「今回のゲストはガンダゴウザさんです」
「がーはっはっは!! 古今無双流大開祖ガンダゴウザである! 拳に出来ない事は何もない!!」
「その挨拶もしかして考えてた?」
「はっはっは!!」
大声で笑うガンダゴウザ、煩いと感じるほどではないが声のボリュームはやはり大きいものである。それに加え、ドラフの男性とくればもう声も体も筋肉も全てが大きくて仕方がない。
「まぁ、別に考えててもいいけど……ごほん、えーガンダゴウザはさっきも言った通り大体拳で解決します。というか、拳というか筋肉で解決するタイプです」
「うむ!」
「ま、本人にそのつもりがあったのか聞くといつもはぐらかされるんだけどなぁ……」
「がーはっはっは!!!!」
「ほらこんな感じで」
少し呆れているグランだったが、ガンダゴウザはそれを意に介さない。それがガンダゴウザなのだが、グラン的にはいい加減真実とか内心とか色々教えて欲しいものである。
「そう言えば、ガンダゴウザには色々伝説があるわけで……」
「真実かどうかは言えぬがな!!」
「そりゃまたなんで」
「歴史、つまるところ伝記というのは所詮人が主観で書いたまたは話したものに過ぎん……ワシが言うのとは、どうしても齟齬が生まれてしまうからな!!」
「なるほどそこまで考えて……いるのかどうかは分からんけど……」
言ってることは、グランも理解できる。ものによっては1部分だけ切り取られている場合もあり、話されているまたは書かれているものが真実かどうかは結局のところ本人に聞くしかないのだ。
「けどガンダゴウザなら出来てそうで不思議はない」
「がーはっはっは!!」
「ほらまたそうやってすぐに誤魔化す」
ジト目で見るグランだが、やはりガンダゴウザには聞いていない。だが、ガンダゴウザの拳の伝説はどれも話だけ聞くと眉唾物なのだが、ガンダゴウザ本人を目の前にしているとどうにも出来てそうで違和感はないのだ。
「……ま、いいや……とりあえずお便りいってみよう。1通目『アルバコアが師匠ってどういう事ですか?』」
「ふむ……アルバコア、ではなく魚全体がワシの師匠だ」
「確か、昔泳げなかった時に……魚に抱きついて泳ぎ方を教えてもらったんだっけ?」
「うむ!! 故に、ワシは魚直伝古今無双流泳法術を使い魚と同等の泳ぎが出来るのだ!!」
「水中にいるアルバコアを1人で倒してたもんね」
「がーはっはっは!!!」
アルバコア、魚型の星晶獣である。星晶獣なのだが、群体であり1匹しか存在していない訳では無いのだ。故に、夏はよく海にいたりするのだが……魚と言えども星晶獣、しかもアルバコアの得意のフィールドである水中で、しかも拳だけで勝っているのだ。
「うーん、俺も武器は使っているけど……拳一つで……オマケに水中で魚の星晶獣に勝つってなかなかすごいな……」
「古今無双流に不可能は無いのである!!!!」
実は人間ではなくて、星晶獣だった……と言われても正直に言うグランは信じられる気がしていた。しかし、現実は小説よりも奇なり……ガンダゴウザは恐らくちゃんとした人間なのだろう。
「……もし、覇空戦争の時にガンダゴウザいたら……もっと早く戦争終わってた気がするよ」
「がーはっはっは!!!!」
実際本当にやってのけそうなのが怖いところである……カリオストロも、星の民を退けた実績はあるが……ガンダゴウザだと殲滅までいきそうなのが怖いところである。
「それくらい強いからねぇ……」
「しかしワシのこの拳は、戦争には使う気は毛頭ない!!」
「分かってるよ」
ガンダゴウザは人に縛られる生活をしているような男ではない。今はグランの師匠という事でグランサイファーに乗っているが、本来は自由に生きて拳を奮っているような男である。そんな男が、ここまで一緒に来てくれているだけでグランは感謝をしているのだ。
「俺はここまで着いてきてくれてるガンダゴウザに感謝してるよ、それに争いに勝つ為だけの拳を振るわないってのも分かってるよ」
「ならばよし!!!!」
「という訳で、2通目『アルバコアは美味しかったですか?』」
「誠に美味である!!」
「ガンダゴウザが〆たアルバコア、ユイシスが切って捌いてたけど滅茶苦茶美味かったもんなぁ……」
星晶獣なのに、まず食われることがあるアルバコア。グランも最近、ただの強い魚じゃないだろうなという気さえしていた。カツウォヌスの方が、まだ星晶獣な気さえしてくるのだから。
「……今度また食うか、アルバコア」
「では、その時もワシが捕まえてこよう!」
「シグに聞いて、群体来そうなら……その群体からアルバコア大量ゲットしちまうか」
「よかろう!!」
「因みにガンダゴウザは、他の夏に食う食べ物シリーズで好きな物ある?」
「好き嫌いはワシにはない! 全てが美味であり、ワシの血肉となるのだ!!」
「守畏禍も?」
「……」
その言葉に、ガンダゴウザは答えなかった。守畏禍というのは、少し前にグラン達が無人島に漂着した際に食べたものなのだが、それはまぁとても食べられる味ではなかった。
水分と胃袋を満たすためにとても必要なことだったが、しかしそれでも不味かったのだ。
「……食べ物で好き嫌いはせぬが、しかしワシは魚の方が好みである!」
「俺も同じくらいかな……」
基本的にグラン達は高級な魚などをよく食べていた。ンナギだったり、ンニだったり……夏限定という訳では無いが、エヴィもよく捕食していた。
「因みに俺はンナギの丼がここ最近で一番うまいと思った」
