ぐらさい日記   作:長之助

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侍寒々

「それでは第1回『ンナギを裁け! チキチキ? カヴァ焼き丼を作って判決を言い渡せ!』対決ー」

 

「団長殿、どうしたんじゃ」

 

「最近の暑さで頭がおかしくなっちゃいましたか……?」

 

「暑さと空腹で頭おかしくなりそう……という訳でこれから2人にはカヴァ焼きの丼を作ってもらいます」

 

 急遽始まった対決、その場にはサビルバラとミリン。そして、何故かチームローアインの3人組の合計5人がこの場にいた。グランはもちろん除いている。

 

「……何故ですか?」

 

「確かに……純粋な疑問ぜよ。それに、その3人はなんで縛られとるんじゃ」

 

「それには深そうでそんなに深くないわけがある」

 

「キャタリナさんのためにカヴァ焼きを焼いてたら」

 

「ダンチョにいきなり襲われて」

 

「縛られてここにいるっつーわけよ」

 

 ローアイン、エルセム、トモイがそれぞれ理由を語る。要するに、カヴァ焼きを食べさせようとしたら作っている最中に空腹のグランに無理やり連れてこられたと言うことらしい。

 

「流石に料理を作るくらいなら……」

 

「料理はピクチリ問題なしっすよ」

 

「カタリナに渡すところ見てから襲って連れてきました」

 

「終わった瞬間3人同時峰打ちとかパネーわ、ダンチョまじケモノすぎてベルセルク」

 

「……で、この大会の趣旨はなんじゃ?」

 

「そうですね……ローアイン殿達を連れてくる意味が……」

 

「これから2人には、ローアインからカヴァ焼きを教わってもらいます。ンナギは俺が準備して、タレの方はローアイン達が用意してます。

 で、ローアインの目の前でそれ食ってもらいます」

 

 要するに『腹減ってる時に美味い匂いを嗅がせたからお前も同じ目に逢え』ということである。ただの八つ当たりである。グランのその言葉に、サビルバラもミリンもただただ呆れるばかりであった。

 

「ダンチョマジパネーション、お腹メチャ減りまくりんぐで美味い匂い嗅がせるとかオーガ畜すぎる」

 

「黙れ! お前に俺の空腹が救えるのか」

 

「その割にはンナギ秒で釣りワズ的な……」

 

「兎も角、たまに自分で作る飯食うと滅茶苦茶美味しく感じるので作って食べてみようってのも兼ねてる……但し副食を付けること。何でもいいけどね?」

 

「ふむ……添え物か……」

 

 その言葉で考えるサビルバラとミリン。どんな副菜を作るのか、どんな添え物にするのか。それを考えようとしてくれている以上は、今回やる気自体はあるということである。

 

「……よし、団長殿の言うこともたまには聞いてみるとするぜよ」

 

「いっつもそれなりにいうこと聞いてくれるくせに」

 

「とは言っても、作るの結構時間かかりそうですね……物によっては、先に副菜作るのもありかもしれないです」

 

「だな、とりあえず……作るぞ」

 

 そう言って料理道具を大量に取り出すグラン。それぞれ3つずつあることに気づいたサビルバラとミリンは、ここで改めて驚愕の表情を浮かべる。

 

「団長殿もやるんか?」

 

「当たり前、俺がやらないで誰が俺の腹を満たすってんだ」

 

「まぁ、ワシらも別に腹が減ってないというわけではないが……」

 

「拙者は……少し遠慮したいというか……」

 

「え、なんで? 飯食っちゃった?」

 

「い、いえ……その、体重……増え……」

 

 言いづらそうにモジモジと喋るミリン。こんな彼女はとても珍しいのだが、グランにはちゃんと聞こえていた。要するに最近体重増えたから、あまりカロリーの高そうな食事は取りたくないということだった。

 しかし、見た感じだとミリンは太っているようにはグランは感じられなかった。

 

「……いや、別に大丈夫だろ?」

 

「うぐ……ぜ、拙者は気にするんです!!」

 

