「今日のゲストはセルエルさんです」
「よろしくお願いします」
「セルエルは前回のヘルエスの弟、というわけで王子な訳だが」
「『元』王子です。その辺を間違えないようにお願い致しますね、それと私達が王族だったのは昔の話です。それもきちんと理解して欲しいものです」
「分かって言ってるんで大丈夫大丈夫」
「やれやれ……そんな調子で本当に理解しているのか不思議ですね」
グランの言うことに逐一ダメ出しを入れるセルエル。初めてであった時と比べれば軟化しているが、相変わらずの口の悪さである。元王子なのにと言うべきなのか、元王子だからこそと言うべきなのか分からないが、性格はひねくれていた。
「前回は姉上が少々暴走していたようですね、その辺は謝っておきましょう」
「本当に謝るつもりあるのか、と言いたくなるような謝罪だけどまぁ俺自身そこまで気にしてないので、問題なしと扱いましょう」
「出来れば姉上に直接言いたい所なのですけどね。昨日の間に、その事を言ったら少々荒っぽい特訓が始まってしまいまして……直接言うのは諦めました」
「なるほど」
姉弟仲が悪い訳では無いのだろうが、どうにもこの2人は出会う度に何かしらの言い合いをしているような気がするグラン。大体、セルエルが余計なことを言って『いえ? 何も言ってませんけど?』までの態度をテンプレでとるので最早日常の一部分と化していた。
「そういやセルエルってヘルエスと違って露出少ないよね」
「むしろ姉上が見せすぎなのですよ」
「ここで俺の仮説、もしかして2人着る鎧間違ってない?」
「……その可能性は有り得ません、私の鎧を姉上が着るのならともかく……姉上の鎧を男の私が着ることはまず無いでしょう。スカートですよスカート」
「まぁそれもそうか」
仮にスカートじゃなかったとしても、ヘルエスの鎧を男が着るのは些か間違っているはずなのだ。だが、セルエルは一瞬その可能性を視野に入れてしまった。入れてしまった上で、否定しているのだ。
「まぁそれはそれとして……お便り紹介のコーナー」
「答えれそうなところだけ答えていきます」
「まーたそういうこと言う……というわけで一通目『そのひねくれている性格はどちらから来ているのですか』」
「姉上……前回の意趣返しですか」
お便り自体は番組が始まる前ではなく、もっと前に予め回収しているものなので前回だとか前々回となると全く関係ない。つまり、この2人はほとんど同じタイミングでこんなお便りを出しているのだ。
「で、どうなの」
「私はひねくれているのではなく、疑り深いだけですよ」
「疑り深いのと口が悪いのは=では繋がらないので、もっと言い訳として成立することを言ってくださーい」
「と言われましてもね……私は、気がついたらこうなっていただけなので何も言えませんよ」
「子供の頃どれだけの事があれば、そんな口の悪さになるのか気になる」
初めて会った時、セルエルは1度グラン達の騎空団入りを断っている。理由としては『得体の知れない連中と付き合う気は無い』ということだった。そのあとに皮肉たっぷりのセリフを付けていたので、ひねくれ方は天下一品である。
「私ではなく、環境に問題があるとでも?」
「人を育てるのは環境以外ないだろう。環境関係なくそんなひねくれ方をするというのは、最早逆にすごい」
「結果論ですね、違う過程を経ていたとして……それがどう影響するのかなんてだれも証明できないのですから」
「まぁ、それは確かにそうだ……で、結論としてはどうなの」
「姉上が言うようなひねくれ方はしていない、と言うだけです。寧ろ、姉上が純粋過ぎるのですよ。元王女で狙われる理由なんて目に見えているのに、バカ正直に相手をしすぎている。この間の夏の事で嫌な目にあったのはそれが原因だというのに」
皮肉たっぷりだが、ヘルエスが攫われた時のセルエルは顔を真っ青にしていた。余程心配していたのが手に取るようにわかるのだが、もしかしたら照れ隠しで罵倒を吐いている時もあるのかもしれない。そう考えると、少々可愛く思えてくるグランだった。
「……なんですかその顔」
「セルエルは姉思いのいい弟だと言うのがわかったので、2通目にいきます『エルバハには感謝しているか?』」
「スカーサハ様ですね……ったく……」
「……」
「何か?」
「いやなんでも」
『今のでなんで分かるんだこの人』ということを内心思ったが、アイルスト特有のものだろうと最早グランは思考することを放棄した。リーシャが音もなく現れるのだから、それくらい不思議はない。
「感謝していないと思いますか? 逆に」
「いやぁ、まったく……そもそもエルバハさんに頭上がらないでしょう2人とも」
「えぇ、ついでに言うなら3人ですよ」
「……あ、ノイシュか」
「えぇ、エルバハにしてみたら私達3人は彼女の子供も同然だったでしょう……今だ気苦労はかけますが、毎週きちんと手紙は送らせて頂いています」
離れてから毎週となると、既に相当な枚数になりかねないのだがグランはそれも触れないことにした。手紙を送る分には問題は無いからだ。頻度が問題なのだが。
「貴方は手紙を送る相手はいますか?」
「いやぁ、住所イスタルシア職業騎空士の父親しか離れてる身内がいない俺にそれ聞く?」
「住所イスタルシア」
恐らく間違いではないだろうが、その言葉だけだとイスタルシアがとても近しい物になってしまう。それでいいのか我らが団長よ、とセルエルは内心だけフォローを入れる。
「まぁ……いいや、とりあえず3通目『この団の金銭事情について』」
「削れるところはもっと削った方がいいと思われますが」
「削れるなら俺だってそうしたい」
