ぐらさい日記   作:長之助

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竜騎士、ここは譲れないか?

「今日のゲストはノイシュさんです」

 

「よろしくお願いします」

 

「ノイシュは、前回前々回のセルエルとヘルエスのお二人の騎士兼世話係のようなものだったとか」

 

「世話係と言っても、お2人とそう年齢は変わりませんよ。実質私の母が世話係をしていました」

 

 ノイシュ、かつてスカーサハの本体……ディアドラを自身の槍で葬ってしまった事があった。そのせいで故郷では魔物達が暴れ、国は滅びてしまう。

 今は国は復活しており、王政から議会政へと変わっているのだが……ノイシュは未だにそのことを後悔しているのだ。

 

「でも今はスカーサハの世話係をしてるもんね」

 

「世話係……まぁ、確かにそうですが」

 

「見てたら、親子とかそんな風に見えてくるよ」

 

「私には婚姻するような人はいませんけどね」

 

 スカーサハが時折ノイシュと話している女性に嫉妬している時があるが、グランはそれを見る度に内心『結婚したらいいのに』とか思っている時がある。まぁそもそも、スカーサハを女性としてノイシュが見ることは恐らくないのだろうが。

 

「まぁそれはノイシュ自身が見つけるべき相手だから置いとくとして……最近どう?」

 

「どう、とは?」

 

「いや、結局この船にアイルスト全員集合してる訳だけど……肩身狭くない?」

 

 全員気にしていないとはいえ、ヘルエスやセルエル相手の場合だと自分が滅ぼした国の元王女と元王子。スカーサハに至っては、今でこそ見た目が違うが殺した相手本人である。普通だったら、肩身が狭いどころか相当なストレスがかかるレベルである。

 

「いえ……全員気にしないでいてくれているので、そこは大丈夫です。むしろ、その話題を出すとセルエル様から滅茶苦茶皮肉を言われます」

 

「あぁ、うん……」

 

 セルエルならやりかねない、というかノイシュがアイルストの1度滅んだ時の話題を出すと決まってノイシュにその話をするなと釘を刺すのだ。セルエルが嫌な気分になる、というのではなくてノイシュが気にして欲しくないためにそう言うのだろう。

 

「そう言えば、スカーサハは今はどうしてるの?」

 

「浜辺で遊んでいる、あそこだけを見たら本当に子供なんだけどな」

 

「まぁ精神は見た目に引っ張られやすいというし……」

 

 元男のカリオストロだって、自分が美少女っぽい事をしてる男なのだが、お姫様抱っこしたりすると本気で照れるのでそういうものなのだろう。スカーサハの場合、元の性別が分からないから影響を受けていると言っていいのかどうか不明なところではあるが。

 

「確かに……」

 

「まぁスカーサハの場合は……」

 

 どちらかと言うと、元からあんな純粋さだったのだろうという理由でもグランはあまり気にならなかった。そう、スカーサハ……ディアドラに関しては、彼女自身が尊大な態度をとっているがもしかしたら根っこの性格がスカーサハと同じなのかもしれない。

 

「さて、一旦スカーサハの話は置いておくとして……お便り紹介のコーナー」

 

「私に聞きたいこと、ですか……」

 

「あ、とりあえず質問にだけ答えて。なんか余計なことまでほじくり出してきたら、セルエルの皮肉パーティーが始まるぞ」

 

「皮肉パーティー……?」

 

 謎の単語にノイシュが首を傾げる中、そんなこと関係ないと言わんばかりにグランは箱の中からお便りを取り出していく。そして、その中の1枚を読み上げていく。

 

「1通目『スカーサハ様との一日の過ごし方』」

 

「……一日の過ごし方?」

 

「なんかずっと様子見てるし、実はほとんど一緒にいない? なら一日の動向を探ってみようぜ! みたいな考えなんじゃない?」

 

「なるほど……では僭越ながら」

 