「うむ!! あれもまた大変美味である!!」
「あと食べてた訳じゃないが……」
「む?」
「サメって食えんのかな……」
その言葉に、ガンダゴウザはまるで『天啓を得た』と言わんばかりに驚いていた。サメ、人間を襲うはっきりいえば危険生物である。しかし、ほんの少し前に出会ったサメ達は空を飛んだり人間になったり火を噴いたり大きな鮫の形を取って群体で襲ってきたりと多種多様な存在になっていた。
「しかし、食用には向かんと聞いたが?」
「ずっと泳いでる上に、皮膚が硬いし筋肉も硬いからな……ただ、ヒレの方はふやかして食えるようになるかもしれないって聞いた覚えがある」
「ほう、それはまた興味が湧くのう……」
「……食うか」
「あいわかった!!」
「って訳で3通目『弟子はいますか?』……って、一応俺が弟子なんだけどね」
「グランには才能がある!!」
忘れられがちだが、グランは一応ガンダゴウザの弟子である。クリュサオルやらソルジャーやらやっているため、本当に忘れ去られてる可能性の高いことなのだが。
「拳でいいと言うとるのに、グランはすぐ他のものに手を出す悪い癖があるからな!! がーはっはっは!!」
「そう言って笑うのは怒ってんのか笑ってんのかわかんないから」
「怒る? なにを怒る必要がある! 悪い、とは言ったが本格的に悪いことでない限り、全てを試さねばなるまい!! ワシは拳一筋で戦える男! しかしグラン!! お主はワシと同等の拳を扱えるようになるばかりか、他の武器も群を抜くほどに扱いこなすだろう!!」
「褒めてくれるのは素直に嬉しいけどね」
少し照れながら、グランは返す。ガンダゴウザが言っていることは、なんだかんだ外れたことがない。グランがこれから鍛錬を怠らなければ、これからもっと成長して全てが最強の人物になるだろうと予測しているのだ。
「ワシはそれが楽しみでしょうがないぞ!!」
「……ま、ご期待に添えられるように頑張るとしますよ」
「がーはっはっは!!」
「その笑い声ホントでかい、ガンダゴウザって感じがして安心できるけどさ」
大声に晒されながら、グランはほっこりしていた。部屋が笑い声で振動しているのだが、それにグランは気づいていなかった。
「さて、今回はここまでに致します。ここまで見てくれてありがとうございました、また次回この番組でお会いしましょう……さようなら」
「がーはっはっはっはっは!!!!!!」
「あの、団長さん……」
「あれ、どしたのリーシャ」
番組終了後、部屋から出ようと思った矢先にリーシャが珍しくちゃんと扉から部屋に入っていた。そのあとから言いづらそうに言葉を濁していた。
「いや、あの……えっと……」
「どうした娘っ子……なにかあったのか?」
「……とてもいいづらい事なんですけど、ガンダゴウザさんの大声でルナールさんが気絶しました」
「あっ……」
声でかかったもんなぁ……とグランはつい他人事のように考えてしまっていた。よくよく考えていたら、ルナールのハートは絹のように柔らかい。そこにガンダゴウザの大声というミサイルが飛んできたら、たちまち吹っ飛んでしまうのは目に見えているのだ。
「しかも、なにやら作業していたようで……番組が始まっていたことに気づいていなかったようです」
「それで、不意打ちの……」
「む、むぅ……あの絵描きの娘っ子には悪い事をしたの……」
「とりあえずルナールのとこ行くか……」
「そ、そうだな……」
珍しく気落ちしているガンダゴウザ、グランはこの後ガンダゴウザを誘って漁にでも出かけようかと思うのであった。
そして、とりあえずリーシャにはルナールの様子の確認を再度お願いしておくのであった。
「……えぇ、まぁびっくりしたのは事実だけど……別に気にしてないわ」
「そうか……」
「だから、そう落ち込まないでガンダゴウザさん」
そしてルナールの様子を見に行ったら、ルナールはなんとか元気そうにしていた。ガンダゴウザは基本的に落ち込むような性格ではない。それは他人に本格的な迷惑をかけることがないからだ。
しかし、今回自分の声のせいでという責任を妙に気にしてしまっているようだ。
「貴方が落ち込んでいる姿は誰も見たくないわ、だからいつもの様に大声で笑ってちょうだい」
「……うむ、ならばワシはいつも通りにするまでよ!」
「そうそう……というか、今回私もちょっと耐久性無さすぎたし……もうちょっと強いハートを持つようにするわ」
「まぁもうちょっと船の防音設備のレベル上げておくよ」
「まぁ、それができるならそうして欲しいけど……」
「どうせ近々改修するつもりだったし……その時に防音レベル上げておくよ」
「……なら、お願いするわね」
グランが言ったことに、少しだけ安心するルナール。絵師である以上、静かな空間は彼女にとっても都合がいいのだ。故に、防音をつけてもらえるならそれに越したことはないというわけである。
「ま、とりあえず今からルナールに料理でも作って元気だしてもらうよ」
「……あんまり重たいものは食べられないけど……?」
「大丈夫大丈夫、スープだから」
「ならいいわね」
その後、ぼそっと『サメの』を付け足すグラン。当然聞こえていないので、ルナールは知る由もない。
その後、サメのヒレのスープを飲んだルナールはその意外な美味しさに感嘆の声を漏らしたとかなんとか。
ビリビリサマーで何故か一緒だったコンビ
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