「……別段、そこまで目立った大食らいが多い訳でもないのに、人随があまりにも多いせいで食費や食器台、調理道具などのお金で吹き飛んでいきますからね」
「その分みんな稼いでくれてるからありがたい」
「今言った諸々の諸経費だけでどれだけ飛んでいましたか?」
「4桁万ルピ、調理するにも火とか色々使うからそれ関連でもガンガン減る」
「頭が痛くなりますね……グランサイファー大食らい三人衆の見積もりは?」
「ドラフ男性のRは実は1番金を使わない、自分で開いた大会で食っては稼いで寄付とうちの騎空団に回してくれてるから」
「ということは……少女Rと女性Aですか」
「特に女性Aだぜ……ウチの騎空団の食費の50分の1を担っている」
「多いのか少ないのかわかりませんね」
恐らく多いのだろうが、食費に関してはグランは基本的に受け入れる体制である。というか、これでも予想してた金額よりも抑えられているという不思議である。
思っているよりも稼げているのか、それとも皆なんとかして食費を抑えてくれているのか。それは謎なのだが、しかし今のところ問題がないのも事実である。
「食費……そう言えば、この団は食費に余裕がある時点で相当な金銭を稼げているのですね」
「あぁ確かに、食費もある程度余裕は持たせているし……浮いたお金はまた別のところに回してたりするし……」
「ふむ……これだけ大きな団で崩壊が起きてないのは素晴らしいことですね」
「流石みんなと言うべきか」
「1番すごいのは、それをまとめている貴方ですけどね。これだけの人数をまとめておいて基本的に嫌われないというのは素晴らしい事です」
カリスマ性と言うべきか、何だかんだ皆グランのことを何らかの形で尊敬しているからこそ、ここまで着いてきてくれているのだ。だからこそみんなお金を集めるのに仕事を頑張ってくれているのだ。
「そう言えば、彼女はどうするのですか」
「誰?」
「ラムレッダ殿ですよ」
「あぁ」
最近クビにしないで欲しいとか言ってくるのだが、クビにする気こそ無いものの、グランは時折それをチラつかせたくなってしまうような性格になってしまっている。
「多分やろうと思えばやってくれるからいいよ」
「そうですか、あなたがそういうのならば問題は無いのでしょう」
万が一の時は『仕事しないとクビね、後シェロカルテを通じてラムレッダの事話通しておくから』という脅しをかければいいや、とグランは思っていた。無論そんなことはする気は無いが、そういう脅しをしてガチ泣きする成人女性を見るのが楽しくなってきた。
「これもうラムレッダに責任とってもらうべきでは?」
「いきなり何を言っているんですか……暑さで頭がやられましたか? 裸一貫のノースヴァストで頭を冷やしてきますか?」
「もー、セルエル君ったらぁ、そんなことしたら凍死しちゃうゾ☆」
セルエルは生まれて初めて親愛なる人に殺意を覚えたと、後に語っている。剣を抜かなかっただけ、マシかもしれないとも語っている。ぶっちゃけどっちもどっちである。
「まぁいいでしょう、今はあまり気にすることでもありません」
「あ、そうだ……もうそろそろ時間ないから切るけど、最後に一つだけ聞きたいことがある」
「何ですか?」
「ノイシュのことについて」
「そうですねノイシュはまず面倒みがいい事が彼の長所でもあり欠点でもあるでしょう事実私達の面倒を見てくれた時や今現在スカーサハ様の面倒を見ている時はまるで兄や父親のようや面倒みの良さを見せてくれていますしかし反面その面倒みの良さつまりは人の良さが災いしてあまり人に否定をしないところが欠点とも言えますそれが原因でアイルストが滅ぶことになったわけですがしかし彼の人の良さはそのまま面倒みの良さそして家事スキルの高さに直結してきます彼の入れる紅茶はとても質がいい上に私の舌や姉上の舌などといった人によって好みが変わってくるものを敏感に感じ取ってそれぞれ微妙に違う味付けにしてくるのもまた良きことですそれに彼の焼くお菓子などもまた美味だったりするのでそれを踏まえれば家事スキルは高いと言えるでしょうしかし彼の家事スキルの高さの割には彼自身の味覚はあまりいいものとは言えませんそれの理由はわかりませんがしかしあの味覚はいずれ矯正するべきだと思っていますだがあれが彼の欠点となってくるとそれを潰すのは彼の個性の一つを潰すことになるかもしれないと考えたらあまりいい策とは思えませんそれに今の時点でもノイシュは最高だと言わざるを得ないところからして欠点であろうが彼の個性を潰すのはダメなのかもしれないと今私の中で結論が着きました後はノイシュはいつも真面目なところも好感が持てますねたかが遊びだとしても彼はいつでも真面目に取り組んでいるそれでいて子供と遊ぶ時はそれなりに手加減もできるというまさに紳士の鏡とも言えるでしょうところでまだ語れそうですが時間はありますか?」
「お前ノイシュの話になると饒舌になるよな」
「ノイシュですからね」
「なんかもう色々と巻くんで、今日はここでおしまい。皆さん、ご視聴ありがとうございました。また次回この番組でお会いしましょうさようなら」
二次創作だと決まってノイシュ大好きマンにされてない?高貴なるポーズ様は
偶には長編とか書いて欲しい
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はい(ギャグノリ)
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はい(シリアス)
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いいえ