 紙にサラサラと書き込んでいくノイシュ。その光景をグランはじっと見つめながら、ただ待つだけだった。そして、ようやく描ききったのか、グランの方にノイシュはその紙を渡す。

 

「えーっとなになに……?」

 

「まず朝、私がスカーサハの部屋に入って起こしに行くんだ」

 

「一緒に寝てないんだ」

 

「セルエル様にはそう言われたのですが……ヘルエス様から『流石にそこまでしなくていい』と言われました。スカーサハからもそこまで心配しなくていい、と」

 

 そこは別にいいのだが、グラン的には1緒に寝てる2人を頭の中に思い浮かべながら、その父親と娘のスキンシップのような状態をすごく納得したかのような表情で頷きながら、心が熱くなっていた。

 

「……?」

 

「……さて、次は飯の時の話で」

 

「朝ごはんは基本的に一緒で、スカーサハはよく口元を汚すから拭いてあげている時が多いですね」

 

 やっぱり子供なのでは? と思わなくもないグラン。だが、人間の体を作ってからはあまり時間も経っていないのだから、ある意味子供とも言える。それに、アイルストの一件以来子供っぽさはますます磨かれているのも事実である。

 

「最近食器の使い方はどうなの?」

 

「ちゃんとした持ち方を教えているつもりだが、やはりまだ慣れないのか握って持つということが多いな。最近は箸の使い方も習おうとしてはいるが、やはりまだ難しいらしい」

 

「……」

 

 もう子供以外の何物でもない気がする、グランは確信を得始めていた。今度からスカーサハをまともな目で見れる自信がなかった。出会い頭に、持っていたお菓子を渡すくらいには子供扱いしてしまいそうである。

 

「さっきも言ったけど、やっぱり精神が見た目に引きずられてるんじゃ……」

 

「有り得なくもないな……スカーサハと本体であるディアドラ様は存在が少し異なるようだしな……意識の共有はあれど、精神的なものがどこか違うのかもしれない」

 

「精神的なものねぇ……」

 

 やはり肉体というものはどれにおいても基盤になるのかもしれないと、グランは心の中で頷いていた。

 

「とりあえず、次は……風呂と睡眠時」

 

「お風呂はヘルエス様に任せてある……基本的な睡眠時は少し挨拶をする程度だ」

 

「まぁさすがに風呂はね……」

 

 元が性別不詳とはいえ、今はただの無茶苦茶強い幼女のエルーンである。そんなのでもし一緒に風呂に入ろうと言うのであれば、秩序が飛んできて秩序を行って秩序するだけであろう。

 

「にしても……いつも一緒にいるイメージだけど……」

 

「食事の時くらい……というのが答えな訳で……」

 

「ふむ……なるほど理解出来た。では二通目に移ろう『夏の時に水着らしい水着を着ていなかったのはどうして?』」

 

「あまりはしゃぐのも……と考えてしまっていて……私があそこまで薄着なのも珍しい気がするんですけどね」

 

 ノイシュの格好は水着とは銘打っているが、傍から見たらラフな格好にしか見えない。恐らくきちんとした水着なのだろうが、彼自身ヘルエスやセルエルの護衛という所もあるために普段着にも使えそうな服にしてあるのだろう。

 

「まぁいいんじゃない? 薄着でも水着は水着なんだし……」

 

「団長殿にそう言って貰えるなら、まだいい方か……」

 

 別段、水着と言ってもわざわざ服装をまるっと変えろと言っている訳では無いのだ。実際、水着のリルルはいつもの服装がほんの少し水着っぽくなっているだけなのだから。

 

「まぁ珍しいのは珍しいと思うけどね」

 

「やはりか……」

 

「まぁそのへんは気にしなくていいと思うよ」

 

「そうか……」

 

「というわけで速攻の3通目『もしヘルエスとセルエルが、好意を寄せる相手を作っていたらどうする?』」

 

