「ぬうううううううううん!!!!」
「はぁぁぁぁぁ!!」
拳が唸り、剣尖が光る。叩き込み、切り裂く。アルバコアが水中から叩きあげられて、それが一瞬で刺身になる。その光景をグランは浜辺でずっと観察していた。
「アルバコアのスシねぇ……」
バカンスも続いていく中、グランはお世話になったスシ屋『みや里』にネタを届けるためにアルバコアを調達している最中である。
無論、他のネタを見つけたらそれも即座に捌いていく。
「まぁ、アルバコアも食べれるし絶対美味ぇとは思うぜ?」
「俺もその点は心配してないんだけどな……」
そして、今回は隣にビィもいる。バカンス中なので、割と一緒にいたりもする。ルリアは今は浜辺で遊んでいるので、近くにはいない。そう簡単に命のリンクが途切れる訳でもないと思うので、大丈夫だとグランは考えて好きにさせている。
「じゃあ何が心配なんだよ」
「アルバコアの中でもデカい個体がいたら……みや里爆発しそうでな……それに、あの二人にもあまり無理させる訳にはいかねぇしな」
魚は鮮度が命である。2人……イシュミールやスフラマールが頑張って魚のネタを冷やしてくれているが、暑さに弱いあの二人をあまり酷使させてしまうのも、あまり気乗りはしないのだ。
「まぁそうだよな、じゃあこの辺にしとくか?」
「まぁな、多分この量なら足りるだろうし……あの頭の中がプレミアムフライデーなフライデーが邪魔する可能性も低いしな」
因みにフライデーは未だにみや里にスシを食いに行っているようだ。別にそれは構わないのだが、みや里の人達はよく受け入れてくれているものだと、グランは少し感心していた。
因みに知らない人の為に解説すると、フライデーとは『プレミアムフライデー』なるものを広める為に尽力している女性である。そのためならその人の大切なものを焼き払う性格から、『見た目と思想はいいのに、性格が全てを無駄にしてしまっている』女性という扱いになっている。残念美人というか、犯罪美人である。
「まぁ、邪魔するにせよ邪魔しないにせよリーシャがいるから安心なんじゃねぇか?」
「目を光らせてるからな、今」
単純な営業妨害、そして年始にヴァジラやほか多数の人の家を焼き払いかけた放火未遂の2つの件で、フライデーに関してはリーシャが目を光らせていた。
「……やっぱりちょっと性格最悪過ぎないか?」
「人の家焼いてるからなぁ」
「寧ろあそこで怒るだけで済ましてるヴァジラ聖人かよ」
「あの姉ちゃんの肩は持つつもりじゃねぇけどよォ、家族が無事だったからあんまり怒るのもなぁ……すまねぇ、やっぱり家燃やすのはおいらもダメだと思う」
手のひら返しと言っても過言ではないほどの速さで意見を覆すビィ。しかし、仕方ないだろう。あの性格でなければ、多分もしかしたらほんの少しの希望で擁護出来た可能性もあったかもしれない……だが、あの性格では無理である。
「見つけたらリーシャ呼ぶ?」
「間に合うかぁ?」
「多分間に合うでしょ、一応シロウから『メカ停止ハンマー』なるものを貰ってきたし」
「え、なんだそれ」
「これをぶつけたメカは止まる」
ハンマーのようなものを取り出して、グランは呟く。その顔はいつもの顔ではなく、何故か覚悟を決めた目だからである。
「それよぉ、意味あるのかぁ?」
「大丈夫、無理矢理めり込ませるから」
「因みに止めたあとどうすんだ?」
「……縛って放置かな…」
「うわぁ…」
やってることはかなりあくどいのだが、正直同情すら湧かない時点で運命は決まっていると言っても過言ではないだろう。言い方は悪いが、あのエビフライがなければ彼女は何も出来ないのだから。
「まぁプレミアムフライデーを宣伝する行為を、永遠にプレミアムフライデーするだけだから」
「オイラ、偶にお前がすごく怖く見えるぜ」
「でも正直あいつの事性格込みで擁護出来るやついたら教えて欲しい……」
「まぁ、うん……」
