「本日のゲストはミリンさんです」
「ござるー!」
着物を着た少女、侍を目指す少女ミリンが今回のゲストである。侍らしく着物を身にまとっているが、その剣筋は確かに侍の本質を感じ取れるようなものであった。
「ミリンはあんまり俺と年が変わらないわけだけど」
「というと?」
「いやぁ、同年齢ってあんまりいないからさ……正直感動してたりする」
「いやはや、拙者こそありがたいと思ってますよ!」
褒めるグラン、謙遜するミリン。しかしグランはミリンが謙遜する時に動いていたとある1部を見逃していなかった。ミリンは結構アグレッシブに動く。その為か、結構揺れるのだ。何処とは言わないが。
「にしても、ミリンとサビルバラが同郷だなんて俺初めて知ったよ」
「あれ、言ってませんでした?」
「まぁ、言う機会ないし本人達が気づく機会も中々ないからね」
「ローアイン殿達が言っていた『グラサイ七不思議』ですね!」
「まぁ、うん確かに不思議だよな。いや、むしろ同郷が集まりまくってるグランサイファーが凄いところなのでは?」
言ってはならない疑問だが、然して気になってしまうものは仕方ないといえばそうなのである。とは言っても、その同郷のサビルバラはミリンよりも実力が数段上なので、ミリンは尊敬の眼差しを送るばかりで話しかけられない状態が続いているが。
「さて、それはともかくとしてお便りを読み上げていきます」
「はい!!」
「早速一通目『ござるってあんまり言わないですよね』」
「っ……!」
驚愕の表情に染るミリン。そこまで驚くことなのだろうかと思うが、彼女は実際時折『ござる』というだけで実はそこまでござる口調では無いのだ。意識してないと出てこないとまでグランは思っていた。
「そんな……拙者、そこまで言えてなかったんで……言えてなかったでござるか!?」
「今言い直した? いや、まぁいいけどさ……実際そこまで言ってないよね」
「くっ……こんな所でバレてしまうなんて……では、今度から徹底してござるを付けないと━━━」
「はいストップ、サビルバラがそんなにござるござる言ってないんだから気にしちゃだめだっての」
「……確かに」
ミリンの尊敬するサビルバラも、そこまでござるござる言っていない。寧ろ、ござるよりも『ぜよ』の口調の方が目立っている。はっきり言えばサビルバラの喋り方の方が『ござる』よりも特徴的に感じられる。
「しかし、今更ござるを辞めるのも……」
「なんか思い出したように使ってるせいで、意識的にしてるような気がしてならないんだけど」
「い、一応無意識です!!」
「まぁ偶に本当に思い出して使ってる時あるよね」
「うっ……」
「まぁある程度根付いてんだったら、そのうち本当の意味でござるを使いこなせると思うよ」
「グラン殿は一体ござる口調に何かあったのですか……?」
一体何様のつもりなのか、グランは頷きまくっていたが……ミリンは首を傾げるだけだった。しかし、グランはそれを無視して2通目に取り掛かる。
「サラシを巻いていて苦しくないんですか?」
「巻き方にもよるでござるよ」
「ござる口調」
「い、今は関係ないですよね!?」
「まぁそれはそれとして……サラシ巻いてるのは知ってたけど……なんか結構きつめに巻いてるってルリアから聞いたよ」
「あ、一緒にお風呂入った時でしょうか」
「その話詳」
その先の言葉を紡ごうとしたグランに、ねっとりとした殺意が絡みつく。それ以上の言葉を吐けば
「グラン殿?」
「いやなんでもない……そう言えば、その話を聞いた時のルリアの顔が虚無ってたけどなんか知ってる?」
「虚無って……? よくわからないですが、特に何も無かったと思いますが……」
こんな聞き方をしているが、グランは原因がわかっていた。あくまでも予想だが、それなりにきつく巻いたサラシのせいでルリアはミリンの事を『同類』だと認識してしまっていたのだ。
しかし、それがお風呂に入ったことにより真実が発覚してしまったため、ルリアが虚無を起こしているのだと理解してしまったのだ。
「多分ルリアの前で今後脱がない方がいいと思う」
「どうして……」
「それが持つものと持たざる者の違」
再び訪れる殺気、今度はまるで蛇に丸飲みにされる蛙が如き恐怖をグランは味わっていた。今度は
「……?」
「なんでもない、気にすんな」
「と、兎も角……ルリア殿の前では脱がない方がいいのは理解出来たでござる」
「そうそう、それでいいんだ」
因みに、ククルも1度胸の話題をルリアに振って死にかけた事がある。無論、肉体的には全くの無傷なのだが直感的にそう感じてしまったそうな。
「で、話は戻るけど……苦しくないわけ?」
「巻き方にもよるので……」
「巻き方って言っても……結構キツめに巻いてるようにしか見えないんだよ」
ミリンのサラシの内側には凄いものが隠れている。本来、サラシとは女性がつける場合胸が動かないようにするための……つまりは下着の役割を果たしている。
しかし、あまりにもサイズが合わない場合またはあまりにも大きい場合、固定していても動いてしまう時がある。ミリンがその例である。
そして、ミリンはサラシを巻いているにも関わらずその大きさが見えているし、動くと動くのだ。つまり、そこから導き出される結論はたったひとつ。『すごくでかい』
「そ、そうでござるか?」
「巻くのに時間かかるでしょ、サラシ」
「うぅ……確かにその通りでござる……もっと早めに巻けたらいいんですけど……」
「いやぁ、今でも結構早い方だとは思うけどね」
