ぐらさい日記   作:長之助

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再興を求めし義侠騎士、カチコミしますか?

「今日のゲストはユイシスさんです」

 

「よろしくお願いするわ」

 

 ユイシス、とある街をシメていた騎士団『ディートリア組』のカシラの一人娘である。しかし、同じ組のとある人物が裏切りを行い組は離散。今現在はその人物を探すためにグランの所について働いている女性である。

 グランの事をカシラとして慕っており、何でもする覚悟を決めている。

 

「ユイシス、確か去年ユカタヴィラ着てたよね。あれ結構可愛かったけど今年も着るの?」

 

「えぇ、着ようと思ってるわ。着て欲しいなら、命令さえあれば今でも着替えるわよ?」

 

「それはまた今度にしようか……というわけでちょっと後で俺の部屋にユカタヴィラ……あ、いやごめんなんでもない」

 

 いつも通りの発言を行おうと思ったグランだったが、リーシャから放たれる殺気を感知してすぐに言葉を変える。そのまま殺気は納まったが、グランは後で起こるであろう事を予想したが、どうしようもないだろう。

 

「今年はまたユカタヴィラ仲間増えたみたいだし、お祭りに参加してきても良さそうだな」

 

「そうなの?」

 

「ゼタ、ベアトリクス、カシウスが最近着てたな」

 

「へぇ、あの3人が……確かに一緒に出かけたいわね、ユカタヴィラ仲間で」

 

「ちなみに俺も着たぞ」

 

「じゃあ、後でカシラとも一緒に出かけたいわ」

 

「いいよいいよ、どんどん来いそういうのは」

 

 サラッとデートの約束を取り付けるユイシス。今度は彼女に殺気が向けられたが、常に弾丸が飛び交い剣がぶつかり合うような環境にいたユイシスは、その程度の殺気では驚かなくなっていた。

 

「にしてもユイシスの武器って面白いよね」

 

「そうかしら?」

 

「可変武器って、もうそれだけで男心をくすぐる武器だし……」

 

「そうかしら……」

 

 男心をくすぐるというのがユイシスにはいまいち分からなかったが、グランが好きだというのならこれからもグランの目の前では積極的に変形させていこうと思うユイシスなのであった。

 

「……さて、軽く談笑して場が温まってきた所でお便りのコーナー」

 

 いつも通り箱から3つのお便りを取りだし、そしてそれを一旦自分の目の前に置くグラン。そして、その中から1通目を適当に選んで読み上げていく。

 

「1通目『カチコミって何ですか?』」

 

「カチコミって言うのは……ってこれ、カタギに教えていいのかしら……?」

 

「いいんじゃない? 子供が真似して使ってたら注意する程度でさ」

 

「そうね……カチコミって言うのは、要するに相手の組に喧嘩を売りに行くことよ。逆に、自分達がされる立場になったら『カチコミされた』で構わないわ」

 

「例えばどんな使い分け?」

 

「そうね……カチコミしに行く場合は『カチコミだァ!』みたいな言い方で、された場合は『カシラ! カチコミです!!』みたいな使い分けなのかしら……? 案外教えるのって難しいわ……」

 

「カチコミって、どうして行うのかの理由も言っといたら?」

 

「そうね……カチコミっていうのは……まぁ基本的に組同士が争って、勝った方が負けた方の領地を奪い取れるって感じかしら」

 

 要するに、規模が小さくなった国同士の戦争である。負けたところは勝ったところに吸収される……大きいか小さいかは関係なく、組織という枠組みにいる以上その組織のトップが領地を広げたい時は相手の領地を奪うしかないのだ。

 

「にしてもビィがユイシスの事を『物騒な姉ちゃん』って言うけど……まぁ、言いたい気持ちは分からなくもない」

 

「そうかしら……私からしてみれば、騎空士っていうのがここまで平和なものだと思ってなかったわ。もちろん、この団が特別だって言うのもあるかもしれないけど……」

 