『多分腹ではなくて胸だろう』とグラン考えたが、それを言うと恐らく判定が出て秩序されるだろうと考えてしまう。それに、頬を赤らめて言いづらそうにしているミリンを見るのは、グランにとっての心の保養になっているので一切問題がなかったのだ。

 

「んじゃあ、あっさりした副菜作ればよくね?」

 

「む……」

 

「相性はいいっしょ!」

 

「それは言われてみれば……」

 

「後、カヴァ焼き食わないのはもったいないっすよ」

 

「うぐぐ……わ、わかったでござる! 食べればいいのでしょう!?」

 

「その意気だ、一緒に美味しいご飯を作って食べような」

 

 グランはヨダレを垂らしていた。もはや作る前から我慢が効かなくなっているようである。カヴァ焼きは確かに絶品だが、それを我慢できなくなるほどにはグランの目は狂気に満ちていた。

 

「さて……料理タイムだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カヴァ焼きは教えてもらった通りに作ったでござる!」

 

「んで、肝心の2人の副菜は?」

 

 少ししてから、3人は物を作り終えていた。全員エプロンを着用しており、ローアイン達も満足そうに笑みを浮かべていた。誰かに作りを教えられたのが、存外満足だったようである。

 

「拙者はこれじゃ」

 

 そう言ってサビルバラが出してきたのは、天ぷらだった。しかし、その天ぷらはどうにも緑色が目立つものでローアイン達含めた5人は興味津々といった様子で見ていた。

 

「この天ぷらは?」

 

「口直しじゃ、刺身なんかにも使われる食用の葉を揚げたものじゃな」

 

「お、これバチリコ美味いっすね」

 

 トモイが先に、その天ぷらの1枚を取って食べていた。ローアイン達も手を伸ばし、その天ぷらにかぶりついていた。それはとても好評であり、味見用に作っていたものは全て平らげられていた。

 

「どしたんすかこれ」

 

「栄養もさる事ながら、口直しをする事でカヴァ焼き丼をずっと上手く食べ続けられるっちゅう戦法よ」

 

「確かに、これならいくらでもパクつけちゃうわけで……いや、マジすげーっすわ」

 

「……サビルバラの副菜が美味かったので、次の人にも期待が乗りますね。という訳でミリン!!」

 

「ござる!!」

 

 そう言って、ミリンが出てきたのは……1杯のお茶碗の中に入った無色の汁だった。中には、果物の皮の一部が入っている上に食用の草のような物も入っていた。

 

「これは?」

 

「ほほう、すまし汁か」

 

「すまし汁……?」

 

「無色の汁じゃ、薄味だがちゃんとした味付けが施されている。オマケに柑橘系の皮を入れたか」

 

「皮を入れるとなにか味が変わるの?」

 

「味ではなく、香りじゃな。香りを付けることによって、一味違ってくるんじゃ」

 

「ほう……」

 

「人数分作りましたので、どうぞ!」

 

 そう言って出してくるミリン。全員、興味津々で器を手に取っていき、ゆっくりとその出汁を飲み込んでいく。喉をならす音が響きわたり、全員が器を下ろす頃には器には何も残っていなかった。

 

「たしかに美味い……」

 

「いい味してんねぇ……! こりゃ俺らも負けてられ」

 

「ローアイン達は俺らに作るのが仕事だから、余ったンナギでカヴァ焼き作ってね」

 

「ダンチョマジで激おこじゃん……」

 

 笑っていない目を向けながら、グランはローアイン達を見る。その目によって、ローアイン達は恐怖を覚えていた。ここまで怒ることはまぁまぁ無かったというのもあるからである。

 

「ともかく……次は俺だな」

 

「団長殿はどうしたんぜよ?」

 

「ふ……俺は、こいつだ……!」

 

 そう言ってグランが取り出したのは、赤黒い色をしたしわくちゃの物体だった。ローアイン達は見たことがないために首を傾げていたが、ミリンやサビルバラは見たことがあるのか少し驚いた表情をしていた。

 

「こりゃあ、梅干しじゃな」

 

「梅干し? なんか、めちゃんこしわくちゃ何すけど……?」

 

「はい、この梅干しは……梅という植物の実を干した後に加工して作られるものなんです」

 

「へぇ……どんな味がするんすか?」

 