目を背けるビィ。ルリアでさえ、『フライデー捕まえたらどうしよっか』なんて聞いたら口篭るくらいである。最近、グランサイファーに乗船しようとしているらしい。仲間になるのは構わないが、エビフライを起動させたらどうしてくれようか。
「ま、その時はその時か」
「ポジティブなのかどうかわかんねぇなぁ……」
「実際、グランサイファーに乗りたかったらいつでも乗っていいしね」
「大丈夫かぁ?」
「まぁ、エビフライは最悪また大破させてやればいいし」
1度は破壊出来ているのだから、また別に破壊してやればいいとグランも考えていた。楽観視というよりは、万が一起動させた場合は許さないと言うだけである。
「カシラ!なんの話しているんですか?」
「がーはっはっは!ネタの準備は完了したぞ!!」
「マジか、ありがとう……んじゃあこのままみや里行くか」
ネタの準備が出来たので、そのまま全員でみや里に向かってネタを届けることに。結構な量があるので、恐らく今日しばらくは足りるだろうと
グランは考えているのであった。
「グランさん!ネタがなくなっちゃったっぱ!」
「まさか閉店と同時に無くなるとはな……」
大量に取っていたネタだったが、アルバコアのついでに取っていたネタでさえ完全に尽きていた。みや里の客の入数を完全に舐めていたと言っても過言ではない。
「まぁネタは新鮮だしな、翌日まで持ち越すよりはマシだろうけど…これ、明日完全に足りなくなりそうだなぁ」
「カシラ、どうします?」
「多めにネタを買ってきてもいいだろうけど……」
「しかし、それでは市場に出回っている分を無くしてしまいそうだな」
ガンダゴウザもユイシスも、何とかならないかと考えてくれていた。エヴィなどは問題ないかもしれないのだが、問題はンナギなどの高級魚のネタである。
ンナギは流通数は前よりは一時的に戻ってきているが、しかしそれでも少ないものは少ないのである。
「何とかして稼がないとなぁ……」
「どうするっぱ?」
「……よし、明日朝っぱらから俺たち3人は漁に行くか。他のグランサイファーのメンバーで手が空いている者がいたら、そっちはそっちで市場にネタの買い出しだ」
「はい!!」
「ならばワシも全力を出そう!!」
翌日。グラン、ガンダゴウザ、ユイシスの3人は浜辺に立っていた。魚を捌くユイシスと、ガンダゴウザとグランで魚を仕留めていく係である。
「なんでもいい、美味い魚なんかを片っ端から倒していこう」
「うむ!!」
そう言ってグランとガンダゴウザは海に入る。グランは短剣を握って、一撃で仕留められる様に。ガンダゴウザは変わらず拳で仕留めていく様に。
「行くぞぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!」
グランの掛け声と共に、ガンダゴウザは海に潜り、グランも続く。息が続く間は確実に魚を稼いでいかなければならない。それが分かっているから、グランはなるべく素早く泳ぎつつ魚介類の頭目掛けてその刃を振り下ろす。
因みに使っているのは、リヴィアンゲイズ・マグナ…リヴァイアサンマグナから取れる短剣である。何となく水の中でも使えそうな気がしたので、グランはこれを使っていた。
「……?」
海に潜って何度か魚介類をしとめている間に、グランは視界の端で何か妙なものが映ったことに気づいた。海の中にいるのだから魚介類なのは当たり前なのだが、妙にその魚介類の色合いがおかしかったような…そんな気がしたのだ。
「……ごばっ!?」
そして、その妙なものの姿をグランは確実に視界に捉える。瞬間、あまりのことでグランは肺の中の空気を思いっきり出してしまう。何故ならそこにいたのはエリート・ビジョンofファンタスティック・ライフ……フライデーの乗る謎の機械、エビフライだったのだから。
いきなりのことで驚いたグランだったが、とりあえず空気を一旦取り入れるために水面から顔を出す。
