絶対におかしい…」

 

ジークフリートの戦い方は、切れ味のいい大剣をパワーで振り回してしかも高速で動くところにある。剣を後ろに持っていったと思った次の瞬間には切りふせられている、なんて事もざらにあるほどには素早く動くのだ。

 

「地面に振り下ろしたらクレーターが出来るパワーを、どうやって捌くんだよ」

 

「ほっほ、また今度やり方を教えてやるぞい」

 

「えー…できるかな俺にも……」

 

「きちんとマスターさえすれば、少なくとも立ち向かえるほどには強くなっておるじゃろうなぁ」

 

ジークフリートに立ち向かえる強さの時点で相当だが、はっきり言ってしまえばグランは既にそれなりに実力はあるのだ。それ以上強くなれば本当の意味でジークフリートと闘えるだろう。

 

「本当にそうならいいけどねぇ……」

 

「ほっほっほ」

 

「……という訳で、今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました、また次回この番組でお会いしましょう。さようなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ていうかマスターってどうすんの」

 

「ワシの技を、見て覚えて……じゃな」

 

「やはり実力行使か…」

 

剣を抜くアレーティア。そしてそれを見て同じように剣を抜くグラン。グランも二刀流で合わせるために、即座にジョブチェンジを行う。今回はクリュサオルだ。

 

「ほっほっほ、やはり二刀流に納まっておるの」

 

「……確かに、意識してなかったけど俺も二刀流になってたのか…」

 

手数を増やすなら、二刀流は確かに手っ取り早い。グランも何だかんだそれに倣っていたのだ。しかし、そうなるとジークフリートは手数を増やす気は無いようである。

 

「……いや、思ったけどジークフリートは手数増やさなくてもいいんだよな」

 

「あの小僧は、手数を自前の速度て補っておるからな」

 

「大剣1本を二刀流の手数にするのって多分物理法則に反してると思う」

 

「剣士ならば物理法則くらい反則してみせい」

 

「無茶苦茶なことを言いよる」

 

しかしそれくらい成せれば、確かに少なくともジークフリートと並べるくらいにはなるだろう。ただ、グランはふと思ったのだ。ジークフリートを小僧扱いできるヨダルラーハやアレーティアは、彼よりもやはり強いのだと。

 

「けど確かに、それくらいやらないと剣士を完全にマスターしたとは言えないな!」

 

「その意気じゃ!」

 

「よーし、やってやんよ!!」

 

「来い!!」

 

「うおおおおおおおおおおお!」

 

そこから長い間(5分くらい)剣での訓練が始まった。全力で全力を重ねて、スタミナのことを一切考えず、ただひたすらに相手を切り伏せることだけを考えて、グランは一心不乱に剣を振り続けた。

しかし、アレーティアはそれらをいとも容易く回避しては反撃し、連撃を加え続けた。髭がたんまり溜まっているのにも関わらず、老化による衰えを感じさせないいい攻撃を繰り出し続けていた。

グランは負けてしまったが、アレーティアのようになりたいなぁと思いながら、差し入れに来たティナのスカートが2人の剣戟の風圧によってめくれたために、一瞬でリーシャの手によって落とされたのであった。




ジークフリートは大剣で二刀流してそう

偶には長編とか書いて欲しい

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