「まぁ、普通なら国からの依頼でも動くしね……俺達も動くことは動くけど、国とり戦争の依頼はなるべく動く気はないかな」

 

「その言い方だと、動く時があるっていう風に聞こえるけど……?」

 

「動くとしたら、それはすごく悪い相手国が攻め込んできた時とかそんな感じだよ……要するに、防衛戦」

 

「なるほど……攻める戦いはしないのね」

 

「皆をそんな戦いに連れて行きたくないだけだよ、それに攻める側に立てって言われるってことは……多分俺らの数と、ルリアの力を過信してるような人だと思うし」

 

 少し真面目な顔をしながら語るグラン。その目をユイシスはじっと見惚れていた。その視線に、語っているグランは気づかない。

 

「まぁ……結局シェロカルテからの斡旋だったりしたら、受けなきゃ彼女の評判にかかるから受けるんだけど……あと直接的な依頼とか?」

 

「……なるほど……」

 

「……っと、俺があんまり長々話しててもしょうがないな。2通目に行こう……『オトシマエってなんですか?』」

 

「オトシマエっていうのは……まぁ、簡単に言えば自分でやった事の責任は、自分で取るって事ね」

 

「まぁ割と俺達もそんなもんだしね……」

 

 ユイシスはオトシマエを付けるためには、自分の腹を切る覚悟を持ち合わせている。1度グラン達に止められてからはそんな事はなくなったものの、それくらいオトシマエを付けようとする世界にいたということになる。

 

「まぁ私たちの場合だと、命をかけるのが当たり前なんだけれど」

 

「まぁ明確な違いがあるとすれば、その辺だよねやっぱり」

 

「私達の世界は、指とか命を掛けていけるのが当たり前……それだけ責任が重いことが続く世界だから……」

 

「まぁこの団にいる間は、絶対そんなことさせる気ないけどね……」

 

「カシラ……」

 

 頬を赤らめているユイシス。よりグランに着いていこうという気持ちが、また強くなっていた。グランからしてみれば仲間が死ぬのが嫌なだけなのだが。

 

「……にしても、指っていうのは?」

 

「え? 切り落」

 

「あ、ごめん話振っておいてなんだけど、これ子供も見てるからそういうマジで想像しやすい事は多分言わない方がいいわ」

 

「そ、そうね……」

 

 命をかける、という言葉で恐怖を覚えるものは少ないだろう。何せ、かなり曖昧な言葉なのだから。しかし、指を切り落とすとか腹を切るというのは想像に難くない為に、子供達が容易に恐怖を覚えてしまいかねない。

 

「あとそれ言うとユイシスが今度から子供たちから怖がられかねない」

 

「……それは、ちょっと困るかも……」

 

 何だかんだ子供達と関わることが多いグランサイファー。そんな中で子供たちに嫌われる事は、何だかんだ結構辛いものがある。グランサイファーでは、子供達に嫌われたり避けられたりするようなことはなるべく避けなければならない。

 

「でしょ? だったら……省いていかないと」

 

「……カシラの言う通りに」

 

 グランも子供達に嫌われることは、相当に辛いということがそれなりに理解出来ている。何故ならば、子供たちに嫌われるということはそれの親だったりも同様の反応を返してくる可能性が高いからだ。

 アギエルバとか、アギエルバとか、アギエルバとか。

 

「娘が嫌がっている人に、親が合わせようと思うわけないもんなぁ……」

 

「カシラ?」

 

「あぁいや、ごめんなんでもない……3通目行こうか」

 

「はい!」

 

「『ユカタヴィラの時に出てるあの黒い紐はなんですか?』」

 

「……黒い紐?」

 

「あーちょっと待ってちょっと待って」

 

 ガサゴソとそのへんを漁るグラン。因みに説明すると、ユカタヴィラを着ている時のユイシスは、首から背中を通って胸にかかっている黒い紐のことである。確かにあることは確認出来ていたのだが、あとから確認すると消えていたのでどこに行ったのかと、グランも気になっていたのだ。