グランの見立てでは、ミリンの大きさは団の中でも有数の大きさを誇っていると考えている。つまり、上から数えた方が早いと言うやつである。
「ほ、本当でござるか?」
「うんうん、それにでかい」
「……? 拙者、残念ながらまだまだチビ助ですよ?」
「おっと、これ以上語ると今度は俺が死んでしまう」
「ご、ござる!?」
グランの突然の言葉に驚くミリンだったが、グランは追求をするなのポーズをする。ミリンもそれに従い、とりあえずこの件は保留にすることになったのであった。
「さて3通目『刀落としまくってますけど』」
「うぐぐっ!!」
「戦闘中の事だね」
時折、ミリンは刀を落とす時がある。その刀は大切なものなのだが、時折グランは『そんな扱いで大丈夫か?』と思う時がある。
「せ、拙者まだまだ未熟者故……」
「せめて今度から落とさないようにするべきだね……なんなら手に紐でも括りつけて刀と一心同体で生きてく?」
「お風呂に入ったら刀が錆びてしまうでござる……」
冗談で言ったのだが、彼女からしてみればあまり冗談で済むことではなかったらしい。刀を雑に扱うのは一応、彼女の本心ではないため、こんな感じのいじりはグランは辞めて別のいじり口を探し始めていく。
「でも、いざと言う時拾えなくて悲惨な目に遭うかもしれないしな」
「というと?」
「ベアトリクスが1回ノース・ヴァストの池の中にエムブラスクを落として、水着着て拾いに行くはめになった」
「ヒエッ……」
ノース・ヴァストの池なんて死地以外の何物でもないのに、それにうっかりエムブラスクを落としてしまったことで、無駄に寒いと冷たいを味わう羽目になったベアトリクス。
その光景をふと思い出してしまって、ミリンは身震いしていた。基本的に、寒い思いはあまりしたくないものである。
「せ、拙者……これから刀を落とさぬように精進します……」
「うんうんその意気その意気」
別に他意はなかったのだが、ちゃっかり上手いこといったのでグランもそれに乗っかることにした。だが、落とした時に悲惨なことになりかねないと言うのは案外事実でもある。
なるべく、自分の武器は落とさないようにするのがベストなのであった。
「さて……刀談義もここまでにしておこう」
「もう時間でござるか?」
「そういう事。というわけで、皆さんご視聴ありがとうございました。また次回この番組でお会いしましょう……さようなら」
「拙者の故郷の話が聞きたい方は、いつでも話すでござるよー!」
その言葉を言い終えてから、グランはカメラの電源を落とす。その目線は、サラシをつけているにも関わらず揺れている胸に釘付けではあった。しかし、ちゃんとカメラのスイッチを押せているあたり、そういったこと関係だと見なくても行動できるようになるまでになるようである。
「ルリアとリーシャがそれぞれ別の意見を言ってて辛い」
「んん? そりゃあどういうことだ?」
「ルリアは『サラシは誤魔化すための物に過ぎない』といい、リーシャは『風紀が守られる物』だという」
自分の部屋で、ビィとグランは話していた。サラシについての話である。
ルリアは誤魔化されるくらいなら、初めから胸を強調して欲しいと言う。リーシャは揺れる胸が抑えられるということで、男たちが見る視線も落ち着いてくると考えていた。
「別によう、そこまでして2人の意見を聞かなくてもいいだろ? 折衷案でも立てりゃあいいじゃねぇか」
「折衷案立てようとすると、ルリアがヒュゴウの体制になる。余程ミリンの事がショックだったようだ」
「えぇ……」
頭を抱えるグラン。リーシャは折衷案を立てることに納得はしてくれたが、ルリアは胸を誤魔化されるくらいなら初めからでかいのを見せて欲しいという欲求が大きすぎるようだった。
まぁ、ミリンの場合かなり小さいように見えるくらいには巻き付けられていたのが原因なのだが。
「……仕方ない、何とかしてルリアを説得するしかない」
「リーシャに事情説明したらどうだぁ?」
「それも考えたが、秩序の名の元に粛清されると考えたらなぁ……」
「お前、変なところで妙なこだわりあるよなぁ」
どうするか色々思案してる中、ふと部屋の扉が叩かれる。入ってきたのはミリンだった。
「少しいいですか」
「どしたの?」
「ルリアさんとさっき話してきたでござる、そしたら何とかサラシのことを理解して貰えたんです!」
「マジで!?」
「これは着物専用の下着だと言ったら納得しました」
「ルリアがそれで納得しただと……?」
「お前ナチュラルに酷い時あるよなぁ」
「実は━━━」
簡単に説明すると、着物はミリンのアイデンティティである。そのアイデンティティの着物の下着となっているのなら、ルリア自身仕方ないと理解したという話である。
「因みに、ルリア殿的に拙者から着物を取るということは、自分からあの白い服を取り除く様なものだと理解したようです」
「なるほど」
確かにアイデンティティは大事だ、グランはそう頷きながらちらりとミリンの胸に視点を向ける。
「……因みに、サラシ取ったまま着物って着れるの?」
「……その、擦れて━━━」
その言葉が言い終わる前に、グランは吹き飛ばされていた。主にリーシャに。そして、『セクハラ禁止』と書かれた大きな紙を全身に貼り付けられてそのままリーシャはすぐに退場したのだった。この間、1分未満。
「おーい、大丈夫かぁ?」
「幸せの代償だから大丈夫」
何とか紙を外すのに時間がかかったが、とりあえずサラシの話題は敏感な話題だと認識して、今後なるべく話さないように気をつけるのであった。
ほんとでっかい