「酸っぱいな」

 

「酸っぱいでござる」

 

 サビルバラとミリンの言葉に、興味半分怖さ半分といった表情で梅干しを見つめるローアイン達。1つずつしかないが、その酸味を味わってみようということで一つずつ手に取っていく。

 そして、3人目を合わせたあとに同時に口に入れる。

 

「っ……!」

 

 ローアインは口を抑えてプルプルしながら親指を立てる。美味いと言いたいのだろうが、酸味の強い梅干し1つでは言葉すら出せないということが理解できる。

 

「うぇぶぇ、うぁぶぶぶふ……」

 

 何を言ってるのか分からないし、おそらく意味のある言葉を発していないだろうと思われるエルセム。酸味が強すぎて、とりあえず言葉を発していないといけないほどになっているようだ。

 

「うぇ……うぐっ……ぶぇ……」

 

 えづいてるトモイ。もう単純に絵面がやばいので、流石に食べてない3人が口直しに何かを渡していく。酸味さえ誤魔化せればいいので、単純に茶碗に白米を盛って渡していく。

 

「あぐ、うぐ……」

 

 がっついて白米を食べるトモイ。その中で白米と梅干しの相性に気づいたのか、白米を更にほおばっていく。その様子を見たローアインとエルセムも、同じように白米を頬張っていく。そして、グラン達が余分に炊いた白米はきっちりなくなってしまっていた。

 

「いやぁ、まじパネーわ」

 

「ご飯と相性よすぎっしょ」

 

「それな」

 

「ふふ……梅干しの魅力が伝わっところで……俺ら3人で飯を食うから、よろしく!!」

 

 先程から味見でローアイン達はバクバク食べている。それなりに満足しているのだが、グランはそのことに気づいていない。言ったらめんどくさいので、全員この場は何も言わないのが吉だと察した。

 

「さて、カヴァ焼きと一緒に副菜食べるか」

 

「じゃの」

 

「ござる〜」

 

「「「いただきます」」」

 

 そして、3人はご飯を食べ始める。ローアイン達は目を合わせてから、再びその光景を見るが……随分と美味しそうにカヴァ焼きを食べている姿を見て、ほっこりとしていた。

 

「うま、うま……」

 

 グランは我慢の限界が来ていたのか、ものすごい勢いでかき込んでは、それらを流すかのように水を飲む。ミリンはその光景をチラチラ見ながら、自分のペースで食べていた。

 

「ダンチョ、白米追加で炊きまくってきますわ」

 

「ほふ、ほへはいは」

 

「喋るか食うか、どっちかにした方がいいぜ」

 

 エルセムのその言葉で、グランは一旦水で口の中のものを一気に流し混む。白米の熱さを、冷たい水で冷ましながらカヴァ焼きの味の余韻を一旦リセットする。

 

「ぷはぁ……うし、オカワリお願いな」

 

「うぃーっす」

 

 そう言って白米を追加で炊き始めるローアイン達。グランの食べっぷりに満足そうにしながら、美味しそうに食べるその姿を十分に眺めていた。

 

「にしても、ほんとによく食うのう……」

 

「あ、そうだ……この後釣りに行こうぜ釣り」

 

「いいですねぇ、なにを釣る予定なんですか?」

 

「ゴッドアルバコア」

 

 その言葉にサビルバラもミリンも驚愕の表情を浮かべる。ゴッドアルバコアは、その強さも見た目もアルバコアとほぼ同じなのだが、如何せんアルバコアと違って一応はただの魚類な上になかなか見つからないことで有名なのだ。よって、ただ釣るという訳にも行かない。

 

「任せろ、シグとガンダゴウザも一緒に連れていくから」

 

「ふ……その辺はあまり気にしてないぜよ、なんだったらゴッドアルバコアの中でも特別大きい個体を釣ればいいんぜよ」

 

「ござる!! とりあえず、ご飯を食べ終わってからにしましょう!」

 

 こうして、この飯の後にはゴッドアルバコアを釣ることが決まったのであった。しかし、その話はまた別のお話ということである。




ローアイン達が便利すぎる

偶には長編とか書いて欲しい

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