 

「はい、これこの間撮った写真」

 

「……あー、そこの紐……」

 

「あれついてたけど……どしたの?」

 

「付けてたのはいいんだけど……その、キツくて外しちゃって」

 

「なるほど」

 

 真面目な顔以上に真面目な顔になるグラン。何がきつかったのかは、敢えて聞かなかった。敢えて聞かないことにより、自分の中のなにかを高めようとしていた。しょうもないものということだけは確定しているのだが。

 

「外したやつどうしたの?」

 

「捨てちゃって……」

 

「そっかぁ……」

 

 因みに、見てた感じだと胸の横部分に巻きついているような形になっていると予想は出来ていたのだが、実際のところどうなっていたのかはユイシスしか知らないことである。他のユカタヴィラを着ていた女性でも、皆背中まできちんと布地があったのでユイシスとの違いが確認しづらかったのだ。実際のところどうなっているのかは、グランも全く知りようがない事となってしまった。

 

「他のエルーンの誰かがユカタヴィラ着てくれたらいいんだけどなぁ……」

 

 ユエルやソシエのがユカタヴィラに近い為、『それユカタヴィラなの?』と聞いておこうと思ったグランなのであった。

 

「カシラがつけて欲しいのだったら、付けますけど……」

 

「あ、マジで?」

 

「それが命令だったら……」

 

「つけて欲しい、何ならあの紐だけ付け」

 

 随分ご無沙汰だったのでグランは忘れていたのだが、実は未だに床が開くという機能は存在している。最近はあんまりそういうこともなかったのだが、セクハラ発言をすれば落ちるのだ。最近は落ちづらくなっていたせいか、全く意識していなかったが。

 

「カ、カシラ!?」

 

「大丈夫大丈夫!! がっちり捕まってるから!!」

 

 そういうグランは、床が抜けた後の穴に何とかしがみついていた。忘れてはいたが、反応ができなかった訳では無い。しかし、そんな中でグランに近づく影がユイシスの他にもうひとりいた。

 

「団長さん」

 

「その声はリーシャ! よかった助けてくれ!!」

 

「団長さん」

 

「あ、はい何でしょうか」

 

「下でアンチラさん待機してるんで……Fly away」

 

「わかりました……」

 

 謎のテンポを踏んで、手を離して落下するグラン。落ちる寸前の顔は、虚無と言っていいほどの感情の篭っていない顔となっていた。その光景をユイシスは呆然と眺めておくことしか出来なかった。

 

「え、ぁ……」

 

「ユイシスさん」

 

「は、はい」

 

「あまり過激な言葉を使わないで下さいね、子供達から怖く見えますよ」

 

「は、はい……」

 

 その言葉だけを伝えて、リーシャは立ち去る。グランは何とかアンチラに回収されていたらしく、無事なことは確認出来た。ふと、ユイシスはあのユカタヴィラに着いていた黒い紐のことを思い出していた。

 

「……あれだけ付ければ……カシラは喜んでくれる……?」

 

「あ、そういうのしたら淫行防止条例違反で反省文ですんで」

 

「ごめんなさい」

 

 いつの間にか音もなく戻ってきていたリーシャに、ユイシスはとんでもない恐怖を抱いたが、流石にバレたらまずいと言うのとグランに喜んでもらいたいという気持ちがせめぎ合って、顔を真っ赤にしてその部屋で1人悶々と過し始めていた。

 

「……あ、でもあの紐どこに行ったんだろ」

 

 ……とりあえずまずは、あの謎の黒い紐を探すところから始まりそうな予感だが、恐らく見つからないような気がしているのは……彼女自身がそう感じているのであった。




あの黒い紐実はCMでは無かったりするけどなんなんですかねほんと

偶には長編とか書いて欲しい

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