「いや、セルエル様はともかくヘルエス様は……」

 

 ノイシュはそれ以上言葉を続けなかった。自分で言うよりかは、ヘルエスの口から直接言わせた方がいいと判断したからだ。だがはっきり言うと、傍から見たらまるっきりわかりやすいので直接言うもなにも普通はありえないのだが。

 

「セルエルはともかくって……言葉よ」

 

「いや、別に他意はないのだが……しかし、セルエル様が好意を持つ人物というのはあまり想像できなくて……」

 

「それは分かる」

 

 セルエルがそういった人物を作っているのは、グランも想像がつかなかった。というか、ノイシュのことばかり褒めているのでぶっちゃけ異性にあまり興味が無いのではないだろうか、とさえ思えてくるのだ。なにせ、昔から姉のヘルエスに振り回されているのだから。

 

「よくいえば仕事人間だよね」

 

「しかし、休暇の時は休暇を楽しもうとする余裕をきちんと持っておられた。そこは流石だと感服する所だ」

 

「……ノイシュもノイシュで割と大概だよね」

 

 ヘルエスとセルエルの事になると、ノイシュは結構褒める。勿論否定や何かしらの意見を出すこともあるが、だいたい褒めている。褒めちぎっている。スカーサハは教育のために割りといけないことは怒るので、別である。

 

「でもヘルエスってたまに子供っぽいところあるよね」

 

「団長殿的には、ヘルエス様のような性格の女性はどう思われる?」

 

「ギャップがあるから、水着の時とかのプライベートとかだと可愛く見えるよね」

 

 それ以上にグランは胸囲と露出度に目がいってしまうのがオチなのだが。それを口に出すほど野暮ではないのだ。

 

「ふむ……つまりヘルエス様は異性としては?」

 

「ありじゃない人なんているの? あとさノイシュ」

 

「ん?」

 

「この団の女性陣レベル高いから……」

 

「あぁ……」

 

 納得するノイシュ。ヘルエスだけとは言わず、確かにグランサイファーに乗り込んでいる女性陣のレベルはかなり高い。ヘルエスだけを女性として見ているかという質問は、かなり意味をなさないとも言える。

 

「……ま、とりあえずヘルエスはともかくとしてセルエルは女性を隣に置くイメージがないという事で」

 

「しかしなぜそんなイメージがついているのか……」

 

 主にお前のせいだと思うぞ、という言葉は言わないでおくグラン。言っても言わなくても大して変わらない気がするからだ。セルエルがノイシュのことを好きすぎるのがいけない。

 

「まぁ、とりあえず本日はここまでとなります。皆さんご視聴ありがとうございました、また次回この番組でお会いしましょうさようなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいノイシュ」

 

「なんだスカーサハ」

 

「箸がまだ使いづらい、フォークを出して欲しい」

 

「自分で取りに行けるんじゃないのか? 前は取りに行ってただろう」

 

「……背が足りんのだ」

 

 とある日食堂にて。グランはスカーサハとノイシュを見つけてその光景を眺めていた。ほんとあの親子や年の離れた兄弟の感じがする2人を眺めながら、微笑ましそうにグランは眺めていた。

 

「……団長さん、何してるんですか」

 

「幼女とその保護者を眺めてる」

 

「事案ですか?」

 

「事案じゃない事案じゃない」

 

 リーシャが出てきて少しだけ大変なことになっていたが、グランは気にせず眺めていた。その結果、グランはリーシャに連れていかれて2人を眺めることが出来なくなっていたが、自業自得というものだろう。

 

「おいノイシュ、水が重くて注げん」

 

「わかったわかった……注いでやるから」

 

 ……この光景を眺めるのは、グラン以外にもいるのだがそれはまたべつのはなしである。




フェイトエピを何度見直しても水着があれな理由が話されてないのが不思議

偶には長編とか書いて欲しい

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