「ぶはっ!!」
「カシラ!どうしましたか!?」
「フライデーに笑わされた!!あいつぜってぇ許さん!!」
「カ、カシラ!?」
グランは再び水中へと身を潜めていく。サラッと武器を変えて、今度はシロウ制作のハンマーも一緒に手に取っている。しかし次に入る時は、何故か目の前にフライデーがいた。
「……」
「……」
対峙する2人。とりあえず、グランはハンマーを投げてエビフライの動きをちゃっかり停止させた上で、対話に臨もうとしていた。
『エビフライ止まっちゃったんですけど!?』
『うるせぇ黙って連行されろ』
それぞれのジェスチャーが何故か通じる中で、グランは真顔でフライデーを睨みつけていた。フライデーは、今のグランに捕まったらまずいと悟ったのか、首を横に振りながら逃げる体勢に入っていた。
『きょ、今日の所は一旦引かせてもらうわ!』
『逃がすか』
泳いで逃げようとするフライデー、そんなフライデーよりも早く動いて、グランはフライデーの前に出てくる。フライデーは驚いてしまい、そのまま捕まってしまう。
『ちょ、ちょっと?』
フライデーはそれでもジェスチャーで、なんとか意思疎通を図ろうとするが、フライデーを捕まえているため両腕が塞がっているグランは既にジェスチャーを行う事が出来なかった。
「ぶはっ!!ガンダゴウザ!!犯人一丁!!」
「ぬぅん!!」
「きゃあ!?」
呼んだ瞬間に、巨大な水柱を起こしながら現れるガンダゴウザ。そのままフライデーを担ぎあげたかと思うと、浜辺に向かって投擲していた。
「きゃあああああああああああ!?」
「破煌刃・天終!!」
そして、そのままの流れでユイシスはフライデーに峰打ちを行う。気絶したフライデーは、そのまま突如として現れたリーシャの手によって、どこかに連れ去られるのであった。
因みに、この後グラン達はキチンとみや里にスシのネタを大量に届ける事が出来たのであった。
「━━━はっ!?」
「ようやく目が覚めましたか」
フライデーが目を覚ました時、周りはどこかの船の中だということだけは確認出来ていた。そして、グランの仲間がいる以上そこはグランサイファーの中だとフライデーは推理していた。
「私を閉じ込めてどうする気かしら?」
「このまま連行するんですよ、貴方には罪が多すぎる」
「あら、私に罪?ふふ、プレミアムフライデーを進めるのが罪だと言うのなら、幾らでもその罪は犯してあげるわ。だってそれが人のためだもの」
「なるほど…」
グランサイファーは、多種多様な人が乗っている所である。そして、底抜けの善人ばかりが集まっているところでもある。何とか何人かを1時的に味方に引入れることが出来たら、この場から逃げ出してプレミアムフライデーを進めることが出来るとフライデーは踏んでいた。
「……あぁ、そうそう1つ言い忘れました」
「…?何かしら?」
リーシャが演技するかのように、何かを言い始める。フライデーは首を傾げるが、リーシャはそのままフライデーを見下ろしながら、淡々と告げる。
「ここはグランサイファーの中じゃなくて、秩序の騎空団の騎空艇の中です」
そう、フライデーは秩序の騎空団に連れていかれているのではなく、今秩序の騎空団に連行されている所なのだ。
「つまり、貴方が誰かを説得して仲間にしようとしても…貴方の危険性を知り尽くしている私の仲間達は仲間になることはありません」
「……え?」
つい間抜けな声を出してしまうフライデー。しかし、残念ながら事実である。その事実にしばらく頭が追いつかなくなりながらも、フライデーはそのまま秩序の騎空団預かりになったのであった。
顔と体と水着と格好全てがいいにも関わらず、性格で全てを台無しにしてる女、フライデーさん出しました
仲間になったらまたいつか書きます、無料で当たんないかな……
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